鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 縁、それは自分が思っている以上に続くものだ。
 それと、運命はいつだって変わるものだ。




第3話 人形

 突如現れた、エクスキューショナーと名乗る女性は太刀でELID達を斬り倒していく。しかし良く見れば左腕が無く、片腕だけで達を振っている。

 そしてあっという間にELID達は壊滅する。

 

 その後、エクスキューショナーは降りてきたヘリに翔達を乗せるまで周囲を警戒し続け、ヘリに乗った男の子と女の子は安心したのかすぐに眠ってしまった。

 

「えっと、ありがとうございます」

 

 翔はエクスキューショナーに頭を下げる。

 

「おう、とにかく助けられて良かった」

 

 

 

 しばらくすると、ヘリは工場とビルが1つになった施設に降下する。

 

「ようこそ、鉄血工造へ」

 

 エクスキューショナーは施設の中へ入るよう促し、翔達とは別の場所へ歩いていく。そして、足を骨折していた男の子は医務室に運ばれ、翔と女の子はメディカルチェックを受ける。

 

 応急処置を受けた男の子の元へ女の子と翔は案内され、無事を喜ぶ。

 

「お兄さん、本当にありがとうございます!あっ、僕は『遠藤 (よう)』と言います」

 

「私は『遠藤 加奈(かな)』って言うの」

 

 黒い短髪の男の子は陽、黒く短いツインテールの女の子は加奈という名前だった。

 医師の人も微笑んでおり、翔も自分の名を名乗る。色々と話そうとしたところで、翔は鉄血工造の社員に呼び出される。

 

 

 

 

 

 翔が案内されたのは社長室であり、接待用の椅子には赤いスーツを着た金髪のロングヘアの女性が座っており、左目の上には火傷の跡があった。

 そして、その隣には黒髪のメイド服の女性が立っていた。

 

「鉄血工造、本社へようこそ。色々大変だったようね、まずは座ってちょうだい」

 

 赤いスーツの女性はそう言い、翔は女性の前に座る。

 

「私は『ロイラ・ノット・スタイン』、こっちは我が社の『ハイエンドモデル』、『エージェント』よ」

 

 エージェントはスカートの裾を持ち上げてお辞儀をする。

 

「お見知りおきを」

 

 そしてロイラは翔を呼び出した理由を告げる。それは翔に鉄血工造で働いてみないか、ということだった。

 

「記憶が無くて、戸籍や住所は不明。しかも人形とかそういう知識も無し・・・それならしばらくここにいてみたら良いんじゃないかしら?それに、こっちはこっちで人手が足りないし」

 

 翔は少し考えてみるが、記憶を探すためにもここにいてみようと思った。

 

「記憶を探すためにも、お願いします」

 

 翔は契約書を交わすと、エクスキューショナーに案内されて食堂へ向かった。

 

 

 

「本当によろしかったのですか?彼を入れて」

 

 エージェントはロイラに問う。ロイラはゆったりと背もたれに寄りかかり、自信のある笑みを浮かべる。

 

「なぜ記憶喪失なのか、なぜ人形やELIDなどのこの世界での基本知識が無いのか、確かに疑問点が多いわね。でもだからこそ可能性を感じるのよ・・・それに・・・」

 

 ロイラが机に置いた資料には、検査結果が詳しく記されている。

 

「筋肉が人工のものに置き換わっていて、その素材は不明。目や骨、神経にも何かしら手を施されてるでしょうね。そして極めつけに、うなじにある接続端子・・・掘れば掘る程謎が出てくるあの子、何者かしらね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食堂へ行くと、エクスキューショナー以外の他のハイエンドモデルもおり、既に食事をしていた。翔はお盆を持って配膳をしている場所へ行って食事を貰う。

 

「おっ、アンタがあの子供達を助けたっていう男か」

 

 黒い長髪の割烹着を着た女性が、翔のお盆に簡素な食事を乗せながら言う。

 

「私は『ヨルムンガンド』。ハイエンドモデルだが、今は料理人さ」

 

 出された食事は米、味噌汁、干し芋であり、どれも量が少ない。理由については、エクスキューショナー曰く補給線がやられたかららしい。

 

 

 

 

 

 その日の夜、翔はエージェントから今の情勢などを別室で教えてもらう事になった。

 

「まず、ここは日本という国です。西側は壊滅しておりますが、東側はなんとかもってる状態です・・・というのも、日本は現在4つの軍需企業が守っているからです」

 

 現在日本を守っている企業──

 1つは攻撃性に特化し、多くのハイエンドモデルを有する鉄血工造。

 次に火力と装甲に優れており、皇居の防衛も担っている『有澤重工』。

 特殊な兵器や局地的な兵器などを手掛ける『キサラギ研究所』。

 エネルギー兵器やライフラインを担う『アクアビット』。

 

 翔は不思議と、有澤とキサラギに関してはなんだか知っているような気がしたが、今はエージェントの説明に集中することにした。

 

「しかし、現在は鉄血工造の重要な補給線が制圧され、こちらは満足な補給はできず、同然食糧の問題も発生しています」

 

 するとエージェントは1枚の写真を手渡す。その写真には青い鷲とB.O.Cの文字のあるエンブレムが映っていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「これは『ブルー・アリオール・コーポレーション』、通称『BOC』です。この企業が現在日本の民間人や組織に攻撃を仕掛け、鉄血の補給線を寸断した犯人です」

 

 BOC・・・元々ロシアを拠点としていた兵器産業を主とする企業だったが、コーラップスによるパンデミックが起きると日本に密入国し、戦況が落ち着くと『人間は誰かが管理すべき』との主張を掲げ、民間人や組織に攻撃を仕掛けてきた。

 

 到底許される事ではなかったが、どこからか得た技術を持っており、加えて日本の4企業の戦力が消耗していた事もあり、日本の4企業は防戦一方となってしまったのだ。

 

 そして・・・BOCの使った謎の装置により、日本全体はドーム状のバリアに包まれ、外界へ出ることはおろか外界との通信すらできなくなってしまっていた。

 

 

 

「そして現在は食糧やのパーツの問題が発生しており、早急に手を打たなければなりません」

 

 他の企業に助けを求めようにも、他の企業も手一杯である現状では自力で補給線を奪還するしかない状況である。

 

「では後日、あなたには訓練を受けてもらいます・・・補給線の奪還作戦に参加してもらうための」

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 ここで書き切れなかった解説は次回行いますので、それまでお待ちください。

●エクスキューショナー
 黒い長髪で男勝りな性格をしている鉄血工造のハイエンドモデル。

 主に近接戦を重視しており、鉄血工造のハイエンドモデルの中ではパワーはトップクラス。

 本社モデルと海外の支部モデルとで違いがあり、海外モデルは威力を重視して右腕が大型化しているが、本社モデルは精密さを重視して右腕は大型化しておらず、主な武装は太刀である。
(支部モデルの主武装は大型ブレードとなっている)

 過去にBOCの戦力との戦闘により、左腕を破壊されている。しかし戦闘力はさほど衰えておらず、現在も作戦の前線に立っている。

●鉄血工造
 2025年に起業した、軍需産業を生業とする日本の企業。

 様々な兵器を開発している中で、当時としては珍しいAIの開発にも着手していた。
 開発された兵器は攻撃性が高く、かつ耐久性も高いため第三次大戦やELIDとの戦闘で大きく評価される事になる。

 BOCが日本に現れる前は4企業の中で最もハイエンドモデルの数が多かったが、BOCのハイエンドモデルとの戦闘によりハイエンドモデルの数を大きく減らす事になる。

●遠藤 陽
 黒い短髪で身長130cm、13歳で7月1日生まれ。

 加奈の兄であり、親をELIDに襲われて少い道具や食糧を持ち出して加奈と共に街を彷徨っていた。

●遠藤 加奈
 黒く短いツインテールの髪型で身長120cm、10歳で5月9日生まれ。

 陽の妹であり、陽と共に街を彷徨っていた。
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