そう、あの月明かりのように。
第26話 キューブ作戦・Another
AR-15の失踪から5日が経ち、銀治とM4達は未だにAR-15の捜索を続けている。
黒いお下げの髪に黒縁のメガネを右目だけにかけ、グリフィンの士官の制服であるワインレッドのコートを着たヘリアンは、銀治達のことをクルーガーに報告していた。
「そうか・・・」
クルーガーもヘリアンもAR-15を破壊せずに済む方法を考えているが、ヘリアンからの傘ウイルスに関する報告はまだあった。
「それと、『404小隊』から申請された緊急指揮権ですが、こちらで承認しておきました」
クルーガーは404小隊に対し、むやみに権限を与えないように言っていたため、やむを得ない理由かと問いかける。
「404小隊が直面している問題は予想以上に深刻です」
「ふむ・・・では、彼女達は今どこにいる?」
404小隊はS06地区にいるものの、既に行動を開始しているため生還すれば詳細な情報が手に入ると思われた。
同時刻(22:00)、鉄血の紛争地帯に404小隊はいた。茶髪のツインテールで、白いシャツの上に黒いジャケットを羽織った女性が、銀のロングヘアに黒いベレー帽を被り、黒と紫の服を着た女性を軽く揺さぶっている。
「ねぇ、起きてよ『416』!ね~え~!」
「・・・うるさいわね」
壁にもたれ掛かって寝ていた416と呼ばれた銀のロングヘアの女性『HK416』は立ち上がり、しゃがんでいた茶髪のツインテールの女性も立ち上がる。
ツインテールの女性『UMP9(通称ナイン)』の右目には縦1本の傷があった。
「遠くの爆発音、聞こえてるよね?マズい状況になったら私は失礼するから、よろしくね」
ナインは手を振りながらそう言い、416はため息をつく。
「背を向けた瞬間に頭を捻じ曲げてやるわ・・・頭の部分だけ」
ナインは「怒らないでよ~」と言いつつ、顔は笑っている。
「でも、傘ウイルスに砂に潜る正体不明の戦術人形、おまけに襲撃の直後に起こったジャミング、確かに関連性はあるかもね」
「だからこそ、ヘリアンはあんなに高い額を提示したんでしょうね」
ナインは周囲のマップを確認し、マップには赤い印が付けられている場所が多数あった。
「こんなにレーダー基地があるから、一瞬でもバレると蜂の巣だね」
「夜間作戦をやるからには、早いとこレーダー基地を占領しないといけないわね」
しかし2人でレーダー基地をどうにかできる訳ではなく、鉄血の装甲型ノーマルや装甲型自律兵器もいるため、より危険な状態となっている。
すると2人に通信が入る。
《応答せよナイン、416の奴は死んだ?》
「残念ね、まだ生きてるわよ」
突然通信で416の生死を確認してきたのは『UMP45』である。UMP45は茶髪のサイドテール(左)の髪に左目に縦の1本傷があり、服装はナインとほぼ同じだが、黄色の部分がナインより多い。
《一時的にグリフィンにいる一部の人形の指揮権をもらったから、色々支援が受けられるはずよ。準備ができたらナインは指定のポイントへ、416は『G11』を迎えに行って》
416が少し離れた場所にある公園に向かうと、木々の中で銀のボサボサのロングヘアの女性が草影に隠れて寝ていた。
「G11、起きなさい」
「・・・うぅ・・・やだ・・・」
416はため息をつくとG11を軽く蹴って転がした。
「・・・蹴らないでよ」
のそのそとG11は起き上がった。G11は灰色に近い黒のベレー帽を被っており、白いシャツの上に黒緑のジャケットを羽織り、黒いマフラーを巻いていた。
「・・・で、潜伏してた間に取ってた録音は?」
「待って、今再生する」
再生された盗聴器からは聞き覚えの無い女性の声が聞こえてきた。
《こんばんは。S06地区へようこそ、グリフィンの皆さん》
その場の空気が凍る。
《夜襲の手応えはどうだ?だが、まだ夜は始まったばかりさ・・・だだ残念ながら、お主らにとってはもう終わりだがな》
416はG11と共に伏せ、それと共に付近にあった爆弾が起爆する。
S06地区の鉄血司令部に、ロシア支部の鉄血ハイエンドモデルが2人いた。
「『ウロボロス』、F3の方角で音声作動式爆弾が起爆した。映像から404小隊の奴らだと確認はできたが、生死は不明だ」
そう報告したのは、銀の短髪で白と黒のカラーリングの服の上に黒い革ジャンを羽織っている鉄血のハイエンドモデル『ハンター』である。
ロシア支部のハイエンドモデルではあるのだが、通常のモデルとは違い体に赤いヒビのような模様があり、何かしらの改造を施されている事が判る。
《ならこちらから出向こうじゃないか。包囲殲滅隊を送って、今すぐ叩き潰してやれば良い》
そう答えたのは、ロシア支部で作られた新たな鉄血のハイエンドモデル、ウロボロスである。黒髪のツインテールに、黒いセーラー服を纏っている。
ウロボロスは司令部の屋根の上で仁王立ちしている。
《正気か?グリフィンとの衝突はできるだけ避けるようにと、エージェントに言われたろ》
ハンターからの反論を予想していたかのように、ウロボロスはほくそ笑む。
「ハンター、お主はそういうことに固執するからAR-15に頭を砕かれる羽目になったのだ。よく聞け、我々のターゲットは雑魚ではなく、あいつらのリーダーだ」
公園の映像には炎と燃える木々が映し出されているが、416とG11の生死はまだ不明となっている。
「404小隊を包囲したのはただの見せかけで、あいつらのボスを誘き出すことが真の目的だ」
しかしハンターはまだ疑問が残るようである。
《404小隊はAR小隊とは違う。ボスが他の奴らを見捨てて逃げ出さない保証はあるのか?》
「あるさ、それはあいつらが404小隊だからだ。困難な状況に陥った時に友を裏切る事はあるかもしれんが、優勢な時にそれをするバカはおらんだろ」
ハンターは少し考えた後、再び質問をする。
《・・・なら私の役目はなんだ?他のもっと強力な人形ではなく、なぜ瓦礫の下の私を再起動させたのだ?》
「お主は失敗というのを味わっているからな。復讐心はお前をより残酷にさせ、屈辱はお前をより慎重にさせてくれる。だからお前がグリフィンに対抗するにはお前がうってつけなのだ・・・がっかりさせてくれるなよ?」
ハンターはようやく納得した様子で小さく深呼吸をする。
《・・・いや、お前を裏切ったりはしないさ、ウロボロス。すぐに哨戒所に向かう》
その頃、416とG11は鉄血部隊から逃げている最中だった。このままでは追い付かれると思った矢先、崖に当たってしまう。
「45!まだなの!?」
《今来てるわよ!そこから飛び降りて!》
「・・・あーもう!」
416とG11は急いで飛び降り、鉄血の部隊は2人を見失った。
しかし、これらの事など何も知らない翔達フォーミュラの一行はテンペスタを拠点に残し、そのS06地区に来ていた。
「ロイラさんから言われた司令部ってこの付近にあるのかな?」
翔はマップを見て、それから紛争地帯に目を向ける。
「なんか・・・もう既に戦闘が始まってるようなんだけど」
翔の肩に手を置いたヨルムンガンドは苦笑いをしている。
「仕方ないさ・・・」
エクスキューショナーは太刀の柄に手を置きながら歩いていく。
「んじゃ、行こうか」
M200は銃身にある取っ手を持ちながら翔の横に立つ。
「サイレントキルぐらい、ボクだってできますよ」
ジェリコはHGの初弾を込める。
「心配無用です、私達がいます・・・では指揮官、指示を」
翔は深呼吸をする。
「・・・皆、行くよ。作戦開始!」
読んでくださり、ありがとうございます!
第2章が始まると共に、新たな404小隊やウロボロスも出てきましたね。
感想や高評価、お待ちしています。
ちなみに、体調は回復してきているので執筆もやりやすくなってきました。
●SOPの新スキル
『パイルバンカー』
パイルバンカー装備時にのみ発動。
敵1体に接近し、パイルバンカーに固定されたダメージを与える。
(現在装備しているものは3100ダメージ)
●テンペスタのスキル
『風よ、裁きたまえ』
最も脅威度の高い敵を中心として巨大な建造物または兵器を風の勢いに乗せて落とし、中央の敵に100倍、周囲の敵に70倍のダメージを与える。
『風よ、攻めたまえ』
風を使って周囲のものを飛ばし、敵にダメージを与える。与えるダメージは以下の通り。
・石:1倍×5 ・風:1.5倍(装甲付きの敵には使用しない)・木材:1.5倍×3 ・瓦礫:2倍×3 ・兵器の残骸:3倍(破砕付き) ・大型の残骸:5倍(破砕付き)
『風よ、守りたまえ』
戦闘開始時と30秒毎に敵をノックバックさせ、15秒間自身と味方全員の移動速度と回避を50%上昇させ、受けるダメージを30%低下させる。
『風よ、撃ちたまえ』
敵1ユニットに徹甲弾を撃ち込み、破砕効果を持つ3倍のダメージを与える。