蛇よ、決着をつける時だ。
翔のレーダーを頼りに、フォーミュラの一行は戦闘を最小限に留めつつ進んでいく。そして、その様子をウロボロスは見ていた。ウロボロスの目はヨルムンガンドに釘付けとなっており、信じられないといった表情をしていた。
「なぜ、なぜアイツが・・・どういうことだ!?」
その頃、404小隊はなんとか逃げ切れたため、緊急の修復を終えて再び戦闘を開始していた。そしてしばらくすると、哨戒所にてハンターと交戦を開始した。
ハンターと404小隊が交戦を開始して少しした頃、翔達はS06地区の鉄血司令部へと続く橋に辿り着いた。しかしそこには、ハンターと同様に赤いヒビのような模様があるエクスキューショナーが立っていた。
※どちらかを判りやすくするため、翔側のエクスキューショナーはα、現在の敵側のエクスキューショナーを+と表記をつけておきます。
+「あ?なんでオレ様がもう1人いんだ?しかもお前、ダミーでもないようだしな」
エクスキューショナーαは1歩前へ出た。
α「オレは日本にある鉄血工造本社から来た。んで、こいつがオレの指揮官だ」
エクスキューショナーαは翔の肩に手を置き、その後翔の前に出る。
+「へぇ・・・本社のモンが一体なんのご用で?」
α「本社からの命令としては、さっさと人への攻撃をやめてほしいんだがよ・・・そっちはそっちで、なんか理由があんだろ?」
エクスキューショナーαは太刀をゆっくりと抜き、月明かりに刀身が照らし出される。
α「で、ここも通さないつもりだろ?」
+「当たり前だ。それにこっちはM4A1に1回やられて腸煮えくり返ってんだ」
エクスキューショナー+の目は獰猛な獣そのものだった。
α「皆、ちょっと遠回りしてくれ。オレはこいつの相手をする」
翔達が別方向へと駆けていき、エクスキューショナー同士は向かい合う。
α「オレさぁ、正直1回やってみたかったんだよなぁ・・・本社仕様のオレと、ロシア仕様のオレとで・・・どっちが強いかってなぁ!」
開幕から+は衝撃波を飛ばし、αは横へのステップで回避すると+へと向かっていき、水平に刀を振る。それを+は飛び退いて回避すると叩きつけるように剣を振り下ろし、αはすり抜けるように回避する。
本社仕様のαは屋内や狭所での戦闘や素早い制圧が重視されており、逆に海外仕様の+はパワーを重視している。そのため本体のパワーや衝撃波の威力は海外仕様の方が優れている。
しかし、機動力では本社仕様の方が優れている。
そしてこの橋は幅の広い橋であり、障害物は木箱のみ。そして壁や天井も無い。そのため地形自体は+の方が有利である。しかし・・・
+「がぁっ!」
戦いの場数で言えば、最初に開発されたハイエンドモデルである本社仕様の方が圧倒的に多く、衝撃波や太刀筋を見切ると共にすり抜けるように接近し、無駄な動きの無いαの方が押していた。
その証拠に、+の左腕は肘から斬り落とされて宙を舞っていた。
α(動きは速いし、パワーもなんか強化されてるようだな・・・だが、ドレイクのドリルに比べりゃあ動きは単調だ)
袈裟に振り下ろされた+の斬撃を体の回転を使って回避したαは、そのまま太刀を鞘に納め、居合の構えに入る。
αのメンタルは非常に静かであり、美しさすら感じられる程だった。
月明かりに、血は迸った──
鉄血の司令部の近くに翔達がやって来た事を聞いたウロボロスは天を仰いだ。
「なんなのだろうな、この気持ちは・・・ん?」
ロシア支部のエージェントからの通信要請が入り、ウロボロスは応答する。
「私だエージェント殿」
《ウロボロス、あなたの司令部付近でで戦闘が起きているようですが、報告が遅れていましたよ》
ウロボロスはヨルムンガンドに気を取られ、報告を忘れていたのだ。
「申し訳ありません、グリフィンとは別の第3勢力による攻撃を受け、報告が遅れてしまいました」
モニターに表示されているエージェントの表情は冷たかった。
《こちらの方に大まかな情報は入ってきています。404小隊にハンターを撃破されただけでなく、ジャミング装置まで破壊され・・・そして今来た情報では、エクスキューショナーまで撃破されたそうですね》
ウロボロスは歯軋りする。
《ジャミング装置は傘計画を実行するための重要な道具だったのに、ハンターとエクスキューショナーを再起動させて投入しておきながら、第3勢力の介入があったにせよこの有り様とは・・・》
「申し訳ありません、私がハンターとエクスキューショナーのAIの不安定さを考慮し切れなかったためでございます。しかし、確認のための部隊を送ってあります」
エージェントの表情は冷たいままである。
《今更何を確認するというのです?ただちに撤退し、詳しい報告を聞かせなさい》
通信の後、ウロボロスは全部隊を総動員させた。
「この地区の全ての鉄血兵よ、このウロボロスに従え。404小隊の捜索範囲を拡大し、効率を最大まで引き上げろ。生存者は残らず殲滅しろ!第3勢力の奴らは・・・私が自らやる」
翔達が鉄血司令部へと辿り着くと、ウロボロスが待ち構えていた。ウロボロスの左右にはミサイル型の浮遊砲台があるが、その発射口は開いていない。
「ヨルムンガンド、なぜお前が生きている?」
ウロボロスには面識があるものの、ヨルムンガンドには無いためヨルムンガンドは首を傾げる。
「残念ながら、本社にいた私はお前とは会ったことはない・・・が、もしかしてロシア支部にある予備のメンタルと会ったのか?」
ウロボロスの中で、辻褄が合う。
「・・・なるほど、そういうことか。私はウロボロス、AIによる蠱毒を生き残ったハイエンドモデルだ。その蠱毒の中にはヨルムンガンド、お前もいた。巡りめぐってこうして再び合間見えたが・・・今度こそ、お前を越える」
ヨルムンガンドも、自分の中で合点がいった様子である。
「なるほど、そういうことか・・・皆、下がってくれ。ウロボロスとはタイマン張らなきゃいけなくなったからな」
翔達は頷き、何も言わずに下がっていく。
推奨BGM『Black out』
ウロボロスの浮遊砲台は発射口を開き、ヨルムンガンドは蛇腹剣を肩に担ぐ。
ヨルムンガンドが蛇腹剣を鞭形態にして突撃し、ウロボロスはミサイルを発射する。
ヨルムンガンドは蛇腹剣を横に薙ぎ払い、ミサイルを破壊する。そしてそのまま回転して遠心力で速度を上げる。ウロボロスは後方に引きつつミサイルを正面と上方に撃ち、2方向からの攻撃を行う。
するとヨルムンガンドは右腰に下げていた左右2連のSGを抜き、上方のミサイルに向かって射撃し、数発のミサイルを迎撃する。そしてウロボロスに接近すると、蛇腹剣を鉈形態にして斬りかかる。
ウロボロスは浮遊砲台で蛇腹剣を防ぎ、ヨルムンガンドの腹部に拳を撃ち込み、ヨルムンガンドは怯んだもののもう1つの浮遊砲台の開いた発射口に散弾を撃ち込み、浮遊砲台を1つ破壊する。
そしてリロードするタイミングの無いSGをヨルムンガンドは投げ捨てる。
「やるではないか!」
「お前こそな!」
ウロボロスは接近して格闘を、そこから引いてミサイル攻撃を切り替えて戦い、射撃武装を失ったヨルムンガンドは蛇腹剣と格闘を交えた攻撃を続ける。
ヨルムンガンドの蛇腹剣は少し離れた程度では届くリーチがあるため、ウロボロスは迂闊な距離を取らないよう細心の注意を払いながら攻撃を続ける。
しかし、突然ヨルムンガンドは鉈形態の蛇腹剣を地面に引っ掛ける。
ミスをしたのか?ウロボロスがそう思った瞬間、ヨルムンガンドは土をウロボロスの顔に向けて飛ばす。反射的にウロボロスはミサイルを発射すると同時に手で顔を覆う。
(しまった・・・!)
ヨルムンガンドはその隙にSGを拾って1発だけ散弾を装填し、こちらへ向いた浮遊砲台の発射口に散弾を撃ち込んで破壊する。そしてウロボロスに接近するが、ウロボロスは蛇腹剣を持った右手の間接に拳を撃ち込み、蛇腹剣を落とさせる。
「痛ってぇなぁ!」
そこから2人は殴り合いとなり、司令部の近くに404小隊は到達していた・・・
読んでくださり、ありがとうございます!
エクスキューショナー同士の戦闘やウロボロスとヨルムンガンドの戦闘でしたが、どうだったでしょうか?
感想や高評価、お待ちしています。
●ヘリアントス
黒いお下げの髪に黒縁のメガネを右目だけにかけている女性。
真面目で堅い性格であるが、以外にも寛容であり無茶な命令は下さない(極めて重要な作戦であれば別)。
銀治の直接的な上司であり、銀治が指揮することができない時は代わりに指揮をしたり、銀治を気にかけたりしている。
ちなみに合コンはいつも失敗しており、それを指摘されると露骨に慌てる。
●404小隊
非正規の戦術人形で構成された秘密小隊。
特定の組織には属さず、傭兵のような立ち位置となっているがその存在は隠されている。
そのためグリフィンでも極一部の人間しか知らず、戦術人形の間では都市伝説として扱われている。
●HK416
銀のロングヘアに黒いベレー帽を被り、黒と紫の服を着ているIOP製の戦術人形。種別はAR。
冷静かつ冷淡だが、完璧主義かつ自意識過剰な面もある。
しかし404小隊の仲間の事は常に信頼しており、根は優しい。
また、AR小隊の事はライバル視しており、特にM16に対しては敵対視している。