無粋な者には退場してもらう他あるまい。
ウロボロスの拳をヨルムンガンドは額で受け止め、ヨルムンガンドはウロボロスにアッパーを決める。続けてヨルムンガンドはウロボロスに蹴りを入れるが、ウロボロスはヨルムンガンドの足を掴んで投げ飛ばす。
2人の格闘戦が続く中、翔達の元にエクスキューショナーが到着する。
「何やってんだ?」
事の経緯を翔が説明する。
「なるほど、そういうことか。んじゃ待とう」
ヨルムンガンドはウロボロスの耳を掴んで頭突きをし、ウロボロスはヨルムンガンドの左膝を殴り、よろけたところにアッパーを決める。
しかしヨルムンガンドは上から拳を叩きつける。
そして・・・ヨルムンガンドとウロボロスは同時に互いの顔面を殴り、互いに仰向けに倒れた。
「あー、疲れた・・・」
「引き分け、とはな・・・」
2人は満身創痍であり、しばらくは動くことはできなさそうだった。
「ヨルムンガンド・・・」
「なんだ?」
その時、周囲を確認していたM200が404小隊の姿を確認し、翔に報告する。
「そうか・・・ようやく、私は答えを得たよ」
「へぇ、なんだ?」
"答えを得たよ"。その言葉に、翔は急な頭痛がする。
「重要ではなかったんだ・・・勝ちも負けも、重要ではなかったんだ」
ウロボロスの声は、会った時より柔らかだった。
「大事なのは・・・何のために戦って、何のために負けたかだ」
その言葉に、翔は再び頭痛がする。まるで、記憶の扉が内側から叩かれているかのように。
「あの時お主が負けたのは、私にお主の分まで生きてもらうため・・・」
ウロボロスと戦い、互いに倒れているのはウロボロスがAI空間で戦ったヨルムンガンドではない。しかし、それでも言わなければならない、ウロボロスはそんな気がしていた。
「今回私が戦ったのは、お主を失望させていないと・・・知らしめるためだ」
「お前がAIの蠱毒で戦ったのが本当に私なら・・・間違いなく、失望はしていない。それどころか、見上げているだろうさ」
ウロボロスは、初めて笑った。
翔がヨルムンガンドを起こし、ジェリコがウロボロスを起こす。
2人とも肩を貸さないと動けない程であり、M200とジェリコは周囲を警戒する。
「すまないな・・・抵抗はしないが、1つやるべき事がある。司令室まで連れていってくれないか?」
翔は無言で頷き、司令室まで連れていく。そこでウロボロスはロシア支部のエージェントと通信を繋ぐ。
《撤退した様子が無いと思えば、この様はなんです?》
本社とは違い、冷淡な表情のエージェントに翔やエクスキューショナー、ヨルムンガンドは違和感を感じている。
「いくつか伝えておかなければならない事があってな」
《なんです?》
「1つは・・・数々の命令違反、誠に申し訳ありません」
ウロボロスは頭だけ下げ、謝罪の意を伝える。
「そしてもう1つ・・・私はもうお前の命令には従わん」
《裏切るつもりですか?》
ウロボロスは首を横に振る。
「鉄血を裏切るつもりは無い。だが、本社からの命には従おう・・・」
《本社?》
そして、翔が口を開く。
「初めまして、ロシア支部のエージェントさん。僕は翔・ニールセン、鉄血工造本社から派遣された部隊フォーミュラの指揮官です」
本社がまだ生きていた。そしてそこから送られてきた指揮官であることに、エージェントは内心驚愕していた。
《・・・本社の指揮官が、何の用です?》
「本社からは、直ちに人間への攻撃を中止するよう通告が来ています・・・が、そっちもそっちで、理由があると判断しています。なので、後日そちらへ直接会いに行きます。もちろん、エリザにも」
エージェントは「無理な相談ですね」と言い残し、通信を切った。
「これで良かったの?」
翔はウロボロスに問いかけるが、ウロボロスは清々しい表情になっていた。
「ああ・・・」
翔は頷き、帰還しようとする。しかし翔はレーダーに4人分の人形の反応を検知していた。
「そこにいるんだよね?どこの所属かは判らないけれど・・・」
「あら、気づいてたの?」
扉を開けて現れた404小隊。互いに銃口を向け合うが、ヨルムンガンドとウロボロスは動けず、ジェリコと翔が2人を担いでいるため戦力比で言えば翔達は不利である。
「私はウロボロスに用があるから、大人しく渡してくれるとありがたいんだけど」
「ごめんだけど、それはできないんだよ・・・決闘の後だから、余計に渡せない」
翔とジェリコは2人を下ろし、銃を構える。
「綺麗事言ってないで、さっさと渡してください」
416は銃口を翔の頭部に合わせるが、翔は動じない。すると、翔はポロリと手に持っていたARを落とす。そしてほんの一瞬だけ416の意識がARに向いたその隙を狙い、翔は416に接近してARを弾き飛ばし、ホルスターからHGを抜いてナインの右腕に掠らせるように射撃する。
そして416のARをキャッチし、45とG11へと銃口を向ける。更にそれと共にエクスキューショナーは45へ接近していた。
「これ以上はやりたくない」
「仕方ないわね・・・1つ聞かせて。あなた何者?」
翔は416にARを差し出しながら答える。
「鉄血工造本社から派遣された部隊、フォーミュラの指揮官だよ」
「随分な指揮官もいるものね・・・」
404小隊は闇に紛れるように去っていき、翔達も撤退していった。
翌日、フォーミュラに新たな鉄血のハイエンドモデルが入隊することとなった。
「改めて、私はウロボロスだ。このような機会をもらえたことに感謝する。これから精進していく」
ヘリアンには傘計画に関する情報を送り、ロイラからは現地採用という形でウロボロスは入隊した。拠点は未だに工場であり、S06地区の鉄血司令部は暴走した鉄血が建築したこともあり、グリフィンに管理を任せていた。
歓迎会の後、翔は星空を眺めていた。
「母さん、父さん、パル姉、皆・・・あの後、僕がどうなったかはまだ思い出せないけれど、思い出してみせるよ」
翔の脳裏に、新たに思い出した記憶が浮かぶ。
空に浮かぶ、閃光のような白い人型兵器。翔は搭乗している人型兵器を駆り、その白い機体に向かって右手に装備した銃を連射しながら飛ぶ。
そして、白い機体の獣の牙のような青い複眼が閉じられ・・・
緑色の爆発が起こる。
「あの白い機体、僕が記憶を取り戻したらなんなのか思い出せるのかな?」
人形を違法売買している組織の本部にて、爆発が起こる。
「チクショウ!逃げろ、逃げろぉぉぉ!」
組織の構成員達は我先にと逃げているが、MGの連射により薙ぎ払われる。
両腕に装備しているMGを連射しているのは、ジェノの仲間であるフォートレスだった。
銀髪のツインテールに黒いボディースーツと白い装甲を身に付けており、腰には黒い長方形のシールドをサブアームで動かしている。
そして背部には2つの単装砲があり、施設を砲撃で構成員ごと破壊していく。
構成員がARで応戦しても、シールドを使うまでもなく弾丸が接近した時点で赤い粒子がバリアのように発動し、防がれる。
5分程で構成員達は全滅し、フォートレスに依頼を出した組織が違法売買されそうになっていた人形達を保護していく。
人形の1人が振り向くと、登っていく朝日に向かって飛び去っていくフォートレスの姿があった。
読んでくださり、ありがとうございます!
ウロボロスとヨルムンガンドの決着がつき、ウロボロスが仲間になりましたが、どうだったでしょうか?
感想や高評価、お待ちしています!
●UMP9
茶髪のツインテールで、白いシャツの上に黒いジャケットを羽織っているIOP製の戦術人形。種別はSMG。
通称ナインと呼ばれる彼女は、明るく笑顔を絶やさず、404小隊ではムードメーカーである。
404小隊の仲間を家族とし、45を姉と慕っており彼女のやり方に従っている。
右目に縦1本の傷があるが、なぜかそこだけ修復しようとはしていない。
●UMP45
茶髪のサイドテール(左)の髪に左目に縦の1本傷があり、服装はナインとほぼ同じだが、黄色の部分がナインより多い。
404小隊の隊長であり、非常に合理的かつ感情に左右されない冷徹さを持っている。
しかし戦闘能力はそこまで高くなく、小隊の頭脳担当となっている。
左目に縦1本の傷があるが、ナイン同様消すつもりは無いようである。
また、404小隊が結成される前は戦闘能力は皆無に等しかったが、とある出来事により克服したそうである。