その時は逃げろ、守るものがあるなら時間を稼げ。
荒廃した土地でAR-15をM4達は追っており、417も合流してAR-15のいる場所へ駆ける。そして鉄血の拠点を見つけたものの、そこには2人のアルケミストが待ち構えていた。
AR-15は既に拠点の内部で戦闘を行っているようだが、M4達は足止めを受けてしまう。
「どきなさい!」
アルケミストの片方は417が受け持ち、以前より洗練された動きでアルケミストを撃破して先へ進む。
AR-15は拠点各所に爆弾を仕掛けた後、拠点の最奥にいたエリザに銃口を向ける。
「ここにいる私は単なるダミー。破壊しても無駄」
AR-15には、それが判っていてもなお銃口を向け、トリガーにかける力を強める。
そこに別のアルケミストも現れ、ヴェスピド達も現れてAR-15を包囲する。しかし次の瞬間、ビー玉が転がるような音と共に招かれざる客が現れる。
「あら?随分集まってますね~」
青い長髪、紺色に赤いラインの入ったボディースーツを着たコーカサス社ハイエンドモデル、マジシャンが木箱の上に座っていた。
「『エルダーブレイン』、即ちエリザの戦闘力を測れとの命でしたが、肝心のエリザが非武装なのは想定外でしたね」
アルケミストが発砲するが、マジシャンは僅かに体を反らして回避する。
「貴様、何者だ?」
「私はコーカサス社ハイエンドモデル、マジシャンです。以後、お見知りおきを」
マジシャンは優雅にお辞儀をし、そこに417が合流する。そしてマジシャンは懐からマグナムを取り出し、エリザに向けて発砲する。アルケミストがエリザを抱えて回避し、ヴェスピド達がマジシャンに向けて一斉に射撃する。
しかし、マジシャンは体に穴が開いているものの笑みを浮かべて立っていた。
「クックックッ、私に銃が効くとでも?」
突然、ヴェスピド達があらゆる方向から何かに撃ち抜かれて撃破されていく。
「なんなの、あれ・・・!?」
マジシャンの周囲には小さな銀色の球体が浮かんでおり、マジシャンは腰に手を当てて余裕そうにしている。そして球体はマジシャンの穴に向かって飛んでいき、マジシャンの穴が塞がる。
「なんだと!?」
417やAR-15だけでなく、アルケミストやエリザも驚愕の表情を浮かべている。するとマジシャンの足が大量の球体となり、ふわりと床に降りて再び足を形成する。
「では皆様、死んでください」
マジシャンはマグナムを撃ってくるが、AR-15達は回避する。
「おいアルケミスト!お前も手伝え!こいつは倒してからじゃないと逃げきれない!」
アルケミストも戦力の事を考え、舌打ちで答える。アルケミストと417はほぼ同時に遮蔽物から飛び出て射撃していく。AR-15も遮蔽物から射撃していく。
しかしどれだけ弾を撃ち込んでも、マジシャンに傷1つつけることはできず、霧散するように散る小さな球体で構成された体により弾を当てることができない。
どれだけ連射しても、どれだけ精密な射撃でも、どれだけ斬りかかっても・・・マジシャンには掠りもしない。
しかし集まると球体の塊ではなく人の形となるため、いくつの球体が集まっているかなど予想することは困難である。そしてマジシャンの全身が球体となって散ると、エリザのいた方向から物音が聞こえる。
見ると、エリザの体が複数の球体によって貫かれ、エリザは機能停止していた。
「・・・貴様ぁぁぁぁぁ!」
そこにいたエリザは単なるダミーである。しかしそれでもアルケミストは再び体を形成したマジシャンに突撃し、ブレードと一体化した銃で斬りかかる。
「残念でしたね」
アルケミストが接近したところで、マジシャンは左手の人差し指から球体を飛ばし、アルケミストの額を貫いた。しかしそのアルケミストを盾にするように417は接近して射撃した。
「危ないですね~」
マジシャンは全身を球体とし、417の全身を次々と貫いていく。まるで踊るかのように貫かれ続ける417は人工血液とパーツを撒き散らす。
「私は、まだ・・・死ねなっ」
417の眉間の少し下を1つの球体が貫き、417は仰向けに倒れる。
「417・・・!?」
417はピクリとも動かず、マジシャンは再び体を形成する。
「ふむ、やはりIOPの人形の弱点は人間で言う脳幹に位置するコアですか」
AR-15は持っていた起爆装置を押そうとするが、マジシャンに右手を貫かれ、起爆装置を落としてしまう。
「おやおや、なにやら物騒なものを持っていますね・・・しかし、そこまでして守りたいものは何です?」
AR-15は歯軋りをし、強がりでも銃口を向ける。そして銃を投げ捨てると同時に起爆装置へと飛び付く。体を球体に貫かれようとも起爆装置を掴み、今度こそスイッチを押す。
「やれやれ、想いと言うのは厄介なものですね」
ビルはM4達の目の前で爆破され、ビルは崩れ落ちる。
「AR・・・15・・・?」
M4は瓦礫に向かって駆け出そうとするが、M16に止められる。
「待て!ここに大量の鉄血が集まってきてる!」
「離して!AR-15が!それに、417も!」
SOPは歯軋りをし、M4に抱きいて顔を埋める。
「M4・・・もう、行かなきゃ・・・」
「SOP・・・」
SOPはM4の手を引いて撤退ポイントに向けて駆け出す。流れる涙を、見せないようにしながら・・・
その様子をドローンで見ていた銀治は、カリーナに席を外させると慟哭する。部屋の外にいるカリーナにも聞こえるほど大きな声で。
その後の報告では、そこで何者かと交戦したらしく417はコアを正確に破壊されており、バックアップがあったため作戦前の記憶の417が復元されたものの、"あの時の417はいない"という喪失感が残された。
そしてAR-15は遺体を発見できず、コアを正確に破壊した犯人も見つからなかった。
また、傘ウイルスに感染した疑いのあるAR小隊とAR小隊と共に行動していたXM8とナガンはS05地区の拠点に移送されることとなった。
銀治の要望はできるだけ受け入れられ、銀治や他の戦術人形も共にS05地区へ移動することができた。しかしAR小隊とXM8とナガンは隔離される事となり、接触できるのは人間である銀治やカリーナだけとなっていた。
そして、用意された部屋の中でM4は呟く。
「許さない・・・鉄血め、絶対に・・・許さない!」
コーカサス社、本社基地にてマジシャンは新たに覚えたマジックをホープにお披露目していた。
「どうです?」
「なかなか良いですね・・・で、先日の収穫は?」
マジシャンは鳩を球体でマッサージしつつ、収穫の有無を伝える。
「無いも同然でしたね。けれど、ビルに爆弾を仕掛けて自らと共に敵を葬ろうとするとは・・・あのタイミング、私でなければ逃げきれませんでしたよ」
「なるほど・・・では、社長より新たな任務があなたに届いています。確認を」
マジシャンはホープから1枚の紙を渡される。そこにはタイプライターで打たれた文字が並んでおり、マジシャンは任務の内容に目を丸くする。
「ほうほう、私とジャッジメントを組ませての依頼とは・・・随分久しぶりですねぇ」
マジシャンは意気揚々と部屋を立ち去ろうとすると、ホープに止められる。
「1つだけ、忠告しておきます。あなたのスペックは素晴らしいものですが、それだけに頼りきらないよう、気をつけてください」
マジシャンはサムズアップして立ち去った。
読んでくださり、ありがとうございます!
今回はマジシャンのスペックを描いたと共に、417が撃破されてしまいましたが、どうだったでしょうか?
感想や高評価、お待ちしています!
●G11
銀のボサボサのロングヘアに灰色に近い黒のベレー帽を被っており、白いシャツの上に黒緑のジャケットを羽織り、黒いマフラーを巻いている、IOP製の戦術人形。種別はAR。
基本的に怠けており、惰眠を貪ることがほとんどである。しかし他人に笑われようが無視に徹している。
404小隊では狙撃担当となっており、普段は怠けて416に頼っているが、戦闘の際は苛烈と言える戦い方をしている。
ちなみに元々は家庭用人形であり、思いがけない事態に遭遇するとメンタルをやられ、家庭用人形だった頃の人格が出てしまうことがある。