鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 何を目的として何を造るか?
 結果の過程には、本物になれなかった者達が転がっているだろう。




第30話 本物になれなかった者・前編

 ロシアの正規軍に呼ばれた翔とM200、ジェリコの3人。

 

 鉄血工造の本社が生きており、本社の人形は暴走していないということは正規軍も知っているのだが、直接聞ける機会を逃してしまっていた。

 

 しかしようやく直接聞ける機会が得られたため、翔達が呼ばれたのだ・・・が、鉄血の戦術人形には本社製であっても不信感を持つ者も少なくない。そのためIOPの戦術人形であるM200とジェリコのみ、同行を許可されていた。

 

「ご足労、感謝する」

 

 翔達から現状を聞く相手は正規軍の将軍『カーター』であった。白髪の短髪で、ある程度歳を取っているようだが体は軍人らしくしっかりとしていた。

 そしてその側で付き従っているのは『エゴール』大尉である。

 

「では早速、詳細を話してくれるか」

 

 翔がこれまでの経緯を話すと、エゴールは少し肩の荷が降りたような様子で次の話に移った。

 

「聞かせてくれて感謝する、では次の話と行こう。今後の対鉄血、いや対暴走鉄血での強力体制だが・・・」

 

 そこまで話したところで、緊急の通信が入る。

 

「どうした?・・・・・何!?こんな時に!」

 

「どうしました?」

 

 どうやら、今いる地区に向かって大量の人形が押し寄せているという報告が入ったようで、この地区には民間の施設や正規軍の家族が住む施設もあるため、迎撃しなければならないようだった。

 

 エゴールは隊を率いて迎撃に向かったが、翔達も向かおうとする。しかしそれをカーターに止められる。

 

「お前達も行くつもりか?残念だが、ここはエゴール達に任せてもらおう。仮にも鉄血に助けられたとあれば、部下や他の面々に示しがつかない」

 

 しかし翔は首を横に振る。

 

「僕達は行きます。他者への示しより命の方が大切ですし、それに数は多い方が良いです」

 

 翔達はカーターに一礼すると駆けていき、装備のある軍用車の荷台を開ける。

 

「はぁ・・・エゴール、そっちにニールセン達が参戦するそうだ」

 

《・・・了解しました》

 

 

 

 

 翔達が装備を整えて行こうとすると、ブロンドの長髪の白衣を着た女性に止められる。そして、その女性の隣には銀のロングヘアで赤いラインの入った黒い戦闘服を着た女性が立っており、その女性はARを持っていた。

 

「あなた達、連中の迎撃に参加するのか?」

 

「はい、そうですけど・・・」

 

 ブロンドの髪の女性は銀髪の女性をチラリと見た。銀髪の女性は目を瞑ったままで微笑んでいた。

 

「紹介が遅れた。私は『ショー』、国家保安局の開発主任だ。単刀直入に言おう、こいつを連れていけ」

 

 隣にいた銀髪の女性は手をヒラヒラさせながら名乗る。

 

「私は『AK-12』・・・の、プロトタイプよ。正規品はもうとっくに運用されてるけど、プロトタイプである私がどこまでやれるかの戦闘データは、こんな状況でのものは無かったの」

 

「ということで、あなた達に頼みたい。既に上に報告はしてある、楽に行け」

 

 翔は戦力が増えるならと了承し、4人は現場に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エゴールは部下と共に大量の人形を木々の中から迎撃していた。人形達は全て民間用のモデルであり、手には鉄パイプや包丁、レンガなどを持つか素手であるが、被弾を恐れず向かってきている。

 

 更に、人形達にはどこかしら黒色のまち針のようなものが刺さっているため、ハッキングされたものだとエゴールは判断する。

 

「人形共め・・・」

 

 更に人形達の後方から砲撃が行われ、エゴールは吹き飛ばされる。しかし突然別方向からの発砲があり、人形達の数は減っていく。

 エゴールが顔を上げると、翔達がエゴール達を援護していた。

 

「まだやれる?」

 

 翔はエゴールに手を差し出した。

 

 

 

 エゴールは人形に対して良い感情は持っていなかった。

 むしろ嫌ってすらいた。

 

 そして、その人形を従える指揮官も。

 

 だが目の前にいる男はなんだ?

 

 ここに来るまでに既に交戦したのだろう、右頬に掠り傷がある。

 

 屈託が無く、眩しい程の笑顔で手を差し出している。

 

 

 

 エゴールは、翔の手を取った。

 

 

 

 するとエゴールは心の中で、1歩踏み出せた気がした。

 

 

 

 翔達が参戦し、人形達は数を減らしていく。しかしエゴールは人形達を操っている何者かがいると推測する。

 

「ニールセン、お前達は迂回して奴らの後方を叩け。この数と動きは指揮している者がいる可能性が高い」

 

 翔がエゴールを見ると、エゴールは笑ってみせた。

 

「ここは俺達正規軍任せろ。それに、後方まで素早く行けるのはお前達だ」

 

「・・・了解!」

 

 翔達は後方まで迂回していき、それを見たエゴールは部下達を激励する。

 

「お前達!鉄血本社の部隊が敵の後方へ向かった!我々は我々の持ち場を守り、敵の人形を1体も通すな!人形に遅れを取るな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エゴールの推測通り、人形達の後方には人形達を操るハイエンドモデルがいた。

 

「あれぇ~?な~んか押しきれてないなぁ~」

 

 黒い短髪に黒いワンピース着ており、背中にはカラスのような黒い翼があり、左手に『ニードルガン』を持っている。そのハイエンドモデルの名は『デビル』で、大柄な人形の肩に腰かけている。

 

 右手の甲にコーカサス社のエンブレムがあることから、コーカサス社のハイエンドモデルであることが判る。

 

 金色の瞳で周囲を見渡していると翔の姿を僅かに確認し、人形から降りると翔達の方向にも人形を向かわせる。

 しかし翔の単装砲でその人形達は一掃され、翔とAK-12pがその穴から突撃し、ジェリコはM200を援護しM200は狙撃していく。

 

「もぉ~めんどくさいなぁ~」

 

 デビルはAK-12pへとニードルガンで射撃するが、AK-12pは回避してデビルを守っている人形に弾丸を撃ち込む。

 翔は黒いまち針に違和感を感じる。

 

「皆、あの針に注意して!」

 

 デビルは人形達を盾にしながら後退していくが、民間用かつ銃を持たない人形は翔達にとって敵ではなかった。それも、戦力の大半を正規軍へ向けているなら尚更だった。

 

「AK-12、頼んだ!」

 

 翔はブースターを使って飛び上がり、小型ミサイルでデビルの周囲の人形を撃破すると、小型チェーンソーでデビルに斬りかかる。デビルは左腕を失うも、正規軍へ向かわせていた人形の一部を呼び戻す。

 

「ほんっとうにめんどくさいなぁ~、でも私を倒しても終わらないよ?」

 

 デビルはその場で自爆するが、黒いまち針を刺された人形達は止まらずに翔達へ殺到する。

 その数は翔のレーダーを赤く染める程に多く、翔達の処理能力を大きく上回っていた。

 

 単装砲を撃ち込もうと、小型ミサイルを撃ち込もうと、ARを連射しようと、狙撃しようと、押されていく。

 

 しかし突然、空に3機のヘリが現れる。そこには正方形の箱のようなものが下部に接続されており、ヘリには『メテオライト』と書かれた隕石のエンブレムが貼られていた。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 戦闘のヘリから投下されたのは、頭部が灰色の薄い長方形の形で灰色の装甲と紫色のボディースーツを纏い、右腕に2連装のパイルバンカー、左腕にボックスマガジンの付いたパイルバンカー、右背部にHGを特殊な器具でマウントし、左背部は高周波ブレードをマウントしていた。

 

 その人形は恐らくハイエンドモデルであると翔は推測する。その証拠に、左右のヘリからはノーマルモデルと思われる人形が計6人投下される。

 

 新たに投下されたのは、頭部が赤い目をした黒い球体となっており、黒い胴体と足は見た目は簡素なもののしっかりと装甲は付いており、両腕はガトリングとなっている。

 

 するとヘリが暗号通信を行っているようだが、なぜか翔には自動で解読されて聞こえる。

 

《『カプリコルヌス』、目標を殲滅しろ》

 

「グルァ?ガァァァァァッ!」

 

 カプリコルヌスと呼ばれたハイエンドモデルは獣のような雄叫びを上げながら突撃してきた。その声は他の戦術人形と違って明らかに男性であるが、雄叫びは狂気すら感じるほどだった。

 

 

 

 カプリコルヌスは左腕を振り上げ、翔に接近する。翔が飛び退いて回避すると、地面に撃ち込まれた杭は爆発を起こす。カプリコルヌスの左腕に装備されているパイルバンカーは使用回数が決められているらしく、次の杭がリロードされる。

 

 AK-12p達はノーマルモデルと民間人形を相手にしているが、次第に傷が増えていく。カプリコルヌス達を投入してきた戦力とコーカサス社は協力関係にあるらしく、民間人形がカプリコルヌス達を攻撃する様子は無い。

 

 狙撃に徹していたM200達の所にも民間人形達が押し寄せ、危険な状態になる。

 

「翔さん!こっちのことは気にしないでください!」

 

 翔はカプリコルヌスの武装や関節を狙おうとするも、カプリコルヌスとノーマルモデルの連携が上手く、中々狙えない。

 

(なんだ、この動き!?)

 

 カプリコルヌスはこれまでの戦術人形達とは違い、変則的かつ洗練された動きだった。

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 いつもより少し長くなってしまいましたがどうだったでしょうか?
 感想や高評価、お待ちしています!

●カーター
 白髪の短髪で、正規軍士官の制服である濃い緑のコートを着ている。

 基本的に腹の内を明かさず、冷酷とも取れる指示を行動を取ることもある。

 ロシア正規軍の将軍であり、かつてはクルーガーと共に戦っていた事もある。しかしとある事件により、輝いていた目は濁ってしまっている。

●ショー
 ブロンドの長髪で白衣を着ている。

 厳しめな性格であり、AR小隊の戦術人形を造った開発者とは顔馴染みであるが、自由を求める彼女とは違い、性能を求めて戦術人形を開発している。

 AK-12pに対しては、テスト目的で様々な兵装を使わせたり小規模な作戦に単独で出撃させたりしている。
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