しかし、空は無かった。
なんとか生還した翔達とエゴール達。
エゴールは翔を見るや否や駆け寄り、安否を確かめる。
「無事で・・・良かった。感謝する」
エゴールの顔は始めて会った時より柔らかくなっており、翔もエゴール達が生きていたことに安堵する。
一方、AK-12pの状態を見たショーは唖然としていた。
「動力部が破壊されているのに、生きているだと!?しかもなんだこの赤い粒子は?」
「いや~これは・・・そ、それより話したいことがあるんだけど」
ショーは「今度は何だ」と思いつつ聞いてみる。すると・・・
「突然だけど、私今からフォーミュラに移籍しようと思うの」
ショーは固まり、近くにいたため聞こえていた翔は思わず二度見する。
「待て待て、一体どういうことだ?翔・ニールセンに何かされたか?」
「ぼ、僕は何もしてないよ!」
この状況にエゴールも訳が解らなくなっている。M200とジェリコは顔を見合わせて目をパチクリさせている。
「翔は何もしてないわ・・・いえ、助けてはくれたわね。でもフォーミュラに行きたい理由は別・・・ちょっと、広い世界を見てみたくなったのと、このままテスト個体として燻ってるより、もっと色々やってみたくなったの」
ショーは眉間を揉みながら答える。
「・・・今晩考えさせろ」
その夜、翔は正規軍基地の屋上で星空を眺めていた。
「なんか、今日だけで色々あったなぁ・・・それに、なんで僕『強化人間』になってるんだろう?まだ思い出せてない記憶の中にあるのかな?」
すると、レーダーに接近してくる生体反応を検知する。屋上にやって来たのはエゴールだった。
「改めて、礼を言わせてくれ・・・ありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございます。あの時、エゴールさんが言ってくれなかったら負けてたかもしれませんし」
相変わらず、翔は優しい笑顔で答える。
「・・・1つ、聞きたいことがある。なぜニールセンは人形と信頼し合えているのだ?」
翔は空を見上げてから答える。
「それはね、僕が機械に育てられたからだよ」
エゴールの頭に?マークが浮かぶ。機械に育てられた、というのはエゴールにとっては想像したこともなかった事だからだ。
推奨BGM『Intro』(ACfaより)
「僕は元々、捨て子だったんだ。けどそれをとあるAIが拾って、地下に造られた巨大な施設で育ててくれたんだ」
巨大な施設『レイヤード』・・・そこで翔は育てられ、傭兵である父親に憧れて自分も傭兵となった。
そのレイヤードで育った翔には、"空"が何なのか当時はよく解らなかった。
閉ざされた世界・・・そこに、空は無かった。
空の無い世界で傭兵として兵器を駆り、様々な依頼を遂行していった。
「僕を育ててくれたのは、人形みたいに人の形と感情を持ったAIって知ったのは結構後だったけどね。でも、それでも僕は信じてみたんだよ」
他人だったら・・・全てが作り物であり、自分を強くするために育てるための演技であることに絶望していただろう。しかし翔は信じて手を伸ばしたのだ。
エゴールは俯いた。
自分だったら、おそらく絶望していただろう。憎みさえしただろう。しかし翔は信じ続けていた。
それは翔が愚者だからではなく、エゴールも愚者ではなかった。
だが・・・
(私は・・・心が無いからと、人形と人形を扱う者を蔑んでいた。しかしなんだ?ニールセンの場合は、私やそこら辺の者よりも絶望するような事じゃないか!)
翔は手を伸ばしていた、ただひたすらに。
けれど、翔はその話を"良い思い出"として語っていた。騙されていたことも、手を伸ばした事も、解り合えたことも。
「だから僕はAIや人形を信じてるんだよ。大丈夫、エゴールさんも色々あっただろうけど、"大丈夫"だよ」
翔はエゴールに手を差しのべる。エゴールは、始めて手を掴んだ時より優しく、だが力強く握手をした。
その頃、ショーの部屋でショーとAK-12pは向かい合って座っていた。
「まったく、配属されるはずだった場所が『反逆小隊』だったとはいえ、こんな形で反逆してくるとはな・・・」
ショーは呆れながらコーヒーを飲み、AK-12pは微笑んでいる。
「別に良いじゃない、私は私で決めたことだし」
「お前な・・・」
ショーはため息をついた後、AK-12pに気になっていることを質問する。
「お前の新たな動力となり、深度演算を行った際の負荷まで消してみせたあの赤い粒子、あれはなんなんだ?」
AK-12pは少し考える仕草をしてから答えた。
「正式名称が何なのか知らないし、詳細だって知らないわ。ただ私は1度死に、あの粒子によって復活した・・・こっちの記憶と一緒にね」
AK-12pは自身の銃を持ち上げた。
「銃の記憶・・・何を言っている?メンタルがイカれたか」
「検査の時に何も異常が無かったのはあなたが1番良く解ってると思うけど」
ショーはよほど信じられない様子で天井を仰ぎ見る。
「私にだって、何でかは解らない。けど銃の記憶がメンタルに流れ込んできて、そして"あの子"を守らなければならないってなったの」
「あの子とは、翔・ニールセンの事か?」
AK-12pは静かに頷く。
翌朝──
翔達が帰る時、エゴール達は翔達に向かって敬礼し、AK-12pは翔達と共に軍用車に乗り、共に帰還することとなった。
「改めて自己紹介させて。私はAK-12改め『ナディア』、これからよろしくね」
軍用車の中で翔とナディアは握手をする。そして工場に帰還すると、食堂で4人の戦術人形が沢山の食事を振る舞われていた。
「いやー、鉄血と言えどヨルムンガンドのご飯美味しいね~!」
「おかわりにゃー!」
「旨い!旨くて箸が止まらへん!けど、体重が・・・!」
「秘密兵器だから・・・沢山食べて良いよね?」
その光景に翔とM200は揃って困惑し、ジェリコは額を抑え、ナディアは腹を抱えて爆笑していた。
食器の音と歓声が響く中、割烹着を着たヨルムンガンドが翔達の元へやって来た。
「皆お帰り、なんだそっちも新人がいるのか?」
"そっちも新人"という言葉に翔は違和感を感じる。
「え、ちょっと待ってそっちもって?」
「この4人、通常の運用ができなくなったグリフィンの人形でな。メンタルやなんかのシステムがなかなか改善しなくて、このままだといけないからって引き取ることになったんだ」
翔は仕方ないと思いつつ、M200達の意見も聞いてみた。
「ボクは大丈夫です」
「全く・・・このような重要な事は、今後は指揮官に報告してくださいね」
「やったわね、これで仲間が増えるわよ」
翔は4人の前に立つ。
「君達が新しく来た4人だね?僕はここの指揮官の翔・ニールセン、よろしく!」
その頃、死海にあるとある島にて簡素な小屋が立てられていた。その中ではジェノ達が闇鍋をしていた。
その島はコーラップス汚染が極めて重篤なエリアなのだが、なぜかその小屋の中は汚染が浄化されていた。
「さぁ皆~!この変な色と変な臭いのする鍋、最初に食べたいのは誰かな~?」
各々、鍋に合いそうなものではなく完全ランダムで選んだ食材を入れたため、誰も手をつけようとしない。ジェノはゆっくりと取り箸を伸ばすが、すぐに引っ込める。
「さ、流石に食べ物は食べ物なので、食べなければなりませんよね?」
「そう言ってるあなただって、手をつけようとしてないではありませんこと?」
しかし、唐突に小屋のドアが蹴破られる。レーダーで気づいていたため、6人ともドアの方を見る。
すると、そこには白いサイドテールに黒い服を着た少女がおり、その周囲には特殊な形状をしたナイフが複数浮かんでいた。
「"お姉様"に言われてきてみたら揃いも揃って・・・おい、アンタらここがどこだか解ってんのか?」
しかし、6人は顔を見合わせるとその少女の方を見る。
まるで、玩具を見つけた悪魔のような笑みを浮かべながら。
「「「「「「鍋食べる(ません)?」」」」」」
読んでくださり、ありがとうございます!
また、誤字報告ありがとうございます!
今回は翔の過去が少し明かされ、ナディア(AK-12p)と戦術人形4人が仲間になりましたが、どうだったでしょうか?
感想や高評価、ありがとうございます!
●ニードルガン
針を射出する武器で、銃身は短く片手で扱えるものが多い(一部両手で持つものもある)。
主に毒針や麻酔などを塗布、または内蔵した針や釘などを飛ばしたりするが、大型のものだと小型の杭を射出する事も可能である。
デビルの場合はハッキング能力を持った黒いまち針のようなものを飛ばし、ハッキングを行っている。
●ノーマルモデル
頭部が赤い目をした黒い球体となっており、身長160cm,。黒い胴体と足は見た目は簡素なもののしっかりと装甲は付いている、メテオライト社のノーマルモデル。
正式名称は『
武装は両腕のガトリングであり、肘から先がガトリングとなっている。
弾幕形成による制圧や対空を主な目的とされており、メテオライト社の主力ノーマルの1つ。