鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 諦めるな、思考を止めるな、策を巡らせろ。
 そして、何のために戦うかを忘れるな。




番外編 からくり参謀(前編)

 ジェリコは、4人のIOP製戦術人形の指導をしていた。

 

 スケアクロウに拷問されて救出されたものの、傘ウイルスの感染の可能性を拭えず、更にメンタルに大きな異常を起こしてしまったSMG型戦術人形『スコーピオン』。

 

 護衛対象を守れずに戦力外通告をされた挙げ句、戦場に置いていかれてメンタルが崩壊したSMG型戦術人形『IDW』。

 

 仲間を助けるために多くの荷物を背負って敵の注意を引いたものの、他の味方に過度に非難されてしまい、拒食症となってしまったAR型戦術人形『ガリル』。

 

 秘密兵器になりたいと努力していたものの、配属先の指揮官を守り切れず、戦闘に支障が出てしまうようになったAR型戦術人形『OTs-12(ティス)』。

 

 最初にこのリストを見た時、ジェリコだけでなく翔も眉を潜めていた。

 それは"使えないから"や"信用できない"といったものではなく、"何とかしなければ"といったものに近く、見捨てるつもりは毛頭無かった。

 

 

 

 最初にスコーピオン達と出会ってから、翔達は4人と交流を深めていた。そして訓練ができるようになると、少しずつ訓練を始めていった。

 教官としては翔よりジェリコの方が優れていたため、訓練内容はジェリコが担当していたが、そこに翔も参加していた。

 

 そして現在・・・

 翔達が鉄血工造のロシア支部を制圧し、その後拠点を空けることになったため、拠点としていた工場はジェリコ達が防衛することとなっていた。

 

 前線には鉄血のノーマルモデルが防衛線を張り、拠点内ではジェリコ達が控えていると共に訓練を続けていた。

 

 しかし・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 轟音が響き、モニターに映っていたのはROSのハイエンドモデルとその指揮下の部隊だった。

 

「・・・総員、戦闘準備!」

 

 ジェリコ達は5人で部隊を組んで防衛に備える。ヴェスピドやリッパー達が防衛のために先に出撃し、交戦を開始している。

 モニターからはその様子が映っている。

 

 映っているハイエンドモデルは青いベリーショートの髪に、口元や手足を隠す程の黒い大型のコートを着ており、どのような体格かは見えない。

 そしてその周囲にはポーン達がおり、鉄血のノーマルモデル達と交戦している。

 

「ね、ねぇ・・・ハイエンドモデルって、私達で勝てるの?」

 

 最初に口を開いたのは、金髪のツインテールに黒い眼帯を左目に付け、内側が赤い濃い紫の革ジャンを着ているスコーピオンだった。

 ジェリコは覚悟の決まった顔で答える。

 

「勝算はあります」

 

 すると、次に口を開いたのはオレンジ色のセミロングの髪に薄茶色の服を着たガリルだった。

 

「そ、その勝算はホンマにあるんか?」

 

「はい、もちろんあります・・・といっても、敵のハイエンドモデルがどのような性能を持っているか、それを確かめるまでは大きな行動はできませんが」

 

 モニターから見える光景は、ポーン達とリッパー達が交戦しリッパー達の後ろからヴェスピド達が援護し、ポーン達の数は減っていっている。数で言えば、鉄血側が優勢である。

 そして、残るポーンはハイエンドモデルを護衛する5人だけとなった。

 

 

 

 

 

 そこで、ハイエンドモデルに動きが出た。

 

「流石に数が多かったか・・・」

 

 ハイエンドモデルは両腕を上げ、コートの中から指が爪となっている手を出し、掌にある赤い部位からレーザーを連射する。それにより前衛のリッパー達は次々と撃破されていき、反撃として撃たれた弾はコートによって防がれる。

 

 それはコートが防弾仕様であることを示し、ハイエンドモデルは工場へと歩いていく。

 そのハイエンドモデルの行動を見たジェリコはスコーピオン達に作戦を伝える。

 

「敵のハイエンドモデルのコートに銃弾は効きません。なら狙うは足か頭部です」

 

 映像を拡大すると、脚部は4本指で地面を掴むようにして歩いているのが解る。

 

「まず、スコーピオンの焼夷手榴弾で移動範囲を制限します。そこにIDWが回避力を活かして撹乱しつつ、頭部を狙ってください。ガリルはIDWとは別方向から頭部を狙い、視界を遮ってください。そしてティスは脚部を狙い、姿勢を崩してください」

 

 ジェリコはそれぞれの動く位置にマーカーを付ける。

 

「そして私は現場指揮として出撃し、IDWと共に撹乱しつつ指揮を出します」

 

 

 

 

 

 ジェリコは先に第2陣のノーマルモデル達を出撃させ、それから進んでいく。

 そして1度ノーマルモデル達を散開させ、スコーピオンが焼夷手榴弾を投げ、ハイエンドモデルの周囲が燃える。

 

「やるな・・・」

 

 そしてリッパー達に混じって、ネコミミ付きの薄茶色の短髪に2つのお下げをしており、白いシャツとサスペンダー付の黒い短パンを履いているIDWと、ジェリコが頭部を狙いつつ撹乱していく。案の定ハイエンドモデルは左腕で頭部を守り、右手で攻撃していく。しかし狙いは安定していない。

 

「こっちにもおるで!」

 

 ガリルが後方から頭部を狙うことで、更に行動と視界を制限する。そして、銀髪の2つの三つ編みお下げをしており、赤いベレー帽と真ん中が赤い服を身に付けているティスが脚部を狙うが、ハイエンドモデルは跳躍する。

 

 

 

「この姿を晒すのは、久々だな」

 

 地面には脱ぎ捨てられたコートが落ち、少し離れた場所に降り立ったハイエンドモデルは胸、頭部、手足以外が青白い骨型の関節で全身が構成されており、コートで判らなかったが首も腕も脚も長く、実際の身長は遥かに大きかった。

 

 ROS製ハイエンドモデル『骨髄(ムワル)』──

 

 体を伸ばしたことにより、バランスを保つために四つん這いとなる。しかし四つん這いになってもジェリコ達を見下ろす程の大きさである。

 

 ムコノに向けてリッパー達とヴェスピド達は攻撃し、ジェリコ達も引きつつ攻撃していく。しかしネルヴォの的が細くなっただけでなく、コートが無いことにより素早い移動が可能となった事により、ムコノは不規則な動きで攻撃を回避していく。

 

「何やあれ!?気持ち悪いわぁ・・・」

 

「聞こえてるぞ」

 

 ムコノはガリルを腕を使って鞭を打つように殴り飛ばす。伸縮する全身の関節は見た目よりも攻撃範囲が大きく、ノーマルモデル達はあっという間に撃破されてしまう。

 

 ジェリコはガリルを連れて下がりつつ、弱点は無いかと探る。頭部は常に揺れていて当てるのは至難の技であり、現実的ではない。しかし可動域の問題で手足の付け根部分は大きな動きは無いことに気づく。

 

 ・・・が、攻撃をしようにもガリル達の戦意は落ち込んでしまっていた。

 

「あ、あんなんに・・・勝てるわけ、あらへん」

 

「あの骨みたいなの・・・私達の弾、効かなかったよ?」

 

「もうダメにゃ、おしまいにゃ・・・」

 

「結局、私は・・・」

 

 ジェリコは無理矢理4人を拠点内に下がらせ、時間稼ぎに第3陣のノーマルモデル達を出撃させる。

 

 

 

 

 

 ジェリコは4人に翔の話を聞かせる。

 

「・・・少し、指揮官の話をしましょう。指揮官は初陣でティタンを撃破しています。ティタンは現在確認されている戦術人形の中で最も硬い装甲を持っており、指揮官はそれを初陣かつ単独で撃破しました」

 

 スコーピオン達は、信じられないといった表情である。

 

「しかも、武器は日本製の上下2連のSGと鉄血製HG、それからナイフのみで、予備の弾も無い状態で撃破しました。なぜ勝てたのか?それは諦めず、策を巡らせたからです」

 

 ティタンを溶鉱炉に落とし、溶鉱炉から出た直後に液体窒素を落として装甲を大幅に脆くさせ、そこにSGを2発とも撃ち込んで装甲を破壊し、足元の廃油にHGで射撃して火をつける。

 そして川に飛び込んだところで水中から奇襲、HGで両肘両膝を破壊して無力化に成功した。

 

「つまり、諦めてなければ必ず勝機はあります。それに・・・指揮官から預けられたこの工場を、守らねばなりません」

 

「そんなこと言っても、一体どうやって勝つの?」

 

 ジェリコは笑みを浮かべる。

 

「それは・・・」

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 今回は1話で終わらせるつもりでしたが、収まらなかったので前後編に分けます。
 感想や高評価、お待ちしています!

●ドリーマー
 黒のロングヘアに脇を開けた黒いドレスに近い服を着た鉄血製ハイエンドモデル。

 武装は腰だめに構える大型のレーザー砲であり、狙撃をメインとした戦闘を得意とする。

 狡猾で腹黒く、嗜虐傾向のある性格。
 優雅な笑顔を浮かべているものの、その裏には傲慢さと腹黒さを持っている。
 また、感情の起伏が激しい。

 ちなみにデストロイヤーとは姉妹機だが、性格は真逆であり姉妹意識も無い。

●ゴリアテ
 黒い球体に手足がついたような見た目の鉄血製機械型ノーマルモデルで、ロシア支部で開発されていた。

 敵に特攻して自爆するのが目的であり、複数のゴリアテを運ぶユニット(黒い4足歩行の少し大きめの兵器)も存在する。
 しかし装甲は薄いため、改良型の開発が行われている。

●マンティコア
 黄色いカラーリングをした4本脚の無人歩行戦車。

 武装は大型機銃であり、通常の弾丸と小型の榴弾を切り替えられる。

 暴走したロシア支部の鉄血が正規軍から鹵獲し、改造生産したものであり、グリフィンにとってかなりの驚異となっていた。
 ちなみに、正規軍は既に改良型の開発に成功している。
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