様々な観点から導き出された策は、きっと強大な個を倒す力をくれるだろう。
ロシア支部の鉄血工場、その前には多数のリッパーとヴェスピドの残骸が散らばっており、ムワルがその上を跨ぐように移動している。
そして、工場の門の前にはジェリコが立っている。
「降参・・・では無いようだな」
その瞬間、ムワルの足元に左右から焼夷手榴弾が次々と投げ込まれ、ムワルの周囲は炎に包まれる。そしてジェリコの背後からガリルとティスが現れ、頭部を狙って射撃する。
「このっ!」
ムワルは首を不規則に動かしてヘッドショットを避けるが、手足の動きは大きく狭まっている。
すると地面の色とほぼ同系色の布を被っていたスコーピオンとIDWが飛び出、炎の範囲外から手足の付け根を狙って射撃する。
そしてムワルは左足の付け根を損傷し、大きくバランスを崩す。
「思った通りです。敵のハイエンドモデルは圧倒的な攻撃範囲を持つものの、その巨体を体の細さで維持するには手足全体で動く必要があり、それを担っているのは付け根・・・その部分は動けない」
ムワルは体全体で転がって回避しようとするも、広がった炎によって回避できない。
「そして、焼夷手榴弾による火を異様に避けるのは・・・おそらく、何らかの理由で油などの燃料を避けているからでしょう」
スコーピオンは、前から焼夷手榴弾を使う腕を翔から褒められていた。スコーピオン自身はそこまで考えず、"敵に損害を出せれば良い"くらいの考えで使っていたが、今では前より考えて投げていた。
そのお陰で、IDWと共にありったけの焼夷手榴弾を使ってムワルの動きを制限することに成功した。
IDWは、翔から回避力と接近戦の能力を褒められていた。かつて護衛対象を守れなかった時、IDWは誰よりも早く護衛対象を伏せさせ、逃げられるようにしていた。
そして今、IDWは危険を承知でムワルの体の下に潜り込み、手足の付け根を狙っている。
ガリルは拒食症となった原因となっていた、過度に非難されたことであるが、それが体重に関連付けられていた。決してガリルの体重が重い訳ではなかったが、過度な非難によりガリルの動きはぎこちなく緩慢になってしまっていた。
それを翔はガリルを肩車して重くないことを気づかせてくれた。
ティスはかつての指揮官を守りきることができなかったものの、多数の鉄血製ノーマルモデルを大量に撃破しており、その数はその地区のどの戦術人形よりも多かった。
そのため、翔は本当の秘密兵器になれるように稽古をつけてくれていた。
それぞれが攻撃を加えていき、それをジェリコが統率する。ムワルはジェリコが統率していることに気づき、ジェリコに向けて右腕を伸ばす。
ジェリコは間一髪で回避し、伸ばした右腕の付け根をティスが損傷させる。そのままティスは左腕の付け根も攻撃し、ガリルも左腕の付け根を狙う。
すると付け根は破壊され、ムワルの左腕は切り離されて落ち、ムワルはバランスを取ろうと動きが止まる。
「今です!」
ジェリコの掛け声と共に、待ってましたとばかりにスコーピオンは取っておいた最後の焼夷手榴弾を左足に投げつける。
焼夷手榴弾を直接投げつけられ、左足を炎に包まれたムワルは火を消そうとするが、周囲に火を消せる物が無い。そのためムワルは左足を地面に突き刺して無理矢理消火する。
その瞬間、IDWがムワルの体を駆け上がる。
「にゃにゃにゃにゃにゃ~!」
そして背骨を駆け、首を駆けて頭部に銃口を向ける。
「チェックメイトです」
「にゃー!」
IDWはSMGを連射し、ムワルの頭部は無惨な蜂の巣となる。
ムワルは崩れるように倒れ、飛び降りたIDWは無事に着地する。
倒れたムコノを見下ろすジェリコの周りには、赤い粒子がほんのりと漂っていた。
そして、自分達が大型のハイエンドモデルであるを倒せたことにスコーピオン達は呆気に取られ、ガリルにいたっては腰を抜かしている。
「本当に、倒せちゃった・・・」
「スコーピオン、言ってないでちょいと起こしてくれへん?腰が抜けてもうて・・・」
スコーピオンがガリルの手を引っ張って立たせ、ティスはボーッとしているところをジェリコに肩を叩かれて気づき、IDWはトドメを刺したことで、腰に手を当てて胸を張っている。
「やってやったのにゃー!にゃ~ハッハッハッ!」
その後、残ったリッパーとヴェスピド達に倒されたリッパーやヴェスピド、そしてムワルの亡骸を回収してもらい、型番などを調べた事でムワルの名前と所属を確認する。
「ムワル・・・骨髄の意味を持つ言葉ですね。どうやら、ROSのハイエンドモデルは人体の部位から名前と設計を取っているようですね」
ジェリコは1度休憩を取り、翔達を待つことにした。
(骨髄であのスペックを持つということは、目や爪などの主要部位はかなり危険な相手かもしれませんね)
祝勝会をしているスコーピオン達を眺めつつ、ジェリコは今後の敵を危惧していた。
しかし、今は勝利を噛み締めるべく祝勝会に加わっていく。
見ると、かつては拒食症により流動食しか食べられてなかったガリルは、今では少しずつ固形物を食べられるようになってきており、カステラをひと齧りしていた。
そしてその様子をスコーピオン達は見守っていた。
「ようやくここまでこれたわ・・・」
ジェリコはその光景を見て微笑んだ──
読んでくださり、ありがとうございます!
今回はいつもより短めですが、その分あとがきの解説が多めになっています。
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●イントゥルーダー
黒い短髪で、露出の多い黒いレインコートのような服を着たロシア支部の鉄血製ハイエンドモデル。
武装は腰だめに構えるミニガンである。
上品で穏やかな言動をしているが、その裏で虚無感を感じている。
そのため好んでいる演劇に自分を投影し、戦闘も演劇に見立てた挙動をしている。
また、暗号解読や妨害任務などを得意としており、傘ウイルスを使用することを決めたのも彼女である。
●ジャッジ
黒い長髪をしており、体格は小柄で服は露出が多いものの足にはブースター付きのハイヒールを装備している、ロシア支部の鉄血製ハイエンドモデル。
主な武装は背部の機銃が装備だが、ハイヒールのブースターを利用して強力な蹴りを行うことも可能であり、手の動きに追従するエネルギーシールドを張ることも可能。
厳格で頑固な性格をしており、エリザに絶対の忠誠を近い侍衛を務めている。
高い指揮能力を持ち、エリザの元で鉄血のロシア支部の防護と安全システムを管理している。
●ダイナゲート
黒い台形に4つの足を付けた見た目をしている鉄血製自律兵器。
武装は頭頂部の銃であるが、威力はそこそこある。
鉄血工造のマスコット的な存在であり、クリスマスにはサンタのコスプレが施される事もある。
戦闘では、低い耐久を補うために大量に出撃して数の暴力で押し切る他、小さい体を活かして偵察や災害現場への派遣も行われている。
●ビーク
銀のツインテールに、露出を増やした黒いライダースーツのような服を着たロシア支部の鉄血製ハイエンドモデル。
武装はSGと球体型のビットである。
高飛車なところがあり、ギャルっぽい話し方をしている。
バイクによる高速戦と接近戦を得意としており、ビットによる死角からの攻撃も交えている。