鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 全力で助けにきてくれる者達がいる。
 それは、裏切るのではなく手を伸ばしたからこそだろう。




第43話 集結

 ロシア正規軍本部、その前にロイラ達は立っていた。3人とも殺気立っているが、特にロイラの表情は激昂した狼のようだった。その気迫は、訓練を積んだ兵士でさえ震えるほどだった。

 

 この慌ただしい状況を偶然視察に来ていた国家保安局局長『ゼリンスキー』は気になって近くにいた兵士に聞いてみた。

 ゼリンスキーは髪の後退した頭に顎髭を生やしており、黒いスーツを着ていた。

 

「君!今どうなっている」

 

「はい、それが・・・ここの正門の前に鉄血工造の社長とハイエンドモデルが物凄い剣幕で立っており、今にも襲撃しそうな勢いだとも」

 

 ゼリンスキーはロイラとは知り合いであり、ロイラが物凄い剣幕でいると聞いて顔が青ざめる。

 そしてすぐに本部長の元へ駆けていく。

 

 

 

 その後、ロイラへの対応として許可を得たゼリンスキーはすぐさま正門へと向かうがその際に兵士達に向けて警告をした。

 

「絶対にロイラとその連れには銃口を向けるな、敵意も見せるな。特に今のロイラは危険だからな」

 

 ロイラの前に来たゼリンスキーは息を呑む。ロイラはかつて1度しか見たことの無い本気の怒りを見せており、その手に握られたHGは既にセーフティを外してあった。

 

「久しぶりだなぁ、ゼリンスキー」

 

「ロイラ、今日はどんな用事だ?」

 

 ロイラの背後にいる5m程の大きさの人型兵器、いや兵器を纏ったハイエンドモデルであるデバステーターは前に出ようとするが、ロイラは制止する。

 

「待てデバステーター・・・ゼリンスキー、事を知らない訳は無いだろうな?」

 

「・・・正直に言えば知らない。だが正規軍が何かしたのか?」

 

「正規軍が鉄血工造ロシア支部を襲撃している。ただちに作戦を中断、撤退させろ・・・さもなくば、戦争だ」

 

 それを聞いたゼリンスキーは目を見開く。

 

「なんだと・・・!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翔は小型チェーンソーでELIDの首を殴るように斬り落とし、別のELIDの体を斬り上げる。そしてELIDを踏み潰しながら現れたヒドラをM200が赤い粒子を纏った弾丸で撃ち抜く。

 

 更にM4が指揮をしつつSOPが敵陣にROと共に突撃し、別方向からAR-15が射撃で援護する。そして状況に応じてM16が即座に作戦を練り直し、提示していく。

 

 すると、ELID達がミニガンによって薙ぎ倒されていく。続いて赤い粒子を迸らせながらアクアビットマンが現れる。

 見ると、プリズムとアクアビットマン、サンフラワー達が来ていた。

 

「アクアビットマン、参上!」

 

「皆、お待たせ!」

 

 こうして反撃が始まり、ELIDと正規軍は両方とも数を大きく減らしていく。

 しかし正規軍は諦めておらず、攻める方向や個々の戦略を変えては攻め続ける。そこには執念を感じる程だった。

 

 だが、正規軍にとって更に決定的となる事態が起こる。調査に向かっていたシーカー、ウロボロス、ヨルムンガンドが戻り、ELID達が現れた方向とは逆の方から攻め始めた。

 

「遅くなってごめん、援護するよ!」

 

 更に、遠征から戻ったテンペスタとティタンが正規軍の後方から奇襲を仕掛け、暴風により薙ぎ倒されていく。

 

「待たせたな、我が主よ」

 

 シーカー達とテンペスタ達が帰還するまで鉄血が耐えられるとは想定していなかったカーターは眉を潜める。

 そして翔達の苛烈な反撃により、正規軍は壊滅寸前となる。

 遂にはELID達は全滅し、正規軍は撤退していった。

 

 

 

 

 

 時を同じくして──

 

 416は白ネイトの右足の膝を撃ち抜き、45が左腕を穴だらけにし、そして417が白ネイトの頭部を撃ち抜いた。

 

 黒ネイトはM14が銃身に弾丸を当てることで負傷したスパスへの攻撃を外させ、その隙にナガンとカラビーナーが射撃して黒ネイトは負傷する。

 しかし黒ネイトは玄関扉が開いていることに気付き、そこへ駆ける。しかし・・・

 

「かかったな、愚か者めぇ」

 

 XM8がグレランを構えて待ち構えていた。そしてグレランを黒ネイトの足元へ向けて撃ち込み、黒ネイトは吹き飛ぶ。

 動けなくなった黒ネイトの元に銀治が歩み寄り、HGの銃口を向ける。

 

「最後に言い残すことはあるか?」

 

 黒ネイトは目線だけ銀治に向ける。黒ネイトの顔は、こうして見るとM4に近い見た目をしている。

 

「ルニ、シア・・・の・・・じょう、ほ・・・」

 

「『ルニシア』?」

 

 黒ネイトは詳細を話す前に息絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正規軍が撤退した後、すぐに翔は医務室へと連行されるようにして運ばれた。「僕はまだやれるから!」と言っていたが容赦なく運ばれた。

 

 AR小隊はすぐに銀治の元へ向かい、被害状況の確認はエージェントとゲーガーが行った。

 

 そしてロイラは部隊を無駄で動かしたカーターを殺しそうな勢いだったが、鉄血への損害賠償を応分に支払うことを引き換えに"1度だけ"許しを与えた。

 

 

 

「指揮官!」

 

 M4達は飛びつかんばかりの勢いで銀治に駆け寄り、M4達が生きていることに銀治も安堵する。

 しかし、変化のあるSOPとM16が気になった。

 身長が伸びているSOP、髪が白くなっているM16で・・・

 

「2人とも、どうしたんだ?」

 

 2人が鉄血のハイエンドモデルのパーツを使って強化と修復を行ったことを聞くと、それを知らない者達は最初は驚いたものの、2人の様子を見て受け入れた。

 

 そして、それはそうと416は404小隊と共に帰還しようとしたところを417に呼び止められる。

 

「待ってくれ姉さん!」

 

 416は417の事を知らないため、拒否するが417は416を縋り付くように抱き締める。

 

「ちょっ!?何やってんのよ!こんなことされても私は・・・」

 

 しかし417は目に涙を浮かべており、416は一旦止まる。

 

「すまない・・・姉さんにも、姉さんのやるべきことがあることを、私としたことが忘れてしまっていた・・・」

 

 417は抱き締める事をやめたものの、416の服の裾をつまんでいる。

 

「・・・分かったわよ、たまに会いに行くから今日はもう離して」

 

 416が仕方なくそう言うと、ようやく417は笑顔を見せる。404小隊が帰還する際、417はずっと帰還用のヘリを見つめており45は416をヘリ内で茶化していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、鉄血工造ロシア支部にロイラ達が到着し、ロイラはすぐさま全員の容態を確認していく。既に修復が済んでいる戦術人形も確認していき、ノーマルモデル以外の死者がいないことを確認すると安堵してコーヒーを一気飲みしていた。

 

 更に翌日、翔はロイラから屋上に呼び出された。

 

「話ってなんです?」

 

「そうね・・・記憶に関してかしら。あれから色々あったけれど、どこまで思い出せたの?」

 

 ロイラが見上げた空には青空が広がっており、雲はほんの少ししかなかった。

 

「そうですね・・・95%くらいは思い出せましたね」

 

「・・・残り5%、どんな記憶かしらね」

 

 翔は苦笑いをしている。しかし、その記憶はなぜか『思い出してはいけない』ような記憶と『まだ思い出すべきではない』と2つに分かれているようで、中々思い出せないでいた。

 

「どんな記憶か気になるけれど、それはあなたの方が思ってるでしょうね・・・ああそうそう、もう1つ聞いておきたい事があるの」

 

 

 

 

 

 ロイラは翔に向き直り、その質問をする。

 

「あの赤い粒子、あれってなんなの?」

 

 翔は聞かれることは予想しており、静かに嘘偽り無く答える。

 

 

 

 

 

「あれは・・・『アンチコジマ』っていう粒子で、アクアビットが使ってたコジマ粒子が汚染と破壊の性質を持つなら、アンチコジマは浄化と破壊の性質を持っているんだ」

 

 アンチコジマはコジマ粒子と同様に反応によって爆発するため、コジマ粒子と互換性があるものだった。そして、そのアンチコジマを発見したのは翔自身だった。

 

「あなたって科学者だったの?」

 

「本業は傭兵ですけど、汚染を何とかしたいって思って手当たり次第やってたら、偶然アンチコジマを見つけまして・・・けど、1つ疑問があるんです」

 

 翔の疑問。それは赤い粒子がなぜ自分の体内に通常の数百倍あり、それがAAと同じ作用を起こすのかだった。しかしそれは未だに不明のままであり、アクアビットマンやナディアの内部に入り込み、ナディアに至っては再起動させたのも不思議だった。

 

「現代科学で解明できないことは沢山あるわ。それもまた1つの楽しみね」

 

 ロイラは笑っているが、翔は深呼吸した後で大事な話を始める。

 

 

 

 

 

「社長・・・いえ、ロイラさん。大切なお話があります」

 

「何かしら?」

 

「僕、傭兵として独立しようかと思います」

 

 ロイラは落ち着いた様子で理由を問う。

 

「なぜかしら?」

 

「その・・・やっぱり、僕はどこかに所属するというより傭兵でいることの方が性に合ってるんです。それに、傭兵であった方が自由に動けますから」

 

 ロイラは頷いた後、翔の頭を優しく撫でる。

 

「さて、どうしましょうね・・・?」

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 正規軍との戦いが終わり、赤い粒子の事がようやくでましたが、どうだったでしょうか?
 感想や高評価、お待ちしています!

●オルトロス
 濃い緑の武骨なフォルムの正規軍の犬型自律兵器。

 基本的な武装は牙であるが、前面にエネルギーシールドを展開することができる。

 高い機動力と攻撃性を兼ね備えており、部隊の前衛や追撃を担っている。

●ストレリツィ
 白を基調としたカラーリングのノーマルモデルで、『パラテウス』と呼ばれる組織で作られた。

 武装はSMGである。

 単体の能力は消して高くはないものの、必ず複数で行動しているため注意が必要。

●ネイト
 情報が不足しています。

●Kar98k
 銀の長髪に黒い帽子とコートを身に付けたIOP製戦術人形で、種別はRF。

 落ち着いた性格で、しぐさや言葉遣いに貴族のような気品さを感じさせており、銀治の部隊では第2の狙撃主として活躍している。
 また、カラビーナーの愛称で呼ばれている。

●カンケル
 頭部はカメラだけと言って良い形をしており、身長168cm。7月12日生まれで19歳。
 灰色の装甲と紫のボディースーツを着ているが、脚部は鳥のような逆関節型の足となっている。

 武装は右手に榴弾砲、左手にSGを持ち、右肩にAR、左肩にHGをカプリコルヌスと同様にマウントしていた。

 荒い気性で、常に強い相手を求めている。
 カラーリングなどからカプリコルヌスと同じくメテオライト社の者だと推測できる。
 また、カンケルとは蟹座の意味でもある。
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