9番目の名を背負うのであれば。
依頼主:有澤 武龍
目標:
作戦開始時刻:8:00
報酬:850000円及び支援物資
初見となる。俺は有澤重工社長、有澤 武龍だ。
現在こちらは鉄血本部と共同で西日本奪還と復興を計画しており、有澤重工は比較的コーラップス汚染が少ない地域の港を主軸として作戦を行う。
そして、肝心の港には現在ELID達がいる。そのため、そちらの試金石として港の制圧を頼みたい。
また、この付近ではかつて熊が出没していた地域でもあるため熊型のELIDに注意してくれ。
有澤製の駆逐艦で作戦エリアへとやって来た翔達は港へ侵入する。
編成は翔、M200、ナディア、ヨルムンガンド、ウロボロスの部隊とガリルが隊長を務める『オストリッチ小隊』であり、それぞれ別の方向から制圧を開始し、ジェリコはオペレーターとして参加している。
オストリッチ小隊はこれまで、部隊の正式名称が決まっていなかったがナインボール設立に合わせて正式名称を決めていた。
両部隊は早速ELID達と交戦を開始し、ELID達を撃破していく。発症から時間が経っているため、ELID達は血液の代わりに緑色の結晶の破片を撒き散らしている。
翔達が給水塔の周囲を制圧すると、M200は給水塔の上から狙撃を開始する。すると山の方から熊型のELIDが現れる。
かなり症状が進んでいる様子で、背中や肩から大型の結晶が突き出ている。
「何あれ・・・まるで結晶が毛皮を着てるみたいだにゃ」
IDWがそう漏らしたような見た目は、ここまでの症状の進行を見たことの無い翔も同感だった。実際、開けた口の中でさえ結晶で染まっている。そのため口からはガリガリと結晶が擦れる音がしている。
熊型のELIDはウロボロスのミサイルにより直ちに撃破される。しかしその体内に内臓はほとんど残っておらず、コーラップスによって生かされているようなものだった。
その後も制圧は順調に進み、港自体の制圧は完了したのだが・・・
「・・・地響き?」
微かな地響きを感じ、周囲を見渡すと翔のレーダーのギリギリ範囲外の位置に3mほどの人型ELIDがおり、こちらに向かっていた。
「なに、あれ・・・?」
明らかに他のELIDとは違う風貌に翔は後ろに下がる。
《あれは重度の汚染を受けた者の成れの果てです。外側だけでなく内部もこれまでより硬化しているため、注意してください!》
大型ELIDは拳を振り上げてスコーピオンに拳を振り下ろすが、スコーピオンは回避して焼夷手榴弾を投げつける。しかし大型ELIDは体が燃えても反応しなかった。
スコーピオンは全速力で逃げ、M200は援護するために頭部を狙撃する。しかし対物ライフルを持ってしても一撃では倒せず、今度はアンチコジマを纏わせた弾丸を撃ち込む。
すると今度こそ撃破できたが、また別の大型ELIDが現れる。
周囲にもう他のELIDはおらず、ウロボロスのミサイルにより大型ELIDは足を集中砲火されて倒れ、そこにM200がアンチコジマを纏わせた弾丸を撃ち込んで撃破する。
《周囲に反応無し、作戦は成功です》
ナインボールとしての初任務は成功を納め、報酬金と支援物資を受け取って翔達は帰還した。
支援物資は3つのダンボールに入っており、1つは弾薬、もう1つは鋼材、そしてもう1つは・・・
「何かしらこれ?」
ナディアが訝しむ水色のダンボールにはアクアビット社のロゴが描かれており、外側からは開かないようになっていた。
「爆弾というわけでは無いと思うけど・・・」
翔はそう言いつつ首を傾げていると、突然ダンボールの上側が開くと共に勢いよく何かが飛び出た。
「コジマから解き放たれ、赤き粒子を得た戦士!アクアビットマン、参上!」
まさかのアクアビットマンがポーズを付けて華麗に着地し、翔達は呆気に取られている。
「えっ・・・と・・・なんで、ここに?」
翔が事情を聞いてみると、"過去の恩"のためにナインボールへと入隊する事を考えたが、北海道には守るべきアクアビット社や市民がいた。しかしリサや市民達からの後押しにより"報酬"の名目でここに来たということだった。
「と、いう訳でボクをナインボールに入れてよ!」
別のポーズを決めつつそう言うアクアビットマンに翔は困惑するが、少しの話し合いの後に入隊を許可する。
「うん、リサさんや応援してくれてる人達に嘘ついて来る訳でもないし、入隊は許可するよ・・・ようこそ、ナインボールへ」
その頃、正規軍の新たな指揮官を決める会議が行われ、新たな正規軍の指揮官としてエゴールが選ばれた。
理由としては、部下達からの信頼が厚く大打撃を受けた現在の正規軍を纏められるのがエゴールしかいなかったからである。
しかし、エゴールの指揮能力が高いことも評価されていた。
そしてエゴールは新たに正規軍へ入隊した新人達を見ながら考える。
(将軍、いやカーター・・・あれ程の人がこのまま諦めるわけがない。もしより大きな事態に発展するのも時間の問題か、既に始まっているか・・・)
カーターは拘束され、裁判を待つのみである。しかしカーターを指示するものも多いため、カーターが逃亡する可能性は大いにあった。
そのためエゴールは今後の事を考え、新人達を鍛えることにも力を入れていた。
そしてカーターは1つ気になることがあった。それは国家保安局局長であるゼリンスキーが、なぜ鉄血の社長であるロイラを恐れるのか?
単に戦争を恐れている訳ではないようだが、カーターは念のため昔の資料を確認してみることにした。
そこにあったのは、ロイラ、カーター、クルーガーの3人が並んで写っている写真だった。そして当時の3人の指揮に関する評価も記載されていた。
『合理的な戦略を得意とするカーター、堅実な指揮をするクルーガー、そして苛烈といえる攻撃性を持つロイラ』
ロイラはかつて『夏の狂犬』と呼ばれる程の指揮官であり、ある夏に起きた大規模テロ事件にて、生き残ったテロリスト達が発狂していた程の徹底的な攻撃を行い、それ以来恐れられていた。
また、彼女の攻撃性の高い指揮は上層部でもコントロールし切れず、半ば切り札に近い扱いを受けていたともあった。
(確か、ロイラは鉄血の2代目の社長のはずだ。となると、ここまで苛烈なロイラを制御できた初代社長は何者だ?)
興味の赴くまま、更に調べてみようとしたところで呼び出しがあり、エゴールは資料を片付けた。
更にその頃、ドイツでは──
「なぁ、アタシ達ドイツ政府に何かしたか?」
武装ヘリに寄りかかりながらパンを食べているクラフターがそう呟く。その周辺にはドイツ軍兵士が何人か倒れており、ガンナーが兵士達の端末から情報を抜き出していた。
「この前一部の議員の汚職の事実をばら蒔いたからじゃないか?」
「あー、たぶんそれだな」
データの取得が終わり、武装ヘリに乗り込むと自動操縦で武装ヘリは離陸していく。
「・・・だが、どうやらそれだけではないようだ」
ガンナーが取得したデータを共有すると、作戦内容などに不審な点がいくつか現れる。
「単なる奇襲作戦じゃないな。アタシ達を相手にした事は知らされていなかった・・・となると、戦闘データの取得が目的か?まあ、一瞬で終わったからデータは少ないだろうけど」
「今はどこも我々の情報を欲しがっている状態か・・・日本以外」
クラフター達の情報を得ようとする国や組織は数多あれど、日本だけは情報を得ようとはせず、自分達の事に専念していた。
「しかし鉄血のゴタゴタは解決したようだし、今後はどうなるか分からんぞ?」
「それもそうか・・・」
夕陽に照らされた雲は、まるで獣のような形をしていた。
読んでくださり、ありがとうございます!
体調があまり良くなく、遅れてしまいすいません···
今回はナインボールとしての初任務とアクアビットマンの加入でしたが、どうだったでしょうか?
感想や高評価、お待ちしています。
●オストリッチ小隊
ガリルが隊長を務め、IDW、ティス、スコーピオンの4人による小隊であり、かつては部隊名などは無かったがナインボール設立に伴って正式に小隊として結成された。
●人間以外のELID
コーラップス汚染によるELID化は、人間だけでなく動植物にも発生している。
共通しているのは、凶暴性が増して攻撃的となり、生きているものを手当たり次第に攻撃している点である。
植物に関しては、重度の汚染を受けたものだけ大きな変異が見られ、攻撃的な形状となり自発的な攻撃を行っている。
●大型ELID
重度のコーラップス汚染により変異し、大型化したELIDである。
体の内外共に硬化しており、通常の弾丸では損傷を与えることは難しい。