鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 狂いし機械と迷えるヒト。
 引き裂かれた運命は、ようやく交差する。




第49話 虚しき再開

 パラデウスの資料にあった情報、そこにあった"ネイト"とはなんなのか?

 それはとある少女の遺伝子を使って作られたクローンであり、そのクローンを急成長させて機械化手術を施したものがネイトである。

 

 機械化に耐えられなかった個体は廃棄処分され、機械化に耐えられた個体はパラデウスによって改造された傘ウイルスを植え付けられ、自我を失い黒ネイトとして運用される。

 自我を失わなかった個体は上位個体の白ネイトとして運用される。

 

 また、急成長の段階で特異な変化を遂げた個体は最上位個体として名前と専用手術を施される。

 

 そして、アデリンは黒ネイト以上白ネイト以下の能力を有することが判明したため、自我を消されなかったものの工場内部の防衛として運用されていたのだ。

 (アデリンという名前は自分でつけていた)

 

「・・・許せねぇ」

 

 エクスキューショナーの怒気の籠った呟きに、翔達も同意する。

 

「パラデウスをどうにかして止めなきゃならない・・・しかも他の資料によると、コーラップスを使った実験も繰り返してるみたいだし」

 

 コーラップスを使った実験にはネイトではなく民間人が使用されており、あの工場も民間人を使った人体実験も行っていた。

 

 そして資料の確認のための会議が終わると、次の依頼のために準備を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼主:エリザ

 

目標:不明部隊殲滅

 

作戦開始時刻:15:00

 

報酬:70000ドル

 

 最近、鉄血の部隊に対し所属不明部隊による襲撃が度々起きている。何度か撃退したものの、再び戦力を整えているとの情報が入った。

 戦力を整えている場所は複数確認できたため、その1つに奇襲を仕掛けて殲滅してほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初めてのエリザからの依頼であり、翔達は気を引き締めて作戦エリアに向かった。テンペスタはアデリン達の相手を、オストリッチ小隊には拠点の防衛を頼んであり、それぞれ配置につく。

 

《所属不明部隊・・・まさかとは思いましたが、パラデウスでしたか》

 

 パラデウス部隊はストレリツィとロデレロだけでなく、見たことの無い2足歩行型の人型兵器がいた。

 全身は白く、上半身は流線型で下半身は武骨なフォルムをしており、頭部には大きなモノアイがある。

 

 武装は両腕の機銃とグレラン、左腕にはシールドを装備している。

 3m程の大きさをしたその人型兵器は『ドッペルゾルドナー』。パラデウスの重火力要員である。

 

 確認できた敵の数はそれぞれ、ストレリツィが20、ロデレロが5、ドッペルゾルドナーが3であり、翔がレーダーに映る反応を数えても一致していた。

 

 ドッペルゾルドナーはロデレロと同様にバリアを使用していることが予想されるため、M200の狙撃による迅速な撃破が求められる。

 

[アンチコジマを纏わせた弾丸であれば、加速力などからバリアを貫通できるはずです]

 

 

 

 そして、狙いを定めたM200はドッペルゾルドナーに向けて引き金を引く。放たれたアンチコジマに包まれた弾丸は、アンチコジマによる加速力でバリアを貫通し、ドッペルゾルドナーの装甲を貫通し、内部で爆発を起こす。

 

 それに合わせて放たれたミサイルと砲撃はストレリツィ達のほとんどを撃破し、ミサイルに巻き込まれたロデレロが1機撃破された。

 

「今だ!」

 

 エクスキューショナーとヨルムンガンドがすかさず突撃し、ブースターで急接近してきたロデレロにカウンターで斬りつけ、2人を狙おうとしたドッペルゾルドナーはM200の狙撃で撃破する。

 

 他のストレリツィはナディアが仕留め、ロデレロは翔が撃破する。

 

[M200、トドメです!]

 

 しかし、最後のドッペルゾルドナーに翔達が向き直ったその時──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとどいて~!」

 

 突如新たな反応がドッペルゾルドナーの背後から急接近し、両手に持ったSGでドッペルゾルドナーのバリアを剥がし、そのままの勢いでドロップキックをし、ドッペルゾルドナーの体制が崩れたところで至近距離からSGを撃ち込む。

 

 機能停止し、倒れたドッペルゾルドナーの上に新たな反応の主が降り立つ。

 

 それは、ジェノだった。

 

「君達がナインボールだね?ちょっと"ゴアイサツ"を・・・し・・・え?」

 

 ジェノと目があった翔。その固有識別反応を確認する。

 

「え・・・なん、で・・・?」

 

 固有識別反応には『翔・ニールセン』と表示されている。

 その固有識別反応と顔、身長、それらは忘れるはずの無い者だった。

 翔を認識したジェノの目に、大粒の涙が溢れる。

 

「お、お・・・おにぃぃぃちゃああああああああああん!」

 

 ジェノは両手のSGを手放し、背部のブースターを使ってQBをして翔に急接近し、その勢いのまま抱きつく。

 

「グフッ!・・・な、なになになに!?」

 

 ジェノに抱きつかれた翔は仰向けに倒れつつも困惑し、ジェノは泣きじゃくる。

 翔はジェノと初対面なはずだが、なぜか微かな懐かしさを覚える。

 

「うあああああん!おにぃちゃあああああん!クンカクンカクンカ、やっぱりおにぃちゃんだあああああ!うあああああん!」

 

 翔だけでなく、M200達も困惑していた。

 翔は何とかジェノを引き剥がし、事情を聞く。

 

「ち、ちょっと待って!君・・・誰?」

 

 途端にジェノの表情が固まる。

 

「・・・え?私の事、覚えてないの?私だよ、ジェノだの!ジェノサイダーだよ!」

 

 ジェノは必死な顔で訴えるが、翔はジェノと会ったことが無い、あるいは記憶に無いため困惑している。

 

「あの、ジェノさん・・・お久しぶりです」

 

 面識のあるM200が声をかけるが、ジェノは反応しない。あの時の明るい雰囲気からは想像もできない、絶望した表情をしていた。

 

「あの、僕は記憶が無くなってて・・・その、残り5%がまだ思い出せてないんだ」

 

 ジェノの目から嬉しさとは真逆の涙が零れ、ジェノは立ち上がる。

 

「ちょっと、待ってて・・・」

 

 

 

 

 

 ジェノが通信を送って少しすると、大型の武装ヘリが飛んでくる。その武装ヘリは、翔が知っているヘリだった。

 

「あれは・・・『ストーク』?」

 

 ストークから降りてきたのは他のバタフライムーンのメンバーだった。

 最初に降りてきたフォートレスは翔を認識するなり目に涙を浮かべ、口元を押さえた。

 

「に、兄さん・・・生きて、生きてたんですね!」

 

 他のメンバーも涙を流したが、翔が覚えていないと知ると取り乱した。

 

「本当に、覚えてないです・・・?」

 

 ダイバーは今にも泣き出しそうな顔で翔の右手を握り、翔はどう言えば良いか困惑する。

 

「けどよ・・・とにかく、とにかく生きてて良かった!」

 

 クラフターは翔の頭をガシガシと粗っぽく撫でる。

 そしてガンナーは無言で涙を拭い、スライサーは遠い目をしていた。

 

 

 

 翔が1度記憶を失い、95%までは取り戻せたが残りの5%は依然として思い出せない状態となっている事を、M200がジェノ達に伝えた。

 

「えっと・・・じゃあ、一緒に倉庫を掃除して存在しないはずの軍艦の設計図を見つけたのは?」

 

「ごめん、覚えてない・・・」

 

 自分達と事で覚えていそうなことをあれこれ問答するが、どれも失敗に終わり、ジェノ達は悶えている。

 

「ん~・・・となると、やっぱりアレか」

 

「・・・アレですね」

 

 ジェノの発した"アレ"に、バタフライムーンの面々は同意していく。翔達にはアレとは何なのか判らなかったが、ジェノ達は翔の方を向く。その表情は先程と違い、真剣な表情をしていた。

 

「お兄ちゃん、私達を・・・バタフライムーンをナインボールに入れて」

 

 翔は突然の申し出に困惑するが、M200達も困惑していた。

 

[まさかとは思いましたが、本当に申し出るとは・・・]

 

 Mは予想していたらしく、若干呆れている。

 翔は微かな懐かしさの事を考え、了承する。

 

「・・・うん、良いよ」

 

[やっぱり・・・]

 

 やはりこうなるかと、M200達は諦めて拠点に案内する。そして・・・

 

 

 

「レイヤード管理者、直属アンドロイド部隊バタフライムーン、元時刻をもって、翔・ニールセンの元へ帰還致しました!」

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 今回で第4章は終了とし、あとは番外編の後第5章を開始します。
 ジェノ達と翔がようやく再開できましたが、どうだったでしょうか?
 感想や高評価、お待ちしています!

●アデリン
 M4によく似た顔と黒い長髪で、黒いマントを纒い、両腕と下半身、内蔵の一部は機械化している。

 武装は黒ネイトと同じレーザー砲である。

 静かで機械的な喋り方だが、周りを気遣える性格であり、幼体ネイト達を守っている。

 機械化に耐えられ、改造された傘ウイルスにも耐性があったものの、黒ネイト以上白ネイト以下の能力であったため、工場内部の防衛として運用されていた。
 しかし今はナインボールの拠点防衛を担っている。

●ネイト
 パラデウスがとある少女の遺伝子を使って作られたクローンを急成長させ、機械化手術を施したものであり、機械化→改造された傘ウイルスの植え付けの2段階が行われる。

 機械化に耐えられなかった個体は廃棄処分、耐えられた個体はネイトとして運用される。

 改造された傘ウイルスにより、自我を失った個体は黒ネイトとして、失わなかった個体は上位個体の白ネイトとなる。
 また、急成長の段階で特異な変化を遂げた個体は最上位個体として名前と専用手術が施される。

 ちなみに、幼体ネイトは1人ずつ狭い箱に詰められた状態で"保管"され、中には閉所恐怖症となる個体や箱にトラウマを持つ個体もおり、その個体は廃棄処分となる可能性が高まる。
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