鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 優しいんだよ、眩しすぎるくらいに。
 だからこそ強くなれたんだよ、そいつは。




第55話 優しさによる強さ

 気がつくと、翔はあの赤い海の底で横たわっていた。

 意識はぼんやりとしていて、起き上がるのに苦労しそうだった。

 

「起きろ!」

 

 叱咤する男性の声が聞こえたかと思うと、翔は腕と腰を掴まれて無理矢理起こされる。その声に、翔は聞き覚えがあった。男性の顔を見ると、翔は目を見開く。

 

「・・・『テルミドール』さん?」

 

「話している時間は無い、すぐに追え!」

 

 テルミドールが翔の背を叩くと、翔は目が覚める。

 

 

 

 目覚めると、崖下の山中にいた。

 近くにはM200の対物ライフルが落ちていたが、M200はどこにもいなかった。

 

「M200?」

 

 無線は破損しているため使えず、辺りを見渡す。すると何かを引きずった後があり、翔は怪我をした部位に包帯や絆創膏を使い、持ち物を確認した後、対物ライフルを持って引きずった後を追った。

 するとすぐにタイヤ痕を見つけ、それを追う。

 

(この様子だと、M200はたぶん誰かに拐われた。すぐに見つけないと!)

 

 翔はタイヤ痕を追っていると、1つの民家を発見する。タイヤ痕はその民家を無視して行ったようだが、何が目撃者がいるかもしれないと思い、翔は民家に立ち寄る。

 

 

 

 

 

「すいません、誰かいますか?」

 

 すると初老の男性が出てきたため、翔はタイヤ痕の主について聞いてみる。すると・・・

 

「お前、まさか追うつもりか?」

 

 翔は仲間が拐われた可能性があることを告げる。

 

「・・・その仲間ってのは、人形か?」

 

「はい、そうです」

 

 それを聞いた途端、男性の顔色が悪くなる。

 

「悪いことは言わん、その人形は諦めろ・・・」

 

「なぜですか?」

 

 男性は暗い表情で理由を語り始める。

 

 この近くには人形を信仰するカルト教団の本拠地があり、そのカルト教団は設立当初から強引な手口で人形を手に入れており、中には殺人まで犯す者もいた。

 

「お前さんがどれ程強いかは判らん、だがやめておけ。あそこはよりによって本拠地だ、奴らが何をしでかすか判らん!」

 

 しかし翔は「それでも行く」と言い、タイヤ痕を追おうとした。すると男性は翔に懐から出したリボルバーを向ける。

 

「奴らは人形を殺すことはしない・・・オーナーが必要以上の抵抗をしなければな」

 

 翔は振り向き、男性を見据える。

 

「俺の人形も奴らに拐われた・・・最初は生かされてたんだ。でもな、俺が取り返しに行って奴らの1人を撃った。そいつは死んだ。だがそしたら奴らは俺の人形を・・・10年も連れ添った相棒と、その近くにいた無関係の人形を、罰として殺したんだ!」

 

 男性はリボルバーの安全装置を外し、引き金に指をかける。

 

「俺にとって、あいつは家族だった。例え人形でもだ!だから、例え連中に拐われたとしても、これ以上殺させるわけにはいかねぇんだよ!」

 

 男性は翔に1歩近づく。

 

「お前は優しいんだろうな。一目見た時から解る・・・けどな、お前が持ってるような"優しさ"のせいで、命も未来も奪われるんだよ!例え人形でもだ!」

 

 男性は翔に向けて引き金を引くが、翔に弾は当たらなかった。

 

「・・・話してくれて、ありがとう」

 

 翔はタイヤ痕を追って歩き始める。男性は引き金を何度も引き、弾切れになるまで撃ったが、翔には掠りもしなかった。

 翔の姿が木々に隠れて見えなくなったところで、男性は地面にへたり込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 M200は目覚めるとベッドの上におり、白いローブを着せられて右足を鎖で繋がれていた。

 

「ここは・・・?」

 

 目覚めた部屋は狭く、家具は最低限しか無く殺風景だった。しかし天井の角には監視カメラがあるため、M200は自分が拐われて監禁されたのだと悟った。

 そして左腕には黄色いタグが巻かれており、『ランク:天使』と書かれていた。

 

「なんですか、これは?」

 

[意識を失ってる間に拐われたのでしょう・・・しかし誰に?]

 

 困惑していると、1人の女性が部屋の扉を開ける。

 

「初めまして、新たな天使様」

 

 M200は眉を潜めるが、嫌な予感が頭をよぎった。

 

「ここは、あなた方人形を信じる者達の場所であり、あなたの新しい生活と部屋でございます」

 

 M200は嫌な予感が的中したことで強い危機を感じる。

 

(人形を信仰するカルト教団があるとは聞いていましたが、まさかあの近くに本拠地があったとは・・・)

 

 女性はリンゴとバナナを部屋に置いて去っていき、M200とMはどうにかして脱出できないかとメンタル内で相談を始めた。

 

 

 

 

 

 その頃、本拠地近くの山中を哨戒している2人の兵士がいた。しかしその2人は教団の兵士ではあるが、警戒心が薄くとても兵士には見えなかった。

 

 すると背後の茂みから物音がしたため振り返る。2人はHGを構えながら近づくが、次の瞬間音も無く上から翔が降ってきて2人の頭を掴むと地面に叩きつけ、2人は意識を失った。

 

 2人を茂みの中に隠した翔は目線を別の方向へ移す。その先には教団の本拠地があった。

 

 

 

 そして翔は本拠地へと向かうトラックを見つけ、その先に拾った釘を仕掛けてパンクさせる。すると運転手と1人の兵士がタイヤの交換を始め、出発しようとしたところでトラックの下に潜り込んでしがみつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トラックが車庫に入れられ、車庫の中に整備士だけが残ったところで翔はトラックの下から出る。そして整備士を振り向かせると顔面を殴り、気絶したところを受け止めて床に寝かせて拘束する。

 

 整備士をロッカーに隠すと車庫の中を見渡し、ダクトを見つけてから手製のサイレンサーを作って鉄血製HGに付け、ダクトに潜り込む。

 その後、レーダーを確認して人数の少ない部屋に天井から降り、部屋にいた3人を格闘で気絶させる。

 

 そして侵入者がいると悟られないため、飲酒をしたように見せかけてから本拠地の中を探索していく。

 

 カルト教団の本拠地は塀に囲まれており、本館と別館に分かれており、本館は儀式などを行う神聖な場所とされており、別館は人間の居住区とされているようである。

 

(拐った人形達をどこかに監禁するとしたら、やっぱり地下かな?)

 

 翔は本館の地下に向かい、人形達が監禁されている場所を確認した後、地下の見回りをしている信者に狙いを定める。

 見回りは少し距離を話しながら歩いているため、監視カメラから隠れながら1人ずつ気絶させていくのは翔にとって簡単だった。

 

 全ての見回りを気絶させた翔は1階に戻るが、整備士や見回りがいないことに信者達が気づかないわけは無かった。

 しかしこれも、翔の想定の範囲内だった。

 

 柱の影から──

 壁の角から──

 

 様々な意識外からの攻撃により信者達は次々と気絶させられ、拘束されていく。

 そして既に多くの信者達と連絡が取れなくなっていることで、管制室の信者達は何者かに侵入されたと判断する。

 

「これは・・・マズイぞ、すぐに別館の方に連絡を・・・」

 

 すると管制室の扉を開ける者がいた。その者は信者の着る服を着ていたが服の所々に血がついており、すぐに倒れる。

 

「大丈夫か!?」

 

「突然、襲われて・・・」

 

 駆けつけた信者はその者を椅子に座らせる。

 

「これ、襲ってきた奴が落とした物なんです・・・」

 

 駆け込んできた者は翔であり、懐から"落とした物"を出す。それは手製のサイレンサーを付けた鉄血製HGであり、間髪入れずに目の前の信者の手足を撃ち抜き、通信機を撃ち抜いていく。

 

「き、貴様っ!?」

 

 翔はリロードすると他の信者達の手足を撃ち抜いていき、素早く全員を気絶させてから管制室を出る。

 その後は信者達を無力化していが、管制室と多くの信者と連絡が取れなくなっていることで、武装した信者達が別館から本館に集まってきていた。

 

 

 

 本館の中は酷く静かであり、1人の人間が身を潜めていた──

 

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 今回出てきた初老の男性ですが、彼はゲーム本編が始まる前の時系列の"裏"にある物語で主人公ポジに当たる人ですが、それを書くかどうかはまだ未定です。
 感想や高評価、お待ちしています!

●エピフィラム
 白い花弁を咲かせる花である。
 しかしパラデウスによって、コーラップスを球根に吸収する事が密かに解明されており、現在ではタリン近辺に非常に多く咲いている。

 この花の特性は最初、コーラップスの汚染を除去できる切り札と思われていたが、開花の際に溜め込んだコーラップスをそのまま空気中に放出する事が判明した。

 そして、開花したエピフィラムの近くにいた者は安楽死する。
 また、これらの特性をパラデウスがどう捉えているかは不明である。

●失格異性体
 単なる異性体と思われていたが、タリンにて多量のコーラップスに耐え、安楽死しなかった唯一の個体。

 最初はただただ激痛に耐えるしか無かったが、後にタリンにて死亡していた上位ネイトの体を乗っ取っとり、他の異性体の意識を複数取り込むことにより、進化を遂げる。

 余談だが、取り込んだ上位ネイトは銀治の部隊と交戦中に自身の演算能力に耐えられず、発狂して逃走。その後タリンにて死亡していた。
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