鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 破壊しろ。絶望を振り撒く悪意を。
 破壊しろ、鎖で繋ぐ悪意を。




第56話 カウント

 「ガチャリ」と音がして地下に監禁されている人形達の部屋の扉が解錠され、足の鎖のロックも外される。

 M200はゆっくりと音を立てないように廊下へ出る。すると、他の人形達も動揺しながらも廊下へ出てきている。

 

 銀のロングヘアの人形とM200は目が合う。

 

「あれ、君ってM200だよね?久しぶり!」

 

「『AA-12』さん!久しぶりです。でも、こんな形で再開するなんて・・・」

 

 2人は一瞬だけ再開を喜んだ後、すぐに警戒し始める。

 

「・・・とにかく、彼女達を誘導して脱出しましょう」

 

 M200とAA-12は他の人形達に静かにするよう伝え、先導しつつ脱出しようと1階へ向かう。

 何が起こったのかすぐには飲み込めなかったが、人数が多いからか他の人形達はまだパニックを起こしていない。

 

 近くで2人の信者が拘束されて隠されており、近くに2丁のHGが落ちていた。M200はそれを拾うと1丁をAA-12に渡し、1階へ辿り着く。

 

 そこは静かであり、至る所に信者が倒れていた。

 

「あ・・・」

 

 ステンドグラスに照らされて、白いローブを纏った1人の人形がいた。赤に近い桃色の長髪のその人形はM200達を見ると、唐突に謝罪した。

 

「申し訳ありません、止められなくて・・・」

 

 M200達はなぜ謝られているか分からず困惑していると、2階から翔が降りてくる。

 

「皆、怪我は無い?」

 

「翔さん!」

 

 M200は翔に駆け寄り、翔の傷を見る。包帯を巻いた所からは血が滲んでおり、戦闘により開いたことが解る。しかし翔は「僕は大丈夫」と一言言うとM200に対物ライフルを渡す。マガジンを確認すると、1発も撃っていないことが確認できた。

 

「皆!ここの人達は僕が倒したから、すぐに移動しよう!」

 

 翔達は人形達を連れてトラックに乗り込み、すぐに移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人形を信仰するカルト教団『人形天使教』は本拠地を壊滅させられた事により、急速に瓦解していく。更に、カルト教団と裏で金銭的に繋がっていた人形人権団体もその規模を大きく縮小した。

 

 そして、救助された戦術人形であるAA-12はグリフィンからナインボールへと移籍した。

 黒いベレー帽と黒と紫の星形の髪飾りを付け、黒い服に白いパーカーを着た彼女は、フルオート式のSGとシールドにより部隊の前衛を担うこととなった。

 

「助けてくれてありがとう、今度はこっちが力になるよ」

 

 また、カルト教団にメシアとして祭り上げられていたRF型戦術人形『M82A1』(以下バレット)もナインボールに加入することとなり、服も整えていた。

 赤と黒の色の髪飾り型デバイスを頭の左右に付け、白い服の上に黒いジャケットを羽織っている。

 

「もう2度と、この力の使い道を間違えません」

 

 

 

 

 

 それから数日後、新たな依頼がやって来た。

 

「パルディスキ原潜基地に?」

 

 翔に依頼をしてきたのはエリザだった。

 

「あそこには私の本体と『バラクーダノード』というのがある。バラクーダノードはリコが解明した古代兵器のデータで、私の本体と接続されている。そして、それを本社に移送する必要がある」

 

 パルディスキ原潜基地から日本までは遠く、その距離を護衛するためにはそれなりの戦力が必要であり、今の鉄血の戦力だけでは難しいと判断された。

 

 そこでナインボールに加勢してもらい、戦力をより増やしておきたいというのがエリザの提案である。

 

「・・・その古代兵器は、どうするの?」

 

「現状では人に制御できるものではない。だが、いずれ使う時が来る可能性もある。だから今は封印しておく」

 

 翔は今は封印しておくならと依頼を受け、期日までに準備を進める。

 しかし期日が迫る中、翔に会いたいという人物がいたため会いに行く事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とあるバーに呼ばれた翔は出入口にM200とナディア、近くにエクスキューショナーとジェノを待機させ、バーに入る。

 

「君が、翔・ニールセンだね?」

 

 1つの席に座っていたのは、白髪混じりの灰色の髪にモスグリーンのスーツを着て、白いコートを羽織っている男性だった。

 

「はい、僕が翔・ニールセンです」

 

「初めまして、私は『グリフィン』。『士爵(サー)』と呼んでくれても構わない・・・どうぞ、座って」

 

 グリフィン、G&K(グリフィンから呼称をG&Kに移行)に所属する者で彼を知らない者はいない。なぜならG&Kの名にもあるように、彼はG&Kを設立した者の1人である。

 翔はひとまずサーの前に座り、話を聞くことにした。

 

「・・・ではグリフィンさん、僕に話したい事とは?」

 

「記念すべき初対面だ、もっと肩の力を抜いてくれて構わない。なんなら、私は年長者の老人と思ってくれて構わない」

 

 グリフィンは微笑み、翔も少し肩の力を抜く。

 

「1度君と話してみたかったのは事実だが、それとは別に2つ話したいことがある」

 

 グリフィンは少し体を乗り出す。

 

 

 

「・・・バラクーダノード、そのデータを入手してもらいたい」

 

 その"依頼"に、翔は眉を潜める。

 

「バラクーダノードがパルディスキ原潜基地にあるという情報が入っている。そして、パラデウスや正規軍の一部の者はそれを狙うだろう。しかし鉄血はある程度気づいている。だからバラクーダノードをどこかに移送すると私は見ている」

 

「・・・なぜ、"それ"が欲しいんですか?」

 

「バラクーダノード、それは兵器として強力過ぎる。そして、過ぎた力は誰かが単独で持てば力の均衡を乱してしまう。だから他に持っておく組織や人物がもう1人、最低でも必要なんだ」

 

 翔は脳裏に過去の事が浮かぶ。

 ある者は"力"を手にし、それに溺れ・・・

 ある者は"力"を手にし、誰かを守り・・・

 そして、ある者は・・・

 

「人形天使教の本部を単独で制圧し、数々の戦場を潜り抜けた君ならできるはずだ・・・もちろん、バラクーダノードを奪取してくれということではない。コピーさえあれば良いんだ」

 

 翔はいつもと変わらない表情で答える。

 

「・・・僕は、その依頼は受けることはできません。まず、それはバレなくても鉄血への裏切りになってしまいます。バレなくても、裏切りたくはありません」

 

 グリフィンは断られることを想定していたような表情をしている。

 

「もう1つは、僕の経験上・・・力は複数が持つより、誰が持つかを重要視したいんです」

 

 グリフィンは頷く。

 

「そうか・・・いや、すまない。初対面とはいえ、こんな依頼をしてしまって」

 

「いえ」

 

「それと、もう1つの話だが・・・これは依頼とは違うものだ」

 

 グリフィンからのもう1つの話、それは翔に『プロメテウス計画』に協力して欲しいというものだった。

 

 

 

 

 プロメテウス計画──

 

 それはロクサット主義を主体とした、一言で言えば世界統一政府の設立に向けた計画である。

 

「世界を1つにし、平等かつ公平に人々を助ける。そこに国境や宗教は関係無い。これが成功すれば、貧富の差も無くなり戦争も起こらなくなる・・・そこに、様々な勢力の戦力が集まっているナインボールと君が加わってくれれば、より平和に近づける」

 

 翔は優しげな表情を浮かべていたが、どこか哀れんでいるような・・・そんな顔をしていた。

 

「・・・ごめんなさい、僕はその計画には賛同も協力もできない」

 

「・・・なぜだい?」

 

「貧富の差や戦争を無くして、平和にしたい・・・そう思って行動するのは凄いよ。けれど、世界を1つの色に染め上げるのはダメだよ。それはやっちゃいけない」

 

 翔の声はひたすらに優しく、諭すようだった。

 

「互いに助け合うために人々が動き出しても・・・それは、今を生きる人々や、その人達が積み上げてきたものを壊しかねない。そして・・・あなたからは、それを感じる」

 

 翔の腕に付けてある小型デバイスからアラームが鳴る。

 

「・・・そろそろ時間ですので、僕はこれで。縁があればまた会いましょう」

 

「ああ、また会おう」

 

 

 

 

 

 翔は帰路を歩きながら父親の言っていたことを思い出す。

 

(世界を1つに染め上げる、その行為は多くの可能性を閉ざす行いだ。しかし最初にそれを唱えた者はおそらく善意が大半だ。自覚無き悪意があることもあるがな。だがそれは実行する側の多くにとって、利用できるシステムに変わり無い・・・つまり・・・)

 

 その後翔は、エリザの本体をどう護衛するかの考えを巡らせる。

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 カルト教団の1件は終わり、グリフィンが接触してきましたがバラクーダノードはどうなるのでしょうか?
 感想や高評価、お待ちしています!

●デス
 茶色の木目のあるフルフェイスを着けており、身長170cmで肉体年齢は19歳。
 フード付きの黒いローブに戦術人形の指を大量にぶら下げており、コーカサス社のハイエンドモデル。

 主な武装は酸性の液体を滲み出している大鎌。

 何かの終わりと転機に終着しており、退屈を異常に嫌っている。そして倒した人形の指を1本、ローブに付けている。
 また、仮面の下は人の顔をしておらず、顔の中心にカメラが1つあり、それ以外は噴出口で埋め尽くされてる。

 ローブは極めて高い防弾性を持っているが、刃物や高温には弱い。そしてローブの下には最低限の機能を備えた体とウイルスの入った4本のボンベがある。

 顔から撒かれるウイルスは空気中では短時間しか生存できないものの、生物の体内では極めて高い毒性を持っている。

●タワー
 緑のセミロングの髪で身長182cm、肉体年齢は18歳。
 赤茶色のレンガ模様をした厚手の服を体に張り付けるように着ており、コーカサス社のハイエンドモデルでもある。

 武装は両手のHG。

 相手に恐怖を教えることに快感を感じており、戦闘では回避を優先したスタイルである。

 また、人形の駆動系を動作無しで強制停止させる機能があり、強制停止された人形は「ボーン」という古時計のような音を耳にする。
 しかし生命体には効果は無く、強制停止の範囲は扇状に展開されるという弱点がある。
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