鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 秩序を、世界を壊す事もできる、人類の力を体現する存在。
 その力は、意志は、答えは、どこへ向かうのだろうか?




第58話 イレギュラー

「エリザは、渡さない!」

 

 M4を筆頭としてAR小隊はアレスと対峙しており、近くで鳴った爆発音を引き金に戦闘が開始される。

 

 

 

 M4が最初に駆け出すと共に他のAR小隊の面々も駆け出し、アレスに複数の方向から攻撃していく。狙うは装甲の薄い部位や関節などである。しかしアレスに乗ったカーターはそれを予想していたようで、狙われている部位をカバーしつつ動いている。

 

 そしてアレスはAR小隊の足元に向けてグレランを連射していく。榴弾の直撃ではなく爆発を利用した範囲攻撃に、翔達のように飛ぶことができないAR小隊は次々と無力化されていってしまう。

 

 始めにパイルバンカーを撃ち込もうとしていたSOPが、次に前衛にいたROが、次にコクピットを狙っていたM16が、そして彼女達を援護していたAR-15が、最後にM4が・・・と思われたが、M4は榴弾の爆煙の中からスライディングでアレスの懐に潜り込んでいた。

 

「よくも皆を!」

 

 M4は1マガジン分の弾を右足の関節に撃ち込み、アレスは大きくよろける。更に、リロードしてすぐに背後に回りつつ左足にも攻撃していく。

 

 アレスはM4を踏み潰そうとするが、M4は背負っていた長方形の箱を構える。すると箱は展開し、レーザー砲となりM4は引き金を引く。放たれたレーザーはアレスが振り上げた足に命中し、アレスは横転する。

 

 アレスはすぐに立ち上がろうとするが、M4はレーザーによる追撃を行い、レーザーはアレスの頭部や脚部に命中していく。

 

《人形風情が・・・》

 

 アレスは立ち上がり、グレランを撃ちながらM4を轢き殺そうとする。しかしM4はアレスの突進とグレランを回避すると共にアレスに掴まり、よじ登る。

 そして頭頂部にレーザーを0距離で発射する。

 

 アレスはよろけるものの、プラズマ砲をエリザの本体とバラクーダノードを乗せた装甲車へ向ける。その装甲車は今まさに有澤製の巡洋艦に乗せている所だった。

 

 カーターはM4の動揺を狙い、振り落とすつもりだった。しかし・・・

 

 

 

「そんなの、想定の内よ」

 

 M4はすかさずコクピットハッチに向けてレーザーを連続で撃ち込み、オーバーヒートするとARに切り替えて射撃し、コクピットハッチを破壊する。そして中にいたカーターを引きずり出して投げ飛ばす。

 

 カーターは辺りを見渡すが、もう部隊は全滅していた。

 

 もう勝てないと悟っているカーターに、エゴールが歩み寄る。

 

「・・・カーター元将軍、あなたを拘束します。もう、やめましょう」

 

 エゴールはカーターの肩に手を置く。カーターはホルスターからHGを取り出すが、エゴールがその手を優しく包む。カーターがエゴールを見ると、エゴールは首を横に振った。

 

 

 

 その後カーターとその部隊は連行されていき、翔達やAR小隊もそれぞれ帰還していく。

 

 しかし、飛び立つストークの中から翔はM4を見つめていた。その翔にフォートレスが歩み寄り、囁く。

 

「"イレギュラー"を、どうしますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼主:ナインボール

 

目標:力を示す

 

作戦開始時刻:20:00

 

報酬:550000ドル

 

 我々、ナインボールは傭兵としてだけではなく別の目的が存在します。

 その1つが、イレギュラーを探し出すこと。

 

 イレギュラーとは、規格外の力をもち、秩序すら破壊しかねないだけでなく、人類の力を体現する存在。

 そのイレギュラーの候補者の1人・・・それがM4A1、あなたです。

 

 見せてください。あなたの力を、あなたの意志を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 作戦エリアとして指定された場所は、タリンの外れにあるエピフィメラが咲き乱れる花畑だった。一見すると見渡す限りが白く、月明かりに照らされたこの光景は息を呑む程の美しさだろう。

 しかし、開花と共にコーラップスを撒く特性を考えれば極めて危険だと解る。

 

 そこに、M4は立っていた。

 そして雲1つ無い夜の空に、ストークが1機遠方から現れる。するとM4にジェノ、フォートレス、ダイバー、クラフターから通信が入る。

 

 

 

《あるオトギバナシをしてあげる》

 

《世界が破滅に向かっていた頃の話です》

 

《ある鳥が1匹の獣を殺し、人間を救ったです》

 

《だがその鳥は深淵に潜り、地上に残された人間は争いをやめなかった・・・》

 

 ストークが作戦エリアに入り、静止する。

 

《その鳥は・・・『黒い鳥』って呼ばれたの》

 

《これは本当の話です》

 

《けれど、消え去った話でもあります》

 

《なら、その黒い鳥はどこにいるんだろうな?》

 

 

 

 ジェリコを投下の合図を告げる。

 

《オペレーティングシステム、起動。これより投下します》

 

 ストークから投下された翔は普段とは違う装備だった。

 全身を赤と黒のカラーリングの装甲で覆っており、両手にはランポルドのライフルを装備し、背中には小型ミサイルと単装砲を装備していた。

 

《あなたは何のために戦うの?》

 

《何のために命を賭けるのですか?》

 

《その答えを、己の意志を見せるです》

 

《目の前の、本物の黒い鳥に・・・》

 

 静かに着地した翔はM4の方を見る。青く光るモノアイからは翔の表情が分からない。

 

「ターゲット確認、戦闘開始」

 

 その気迫は、これまでと明らかに違っていた。

 

 

 

 

 

推奨BGM『What am I fighting for』

 

 

 

 翔のモノアイが大きく光ると、OBでM4から見て左へ動きつつライフルを連射していく。M4は翔と反対に動きつつARを小刻みに撃っていく。

 

 そして、翔が通った後のエピフィメラはゆっくりと枯れていき、最後には力無く横たわっていく。

 

 翔は空中に飛び上がり、空中から攻撃を仕掛けていく。M4はライフルの連射をギリギリで回避しつつ、反撃していく。

 

 M4はこの戦いに勝たなければ、後に対峙するであろう敵に勝つことはできないと、そう悟っていた。

 だからこそ示す。己の意志を。

 

 ランポルドはライフルの中では威力が高めなものの、連射力と弾速は低く、近距離戦向きの性能をしている。しかし通常の戦術人形や人間の兵士相手では中距離でも余裕で倒せる・・・が、M4はライフルとしてのランポルドの弾を回避している。

 

 幾多の戦いを乗り越え、成長し・・・

 攻撃を回避するだけでなく・・・

 

 その姿は、紛れもなく"イレギュラー"と呼べるものだった。

 

 翔は両手で同時に射撃するのではなく、交互に撃つことで連射力を高めていく。しかしM4は斜めに駆け、攻撃を避けつつ翔に接近していく。

 

 次に翔は単装砲を空中から撃ち込み、M4は吹き飛ばされるがすぐに起き上がる。

 

 翔は小型ミサイルを発射するため、小型ミサイルを起動させる。M4はそこに射撃し、ミサイルを誘爆させる。小型ミサイルが破壊され、その爆発をモロに受けた翔は大きくよろける。

 そしてその瞬間、翔にフラッシュバックが起きる。

 

 

 

 それは1通のメールであり──

 

 

 

『始まりの地で待っている』

 

 

 

 その1文しかないメール、それを思い出した翔の心臓は跳ねるように鼓動する。

 

 

 

 更にフラッシュバックが起きる。今度は月明かりに照らされた地に背を向けて立っている機体がいた。

 その機体は損傷が激しく、所々火花が散り、火を吹いており、右腕は欠損している。

 

「あっ・・・」

 

 機体が振り向く──

 

 忘れるわけがない、忘れてはいけない──

 

 それなのに、ずっと忘れていた記憶──

 

 

 

 

 

 気づけばM4が目の前に迫っており、至近距離からレーザーを翔の胸に撃ち込んでいた。

 それまでにかかった時間は、翔の小型ミサイルが破壊された時から5秒程しか経っておらず、翔はよろけると共に地上に落ちていた。

 

「ぐうっ!」

 

 翔はブースターを使って空中で回転することで反動を最小限にするが、M4は追撃をやめない。

 そして翔はQBで後ろに向かって距離を取り、再び2人は向かい合う。

 

《どうですか、彼女は?》

 

「・・・うん。これならきっと大丈夫」

 

 翔は頭部装甲を外し、M4に向かって微笑む。

 

「認めるよ、君の力を」

 

 

 

 イレギュラーと認められたM4。その報酬には、報酬金だけでなくクラフターが作った新型モジュールが追加されていた。

 

 

 

 

 

 そして任務が終わった後、翔は自室でうなじの接続端子を撫でていた。

 

「もう、忘れないから・・・『エーアスト』」

 

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 投稿が遅れたり、サイトが落ちたりしましたが、なんとか投稿できました。
 今回はM4がイレギュラーとして認定されましたが、翔にも変化があったようですね。
 感想や高評価、お待ちしています!

●M82A1
 赤と黒の色の髪飾り型デバイスを頭の左右に付け、白い服の上に黒いジャケットを羽織っている、IOP製のRF型戦術人形。

 物静かで、人間の命令に従う事を重点としていた。

 その優れた演算能力を"導き"とし、カルト教団である人形天使教に神聖視され教祖として祭り上げられていた。しかしその信者達を止めることができなかったことを悔いている。

 現在はナインボールに所属し、バレットの愛称で呼ばれ、オストリッチ小隊に加わっている。

●人形天使教
 人形を信仰するカルト教団であり、目を付けた人形を拉致監禁しては天使や使徒とランク付けをしており、バレットの"導き"を悪用して強盗や殺人すら犯していた。
 また、自分達に従わない場合は人形であっても殺害している。

 ランクは低い順に使徒→天使→大天使→教祖となっており、手首にタグを付けている。

 また、ある日M200を拐った事から翔に本拠地を発見され、壊滅させられており、他の拠点も芋づる式に検挙されたため信者全てが逮捕されるのは時間の問題である。
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