BOCの社長が変わる前──
「あらぁ、こんなものかしらぁ?」
ドレイクはドリルロケットを駆使して複数のサンフラワーで構成された有澤重工の部隊を次々と撃破し、周囲の部隊を殲滅していた。
通常の戦術人形と違い、サンフラワーは全身を有澤重工謹製の装甲で覆っているため、スカルの武装では歯が立たなかった。
しかしドレイクのドリルロケットであれば貫くことができたため、スカル達は陽動などの囮に徹していた。スカルに攻撃され、スカルの方を向いたサンフラワーを背後からドリルロケットで貫き、そのドリルロケットを攻撃しようとした別のサンフラワーを別のサンフラワーが貫く。
しばらくして、サンフラワー達が撤退していくとドレイクは一部のスカル達を残して帰還する。
まだ佐渡島を占領する前のBOCの拠点はかつて軍事基地だった場所であり、ドレイクは帰還すると暖かいコーヒーを飲んでから宿舎に向かう。
宿舎は備品がほとんど無い殺風景な雰囲気であり、ドレイクは自室に入ろうとする。するとバオシーと鉢合わせる。
「あら、ドレイクじゃない」
「2日ぶりね」
2人はそれだけの会話で別れる。ドレイクにとってもバオシーにとっても、互いはさして気にしない関係だった。そもそも社長の方針により、ハイエンドモデルを共闘させることは無いためでもある。
翌日、次の任務のためドレイクは会議室へと向かった。そこにはティタンと社長、そして社長の護衛がいた。
当時のBOC社長『アディ・ネイサン』は七三分けの黒髪に黄色のふちのメガネをかけており、黒いビジネススーツを着ていた。
「集まりましたね。では、ミッションを説明しましょう」
会議室のモニターに、作戦エリアとなる場所の図面が表示される。
「目標は、この地区の制圧と陽動です。この地区は鉄血工造本社最後の補給線となっており、ここを制圧できれば鉄血工造は疲弊し、最後には潰えるでしょう・・・しかし、最後の補給線とあって守りは強固です」
モニターに、補給線を守っている部隊で確認できる戦力が表示される。ハイエンドモデルはいないものの、その分ノーマルモデルの数は多かった。
「闇雲にここで戦闘を行えば、間違いなくハイエンドモデルが現れるでしょう。そのため、先に近辺にある鉄血工造の物資集積所を襲撃し、陽動を行います。補給線がティタン、集積所がドレイクです」
作戦は簡単だった。
十数人のリッパーやヴェスピドに奇襲をかけてから倒すだけだからであり、ティタンはその圧倒的な防御力によるゴリ押しで補給線を寸断することに成功していた。
問題はその後である。
「やぁ、ドレイクじゃないか」
ドレイクはバオシーを含む部隊が制圧した地区にある旅館にて、防衛線を構築する任務を与えられた。しかしその旅館には有澤重工本社への"威嚇"作戦から帰還したテンペスタが既にいた。
「なぁに、"それ"?」
テンペスタはボロボロの旅館のラウンジにて、ソファーに座りながら膝に乗せた白猫の体を撫でていた。
「猫だよ」
「・・・質問を変えるわ。なんで任務と関係無いものを持ち込んでるのかしら?」
テンペスタは飄々とした様子で答える。
「拾ったんだよ。旅館の中にいたからね、試しに余ってた食料をあげたら付いてくるようになったんだ。この手触りといい、人間が猫を好きになる理由が分かる気がするよ」
ドレイクは苛立ちを感じて瓦礫の一部を投げつけた。テンペスタは咄嗟に風で瓦礫を弾き飛ばしたが、白猫は逃げてしまった。
「はぁ・・・君は少し娯楽を覚えた方が良い」
テンペスタは誇りと猫の毛を払い、どこかへ去っていった。
なぜ苛立ったのか、ドレイクには分からなかったが誰にもぶつけられないその感情は、表現できなかった。
しかし時は流れ、翔と対峙している時に再び苛立ちを感じた。
ドレイクは敵を殲滅すること、そのために憎み冷徹になるよう教えられ、優しさも娯楽も捨てて勝ち続けていた。
しかし、テンペスタはBOCで最初に作られたハイエンドモデルでありながら自分より強く、娯楽を楽しんでいた。
そして、今度は人間である翔に追い詰められている。
(なによ・・・なんなのよ!)
自分が捨ててきたものを全て持っていた翔のその暖かな顔を見て、ドレイクは怒り、自爆する。そしてその瞬間・・・
(アンタが指揮官だったらぁ・・・少しは違ったのかもね)
バオシーにとって、BOCに所属していることは誇りであり、戦いは己の価値を示し続けるために必要だった。そのために自分の役割を徹底的に磨き続けていた。
バオシーは大型ミサイルを使用した奇襲を前提としており、正面からの戦闘は得意ではなかった。しかし有事に備えて青龍刀を使った戦闘も磨いており、日に日に技術は向上していった。
しかし、ある日アディは作戦中の"事故"により死亡し、社長が変わることとなった。
新たな社長はバオシーやテンペスタから見ても能無しであり、作戦は戦略性の欠けるものが多くなっていった。
テンペスタは佐渡島の防衛のみの運用をされ、延々と宙を浮いて嵐を起こしているだけとなり、戦闘以外の楽しみを奪われていた。
1度だけ見えた顔は、目から光が消えていた。
そして、バオシーは・・・
「バオシー、お前は今からバリア発生装置の防衛任務に就け」
「防衛?私は奇襲を前提とされているわ。防衛ならティタンがいるし、ドレイクも防衛ができるじゃない?」
BOC社長は舌打ちをする。
「私は社長だぞ?社長に口を出すなら解体するぞ?」
BOC社長はワインを飲みながら続ける。
「それと、お前の邪魔なミサイルは外すことにした。あれは防衛には向かん、変わりにバリアのエネルギーをお前に纏わせる事でティタン以上の防御を手にできるのだ」
得意気に語るBOC社長に、バオシーは今すぐにでも殴りかかろうとした。しかしプログラムには社長に対して一切の暴力を振るえないよう設定されているため、拳を握り締めるしかなかった。
「分かったらとっとと行け」
数日後、バリア発生装置に寄りかかり、バオシーは俯いていた。バオシーに大型ミサイルを装備させる提案をしたのはアディだった。アディはバオシーに遠距離の位置を特定する能力に長けている事に気づき、奇襲のための手段として大型ミサイルを作らせた。
実際、作戦の成功率は大きく高まった。そのためバオシーはその恩に応えたかった。
しかし今では奇襲も大型ミサイルも封じられ、この地区は既に制圧済みのため、ELIDが来ることは滅多にない。そのため戦うことすらできずにここにいる。
(私は・・・私の役割は、なんだったのだ?)
バオシーのメンタル無いで次第に大きくなる虚無感。せめて腕だけは鈍らせたくないと、鍛練を続けようとしたが「エネルギーの無駄だ」と社長から禁止されてしまった。
宝石の意味を持つバオシーの輝きは、次第に失われていった。
そして、どれだけの時間が経ったか判らなくなった時、バリア発生装置を目指す部隊が現れ、目の前に有澤重工の部隊が現れた。
(ようやく、か・・・)
バオシーは笑みを浮かべる。しかし心は虚しさで埋められてしまっていた。
「あらあら、下等なマネキン共がやってきたわね」
バオシーは駆ける。
既にバオシーのメンタルにはエラーが大量に発生しており、動きは以前よりかなり劣化していた。
(もう、いいわよね・・・)
バオシーは既に求めていたのだ。バリア発生装置を攻め、己を倒してくれる者を・・・
赤い海の中、ドレイクとバオシーはそれぞれの話を語り終えた。
2人の前にいるのは翔であり、翔は2人の手を握る。
「ありがとう、話してくれて」
ドレイクは翔から顔を逸らし、バオシーは少し安堵した表情をしていた。
そしてバオシーは眠るようにして目を閉じ、波に消えるようにその体は破片となり、ふわりと消えていった。
「アンタの"優しさ"で、どこまで進めるか・・・見物ね」
そう言うとドレイクは去っていきながら消えていった。
そして、その翌日・・・翔はタリンに向かうこととなった。
読んでくださり、ありがとうございます!
メンタルがかなりやられており、なかなか進ませられずすいません。
今回はドレイクとバオシーの過去を少し深掘りしてみましたが、どうだったでしょうか?
感想や高評価、お待ちしています!
●デバステーター
銀髪のふんわりとしたセミロングの髪で身長180cm、肉体年齢は20歳。
黒いボディースーツを着ており、鉄血製ハイエンドモデル。
専用の人型兵器を使用しており、大きさは5m程全身が黒く武骨かつ重厚なフォルムと装甲を持ち、各所に赤い発光部位がある。
主な攻撃手段は格闘と背部のミサイルである。
口数は少なく、表情も変化は少ないが内面はかなりハイテンションである。
●アレス
獣に近いフォルムと逆関節型の足に緑のカラーリングをした、正規軍製の大型兵器。
武装は両腕のグレラン、背部に大型のプラズマ砲とミサイル、頭部に機銃である。
有事の際、最終手段としてカーターが乗るために作られたもので、開発はショーが行っていた。
●コジマキャノン
コジマ粒子を集束させて放つキャノンであり、かつてアクアビットが開発したものをクラフターが調整したもので、現在はアンチコマジマを使用している。
チャージするほど威力は上がり、フルチャージでの威力は並のネクストなら一撃で中破させるほど。しかしチャージに時間がかかることと弾数の少なさが欠点。