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第60話 人を愛した銃
朝、起きてカーテンを開けて朝日を浴び、伸びをする。
空は晴れており、朝日が眩しかった。
[おはようございます、M200]
「おはようございます、M」
メンタル内にいるMとの挨拶を交わしたM200は身支度と銃の点検をし、部屋の外へ出る。
食堂ではヨルムンガンドとフォートレスが朝食の準備をしており、それ以外には誰もいないようだった。どこかの椅子に座ろうとすると、翔がやって来た。
「おはよう」
「おはようございます」
記憶を完全に取り戻した翔の表情は清々しく、以前よりも輝いて見えた。
その日の任務は強盗組織への強襲作戦だったが、翔は用事があり作戦に参加できなかった。しかし想定より早く終わったため、M200は拠点で銃のメンテナンスをしていた。
メンテナンスが終わった頃に自室の扉をノックする音がした。誰かと思えばジェノだった。
「ちょっと時間ある?聞きたいことがあって」
ジェノに連れられてM200は近くの森へと入っていく。
「・・・聞きたいことって、なんですか?」
ジェノはM200の方を向くと、いたずらっぽい笑みを浮かべながら聞く。
「ねぇ、M200って・・・お兄ちゃんの事、好き?」
途端にM200は顔を赤く染め、メンタル内のMも顔を赤くしていた。
「な、ななな何を言ってるんですか!?」
「え~、違うの~?」
ジェノは煽るように下からM200の顔を覗き込み、まだいたずらっぽい笑みを浮かべているが、顔をよりM200に近づける。
「ここは私とM200しかいないし、他人にバラすわけでもないから、正直に言って良いんだよ?」
「えっと、その・・・」
そして、M200は顔を真っ赤にしながら絞り出すように答える。
「・・・す、好きですけど」
M200は言った後で顔を手で覆い、ジェノはM200にすり寄ってくる。
「え~なんでなんで~?」
M200はジェノを体から離す。
「な、なんでボクがそこまで言わなきゃなんですか!?」
するとジェノは急に煽るのをやめる。
「なんでそこまで聞くのかって?私はね、お兄ちゃんに幸せになって欲しいからだよ」
静かな間に風が吹く。
「お兄ちゃんはね、君達と出会う前に大切な人達を守れなかったんだ。2度もね」
M200にジェノからとあるデータが送られてくる。
「お兄ちゃんは、自分が戦えばその分多くの人を守れると信じて、ずっと戦ってきたんだよ・・・でも、最後に待っていたのは・・・」
ジェノは一瞬、表情が暗くなる。
その暗さは、いつも明るい彼女からは信じられない程のものだった。
「だからね、お兄ちゃんには幸せになってほしい。そして、お兄ちゃんの事が好きな人がいたら、引き合わせたい。でも理由をちゃんと聞いておかないと、お兄ちゃんが幸せになれるか判らない」
ジェノは「だから教えて」と言い、両手を広げる。
そして、M200は理由を話し始めた。
「・・・オカルトかもしれないですけど」
M200はかつて、赤い海の中で翔に自身の物語を聞いてもらった。
低反動かつ有効射程2km、かつ高い精度を持っている事。
しかし、それを可能とするための専用弾と風向きなどを計測する計算機が高額であり、軍には採用されず特殊部隊での小規模な運用に留まった。
不遇と言われ、中には時代遅れだと言う者もいた。
けれど、翔は嫌な顔1つせず聞いてくれていた。
そして褒めてくれた、認めてくれた。
もちろん、自身を使った者やマニアの中にも認めてくれた者はいた。
しかし、これまで欠点と言われていたものですら翔は褒めてくれた。
ロマンがある、というだけではない。
専用弾が高いのは製造法が特殊だからであり、高い精度を生むために必要なものであり、それを成功させているのは職人の成果である。
計算機は観測手がいなくても大丈夫なように必要だったし、電池切れに備えて弾道の計算表までついている。それが高額になるのは仕方ないし、逆にそこまでやってくれているから本気さを感じる。
そして、翔が最後に話を聞いたのはM200であり(順番的にそうなった)、最後に終わりを告げる銃声を翔はM200を使い、響かせてくれた。
M200から頼んだことだったが、翔は叶えてくれた。
そして、銃としてのM200として目覚める前・・・単なる戦術人形としてのM200だった頃、M200は何度も翔に守られていた。
しかし、翔が時折見せるふとした暗さにM200は心を痛めていた。
翔を守りたい、いつしかそう思うようになっていった。
今のままでは、いずれどこか遠くへ行ってしまう、あるいは壊れてしまう、そんな危うさを感じていたからだ。
その後、銃としてのM200として目覚めた後は守りたい思いがより一層強くなった。
それがいつしか、別の感情を抱くようになっていった。
その感情が、"好き"というものであることは、鉄血からの送別会の後だった。
翔の名前を呼ぶのが、嬉しかった。
翔が笑っているのを見ると、自分も笑顔になれた。
翔と一緒にいるだけで、幸せだった。
そして、翔が背負っているものを翔だけに背負わせない、全てを受け入れたい、そう自然に思った。
M200はそこまで話すと顔を押さえてしゃがみこんだ。
ジェノはM200の隣にしゃがんでその背中を優しく叩いた。
「ありがとね」
そしてジェノは小さく「合格、だよ」と囁いた。しかしM200がジェノの方を見ると、「けどね・・・1つだけ知っておいて欲しいの」と、何かをM200に告げた。
夕焼けに染まる、拠点の屋上。
そこにM200は立っていた。
[本当に、するんですか?]
メンタル内でMは俯いていた。
「・・・はい」
[ボクはメンタル内からしか見れないし、君としか話せない。それは解っているけれど、やっぱり・・・なんだか・・・]
屋上までの階段を上がっていく者がいる。
[でも、これは仕方ないことですし、やりたいことはある程度代わりにやってもらいますからね]
「そのつもりです」
そして、屋上に登ってきた者にM200は振り返る。
そこにいたのは、翔だった。
「どうしたの?急に呼び出して」
M200は緊張した様子で翔を見つめる。
「あ、あの!」
M200は叫ぶように、前のめりになりながら伝える。
「ボクと・・・つ、付き合ってください!」
一瞬、突風が2人を通り抜けて2人の髪が大きくなびく。
M200の顔は真っ赤で震えており、今にもオーバーヒートしてしまいそうである。
「えっと、その・・・付き合うってことは、交際ってことで、それはつまり・・・恋人って、こと?」
翔は翔で顔がゆっくりと赤みを帯びていく。
告白や交際、恋人などというものは翔にとって、正直どこか自分とは無縁のものだと思っていた。
物語の中の話やエーアストとある女性との交際くらいしか見たことがなく、現実感をあまり感じられなかった。
「一応、聞くけど・・・本当に僕で良いの?」
M200は頷く。
「今のボクは戦術人形としてのM200だけではなく、銃としてのM200でもあります・・・翔さんが、あの赤い海で最後に話を聞いてくれた、あのM200です」
翔は一瞬固まる。
赤い海の話は誰にもしていなかった。それなのに知っているということは、おそらく本当なのだろう。
「ボクは・・・銃としても人形としても救われて、そしてあなたと接していくうちに、いつしか翔さんをす、好きになってたんです。だから・・・」
M200は1度深呼吸をしてから続ける。
「あなたと、笑っていたい。そして、一緒にいさせてください」
そして、翔は・・・
「・・・僕で良いなら、よろしくお願いします」
読んでくださり、ありがとうございます!
今回はかなり書くのに難儀したので、お待たせしてしまいました、すいません。
ではこれにて、第6章の開始となります。
感想や高評価、お待ちしています!
●エーアスト・ヘイズ
銀の短髪で身長180cm、21歳で9月9日生まれ。
ストレイドのリンクスであり、AMS適正は87%。
容赦無い戦闘とは裏腹に仲間思いな1面もあるが、いつしか人を殺すことに快感を覚え、殺すことが楽しくなっていってしまった。
また、敵であれば容赦はしないが、一部のリンクスは見逃す場合がある。
そして1億人を己の手で虐殺し、多数のネクストと交戦するも全てを無補給で撃破し、最後に万全な状態の翔と戦って葬られた。
この事から、"人類種の天敵"と語り継がれることとなった。
余談だが、とある女性リンクスとは婚約関係にあった。
●ストレイド
黒と金のカラーリングをした中量2脚型ネクストであり、先鋭的で鳥のようなフォルムをしている。
そして月を背に黒い羽と金の羽が描かれたエンブレムをつけている。
武装は右手にショットガン、左腕にレーザーブレード、右背部に『増設レーダー』、左背部に『レールキャノン』、肩に『フレア』を装備している。
耐久は低いが機動力が高く、近接戦をメインにしつつ遠くから狙撃できるような武装構成であると共に、敵を1人も逃がさないために増設レーダーも装備している。