鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 バイタル正常。
 各部位に異常無し。




第61話 刀

 いつの間にか、大きくなったなぁ──

 

 

 

 エクスキューショナーは、そんなことを思いながら前の席でラーメンを啜る翔を見ていた。

 

 最初に出会った時、翔は記憶が無い状態だった。そして接していくうちに、翔を弟のように思うようになっていった。

 しかし、次第に弟のように思うだけでなく、翔といると強い相手と戦えると思うようにもなっていった。

 

 更に、最近では翔に挑戦したいと思うようにもなっていた。

 だが、記憶を完全に取り戻した翔はこれまでとは比べ物になら無い程の強さとなっており、そのあまりの強さに言葉が出なかった程である。

 

 勝てない──

 

 エクスキューショナーは、不思議とそう悟っていた。

 しかし、同時に気になりもした。あれ程の強さはどうやって手に入れたのかと。

 そして、どれだけの強敵と戦い続けてきたのかと。

 

 

 

 

 

 ある日、エクスキューショナーは翔を飲みに誘った。翔は酒の味は分かるものの、強化人間であるため酔うことができない。しかし、酒の味を楽しむと共に酒の席で話がしたいとのことだった。

 

「で、話って何?」

 

 翔が首を傾げていると、エクスキューショナーは翔のお猪口(おちょこ)に日本酒を注いだ。

 

「まあ、とりあえず1杯飲めよ」

 

 部屋の窓からは月が見えており、風に揺られて木の枝が揺れてさわさわと鳴っている。

 

「話ってのはだな・・・オレを弟子にしてほしい」

 

「で、弟子!?」

 

 翔は予想外の頼みに目を丸くした。エクスキューショナーはお猪口の中の酒を飲み干してから続ける。

 

「オレは強くなりたい。それこそ、お前を越えるぐらいに。けど今じゃあ、お前より前に越えなきゃいけないものが沢山ある」

 

 エクスキューショナーの脳裏には、コーカサス社やROSのハイエンドモデル達、そしてゾディアック達が浮かぶ。

 

「今後、敵はもっと強くなる。それに対して、オレももっと強くなりたいと思ったんだ。どれだけ素体を強化しても、技術は強くならないからな」

 

 エクスキューショナーの目は真剣そのものだった。

 

「・・・だから、頼む。オレを弟子にしてくれ」

 

 翔は自身を先輩と呼び慕う者はいたものの、弟子を取ったことはなく、相手を鍛えた事はせいぜい1人しかいなかった。

 翔の脳裏に、その先輩と呼び慕った者と翔と翔の父で鍛えた者の2人が頭をよぎる。

 

 翔が明確な弟子を取る事は、翔にとって不安があった。

 けれど、エクスキューショナーの思いを無下にはできない。

 

「分かった。僕で良ければ」

 

 するとエクスキューショナーは笑顔で翔の肩を叩いた。

 

「ハハッ!なら改めて、よろしくな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翔からエクスキューショナーに教えることは、基礎の確認からだった。姿勢や構え方など、基礎はどれも十二分にできていた。

 そして、翔がかつて教わってきたものや経験から来るものなどをエクスキューショナーに伝授し始めた。

 

 敵の攻撃を受け流し、それを利用してより強い一撃を入れ・・・

 最小限の動きで、最大の結果を生み・・・

 

 そして、エーアストの動きを参考にした、敵に攻撃も防御も、反撃も逃走も許さない徹底的な攻めを・・・

 

 人体の構造とそこから見えてくるものを教え、攻撃や回避に利用させ・・・

 

 更に、その様子をクラフターが覗き見していたが翔のレーダーによりバレていた。

 

 

 

 クラフターはエクスキューショナーを呼び出し、素体のアップグレードを持ち掛けた。

 

「どれだけ技術を磨いても、そのうち素体が技術に耐えられなくなる。人間と違って、機械は鍛えれないからね」

 

 実際、エクスキューショナーは翔から教わったことを試しているうちに、今の素体ではどこか着いていけてない感覚を感じていた。

 エクスキューショナーはそのアップグレードを受けることにし、クラフターは新しい素体の製作に取り掛かった。

 

 

 

 数日後、新しい素体が完成しエクスキューショナーは素体を変更した。

 新しい素体は基本スペックが上がっているだけでなく、アンチコジマを利用した駆動系や動力の強化もされていた。

 

 エクスキューショナーは早速翔と手合わせするが、自身がやりたい動きに素体が着いていけてるどころか、自身で新たな動きを見出だせる程にまでなっていた。

 

 

 

 竹刀を振り下ろし、回避されたらその勢いでより接近して下から斬り上げる。しかし翔は竹刀をエクスキューショナーの竹刀に滑らせるように当て、エクスキューショナーの竹刀は空を斬る。

 そして翔はそのままエクスキューショナーの腹部に竹刀を当てる。

 

 続いて、エクスキューショナーは居合い斬りを至近距離に入って行おうとしたが、翔はジャンプしてエクスキューショナーの肩に手を置き、体を捻ってエクスキューショナーの真後ろに着地する。

 エクスキューショナーが振り向き様に攻撃しようとすると、翔はエクスキューショナーの喉に竹刀の先を当てていた。

 

 最後に、複数の流派の剣術を混ぜ合わせた連撃をしていくが、翔は回避していき、エクスキューショナーの横をすり抜けるようにして竹刀をエクスキューショナーの脇に当てる。

 

「だぁ~!まだ勝てねぇのかよ~!」

 

 敗北したエクスキューショナーは畳の上に仰向けに倒れ、悔しさを口にした。

 

「けど・・・なんか、なんで強くなろうと思ってたのか、なんで強い相手と戦いたいか、解った気がする」

 

 エクスキューショナーは起き上がってあぐらをかくと、翔はエクスキューショナーの前に座る。

 

 

 

 

 

「オレ、お前を守りたかったんだ」

 

 翔は頷きつつ、真剣な様子で続きを聞く。

 

「お前とオレが最初に出会った時・・・いや、お前と陽と加奈を見つけた時、実は周囲の生存者を探していたんだ」

 

 その時エクスキューショナーが担当していた任務は、BOCの攻撃により散ってしまった生存者を探す任務だった。

 しかし生存者と思われる人々は死亡していたかELIDになっており、周囲に生体反応も無かったのである。

 

 そのため、仕方無く帰還している最中・・・翔達を見つけたのだ。

 

「それで、その時の翔の様子が・・・酷く怯えて見えたんだ。ELID達を前にしているからじゃない、もっと別のものでだ」

 

 今となっては、怯えの原因は記憶喪失によるものであることが解っている。

 

「もう、見てられない程だった。だから迷わずそっちに行くよう指示を出したし、飛び出したりもした。オレが守らなきゃいけない、そう思ったんだ」

 

 エクスキューショナーはどこか安堵したようなため息をつく。

 

「けどよ、もうお前はオレより強くなって、記憶を全部取り戻した」

 

 その場に、静かな間が訪れる。

 

「でも、それでも・・・オレはお前を守りたい、お前の剣になりたい・・・ああ!これは告白とかそういうのじゃなくてな!」

 

 すぐにエクスキューショナー弁明し、少し間が空くと2人は同時に笑いだす。

 

「ハッハハハ!真面目な空気が台無しじゃねぇか!」

 

「アッハッハッ!そっちが言わないでよ!」

 

 そして、2人は無言で拳を突き合わせた。

 

 

 

 

 

 2日後、ELIDを殲滅する依頼を受けた翔は作戦エリア端の崖の上に立っていた。

 その周りにはM200とナディア、AA-12とトンプソン。そしてエクスキューショナーがいた。

 

「行こう、作戦開始!」

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 メンタルの問題が頻発し、なかなか進められていませんでした、すいません。次回も遅れるかもしれませんが、しばしお待ちください。

 今回はエクスキューショナーがメインの話でしたが、どうだったでしょうか?
 感想や高評価、お待ちしています!

●アディ・ネイサン
 七三分けの黒髪に黄色のふちのメガネをかけており、身長170cm。29歳で1月3日生まれ。
 黒いビジネススーツを着ており、BOCの2代目社長である。

 冷静沈着だが、皮肉屋でありBOC以外の他者や兵器を見下している。
 社長としてだけではなく作戦指揮官としても活動しており、その能力は高く、日本の4大企業を相手に渡り合っていた。

 その高い指揮能力から2代目社長となり、日本に攻め入ったがその後不審な死を遂げている。
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