全身のアンチコジマ濃度、変動無し。
研究所の裏手に、ナディアは反逆小隊の『RPK-16』に連れられてきていた。
「それで?2人で話したい事って?」
数分前、翔とM200、ナディアはショーからの依頼を完了し、帰還するところだった。そこにちょうど反逆小隊と鉢合わせ、RPK-16はナディアに2人で話したいことがあると言ってきた。
翔とアンジェは特に問題は無いと判断し、ついでにショーも交えて色々話すことにした。
そして研究所の裏手にて、RPK-16が口を開く。
「あなた・・・あの赤い粒子に触れてから、人形としての反応ではなく生体反応が出るようになったそうですね。それはなぜです?」
RPK-16は興味深そうな、それでいてミステリアスな笑みを浮かべながら聞いてきた。
「それは私にも解らないわ。確かにあの時1度機能停止して、あの粒子のお陰で復活したり、その時から生体反応が出るようになったわ。けれど、なんでそうなったのかは未だに判らない」
ナディアは肩をすくめながら答えた。
「それに、なんでこんなこと聞くの?あなただってある程度の予想はついてたと思うけど」
RPK-16は笑みを浮かべたまま、その問いに答えた。
「私はですね・・・人間になりたいんですよ」
ナディアは特に驚いていない様子でいた。それどころか・・・
「別に、それでも良いんじゃない?」
予想外の回答に、RPK-16は目を丸くしている。
「人形は人と同じような感情と形を持ってて、でも中身は機械。人間と同じように食事を摂ったり、笑ったり泣いたりもする。けれど傷ついたら修理しなきゃだし、子供を作ることができるわけではない」
ナディアは自身の持つARを撫でる。
まるで、自身の体を撫でるように。
「更には恋愛をする人形もいる。それなら、人間になりたいと思う人形がいてもおかしくないわ」
そこでナディアは「けれど」と付け加え、RPK-16の胸に人差し指を当てる。
「人間になるのを求めても、結果はどうあれ過程を間違えないよう、気を付けなさい。それに、人形である私達でも心はある。それで十分じゃない?」
ナディアは微笑み、去っていった。
その穏やかな微笑みを見たRPK-16は、少しだけ呆れたような表情をしていた。
しかしその呆れが誰に対してのものか、それは本人のみぞ知るといったところである。
ナディアは翔と共に潜入任務である町に来ていた。
ごく少数での潜入が必要となる任務だったため、翔とナディア、だけが作戦に参加しており、それぞれ別の位置から潜入している。
目的はこの町に麻薬組織の拠点があるか調べるためであり、その証拠は既にいくつか見つかっている。
続けて証拠を集めていくと、想定より早く拠点を発見する。
目的を達成した翔達はヘリのあるランデブーポイントへ向かうが、途中で麻薬組織の構成員に追われている人形と遭遇した。
「お願い!助けて!」
人形はシャツしか着ておらず、メンテナンスもされていない様子だった。
「ナディア、お願い!」
ナディアは人形と共に隠れ、翔は麻薬組織の構成員と戦闘を開始した。
鉄血製HGで構成員の銃を撃ち抜き、接近して銃剣で手足を切って怯ませ、打撃で戦闘不能にさせていく。
次々と構成員達は撃破されていき、撤退も許されず全滅した。
ナディアと合流した翔は急いでランデブーポイントへ向かい、帰還した。
その後、人形が落ち着くまで待ってからゆっくり話を聞いた。
その人形は"人間になりたい"という願望を持っており、人間にさせてくれると言われて構成員に付いていき、"乱暴"されていたとのこと。
更に、その麻薬組織は人形用の麻薬も研究しており、人形はその実験台にされたりもしていたようである。
麻薬組織を追っていた警察も、それには驚愕していたがその人形の身柄は元の主の元に無事に帰された。
そして主曰く、主との子を欲しての"人間になりたい"という願望だったようである。
「人間になりたい、ね・・・」
ナディアは泣きながら再開を喜ぶ人形とその主を見ながら、そう呟いた。
次の日、拠点のある地域には雨が降っていた。
大して強くはない雨だったが、一部の洗濯物は外に干していたために濡れてしまい、洗濯物を干したIDWは崩れ落ちていた。
そんな光景を尻目に、ナディアは拠点の一部に作られている縁側へ行ってみた。
翔はそこで雨の音を聞きながら濡れる花を眺めていた。
ナディアは翔の隣に座り、声をかける。
「人間の定義って、何かしら?」
突然の質問に翔はキョトンとしたが、瞬きをした後に答える。
「唐突だね・・・うん、人間の定義って、なんだろうね?あるのかもしれないし、無いのかもしれない」
翔は雨の降る空を見上げる。
「肉体がある、というのが人間と言う人もいる。けど、僕は人造の人間を知ってる。その人造の人間が、"人間"と言えるのかどうかという問題もある」
翔がかつて住んでいたレイヤードの隣人を思い出す。
無口だが、薬の知識が豊富だった隣人。
しかしそれは完全な人間ではなく、人造人間だった。
「それに、とある学者は、人間が作った人工知能を"人類の末裔、あるいは進化先"と提唱していたって、聞いたことがある」
現に、翔を育てた両親は人工知能だった。
そして、ナディアやM200などの人形も、人と見分けなどつかない。
「でもある人は、魂があるか無いかで判別できると言っていた・・・その"魂"の有無を確かめることだって、できていないのに」
人形と人間の違い、それは身体が肉や骨で形成されているか機械で形成されているか、それしか無いようにも思える。
「心があるかどうかだけで良い、という人もいれば関係無いという人もいる。だから結局、分からないんだよね」
翔は空を見上げながら微笑んでいる。
「でも、色んな意見や見方があって、それで良いと思う」
ナディアの方を向いた翔の表情は、曇り1つ無かった。
「なんなら僕の体は全うな人間じゃなくて、色々弄くられた強化人間だよ。だから人間の定義は人それぞれで良いと思う」
翔は手を握り、開く。
雨は先程より弱まり、もうすぐ止みそうな雰囲気に変わっていた。
「なるほど、そういう考えもありね」
雨に濡れた花は、濡れてもなお咲き誇っていた。
ナディアは自分の胸に手を当てる。
本来無いはずの、心臓の鼓動がしていた。
(ホント、この体どうなっちゃったのかしらね?)
読んでくださり、ありがとうございます!
なんとか投稿できました。
今回は少し難しい話になりましたが、分かりにくかったらすいません。
感想や高評価、お待ちしています。
●RPK-16
銀の短髪で白と黒の服を着ている。
ロシアの国家保安局製の戦術人形であり、種別はMG。
ミステリアスで掴みどころの無い性格で、常に笑みを浮かべている。
人間の文法を好きになり、独特な表現を多用するがからかっているように見えることも多い。
反逆小隊に所属しており、主に電子戦を担当している。
また、人間に対する憧れを持っており、人間になる方法を探している。