鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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第64話 そよ風

「どうだ?この景色は」

 

 ある日、テンペスタは翔とM200をある山に連れてきた。

 そこはかつてBOCがロシアを拠点としていた頃の拠点の1つであり、今は鉄血の工場の1つとなっている。

 

 その山の山頂から見える景色は麓と湖が見え、空は晴れておりいくつかの雲がゆったりと空を漂っている。

 

 

 

 そよ風が3人を撫でるように吹き、テンペスタは目を閉じてその風を感じている。

 

 テンペスタの服は再び新調したようで、全身を黒に染めている。

 そしてロングコートとドレスを合わせたようなものに変わっており、内側にはボディースーツを纏っており、肌の露出は少ない。

 

 出発する前にナディアから「意外とお洒落さんなのね」と言われ、テンペスタは得意気に鼻を鳴らしていた。

 

 

 

 テンペスタの表情は、初めて翔と出会った時のような狂気的な雰囲気は感じられず、病的なまでに白かった肌は暖かみを帯びている。

 

「私は・・・こんな自然のそよ風が好きでな。暴風は好みではない」

 

 テンペスタはそう言いつつ、翔達の方を向いて手すりに寄り掛かった。

 

「風、気持ち良いですね」

 

「うん」

 

 M200と翔も風を感じているのを見て、テンペスタは微笑んだ。

 すると翔は尿意を感じ、トイレへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翔がトイレに行くのを見て、テンペスタはM200を見る。

 

「・・・翔とは上手くやれてるか?」

 

 突然の問いにM200は固まる。

 

「えっと・・・その・・・はい」

 

 テンペスタは笑みを浮かべると、風でM200の前髪を吹き上げた。

 

「もっと自信を持って良い。お前は仮にも翔と付き合ってるんだろう?」

 

「ど、どこから聞いたんですか?」

 

 テンペスタは鼻で笑い、いたずらっぽい笑みを浮かべた。

 

「ダイバーが聞いてたらしくてな。ナインボールにいる者は全員知っているぞ」

 

 M200は顔を赤くしつつ、後でダイバーにお灸を据えると決めた。

 

「・・・テンペスタさんは、翔さんをどう思ってるんですか?」

 

「さぁな?私の主への感情が、恋愛か友愛か・・・それは私にも分からない」

 

 テンペスタ肩をすくめながら答え、空を仰いだ。

 空は相変わらずのんびりとした雰囲気を感じさせている。

 

「まあ少なくとも、主への尊敬や感謝は持っているさ」

 

 テンペスタがそう言い終えた時、翔が戻ってきた。

 

 

 

 

 

 その後、夕方となりそろそろ帰還しようとしたところで、砲撃音が鳴り、3人はすぐに反応する。

 すると空から砲弾が降ってきたため、テンペスタが暴風で砲弾を逸らし、翔はM200と共に伏せる。

 

「今の・・・迫撃砲だ!」

 

 翔とM200はすぐに起き上がり、駆け出す。

 テンペスタもすぐに移動を開始し、その場から離れる。

 

「まったく、良い景色と風のある場所で砲撃とはな!」

 

 テンペスタは砲弾が発射された方向へ行き、砲撃手を攻撃する。

 砲撃してきたのはROSのノーマルモデル、ポーンだった。

 

「こいつら・・・ROSだ!」

 

 ポーンを撃破したテンペスタはすぐに翔達と合流すると2人と自分に風を纏わせる。

 しかし、車へと向かおうとした3人の前にポーン達と共に立ち塞がる者がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 スキンヘッドの頭にオレンジ色のフードを被り、黄色い半袖の服を着ており、脚部は装甲に覆われており、特に外側は大型化していた。

 両腕にはシールドを装備しているが、その内側には2連装砲を装備している。

 

「私は(ムグゥー)、翔・ニールセンを渡してもらうよ」

 

 更に翔達の周囲に4脚型の自律兵器『ルーク』が現れた。

 カーキ色で流線型のフォルムをしており、2つのレーザー砲を向けている。

 

「渡しません!」

「渡さんよ!」

 

 M200とテンペスタはほぼ同時に攻撃を開始し、翔はホルスターからHGを取り出す。

 そのHGはクラフターが新たに作った本来起こり得た未来のものであり、名前は『LARE』である。

 

 LAREはHGとしては大きく、放たれた弾丸はランポルドより低い威力だが、十分に装甲を貫通できるものだった。

 しかし、ムグゥーのスピードは極めて速く、当てることは難しかった。

 

 また、ルークはバリアを張りながら攻撃してきている。

 しかしルークの砲撃は高威力のものだけでなく、拡散させて発射することも可能だった。

 

 レーザーを拡散させることで、威力こそ下がるものの確実に当てていくつもりのようである。

 

 強化人間である翔や飛べるテンペスタはともかく、M200はアンチコジマによって強化されていても、どうしても被弾してしまう。

 更に、翔達を囲むようにルーク達は陣取っているため、被弾が増えていく。

 

 

 

 テンペスタは暴風を起こし、風の無い部分をM200の周りに作る。

 そのM200に翔が駆け寄り、被弾により歩けなくなったM200を担ぐ。

 

 しかし、暴風によってムグゥーとルーク達はこれまでのように撃破か無力化できると思われたが、そうはいかなかった。

 

 ムグゥーとルーク達の脚部から杭が展開され、地面に打ち付けられる。

 そしてムグゥーは腕組みしながら一言・・・

 

「やれ」

 

 ルーク達は翔とM200を狙うのをやめ、一斉にテンペスタを狙う。

 そして放たれた最大出力の拡散レーザーはテンペスタの回避を許さず、数発が命中する。

 

 更に、時間差で放たれたムグゥーの砲弾は、風で飛ばされる位置を計算されており、砲弾は空中で爆発し拡散レーザーを飛ばす。

 それにより、テンペスタは更に被弾して落ちてしまう。

 

「テンペスタァァァァァッ!」

 

 翔が叫び、テンペスタは翔に手を伸ばそうとする。

 しかし一瞬、風が途切れ・・・そこにムグゥーは大きく飛び上がり、テンペスタ蹴り飛ばす。

 

 

 

 

 その先にあった木に、テンペスタは腹部を貫かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 テンペスタは、赤い海の中にいた。

 

「・・・なんだここは?ふむ、メンタルに異常でも起きたか」

 

 テンペスタは飛んで水面へと向かおうとするが、飛べずにジャンプしただけで終わる。

 

「・・・歩くか」

 

 しかし、いくら歩いても出口は見えなかった。

 すると背後から知った声で声をかけられる。

 

「あらぁ?そんなにあの人間に思い入れができたのかしら?」

 

「まるでナイトか忠犬ね」

 

 振り向くと、知った顔の2人がいた。

 

「ドレイク?それに、バオシーまで・・・なぜ?」

 

 テンペスタの問いを2人は無視して質問をしてくる。

 

「どうしたい?このままゆっくり眠ることもできるけど?」

 

「それとも、守りたい?」

 

 テンペスタはすぐに「愚問だ」と返し、ドレイクとバオシーは笑う。

 

「なら行きなさい」

 

「さぁほら早く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『Silent Line Ⅲ』(ACSLより)

 

 

 

 テンペスタは目を見開き、アンチコジマが混ざった風を使って自身を串刺しにしている木から脱する。

 その目は赤く輝いており、すぐに翔とM200の元へと向かった。

 

 ルークのうちの1機の背後から接近し、風で急降下してルークを踏みつけ、アンチコジマを爆発させる。

 その爆発によりバリアを剥がし、アンチコジマを纏わせた徹甲弾をルークに撃ち込む。

 

 そして、ふわりと浮き上がってアンチコジマを混ぜた暴風を起こす。

 

「主よ、M200よ、待たせたな」

 

 翔とM200はテンペスタの身に起きた事を悟ったが、ムグゥーは固まっており、ルーク達はテンペスタに砲口を向ける。

 しかしテンペスタの風と共にアンチコジマが爆発し、拡散レーザーは防がれる。

 

「さて、次はこちらの番だ」

 

 テンペスタはルーク達に暴風を叩きつける。

 そしてアンチコジマが絶え間無く爆発し続け、バリアはあっという間に剥がされる。

 そこに更なる爆発が重なり、ルーク達は撃破されていく。

 

 ムグゥーは逃げようとするが、翔が回り込んで腹部に拳を打ち込み、続けて下顎にも拳を撃ち込み、ムグゥーは倒れる。

 

 

 

 戦闘が終わったその場に、1つのそよ風が吹いた──

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!
 また、誤字報告ありがとうございます!

 執筆が難航したり、体調を崩したりして遅れてはいますが、今後も無理はしなくとも必ず次話を投稿し続けます。

 今回は単にほとんど完成していたため、少しだけ修正して投稿しました。
(と言いつつ執筆を我慢できなかったのもあります)

 今回はテンペスタの話でしたが、どうだったでしょうか?
 感想や高評価、お待ちしています!

●ムグゥー
 スキンヘッドの頭にオレンジ色のフードを被っており、身長は170cm。
 黄色い半袖の服を着ており、脚部は装甲に覆われており、特に外側は大型化しており、ROSのハイエンドモデル。

 武装は両腕のシールドであり、その内側には2連装砲を装備している。

 慎重な性格であり、勝つためにはより慎重かつ確実に作戦を立てていく。

 大型化した脚部により見た目以上のスピードを出せるだけでなく、格納されている杭を地面に打ち込んで自身を安定化させる事も可能。
 また、作戦によって砲弾の種類を変えることもしている。

●ルーク
 カーキ色で流線型のフォルムをしている、ROS製4脚型の自律兵器である。

 武装は機体上部にある2つのレーザー砲と機体下部の機銃である。

 レーザー砲は通常の砲撃だけでなく、拡散させて散弾とする事も可能であり、面制圧に優れている。
 また、バリアを張ることもできる。
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