新たな戦術システムの構築を開始。
ナインボールの拠点、その廊下を走る3人の影。
1人は幼体ネイト『アンナ』、その隣を走るのは異性体『フェイ』である。
そして、2人を追いかけるのはティタンであるが、ティタンは鎧を着てはいなかった。
「バーカアーホオタンコナースビ!」
アンナの暴言にティタンは目を吊り上げ、本気を出して追いかける。
するのアンナとフェイはすぐさま捕まり、脇に抱えられる。
ティタンの見た目は前と違い、髪をツインテールにしていた。
ツインテールにした理由は、ファッションに興味の無かったティタンにクラフターが「せめて髪は」と髪型を変えたからである。
アンナとフェイは幼体ネイトや異性体と代わりは無いように見えるが、アンナは両手首に紫のシュシュを付けている。
フェイはラメ加工を施した赤い髪止めを付けている。
そして3人は拠点内でのケイドロをしており、ティタンが鬼となっていた。
アンナは幼体ネイト達のまとめ役をしているからか、自らが囮となっていた。
フェイは異性体の中では特にアンナと仲が良く、共に囮役を買って出ていた。
その後ティタンが檻に戻った頃には全員解放されており、ティタンは目元をピクピクさせていた。
「こいつらぁ・・・」
ケイドロが終わり、ティタンは自室のソファーに寝そべっていた。
「あ~疲れた~」
すると不意に冷たいものが額に当てられ、ティタンは飛び起きる。
見ると、ルームメイトのテンペスタが缶ジュースを持っていた。
「随分、子供に好かれるようになったな」
テンペスタが缶ジュースを投げて渡し、ティタンは一気飲みする。
「・・・ぷはーっ!旨い!」
ティタンはゴミ箱に空き缶を投げ捨て、再びソファーに寝そべる。
「なんでだろうな?」
テンペスタは部屋を出る時、一言言い残していった。
「・・・ほぼ確実に、この前の一件だろうな」
1週間前──
その日、町へアンナとフェイ、そしてティタンとナディアは買い物に出ていた。
買い物のやり方などを教えるために来ていたのだが、事件が起こる。
買い物を終え、ナディアが会計をしている間にティタンはアンナとフェイを見ていた。
2人は今日のおやつを予想し合っており、和やかだった。
「今日のおやつ、あちしはポップコーンだと思う!」
「私、金平糖だと思う」
この当たりは治安は比較的良い場所である。
しかし念のため2人に不審な人物が近づかないよう、ティタンは周囲に目を光らせていた。
すると突然銃声が鳴り響き、周囲の歩行者達が一斉に走り出す。
大勢の逃げ惑う人に押され、ティタンはアンナとフェイを一瞬見失ってしまう。
次の瞬間、アンナの悲鳴が聞こえる。
見ると、人混みに紛れてアンナが担ぎ上げられているのが見え、ティタンは駆け出そうとするが、一瞬振り返る。
「・・・フェイ、必ず連れて戻る」
作戦中とは違い、鎧を纏っていないティタンだが・・・
その背中は、フェイにとっていつもより大きく見えた。
「ちょっ、ティタン!・・・ああもう!」
ナディアはフェイと共に路地に隠れ、拠点に連絡をして待機する。
本当は銃撃犯を無力化したかったが、子供を拐う者がいる事を考えると簡単に動くことはできなかった。
アンナを連れ去った男性は人混みから離れ、人気の無い工事の跡地にやって来た。
そこで待機していた仲間と共にアンナを木箱に入れる。
その周囲には子供が入れられた木箱が他にもいくつかあった。
「しっかし、案外上手く行くもんだな」
「今頃、あの周囲はパニックで警察もそっちの対応に追われてるさ」
「でもアンタ達はやり方が雑よ。私なんか一緒に逃げるフリしたら1発だったわ」
すると犯罪グループのリーダーが大型トラックの荷台を叩く。
「おい、話してないで積み込むぞ」
「へいへい」
グループは子供が入った木箱をトラックの荷台に積み込んでいき、残りはアンナの入れられた箱だけとなった。
その時、ティタンが到着する。
「おい」
ティタンの怒りが籠った表情に、犯罪グループは後ずさる。
「貴様、こちらの子供をどこへやった?」
ティタンがアンナを連れ去った男性を睨む。
「な、なんの事だ?」
「しらばっくれるな!」
ティタンがアンナを連れ去った男性に殴りかかろうとすると、木箱の1つから物音がした。
微かに聞こえるヒュー、ヒューと鳴る音・・・
過呼吸である。
暗い箱の中、僅かに感じられる薬品の臭い・・・
それにより、アンナは過去の記憶がフラッシュバックする。
その恐怖により、アンナは過呼吸となり胸を掴むように押さえる。
そして音を聞いたティタンの顔は、憤怒に染まっていた。
ティタンは間髪入れずに正面の男性を殴り飛ばし、男性の鼻が潰れる。
ティタンはこの時、フォートレスから教わったことを思い出した。
「あなたの鎧は極めて硬く、特殊な方法でしか破壊できません。しかし、鎧には破壊された時や鎧を装備していない時の事が想定されていません」
鎧は構造上、内部に拳銃を仕込んだり装備して鎧を纏う事ができない。
そのため、鎧が無い時にティタンは極めて脆弱となる。
それを補うため、鎧無しでの戦闘をフォートレスから叩き込まれた。
「鎧が無ければ、あなたは私と同様に身軽です。それを活かすのです」
正面の男性を殴り飛ばした後、ポケットから拳銃を抜こうとした男性の腕を掴む。
そのまま拳銃を奪って太ももを撃ち抜き、拳銃を解体する。
ナイフを誘うとして来た2人の男性に対し、片方は足をしゃがんで蹴り飛ばし、もう片方は勢いをつけて腹部に拳を打ち込む。
立ち上がってナイフを振りかざした男性の腕を掴み、そのままへし折る。
そしてナイフを奪い、人質を取ろうと箱を開けようとした女性にナイフを投げつける。
腕にナイフが刺さり、叫び声をあげる女性をティタンは蹴り飛ばす。
犯罪グループの構成員を全て無力化したティタンは木箱を開け、中にいたティタンを優しく抱き上げる。
「もう、大丈夫だ」
ティタンはアンナが落ち着くまでアンナを抱き締めていた。
その後、ティタン達は駆けつけた翔達によって拠点に運ばれ、アンナ達を拐おうとした犯罪グループは逮捕された。
その日からである。
ティタンがアンナやフェイを始めとする、幼体ネイトや異性体達に懐かれるようになっていった。
「全く、私は懐かれるような人形ではないのだがな・・・」
そう言いつつ、ティタンはソファーの上で眠りについた。
夜、会議室にてバタフライムーンの面々が集まっていた。
「んじゃ、ダイバーは報告を」
ジェノに促されたダイバーは全員にデータを共有する。
そのデータにはムグゥーから得られた情報が並んでいた。
「あのデカ足、なかなか口を割らなかったので直接メンタルからデータをぶっこ抜いたです。そしたら1発で壊れやがったです」
余程口を割らなかったのか、ダイバーは大人しい口調ではなくなっている。
「コホン・・・けれど、得られた情報は有用なものばかりだったです」
ROSのハイエンドモデル達の情報や過去の作戦記録、そして何より・・・
「ようやく、ROSの拠点の位置が分かりましたね」
フォートレスの言葉に、全員が頷く。
次に、各人形の項目を見ていたクラフターが口を開く。
「私はこのデータを解析して、今後の対策に当てるさ・・・にしても、まさかこいつらバックアップが無いなんてな」
今回判った事の中には、ROSのハイエンドモデルにバックアップが存在しないことが入っていた。
「単純に戦力や兵器としてだけ考えるなら、バックアップは必ず取っておくはずだ・・・だが、そうでないということは、裏がありそうだ」
ガンナーはそう言いつつ、過去の作戦記録を確認していた。
「・・・ムグゥーはどうしますの?」
スライサーの疑問に対し、ジェノはお茶を飲みつつ答える。
「廃棄だね。メンタルがそもそも極めて計画的に殺しに来てるし、ダイバーがデータぶっこ抜いた時にメンタル壊れちゃったしね・・・あーあ、お兄ちゃんに何て言われるか」
最後の部分はダイバーを見ながら言っていたため、ダイバーは机に突っ伏した。
「・・・とりあえず今日はここまでにしておきましょう。残りは後日で」
その後、会議室から去った後のジェノは・・・まるで、ご馳走を前にしたかのように舌舐りしていた。
読んでくださり、ありがとうございます!
投稿頻度はやはり下がってしまっていますが、無理せず続けていきます。
今回はティタンがメインの話でしたが、どうだったでしょうか?
感想や高評価、お待ちしています!
●アンナ
幼体ネイトの1人であり、両手首に付けている紫のシュシュ以外に見た目の変化はない。
天真爛漫でお転婆な性格で、幼体ネイト達のまとめ役をしている。
異性体のフェイとは特に仲が良く、よく一緒に遊んでいる。
●フェイ
異性体の1人であり、ラメ加工を施した赤い髪止め以外に見た目の変化はない。
大人しく、慎重な性格をしている。
アンナとは特に仲が良く、アンナのストッパーにもなっている。