鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 派生型システムの構築を完了。
 余白の確保を完了。




第67話 鴉と蛇

 2人の蹴りが同時に繰り出され、靴の裏を合わせるように互いに蹴りを受け止め合う。

 

 格闘戦を繰り広げているのはヨルムンガンドとウロボロスである。

 

 訓練所での手合わせではあるが、手加減などしていない。

 ヨルムンガンドはウロボロスの拳を受け流し、そのまま接近しようとするが、ウロボロスは足の力を抜いて攻撃を回避する。

 

 そのままウロボロスは腹部に拳を打ち込もうとする。

 しかしヨルムンガンドはその手を掴んで捻りあげる。

 ウロボロスはその手を引き寄せるようにしてヨルムンガンドの顔に拳を振るう。

 

 そこをヨルムンガンドは額で頭突きをしてガードする。

 

 その後、数度のぶつかり合いの末に休憩時間となる。

 

「ウロボロス、お前前より強くなったな」

 

「当たり前だ。私を誰だと思っている?」

 

 

 

 

 

 2人はよく手合わせをしており、前はヨルムンガンドが常に勝っていたが、今は互いに高め合っている事により互角になっている。

 しかし地形によってはどちらかが有利になる事があり、その時は有利な方が勝率が高くなっている。

 

 そして実戦の際は2人で組んで出撃しており、そのコンビネーションの高さと元から高い戦闘能力により、勝率を高くしていた。

 また、時に晩酌をしたりもしているが、時に語り合い、時に無言でいた。

 

 熱い友情と見える事もあればドライな友情と見える事もある。

 

 そんな2人だが、確かに互いを認め合っている。

 

 

 

 休憩の最中、翔が「お疲れ様」と2人を労いつつ冷えたスポーツドリンクを持ってくる。

 翔はスポーツドリンクを渡すと、他の演習場へと走っていった。

 

「・・・そういえば、お主と出会った頃の翔はどんなだった?」

 

 ウロボロスの問いにヨルムンガンドは意外そうな顔をした。

 

「昔の事聞いてくるのは久しぶりだな。しかも今回は翔の件でか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヨルムンガンドは、最初に翔を見た時は文字通り"器だけで中は空っぽ"な風に感じていた。

 

 記憶が無かったからと言えばそうなのだが、行動の目的が自身の空っぽな器を必死で埋めようとしているように見えたのだ。

 しかし同時に、器が空っぽな翔を動かしているようにも見えていた。

 

 だが同時に純粋で無垢であり、弟ができたようにも思えた。

 

 そして記憶が戻り始めると、また別のものを感じた。

 翔の戦闘力は、本来極めて高いものではないかと・・・

 それも、相手を殺さないことに特化しているのではとも。

 

 ティタンを倒した時、水中から現れた翔は距離的に確実に殺せた。

 しかし翔は肘を撃ち抜いて無力化した。

 

 敵を殺すのではなく、ひたすらに無力化し続けるのは、ドレイクやテンペスタとの戦闘でも同様だった。

 だが気づいたことがある。

 

 

 

 "優しさ"こそ、翔の強さなのだと──

 

 

 

「・・・翔が優しいのは知っている。だが、なぜ優しさが強さに繋がっているのだ?」

 

 ウロボロスはAIの蠱毒を生き残っただけあり、その気づきに疑問が浮かんだ。

 

「翔は優しい。それ故に敵を殺さないために無力化させようとしている・・・そして最小限の攻撃で敵を無力化し、殺さなければならない相手には、痛みや恐怖を極力与えずに殺す術を身につけたんだ」

 

 ウロボロスは翔との演習を思い出した。

 他の戦術人形との戦闘より、圧倒的に速く演習は終わっていた。

 それも、翔の勝利で。

 

「・・・さて、今度はお前の番だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウロボロスは翔に対し、優しすぎると思っていた。

 それでは早死にするだろうとも。

 また、指揮官にしては作戦立案能力が高くはなかった。

 指揮官として、それはどうなのだと疑問に思っていた。

 

 しかし、疑問はどちらもすぐに晴れることとなった。

 

 殺したくない、そんな思いから攻撃の1発1発を正確に撃ち込んでいた。

 そして、作戦立案能力は高くない代わりに、決断力が高かった。

 その決断力は、記憶を全て取り戻してからは更に覚悟が決まったように見える。

 

 だがそれらだけでなく、M200やナディア、エクスキューショナー達・・・翔に着いてきている者達を見ると、分かったことがある。

 翔がいるから、進めるのだと。

 

 そして、翔こそが・・・彼女らにとっての最大の希望なのだと。

 

 しかしそれは、翔に何かあった時・・・脆くも崩れ去る可能性があるものでもあった。

 だからこそだろう、"希望"を守るために戦えるのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お互い、面白い見方があるな」

 

 ヨルムンガンドは上を向いて笑っており、立ち上がる。

 

「さ、もう1回やろう」

 

 

 

 その日の手合わせを終えた2人は演習場を後にする。

 すると翔とM200が防壁付近の畑でしゃがみ、何か話していた。

 そしてその様子をジェノとダイバーが覗きながら白米を食べていた。

 

「お主らは何をしているのだ・・・?」

 

 ジェノとダイバーは頬張った白米を飲み込んだ。

 

「カップルの会話見ながら食べるご飯は美味しいんだもん」

 

「あと3杯はいけるです」

 

 ヨルムンガンドは額に手を置いて呆れており、ジェノとダイバーの襟首を掴んで引き摺っていく。

 

「なんでぇ!?まだ食べ終わってないよ!」

「せめて、せめてあと1杯は!」

 

「いいから行くぞ」

 

 暴れる2人ウロボロスが抑え、そのままその場から引き離す。

 

 

 

 

 

 別の日、ウロボロスはアンチコジマの事で考え事をしていた。

 するとヨルムンガンドがコーヒーを持ってくる。

 

「感謝する」

 

「何考え込んでんだ?」

 

 コーヒーを1口飲むと、甘さと苦さが同時に感じられた。

 

「それはだな・・・」

 

 ウロボロスが考えていた、アンチコジマの件・・・

 それは、アンチコジマの影響についてである。

 

 アンチコジマを多量に受けた戦術人形は皆、大幅な強化を浮けるだけでなく、識別反応が生体反応へと変化している。

 しかし、その強化や識別反応の変化がいつ来るのかはウロボロスには分かっていない。

 

 だが、量としては多くないものを受けたアクアビットマンは強化と識別反応の変化があった。

 

 かといって、持続的にアンチコジマの影響を浮けているはずのエクスキューショナーや他の戦術人形には変化が無い。

 なら、条件とはなんなのだろうか?

 

「・・・アンチコジマで、お前も強くなりたいのか?」

 

 ヨルムンガンドの問いに、ウロボロスは首をかしげる。

 

「どうなんだろうな?確かに私は強くなりたいと思う。だが、私は技術的な強さを求めたい気がするのだ」

 

 するとヨルムンガンドは何か思い付いたようで、笑みを浮かべる。

 

「そうだ、なら良い考えがある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 演習場にて、ウロボロスとヨルムンガンドは並んで立っていた。

 そして2人の前には翔が立っていた。

 3人はそれぞれ演習用の武器を持っており、弾も演習用のものにしていた。

 

《それでは・・・演習開始!》

 

 ジェリコの宣言とブザーにより、演習が開始された。

 ヨルムンガンドが提案したのは、翔との演習でありいつもと違って2人で挑む、というものだった。

 (ちなみにPAやAAは無しとする)

 

 ヨルムンガンドが駆け出し、ウロボロスがその左右と上からミサイルを回り込むように発射する。

 翔は鉄血製ARを片手撃ちして自身の右側のミサイルを破壊し、そのまま回り込もうとする。

 

「だろうと思ったよ!」

 

 ヨルムンガンドは蛇腹剣を鞭携帯にして振り、翔を回り込ませないようにする。

 ウロボロスは更にミサイルを発射し、翔の移動を制限する。

 

 翔は左手に持ったナイフをヨルムンガンドの足に向かって投げ、ヨルムンガンドは後ろに引いて回避する。

 しかし翔はヨルムンガンドに接近し、ナイフを拾うと共に回転してミサイルを回避しつつヨルムンガンドに更に接近する。

 

 ヨルムンガンドが引くのに合わせ、ウロボロスはミサイルを翔とヨルムンガンドの間に撃ち込む。

 そして大量のミサイルを一気に発射し、翔を取り囲む。

 

 すると翔は1つの場所のミサイルだけを破壊し、そこへ飛び込んで回避する。

 だがそれをヨルムンガンドは見逃さなかった。

 

「かかったな!」

 

 ウロボロスはほくそ笑み、ヨルムンガンドは鞭携帯の蛇腹剣を振り下ろす。

 翔は空中にいるため、回避できないと思っていた。

 

 しかし翔は素早く体を丸めるようにし、その反動で間一髪で蛇腹剣を回避する。

 ヨルムンガンドとウロボロスは目を見開き、翔は受け身を取って着地する。

 

 そして、ヨルムンガンドが距離を詰める前に翔はナイフを投げ、それと同時に自らも距離を詰める。

 更に翔は射撃をしていくが、弾はヨルムンガンドの脇をすり抜けていった。

 

 翔がARで狙ったのはウロボロスのミサイルだった。

 ウロボロスの左のミサイルは、発射口を撃たれたことにより誘爆判定となり使用できなくなる。

 

「くっ!」

 

 ウロボロスは右側に移動しつつ、ヨルムンガンドを援護しようとする。

 しかし、翔はヨルムンガンドの股下を潜り抜けるようにスライディングする。

 

 その時、翔はヨルムンガンドの顎下を撃ち抜き、ヨルムンガンドは撃破判定となる。

 

「なっ!?」

 

 翔はそのまま横に転がりながら立ち上がり、ウロボロスが発射したミサイルを破壊していく。

 だがARの弾が切れ、翔はARをミサイルに向かって投げつける。

 

 ミサイルは爆発したが、爆煙の中からナイフが投げつけられてミサイルが発射される瞬間の発射口に命中する。

 翔はそこから接近して格闘戦に持ち込む。

 

 ウロボロスは翔の拳を受け流すが、翔は受け流された事を利用して肘をウロボロスの喉に打ち込む。

 しかしウロボロスは翔にアッパーを打ち込もうとするが、それよりも早く翔が腹部に拳を打ち込んだため、ウロボロスは敗北となる。

 

「・・・またお主に負けるとはな」

 

「・・・2人がかりでも勝てなかったか」

 

 翔はちょっと本気を出しすぎたかと眉毛をハの字にしていた。

 

「いや、本気で良い。むしろ本気でないと困る」

 

「そうそう。本気の翔に1発決めなきゃな」

 

 そう言って、2人は笑みを浮かべていた。

 その2人の笑みを見た翔も笑顔になった。

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 今回はウロボロスとヨルムンガンドの話でしたが、どうだったでしょうか?
 感想や高評価、お待ちしています!

 投稿頻度はなんとか上げられるよう、努力はしていますが・・・
 なかなか上手くいっておらずすいません・・・
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