鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 アンチコジマによるPA、異常無し。
 アンチコジマによるAA、異常無し。




第68話 オストリッチ

 ある日、スコーピオンは武器に関する事で工廠へと呼ばれていた。

 

「う~ん、メンテはしっかりやってるし・・・もしかして、本体に何か問題が?」

 

 工廠に着くと、クラフターが椅子に座って待っていた。

 テーブルの上には布が被せられた何かがあった。

 

「よし、時間通りだな・・・スコーピオン、素体の強化と『烙印(スティグマ)』の変更をする気はないか?」

 

「・・・へ?」

 

 

 

 クラフター曰く、この先現れる敵の事を考えると素体の強化は必須であるとの認識だった。

 そしてスコーピオンの烙印システムに親和性の高い武器があるため、名前はそのままに使用する武器の変更をしないかということだった。

 

「・・・ちなみに、どんな武器?」

 

 クラフターが布を剥がすと、スコーピオンのSMGによく似た見た目だが、少し大きい武器があった。

 

「こいつは『CANTUTA(カントゥータ)』。本来起こり得た未来の兵器で、種別は『マシンガン』。装弾数はこの見た目で72発、重量は元のSMGよりは重いが弾速や火力は十二分に勝ってる」

 

 スコーピオンは試しにカントゥータを持ってみると、確かに自分の使っているSMGより重いのが良く解る。

 これを両手に持って駆け回るのを想像すると、確かに素体の強化が必要になると感じた。

 

 しかし、これまで使ってきたSMGを見ると、なかなか決められなかった。

 このSMGは烙印で結びつけられているだけではなく、これまで共に戦ってきた相棒である。

 

 だが、ずっと戦ってきただけあって本体は傷だらけになっていた。

 メンテナンスのお陰で機能自体に問題は無さそうに見えるが、最近はメンテナンスだけでは補いきれなくなって来ているのを感じていた。

 

「素体の方は、基礎能力の改良だけじゃない。ハッキングやウイルスなどの対策はダイバーお墨付きの強さにしてある・・・だから、素体を変えればそれらとはほぼおさらばさ」

 

「・・・ちょっと、考えさせて」

 

 

 

 2日後、スコーピオンは工廠にいた。

 そして新しい素体へとメンタルやデータを移すため、クラフターが様々な機器を準備していた。

 

 昨日、スコーピオンは翔に素体と武器の事を相談してみたが、その際の返答がスコーピオンの背中を押したのだ。

 

「君が自分の銃と共に戦ってきた事と、限界が来ている事はその銃も解ってると思うよ。それに、君が新しい武器で進むのなら、これまでの銃と君の思いは、新しい銃が継いでくれるはずだよ」

 

 新しい素体への移行が終わると、スコーピオンはこれまで使ってきたSMGに向けて、敬礼した。

 

「行ってきます」

 

 新しい素体と武器を得たスコーピオンは、そのまま演習場へと向かった。

 演習場には既に相手となるランポルドがおり、入場したスコーピオンを見ると頷いた。

 

「さぁ、行くよっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IDWは戦場を駆けていた。

 

「にゃ~!」

 

 そのしかしその服は普段のものと違い、水色を基調とした和風なものになっており、左腰には刀を差していた。

 靴は下駄に変えており、目の前に現れた人形天使教の残党がHGを向ける。

 

 IDWは身を屈めて銃弾を回避し、SMGを右腰の装置にマウントすると刀の柄に手を添える。

 そして次の瞬間、居合い斬りで残党のHGの銃身を斬る。

 

「う、うわぁぁぁ!」

 

 ほとんどグリップとトリガー部分しか無くなったHGを捨て、残党は逃げ出そうとする。

 しかしIDWは峰打ちで残党を気絶させる。

 

「ふっ、峰打ちだにゃ」

 

 

 

 数日前(スコーピオンが素体と烙印を変更するより前)──

 

 IDWは任務で廃墟となった高級住宅街に行き、行方不明となった民間人形を探していた。

 1件ずつ探していくき、民間人形を見つけることができた。

 しかし民間人形の損傷は激しく、左手以外の四肢は破壊されており、声帯も損傷していた。

 

 依頼の詳細では、避難所への物資を輸送している際に突然武装した集団に襲われ、共にいた人形とはぐれてしまったとのことである。

 そこへオストリッチ小隊が向かい、今に至る。

 

 周囲には物資が奪われたトラックがあるだけで、武装集団はパッと見ただけでは発見できなかった。

 しかし、周囲の痕跡を確認するとまだ新しいものがあることが判る。

 つまり・・・

 

「おるで」

 

 ガリルがボソリと言い、それぞれが臨戦態勢になった途端に周囲から銃撃される。

 IDWは民間人形を抱えて瓦礫の裏に隠れる。

 

「やっちまえ!」

 

「連中、戦術人形だ!良い装備とパーツがあるぞ!」

 

 武装集団はAKシリーズの粗悪なコピー品を使い、射撃している。

 IDWは民間人形を抱えて隠れながら下がっていく。

 

《IDW、うちとスコーピオンが敵を引き付ける。せやからティスと一緒に下がるんや!》

 

「了解にゃ!」

 

 すぐにガリルとスコーピオンの発砲音が聞こえ、IDWは民間人形を連れてティスと共に下がっていく。

 しかしそれでも、一部の敵はIDW達に向けて攻撃を仕掛けてきている。

 

 すると2つのパイプ爆弾が投げ込まれ、1つはIDW達の進行方向に、もう1つはIDW達の側面で爆発する。

 IDWはすぐに民間人形を守るように身を屈めたが、ティスは回避が間に合わず爆発により負傷してしまう。

 

「ティスっ!」

 

 IDWはティスの腕を掴もうとするが、銃撃により阻まれてしまう。

 

「うおおおおおっ!」

 

 更に、突進してきた敵によって近くの部屋の中に転がり込んでしまう。

 IDWは反撃のために射撃し、突進してきた敵を撃破するがそこで弾が尽きてしまい、リロードしようとしたが別の敵が突入してきた。

 

 IDWは咄嗟に落ちていたマチェットを拾って構える。

 

(えっと、確か・・・翔やエクスキューショナーはどう構えてたんだっけにゃ・・・)

 

 目の前の敵は銃が弾詰まりを起こし、ナイフを構えてきた。

 IDWは見様見真似でマチェットを振るが当たらず、逆に敵がナイフを突き刺そうとする隙を与えてしまう。

 

 しかしその瞬間、IDWは翔の姿を思い出した。

 そしてマチェットを左腰に納刀するように当て、左手を添える。

 そして身体を回転させてナイフを受け流し、居合斬りで敵の身体を斬った。

 

 

 

 その後、任務はなんとか完了した。

 だがIDWは翔とエクスキューショナーに剣の指導を頼み込んだ。

 

 それからしばらくし、素体の強化と共にIDWに刀が与えられた。

 その刀は青白い特殊なプラズマを発する事ができ、通常の刀として使えるだけでなく、レーザーブレードとしても使う事ができるものだった。

 

 翔とエクスキューショナーの剣を教わったIDWは、好物の鯛焼きを咥えてオストリッチ小隊の仲間にお披露目に駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雨が降っているその日、ティスは曇った窓に指でてるてる坊主を描いていた。

 そして、その目は期待に満ちていた。

 

 数日前、ティスはスコーピオンが素体の強化と新しいの武器を手にしたと聞き、すぐさまクラフターの元へと向かった。

 そして頭を下げた。

 

「私を・・・本物の秘密兵器にしてください!」

 

 ティスは自分を秘密兵器と自称していた。

 しかしそれが自意識過剰による錯覚であると、かつての指揮官を守れなかったあの日から思い知らされていた。

 

 翔に稽古をつけてもらい、磨かれた技術で敵を撃破していっても、徐々に素体の性能が追い付かなくなっていた。

 専用の弾丸を与えられ、火力が向上しても、それでも足りなかった。

 

 そして先日、演習場で素体が破損してしまった。

 それはティスの動きに素体が完全に追い付かなくなったせいであった。

 

 

 

 ティスの必死な願いにより、クラフターは早速新しい素体と武器の製作に取り掛かった。

 

 ティスは烙印の更新は行わない事にした代わりに、内部面での強化と別装備の追加をメインとすることにした。

 スコーピオンと同様、本来起こり得た未来のパーツを使うが、武器ではないため様々な案を考え、構築していく。

 

 そして完成した素体をお披露目する。

 

 素体の見た目に大きな変化は無いが、内部には大きな変化があった。

 ティスの動きに十分応えられる性能になっているだけでなく、新たな機能が加えられていた。

 

 まず、本来起こり得た未来にあるパーツ『Fire Control System(FCS)』の1つを搭載した事により、狙いの正確性が大きく向上している。

 

 次に、腰に手持ち型のレーザーブレードを装備しており、連続使用はできないものの、銃撃が通じない時の切り札となっている。

 

 

 

 ティスは早速演習場へ向かい、新しい素体と装備を試すことにした。

 

「凄い・・・!」

 

 体が前の素体よりずっと軽く感じ、アクロバティックな動きで障害物を蹴って飛び回り、地面に足を着けずに射撃していく。

 強化された素体の性能だけでなく、FCSのおかげで様々な動きをしても命中率は高いままである。

 

(機械の体は、人間と違ってトレーニングで強くなることはできない。けど素体を変えれば性能は上がる。でも技術を磨いておかなければ性能に振り回される)

 

 かつて翔から聞いたその言葉の意味を、ティスは再確認し、微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 射撃場にて、1発の弾丸が凄まじい威力で的を撃ち抜いた。

 その後、その弾丸を発射した銃のマガジンを交換したのは、バレットだった。

 バレットは1発、1発に祈りを込めて引き金を引いていた。

 

「また射撃の腕、上がったんじゃない?」

 

 射撃を見ていた翔はバレットを褒めつつ、スポーツドリンクを手渡した。

 

「ありがとうございます、翔さん」

 

 しかし、バレットの表情に陰が見えた翔は首を傾げる。

 

「どうしたの?何か、気になることが?」

 

「いえ、その・・・どうしたら、私は最適解を出せるのかと思っていまして・・・今回の射撃も、的の中心から2mmズレていましたし・・・」

 

 バレットは自身のRFを抱き締めるようにし、眉を潜める。

 しかし翔は、眼差しは真剣だが表情はいつも通り明るかった。

 

「バレットは凄いよ。君の銃の精度はRFの中では低めな方なのに、あそこまでの精度で射撃できてるんだから」

 

 翔は粉々になった的の方に目を向けつつ、話を続ける。

 

「それに、最適解は君も僕も皆も、いつも出し続けているんだよ。その時その時で、限られた時間の中で自身がベストを尽くそうと出した答えは、君にとっての最適解になるんだよ」

 

 翔はバレットのRFに使われている弾丸を持ち、光に照らす。

 

「例えその選択で失敗しても、君にできた最適解がそれだっただけだから、それは仕方ないことだよ。そこから学べることがあれば、次に繋げれば良いんだよ」

 

 そう言って、翔はバレットに笑顔を向けた。

 しかしその途端、翔の腹の虫が鳴ったため2人は思わず笑ってしまう。

 

「あっはは!ごめん、お腹空いてたから鳴っちゃった」

 

「ふふふ!もう!・・・今の最適解は、食事にすることですね」

 

「だね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガリルはスコーピオンと同様に、素体の強化と共に烙印の変更を行った。

 小隊の隊長として、自分だけ強化しないわけにはいかないと思っていたからである。

 

 新たな素体の足の外側には射出される棒が装備されており、それを使って大きなジャンプや壁を蹴っての移動が可能となっており、瞬間的な機動力を高めている。

 

 そして新たな武器は『LABIATA(ラビアタ)』であり、ランポルドと同じライフルに属する武器だった。

 

 

 

 新たな素体と武器を得たガリルだが、1つ気になっていることがあった。

 小隊の部隊名である。

 

 最初は特に意味を考えていなかったが、翔は何か意味があってオストリッチと名付けたと、フォートレスから聞いたことで気になり始めたのだ。

 

「なぁ、うちらの部隊名がオストリッチなのはなんでや?オストリッチって、ダチョウって意味やろ?」

 

 ガリルは食堂にいた翔に問いかけた。

 すると翔はその理由を明るい表情で語り始めた。

 

 

 

 オストリッチ、日本語にするとダチョウであるその名は、本来起こり得た未来のとある兵器からとっている。

 その兵器、オストリッチは安価であるがあらゆる性能が低く、他の兵器相手では歯が立たなかった。

 

 しかし、そんなオストリッチは生身の人間相手では十分驚異であり、安価であるために配備される事も多かった。

 また、より強い兵器が相手でも、数と戦略を整えれば時間を稼ぐ事はできた。

 

 弱いと言われたものでも、できることはあり、諦めずに足掻き、戦う様は間違いなく輝いていた。

 

 そして、ガリル達はかつて様々な理由でこちらに引き取られる事となった。

 翔はそんなガリル達に、あの兵器のように諦めずに進めるようにと、願いを込めてオストリッチと小隊に名付けたのだ。

 

 

 

 小隊名の由来を聞いたガリルは小隊のメンバーにその事を話し、その時ちょうどオストリッチ小隊に出撃の指令が下る。

 

「ほんなら、行くでぇ!」

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 明けましておめでとうございます!
 新年最初の投稿はオストリッチ小隊の話でしたが、どうだったでしょうか?
 感想や高評価、お待ちしています!

 それでは皆さん、今年もよろしくお願いします!

烙印(スティグマ)システム
 IOPの開発した先進技術の1つであり、戦術人形と銃に特別な繋がりを持たせるシステムである。

 烙印を施された人形は銃が半身であるかのように把握、使用することができ、人間とは比較にならない戦闘力を発揮できる。

 また、烙印を施す際には銃の性能や歴史などに基づいた最適な見た目や性格が選択される。
 そのため、"銃のために人形が造られる"と言える。

 しかしオストリッチ小隊のように、本来起こり得た未来の兵器に烙印を変更する場合、元の銃と同系列のものに限られるが、性格などの変化は未知数である。

●マシンガン
 本来起こり得た未来の武器カテゴリの1つであり、火力と引き換えに装弾数の多さと高い連射力を持つ武器。
 現代の武器の中ではSMGに近い。

『カントゥータ』
 第4世代型■■のマシンガンであり、弾速と射程がマシンガンの中では高性能なものの、命中率が低いという欠点がある。

●FCS
 本来起こり得た未来の■■用パーツであり、火器管制を担っている。

 ティスに搭載されているのは第3世代型であり、敵を障害物越しにもロックオンできるが、ロックオンするためにはサイト内に敵を捉える必要がある。

 ロックオンすれば腕部に補正が入り、命中精度が大きく向上する。
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