鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 体内のアンチコジマ、一部で結晶化を確認。
 微細であり機能に問題は確認されず。




第70話 4枚の羽

「よし、メンテナンス終わったぞ」

 

 クラフターの声と共にジェノの意識は戻り、ジェノは目を開けると飛び起きる。

 

「ありがとね~クラフター!」

 

「いいってことさ」

 

 ジェノは装備を身に付けると、すぐに演習場に向けて走っていった。

 演習場には翔とM200、オストリッチ小隊がおり、ジェノが配置に着くとオストリッチ小隊対ジェノの演習が始まった。

 

 

 

 ジェノはオストリッチ小隊の攻撃をアクロバティックな動きで回避しつつ、回避しきれない弾丸はPAで減衰させてから装甲で受け流し、確実に距離を詰めていく。

 

「PAが、貫通してる?」

 

 M200が疑問に思うと、翔がPAに関する解説を行う。

 

「PAはネクスト用の武器や対ネクスト兵器に対して、完全防御はできないんだ。でも減衰させることはできるから、上手い人はああやって装甲で受け流してるんだよ」

 

 ジェノはスコーピオンに接近すると見せかけて、隣のIDWに右手のSGの銃口を向ける。

 IDWが回避しようとすると、IDWを援護しようとしたスコーピオンにノーモーションで左手のSGで射撃する。

 

 散弾を受けてよろけたスコーピオンに、ジェノはすかさずもう片方のSGで散弾を撃ち込む。

 モロに散弾を受けたスコーピオンは撃破判定となり、そのままジェノはIDWから離れてガリルへと向かう。

 

 ガリルを援護するため、ティスが前に出ようとする。

 しかしジェノはスライディングして射線をずらし、ティスの股下を潜り抜け、ガリルとティスへ同時に散弾を撃ち込んだ。

 

 IDWはジェノのPAを削り続けているが、ジェノは自身を狙うバレットへ左手のSGを投げ、SGを撃ったバレットに接近して散弾を撃ち込む。

 そして最後に残ったIDWは抜刀する。

 

 ジェノはSGを捨てて両手のフィンガークローを展開し、指そのものが大きな爪となる。

 そしてIDWとジェノは同時に駆け出した。

 

 

 

 演習が終わった後、スポーツドリンクを飲むジェノにM200が問いかけた。

 

「あの、ジェノの週に1度のメンテナンスって、なにをしてるんですか?戦術人形でもそこまでの頻度はないですし・・・」

 

「ああそれ?うん、私のメンタルが破損して異常が生じたまんまだからだよ」

 

 アッサリと答えたジェノにM200とオストリッチ小隊は目を丸くする。

 翔は「ジェノが話して良いのなら」と備品の片付けを始めた。

 

「私、フォートレス、ダイバー、クラフターの4人はね、お兄ちゃんの妹として造られただけじゃなく、元々は戦闘用じゃなくて福祉用のアンドロイドだったんだよ」

 

 ジェノはその頃の写真を見せる。

 そこには孤児院の子供達と職員、そして当時のジェノ達が写っていた。

 

「でもね、ある時ここに強盗が6人が入ってきてね、私達は子供達を守るために奮闘したんだけど、私だけ序盤でお腹と胸撃たれちゃってさ、それで逃げようとしたら後頭部も撃たれちゃってさ」

 

「う、撃たれたんですか!?それも頭を!?」

 

「てへっ」

 

 バツが悪そうに舌を出したジェノだが、周囲の空気は穏やかではなかった。

 

「それで私のメンタルがおかしくなって、血が綺麗で美味しそうって思ったりするようになったんだ~」

 

 しかもジェノは致命的な部分に損傷があり、メンタルも破損して異常性が現れている。

 そのためジェノは廃棄される可能性が極めて高かったが、リミッターを付けることにより、廃棄は免れた。

 

 そして、そのリミッターを外すのがジェノサイドシステムでもある。

 

 また、ジェノはメンタル破損による異常性により、戦闘用になることはほぼ確定だったという。

 とはいうものの、戦闘用になる事が確定であるとの判断が下される前に、自ら戦闘用になる事を選んでいた。

 

「さ~て、2戦目やろっか!」

 

「まだやるのにゃ!?」

 

「ふふ~ん、新しい装備に慣れるためだよ!せめてあと2戦はやらないと!」

 

 ジェノは笑顔でSGを掲げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鼻歌を歌いながら両手に持った卵を割り、かき混ぜて小麦粉と牛乳と混ぜて更にかき混ぜていく。

 かき混ぜた液体をフライパンに入れ、少し焼くとひっくり返し、裏面も焼いていく。

 

 完成したのは綺麗な焼き目のあるホットケーキであり、2枚重ねの上にホイップクリームを乗せる。

 そして、サクランボを1つ乗せてから蜂蜜を縞模様のようにかけていく。

 

「完成です」

 

 ホットケーキを作っていたのはフォートレスであり、フォートレスはホットケーキを持ってある部屋へ入る。

 

「今日のお昼はホットケーキです」

 

 部屋の中心にあるテーブルの上に、フォートレスはホットケーキ、ナイフ、フォークを置く。

 ホットケーキを前にして、目を輝かせる者がいた。

 ナルシスである。

 

 そして早速食べるかと思いきや、フォートレスにナイフを突き刺そうとする。

 しかしフォートレスはナルシスの手を掴み、ナイフを取り上げて皿の上に置く。

 

「行儀悪いですよ」

 

「チッ」

 

 ナルシスは誘拐されてからフォートレスが監視しており、世話役も担っていた。

 しかしナルシスは幾度となくフォートレスを襲撃するものの、どれも失敗に終わっていた。

 

「・・・美味しい!」

 

 ナルシスは早く抜け出したいと思いつつ、フォートレスの料理がどれも美味しいため、それがどこか惜しく感じていた。

 フォートレスは食べ終わった後の食器を片付けて部屋を出ようとすると、ナルシスは引き留めた。

 

「・・・なんで、ワタシを拐った?」

 

「そうですね、そろそろ教えても良い頃合いかもしれません・・・ただし、皿洗いを手伝ってくれたら、ですね」

 

 

 

 ナルシスは舌打ちをし、渋々皿洗いを手伝った。

 その後、ナルシスの部屋でフォートレスは口を開いた。

 

「切っ掛けは、私達が最初に出会った時・・・闇鍋を作った日ですね」

 

 ナルシスの表情が苦虫を噛み潰したようなものになる。

 フォートレスはクスリと笑い、話を続ける。

 

「あなたがドアを蹴破ってきたあの時・・・あなたの目と雰囲気が、どこか泣いているように見えましてね。それで、放っておけないと思うようになったんですよ」

 

 フォートレスは暖かく微笑んでいた。

 しかしナルシスは拳を握り締めた。

 

「アンタに・・・何が分かる!?」

 

 ナルシスは立ち上がり、フォートレスを睨み付ける。

 

「この体は強くて強くて!でも使う度にメンタルが焼き切れそうになる!でも勝てれば認めてもらえる!殺せば認めてもらえる!負けたら負けたで殺される!そんなワタシの何が・・・何が分かる!?」

 

 ナルシスは拳を振るうが、フォートレスは避けずに拳を顔で受け、ナルシスを抱き締める。

 

「大丈夫、大丈夫ですよ・・・」

 

「なんでよ・・・なんでなのよ・・・!」

 

 ナルシスが拳を振る力は、徐々に弱まっていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あらゆるデータベースやメンタル内へ、バレること無く潜り込み、閲覧やコピーを取り、そして痕跡を残さず立ち去る。

 しかし電子の海だけでなく、砂中や水中も潜れるのが・・・

 

「ま、待つです・・・話し合えば、解るです!」

 

 壁際にへばりつくようにして追い詰められている、ダイバーである。

 

「ボクと翔さんが付き合っていること、それを皆にバラすのだけに留まらず・・・ボクが告白した時の音声まで拡散させるのはどういうことですか?」

 

 ダイバーを追い詰めているM200の顔は真っ赤であり、口元は笑っているものの、目は笑っていないどころか殺意を感じさせている。

 

「い、いや・・・それは、その・・・えいっ!」

 

 ダイバーはM200の視覚モジュールにノイズを入れ、その隙に駆け抜ける。

 

(Mっ!)

 

[了解っ!]

 

 MはすぐにM200の視覚モジュールを復旧させ、ダイバーを追いかける。

 

 

 

 ダイバーは元々、いたずら好きではなく、ましてや腹黒い一面があるわけでもなかった。

 しかし、福祉人形だった時代に起こった孤児院襲撃事件により、腹黒い一面が現れた。

 そして、それを隠すためにいたずら好きになっているのだ。

 

 だがそれを知っているのは、バタフライムーンのメンバーと翔だけである。

 そしてダイバーの前にある隔壁をMが閉じ、ダイバーはすぐに開けようとするが、その前にM200が追い付いた。

 

「捕まえましたよ」

 

 ダイバーは隔壁を開けて逃げるが、その先にいた22Rとぶつかり、22Rは持っていた箱を落としてしまう。

 落ちた箱からはプリンが転がり出て、床に落ちて崩れてしまう。

 

「おいら達の・・・プリンがぁ・・・ううっ」

 

 そして追われているダイバーはボソリとした声を聞いた。

 

「許さないのだ」

 

 その後、ダイバーはM200だけではなく22R達本来起こり得た未来の武器からも追われ、逃げた先にナルシスがいた。

 

「ナルシスちゃん、ちょっと・・・!」

 

 しかしナルシスはほくそ笑む。

 

「いたぞぉ!いたぞぉぉぉ!」

 

「そんなぁぁぁぁぁ!」

 

 その後、なんとか悪足掻きしつつ拠点の外に出ようとして、翔とテンペスタに捕獲されたダイバーであった。

 

「ぼうじばぜん・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クラフターは本来起こり得た未来の武器を再び製作していた。

 

「ふむ、今回は2人・・・グリフィンの1部隊に相当するものができそうだな」

 

 IOPから送られてきた、2人の新たな戦術人形。

 ランポルド達と同様に、空間の歪みから得られたデータを元にIOPが作った戦術人形である。

 

「にしても・・・ランポルド、ストレコ、22Rと来て今度は『フレモント』に『エルプセン』か・・・これは武器だけじゃなく、装備も作るかぁ」

 

 クラフターは休憩にすると、テーブルに腰掛けてグラスに赤ワインを注いぎ、1口飲んで一息つく。

 すると扉がノックされ、翔が入ってくる。

 

「調子はどう?」

 

「順調だよ兄貴!それでどうした?」

 

 翔は近くの椅子に座り、複雑な感情を抱いた表情で口を開いた。

 

「ナルシスの事、なんだけど・・・」

 

「パラデウスなのか、だろ?」

 

 クラフターはグラスに入ったワインを飲み干す。

 翔は頷いたが、クラフターはテーブルから降りてテーブルに肘をついた。

 

「答えはイエスだ。ナルシスはアタシ達が拐ってきたパラデウスの最上位ネイトの1人であり、拾ってきた人形でも孤児でもない・・・拐った理由は、ナルシスを見れば分かるだろ?」

 

「・・・一言言ってくれれば良いのに」

 

 翔は少し呆れた表情をしているが、クラフターは気にせずグラスに再びワインを注いだ。

 

「言わないさ。あの行動は、あくまでアタシ達の無断行為であり、責任が問われてもアタシ達の責任で終わらせられるためだ。それに・・・」

 

 クラフターは翔に顔をぐいっと近づける。

 

「兄貴は遅かれ早かれ、パラデウスに対しても助けたいと思うだろうしな」

 

 図星だったようで、翔は顔を背ける。

 その仕草を見てクラフターは笑って翔の頭をガシガシと撫でた。

 

「心配するな、兄貴にはアタシ達がついてるし、必要な武器や装備はアタシが造ってやるさ」

 

 クラフターはそう言うと、背部と腰のサブアームを揺らした。

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 今回はバタフライムーンのハイエンドモデルがメインの話でした。
 感想や高評価、お待ちしています!

 ・・・今のドルフロイベントの手紙、めちゃくちゃ悩みますが、皆さんは書きました?私はまだです。

●Au-L-K37
 通称ナカサワと呼ばれている、第5世代型レザライ。
 チャージ時間は約2.5秒、装弾数は12発、次弾装填には約4秒かかる。
 装弾数の少なさを補うため、アデリンにはエネルギーパックを3つ装備させ、計48発の使用が可能となっている。

●AKIGIRI mdl.2
 通称プロヴォとも呼ばれる第5世代型ハンドガン。
 ハンドガンの中では連射力が高く、装弾数も多いため削り性能が高い。
 しかし削りというのは対■■戦であり、対人や現代兵器相手では非常に有効となる。

●ハンドガン
 ■■用の武器であり、軽量で削り性能が高く予備や補助として優秀である。
 しかし、一部のハンドガンには敵をオーバーヒートさせやすいものや、ライフルと同程度の火力を持つものもある。
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