反応爆発の可能性があるため、再検査を開始。
夜、そこはいつもより暗かった。
月が雲で隠れ、サーチライトの明かり以外は何も見えない。
サーチライトで周囲を照らすのは、ELIDを信仰するカルト教団の拠点である。
建物の周囲を四角く塀で囲み、交代で警戒している。
木々が揺れる音以外、無音である。
すると、暗闇の中から突然青白い光が放たれ、塀の上にいる警備員がまとめて撃ち抜かれ、体に大穴が開いた。
「てっ!敵襲っ!」
他の警備員達はAKシリーズの粗末なコピーARを使い、周囲に向けて連射する。
しかし、先程の1発以降攻撃が無いために襲撃者の位置が判らない。
そればかりか、無闇に射撃することによって自らの位置を知らせてしまっている。
そして、暗闇の中からオレンジ色の光が連続して放たれ、警備員達は倒れていく。
暗闇の中から、微かに聞こえる足音。
暗闇の中から飛び出、拠点の中に侵入したのは・・・
「パーティーを、始めよう」
ガンナーだった。
ある日、ガンナーはM200をVR演習場に呼び出していた。
互いに武装した状態だが、ガンナーはブースターを外していた。
「M200・・・お前が翔と恋仲にあるのは構わないが、付き合っている以上、必然的にハイエンドモデルとの遭遇率は上がる。そして、1対1で戦わねばならない事も出てくるだろう」
ガンナーは両手を下げたまま、駆け出す姿勢に入る。
「だから、1対1で私を倒せるようになれ」
言い終えた瞬間にガンナーは駆け出し、走りながら射撃していく。
ガンナーは左手に持ったARを連射しつつ、セミオートタイプのRFを撃ち込む。
M200は障害物を使って弾幕を避けつつ、Mの計算により算出された向きに射撃しようとする。
しかし、M200とMは同時に誘われていると感じ、別方向へ走る。
「・・・気づいたか」
ガンナーは射撃する位置をわざとずらし、ARの弾幕の中に本命であるセミオートRFの弾を混ぜ、それもずらして確実に仕留められる位置まで誘導していた。
そして、本来ならその位置でM200は射撃しようとし、ガンナーはカウンターで仕留められていた。
しかしM200は別方向へ走ったため、その作戦は外れた。
「プランBといこう」
ガンナーは足を止め、レーダーを見る。
M200は離れつつ回るように移動しており、障害物から出ることは少なかった。
するとガンナーは障害物越しにM200を狙う。
ガンナーはレールキャノンで障害物ごとM200を撃ち抜こうとするが、直前にM200はスライディングしてギリギリで回避する。
「ほう、やるな」
ガンナーはプランCということで壁や柱を蹴って進み、上から撃ち下ろしていく。
M200は自身の経験とMの支援でなんとか避けていく。
しかし、移動先に置くようにして撃たれた弾丸に被弾して倒れてしまう。
被弾した部位は左肩だった。
だがM200はそれでも身を捩り、腰だめで射撃する。
その瞬間、M200の額とガンナーの左腹部に同時に弾丸が命中する。
「良い動きだった」
ガンナーはM200を労い、缶コーヒーを手渡す。
「明日、今日の自分より強くなれ、翔と共に戦うなら」
ガンナーは内心、気分が高揚していた。
なぜなら・・・数いるこの世界の戦術人形の中で、初めて自分に弾を当てたのがM200だったからである。
(楽しみだ・・・!)
1人の女性が舞っている。
両刃の刀を両手に逆手に持ち、優雅に舞っている。
しかし周囲に敵はおらず、そして敵を倒すような舞ではなかった。
そして舞が終わると、踊っていた女性・・・スライサーは優雅に、そして静かに月に向かってお辞儀をした。
「どうか、安らかにお眠りくださいまし・・・」
ある日、スライサーの元にM200が訪ねてきた。
訪ねた理由は、月に一度行っている舞の事である。
「あの舞は、鎮魂のためですわ」
鎮魂のための舞。
しかし自身は機械であり、人間のような魂は無い。
それは判っているのだが、それでもと始めたのがあの舞である。
「私は機械であり、しかもローエンドモデル。少数精鋭とはいえ量産型ですわ。それでも、こうして鎮魂のために何かしたいという"答え"を出したこのメンタルは、私だけのものですわ」
そう言って、スライサーは笑った。
しかし、その表情が少しだけ曇る。
「けど・・・ローエンドモデルとして、量産されたかったですわ・・・というより、妹が欲しかったのかもしれませんわ」
スライサーとガンナーは本来であれば少数であれど量産されるはずだった。
しかし、その前にあることが起きたため、量産化はできなかったのだ。
その"あること"を思い出すと、スライサーは自らを抱き締め、震えだした。
「あれは・・・あれは、"終わり"ですわ。終わりなんですの・・・」
M200はスライサーの肩にそっと手を置き、別の話題に変えようと促した。
翌日、スライサーは仮想空間にて演習を行っていた。
相手はコーカサス社の部隊であり、過去に得られたデータから作られたものを多数配置していた。
マップは廃墟となったビル内であり、窓からは微かに日の光が入っている。
射撃をメインとし、距離を取りつつ3次元的な戦闘を行うガンナーとは逆に、スライサーは至近距離での戦闘をメインとしている。
敵の攻撃を受け流しつつ斬り、更に踏み込んで斬る。それがスライサーの戦術である。
ブレードに関しては、壁や障害物に引っ掛かるならそれらごと斬れば良いとのことで、壁や障害物は気にならない。
それ故にリーチがナイフより明らかに長く、踏み込まれた敵はほぼ逃げられない。
演習の様子を見ていたM200とMは、気になることがあった。
(あの"終わり"って、なんなんでしょうか?)
[本来起こり得た未来で、ボクの後の未来で・・・何があったんですか・・・!?]
スライサーは気高く正々堂々とした性格で、何かを恐れることはあっても立ち向かうと思われていた。
しかし、そのスライサーが震えるほどの"終わり"とはなんなのか、M200もMは気になりつつも不安がよぎった。
スライサーは次の敵に接近すると、殴るようにしてすれ違い様に斬っていく。
そのまま次々と敵を流れるように斬っていき、レーダーに映る敵の数はみるみる減っていく。
そして最後の敵を撃破し、クリアまでのタイムが表示される。
「記録更新ですわ!」
記録はほんの0.2秒の更新ではあるが、進めていることにスライサーは安堵していた。
ある日、ガンナーとスライサーは背中を合わせて座っていた。
座っている場所は廃墟となった学校の屋上である。
2人を夕暮れが照らしており、周囲は静かである。
「私、あなたを超えたいですわ」
「なんだ?藪から棒に」
2人は背中を合わせて座ったまま話を続けていく。
夕日の逆光で2人の顔の半分は見えず、持っている武器は照らされて輝いていた。
「私は強くなりたいですわ。けれど、そのためには同格であるあなたを超えなければならんですわ」
真剣な表情のスライサーとは反対に、ガンナーは鼻を鳴らしてほくそ笑んだ。
「フンッ、同感だな。私もそろそろ君を超えたいと思っていたところだ」
そこにレーダーに反応が現れた。
翔である。
「今度演習で決闘ですわ」
「面白い、受けて立とう」
引き切ればガンナーが勝ち、接近すればスライサーが勝つ。
しかし2人の実力は拮抗している。
だがいずれ来るであろう決着に、2人は闘志を燃やしていた。
そして、そんなことなど知らない翔はのんびりと歩いていた。
読んでくださり、ありがとうございます!
体調崩してて遅れてしまいました、すいません。
今回はガンナーとスライサーの話でしたが、どうだったでしょうか?
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