鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 血中のアンチコジマ、僅かな発光を確認。
 反応爆発の可能性があるため、再検査を開始。




第71話 銃と剣

 夜、そこはいつもより暗かった。

 

 月が雲で隠れ、サーチライトの明かり以外は何も見えない。

 

 サーチライトで周囲を照らすのは、ELIDを信仰するカルト教団の拠点である。

 建物の周囲を四角く塀で囲み、交代で警戒している。

 木々が揺れる音以外、無音である。

 

 すると、暗闇の中から突然青白い光が放たれ、塀の上にいる警備員がまとめて撃ち抜かれ、体に大穴が開いた。

 

「てっ!敵襲っ!」

 

 他の警備員達はAKシリーズの粗末なコピーARを使い、周囲に向けて連射する。

 しかし、先程の1発以降攻撃が無いために襲撃者の位置が判らない。

 

 そればかりか、無闇に射撃することによって自らの位置を知らせてしまっている。

 そして、暗闇の中からオレンジ色の光が連続して放たれ、警備員達は倒れていく。

 

 暗闇の中から、微かに聞こえる足音。

 暗闇の中から飛び出、拠点の中に侵入したのは・・・

 

「パーティーを、始めよう」

 

 ガンナーだった。

 

 

 

 ある日、ガンナーはM200をVR演習場に呼び出していた。

 互いに武装した状態だが、ガンナーはブースターを外していた。

 

「M200・・・お前が翔と恋仲にあるのは構わないが、付き合っている以上、必然的にハイエンドモデルとの遭遇率は上がる。そして、1対1で戦わねばならない事も出てくるだろう」

 

 ガンナーは両手を下げたまま、駆け出す姿勢に入る。

 

「だから、1対1で私を倒せるようになれ」

 

 言い終えた瞬間にガンナーは駆け出し、走りながら射撃していく。

 ガンナーは左手に持ったARを連射しつつ、セミオートタイプのRFを撃ち込む。

 

 M200は障害物を使って弾幕を避けつつ、Mの計算により算出された向きに射撃しようとする。

 しかし、M200とMは同時に誘われていると感じ、別方向へ走る。

 

「・・・気づいたか」

 

 ガンナーは射撃する位置をわざとずらし、ARの弾幕の中に本命であるセミオートRFの弾を混ぜ、それもずらして確実に仕留められる位置まで誘導していた。

 そして、本来ならその位置でM200は射撃しようとし、ガンナーはカウンターで仕留められていた。

 

 しかしM200は別方向へ走ったため、その作戦は外れた。

 

「プランBといこう」

 

 ガンナーは足を止め、レーダーを見る。

 M200は離れつつ回るように移動しており、障害物から出ることは少なかった。

 するとガンナーは障害物越しにM200を狙う。

 

 ガンナーはレールキャノンで障害物ごとM200を撃ち抜こうとするが、直前にM200はスライディングしてギリギリで回避する。

 

「ほう、やるな」

 

 ガンナーはプランCということで壁や柱を蹴って進み、上から撃ち下ろしていく。

 M200は自身の経験とMの支援でなんとか避けていく。

 しかし、移動先に置くようにして撃たれた弾丸に被弾して倒れてしまう。

 

 被弾した部位は左肩だった。

 だがM200はそれでも身を捩り、腰だめで射撃する。

 その瞬間、M200の額とガンナーの左腹部に同時に弾丸が命中する。

 

 

 

「良い動きだった」

 

 ガンナーはM200を労い、缶コーヒーを手渡す。

 

「明日、今日の自分より強くなれ、翔と共に戦うなら」

 

 ガンナーは内心、気分が高揚していた。

 なぜなら・・・数いるこの世界の戦術人形の中で、初めて自分に弾を当てたのがM200だったからである。

 

(楽しみだ・・・!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1人の女性が舞っている。

 

 両刃の刀を両手に逆手に持ち、優雅に舞っている。

 しかし周囲に敵はおらず、そして敵を倒すような舞ではなかった。

 そして舞が終わると、踊っていた女性・・・スライサーは優雅に、そして静かに月に向かってお辞儀をした。

 

「どうか、安らかにお眠りくださいまし・・・」

 

 

 

 ある日、スライサーの元にM200が訪ねてきた。

 訪ねた理由は、月に一度行っている舞の事である。

 

「あの舞は、鎮魂のためですわ」

 

 鎮魂のための舞。

 しかし自身は機械であり、人間のような魂は無い。

 それは判っているのだが、それでもと始めたのがあの舞である。

 

「私は機械であり、しかもローエンドモデル。少数精鋭とはいえ量産型ですわ。それでも、こうして鎮魂のために何かしたいという"答え"を出したこのメンタルは、私だけのものですわ」

 

 そう言って、スライサーは笑った。

 しかし、その表情が少しだけ曇る。

 

「けど・・・ローエンドモデルとして、量産されたかったですわ・・・というより、妹が欲しかったのかもしれませんわ」

 

 スライサーとガンナーは本来であれば少数であれど量産されるはずだった。

 しかし、その前にあることが起きたため、量産化はできなかったのだ。

 

 その"あること"を思い出すと、スライサーは自らを抱き締め、震えだした。

 

「あれは・・・あれは、"終わり"ですわ。終わりなんですの・・・」

 

 M200はスライサーの肩にそっと手を置き、別の話題に変えようと促した。

 

 

 

 翌日、スライサーは仮想空間にて演習を行っていた。

 相手はコーカサス社の部隊であり、過去に得られたデータから作られたものを多数配置していた。

 

 マップは廃墟となったビル内であり、窓からは微かに日の光が入っている。

 

 射撃をメインとし、距離を取りつつ3次元的な戦闘を行うガンナーとは逆に、スライサーは至近距離での戦闘をメインとしている。

 敵の攻撃を受け流しつつ斬り、更に踏み込んで斬る。それがスライサーの戦術である。

 

 ブレードに関しては、壁や障害物に引っ掛かるならそれらごと斬れば良いとのことで、壁や障害物は気にならない。

 それ故にリーチがナイフより明らかに長く、踏み込まれた敵はほぼ逃げられない。

 

 演習の様子を見ていたM200とMは、気になることがあった。

 

(あの"終わり"って、なんなんでしょうか?)

 

[本来起こり得た未来で、ボクの後の未来で・・・何があったんですか・・・!?]

 

 スライサーは気高く正々堂々とした性格で、何かを恐れることはあっても立ち向かうと思われていた。

 しかし、そのスライサーが震えるほどの"終わり"とはなんなのか、M200もMは気になりつつも不安がよぎった。

 

 スライサーは次の敵に接近すると、殴るようにしてすれ違い様に斬っていく。

 そのまま次々と敵を流れるように斬っていき、レーダーに映る敵の数はみるみる減っていく。

 

 そして最後の敵を撃破し、クリアまでのタイムが表示される。

 

「記録更新ですわ!」

 

 記録はほんの0.2秒の更新ではあるが、進めていることにスライサーは安堵していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある日、ガンナーとスライサーは背中を合わせて座っていた。

 

 座っている場所は廃墟となった学校の屋上である。

 2人を夕暮れが照らしており、周囲は静かである。

 

「私、あなたを超えたいですわ」

 

「なんだ?藪から棒に」

 

 2人は背中を合わせて座ったまま話を続けていく。

 夕日の逆光で2人の顔の半分は見えず、持っている武器は照らされて輝いていた。

 

「私は強くなりたいですわ。けれど、そのためには同格であるあなたを超えなければならんですわ」

 

 真剣な表情のスライサーとは反対に、ガンナーは鼻を鳴らしてほくそ笑んだ。

 

「フンッ、同感だな。私もそろそろ君を超えたいと思っていたところだ」

 

 そこにレーダーに反応が現れた。

 翔である。

 

「今度演習で決闘ですわ」

 

「面白い、受けて立とう」

 

 引き切ればガンナーが勝ち、接近すればスライサーが勝つ。

 しかし2人の実力は拮抗している。

 だがいずれ来るであろう決着に、2人は闘志を燃やしていた。

 

 そして、そんなことなど知らない翔はのんびりと歩いていた。

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 体調崩してて遅れてしまいました、すいません。
 今回はガンナーとスライサーの話でしたが、どうだったでしょうか?
 感想や高評価、お待ちしています!
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