鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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第73話 黄金郷への鍵

 その日、翔は目的地の街を見下ろせる場所のビルの中にいた。

 

 翔は双眼鏡で観察し、移動する時間が近づくと双眼鏡をリュックに入れ、立ち上がる。

 すると、扉を蹴り開けて現れた者がいた。

 

「そろそろ時間やで~!」

 

 頭を傾けながら言い、短いツインテールを浅緑色に染めた髪が揺れる。

 その顔は左目の上から右頬にかけて大きな傷痕と縫い痕がある。

 

「クラエス、もう少し静かに来てよ・・・」

 

 

 

 2人は任務で廃墟となった街へ来ていた。

 この街は廃墟ではあるものの、一部の難民によるコミュニティがいくつか存在する。

 しかし、共通のルールが3つある。

 

 1つ、人形は入れない。

 例え介護用だったとしても。

 次に、必ず2人以上で行動すること。

 

 そして今回の任務の目標は、この街に潜伏している麻薬密売組織を捕らえる事である。

 

 2人は旅の者という名目でここにおり、指示があればルビー小隊のメンバーが突入する手筈である。

 

「・・・コミュニティ、というより小規模な市場に近いなぁ」

 

 難民達はここで物の売買をしており、出所の知れない物品が並んでいた。

 何かの部品、薬莢、自作の服や靴など、種類は様々である。

 しかし、周囲からは狙うような目線を常に感じていた。

 

「なるほど、人形や1人の人間なら襲ってもええって感じやな・・・ホンマ、燃やしとうなってくるわ。キヒヒッ」

 

 クラエスは物騒なことを言いながら笑っている。

 すると、クラエスは唐突に路地にいた男性に詰め寄る。

 

「なぁなぁ、アンタ・・・クスリ、ヤっとるやろ?」

 

 それを聞いた男性はすぐに離れようとする。

 しかしクラエスは素早く男性の後頭部を掴んで壁に押し付ける。

 

「アタリやな。クスリ、どこで手に入れたか・・・教えてくれへん?教えてくれたらな~んもせんで」

 

「な、なんだお前ら!俺はクスリなんてやってない!」

 

「ほ~ん、なら確めさしてもらうで」

 

 クラエスは男性の服の内ポケットへ手を入れる。

 すると服の内ポケットから、白い粉の入った袋と透明な箱に入った注射器が出てくる。

 

「ほ~れ、出てきたやんけ。さぁ、はよどこで買ったか教えてくれへん?」

 

 男性は抵抗する素振りを見せたが、クラエスは男性の顔を壁に押し付け、男性の目線上にある壁を指で撫でる。

 

「ほんなら仕方ないなぁ。なら・・・すりおろして顔面を整形したるわ。ちょうど良くザラついとるし!キヒヒッ!」

 

 クラエスはニッマァ~!と笑うと、男性の顔をより強く壁に押し付け、そのまま前に押し出し始める。

 その時点で男性の顔からは血が流れ、その顔は苦痛に歪む。

 

「や、ややめてくれ!言う!言うから!やめてくれ!」

 

 

 

 

 麻薬密売組織の居場所を特定した2人は、すぐに移動する。

 

「クラエス、君は・・・」

 

「やりすぎか、別のやり方があったんちゃうかってか?あるんかもなぁ。けどうちはあんなやり方しか知らへん」

 

 ほんの一瞬、クラエスの表情が曇ったのを翔は見逃さなかった。

 そして組織の居場所の近くへと辿り着くと、組織の様子がおかしいことに気づく。

 

 単にこちらの動きがバレたのではない。

 組織が運び込んでいた木箱の中に、エピフィラムの入ったケースがあったのだ。

 

「まさかパラデウスと繋がりがあったなんて・・・」

 

「ほんなら、出口は頼むで。うちは奇襲仕掛けて、アンタにええとこ見せたるわ」

 

 

 

 翔が出口とに移動し、クラエスは近くのコンテナに近寄る。

 

「・・・行くでぇ!」

 

 クラエスは両手に持った特注品のセミオートSGを持ち、助走をつけ、木箱を踏み越えてコンテナの上へ移動する。

 そのまま駆け抜け、窓から内部へ突入する。

 その瞬間、クラエスは構成員達に向けてSGの引き金を引く。

 

 クラエスのSGはセミオートなだけでなく、3本のバレルから同時に散弾を発射するものであり、火力は極めて高い。

 そのため、構成員は1発で手足を吹き飛ばされ、クラエスは壁を蹴ったりしながら3次元的な動きで翻弄している。

 

 翔は逃げようと出てきた構成員を、格闘で無力化していく。

 

 拠点は瞬く間に制圧され、状況確認のため翔も中へ入る。

 すると、隠し部屋の中に隠れていた者を発見したクラエスは、その者を引きずり出す。

 

 その者は麻薬密売組織のリーダーであった。

 しかし、クラエスの顔を見ると目を見開いてクラエスから逃げようとする。

 捕縛されるからではなく、明らかにクラエスから逃げようとしている。

 

「お、お前・・・なんで、なんで『黄金郷』の娘がここにいるんだ!?」

 

 クラエスはあまり驚いた様子は無く、さも当然かのように答えた。

 

「なんやぁ、うちの事知っとるんか」

 

 するとクラエスはリーダーの股間を蹴り飛ばし、そのまま護送車へ引きずっていく。

 

「グウッ!おいっ!離せっ!離せ!『クラエス・L・ドラド』!このっ!」

 

 リーダーが次の言葉を口にしようとした瞬間、クラエスはSGでリーダーの顔面を撃ち抜いた。

 その顔は、普段のカラカラとした雰囲気など微塵も感じさせない程の冷たさだった。

 

「・・・あぁ、撃ってもうたわ」

 

 その言葉は、まるで生ゴミを片付けるかのような言い方だった。

 

「・・・帰りん時に、昔のこと話したるわ」

 

 

 

 クラエス・・・本名、クラエス・L・ドラドはかつて存在した国『エルドラド』、その国王の末裔だった。

 

 エルドラド・・・黄金郷の意味を持つその国は、存在が都市伝説とされていた国であったが、実在していた。

 しかし、何百年も前にその国は消失し、その血族が細々と生き永らえていた。

 

 そして、クラエスは国王の直系の子孫であり、"残された黄金"の場所を知る者でもあった。

 

「うちはその黄金を狙っとる連中に追われてたんや。金のため金のためって、きったない欲丸出しの連中にな。1回目は捕まって散々な目に遭ったんや・・・拷問されるわマワされるわ腕もがれるわ・・・」

 

 クラエスは「これはそん時の傷や」と言い、顔にある大きな傷を指差した。

 その後逃げた後に名を変え、様々な戦場を渡り歩いた。

 戦場へ赴いたのは、逃げるためではなく力をつけるためである。

 

「追ってくる連中を全員、返り討ちにして、追手を出した諸悪の根元をぶちのめすためにな・・・それに、やるなら楽しくやらんとな」

 

 そう言って、クラエスはキシシッと笑った。

 

 

 

 

 

 帰還すると、クラエスは思い出したように翔に話しかける。

 

「なぁ翔・・・アンタ、なんでそないに優しいんや?あんなカス共、全員撃ち殺した方が早いやんけ」

 

 クラエスの表情は夕陽の逆行で暗くなっているものの、笑っているのは確認できる。

 

「けど、アンタのその甘さ、非情になれんとこ、戦場に行くには欠けてるとこ・・・ジェノ達から散々聞かされてきたけど・・・まあ、見せてみぃや」

 

 クラエスは翔の横を通り過ぎる時、ニタリと笑って言った。

 

「けど、アンタやアンタのお仲間がでけへんエグいこと、ウチに任しとき。キシシッ」

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 今回はこの話を作り直し、それに伴って元はクラエスと共に書くつもりだったバレットの話を、今後第67話に新たに書き入れる予定です。
 そのため更新が大幅に遅れてしまい、すいませんでした。

●クラエス・パッカード
 短いツインテールを浅緑色に染めた髪で身長156cm、23歳で8月16日生まれ。
 左目の上から右頬にかけて大きな傷痕と縫い痕がある。

 主な武器は特注のセミオートSGで、3本のバレルから同時に散弾を発射するタイプである。

 楽しさを優先し、そのために人殺しすら躊躇わない性格だが、元々はお淑やかな性格であり、数々の追跡や非道な仕打ちから逃れるため、今の性格になった。

 本名はクラエス・L・ドラドであり、かつて存在した黄金郷エルドラド国王の直系の子孫である。
 そのためクラエスは様々な組織から狙われており、その性格は歪んでいった。

 また、両腕は義手となっているだけでなく、クラフターの手によって強化人間となっている。
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