《カ、キ、オ、ル》
1機のストークが、空を飛んでいる。
その日、翔はルビー小隊とジェノを連れて日本へと向かった。
目的は翔の個人的な用事だったのだが、護衛としてM200達はついてきていた。
個人的な用事、とはいうものの翔の表情は緊張している様子であり、まるで誰かの安否を心配するかのようでもある。
日本に着くと、翔はとある喫茶店へ向かった。
建て直した様子の喫茶店には『鴉の家』と書かれた看板があった。
翔は、深呼吸をすると喫茶店の扉を開いた。
「いらっしゃいませ~!」
店員がにこやかに出迎え、席に案内される。
翔は席に座ると、店内を見渡す。
「あの時と、そっくりだね」
すると、新しく来店した客が翔に目を向ける。
「あっ!君達久しぶり!」
見ればサンシャインと雷電、そして有澤夫妻がいた。
有澤重工の社長夫妻が来ていることに、翔達は目を丸くしていた。
しかし、社長である武龍の妻が抱いている赤子の隆文は翔を凝視していた。
多少雑談を交えると、翔は武龍に頼み事を持ちかける。
「あの・・・僕が用事を済ませてる間、皆にちょっと見学させてくれませんか?」
「見学?別に良いが、時間掛かる事なのか?」
翔は頷いたが、サンシャインは前と違う様子なのに気づいた。
「・・・何か1人じゃなきゃいけない事情があるっぽいね」
「そうか・・・なら任せておけ」
そして翔は1人でどこかへと行き、M200達は見学のため武龍達についていった。
M200達は有澤重工の見学のため、本社へ入る。
そこで武龍は直々に見学のガイドを務め、様々な商品や工場を紹介してもらっていた。
そして、IOPとペルシカを通じてランポルド達やMが作られた、その元となった空間の歪み・・・
そこにも案内された。
「せっかくあのモジュールを積んだM200がいるんだ、これを見せておこうと思ってね」
巨大な装置に囲まれた場所には、一見すると何も無いただの空き地に見える場所。
広さは約12m四方だが、分厚い特殊ガラスに守られており、誰も入れないようになっている。
近づいても問題は無いようで、武龍本人が近づいていく。
武龍は研究員の1人に話しかけ、その研究員はあくびをしながら振り返る。
「調子はどうだ?」
「ふぁ~・・・また1つデータが取れましたが、前のより複雑なもので、解析には時間が掛かりそうです。ふぁ~」
「おいおい、寝てないのか?」
「だって解析するの楽しくて仕方ないんですもん」
ジェノは何か無いかと、ガラスに顔を押し付けて凝視している。
M200は不思議と引き寄せられる感覚がし、ガラスに触れてみる。
「あっ・・・」
その瞬間、M200とMに情報が激流のように押し寄せてくる。
「翔ぅ!そろそろ昼飯にすんぞ~!」その言葉に返答し、鉱山の中で出前のラーメンを食べべべべべ、そこにMTが襲撃に現れカケル・L・レいヴんは作業用えむてぃーのパーツを組み換え、そのやり方は後に「」と呼ばれるものであり、その後ごごごごご、翔は"あああああああ"の開発の中核をニナニナニナニナニナ。しかし完成と命名の「人類に必要なんです!」が起こり、翔の///はiRAwakeLAmU、翔は999999999&&&00となりてAM…
赤い海の中、M200とMは割れるように痛む頭を抑え、蹲って悶えていた。
「ぐうううっ!なんっ!ですかっ!?これっ!?」
「これはっ!これはあっ!!!あがっ!」
情報の激流が終わると、2人はぐったりと横たわる。
息を荒くしながら、MはM200の方を見る。
「・・・見ましたか?」
「・・・ええ」
「やはり・・・やはり、翔さんは・・・」
するとMはボロボロと大粒の涙を溢し、拳を握り締めて海底を叩く。
「ボクは!守れなかった!管理者の娘で!1番!翔さんの近くにいて!それなのに!それなのにぃ!あの日!ボクはぁっ!あああああっっっ!」
Mが大声で泣き出した瞬間、M200の意識は戻った。
情報の激流が来てからここまで、1秒かかるかどうかの時間しか経っていなかった。
M200はそっとガラスから離れると、ナディアの横に立った。
翔は丘へ続く道を、花束を持って歩いていた。
その足取りは普段より重く、軽やかな歩みではなかった。
晴れた空の下、周囲の木々からの木漏れ日が地面を照らしている。
すると、前方から歩いてくる人影があった。
「あら?翔じゃない」
歩いてきたのはロイラとエージェントであり、互いに軽く会釈をする。
「この先に用があるの?」
「そうですね、大事な・・・用事が」
ロイラは翔を見定めるように目を細める。
「ふぅ~ん・・・まあ、野暮なことは聞かないわ。行きましょ、エージェント」
そして翔は丘を登っていき、目的の場所へ辿り着く。
丘の上は海と空が良く見える場所であり、中心には1つの墓があった。
翔は墓の前に立ち、墓石に書かれている名前を見た途端、目を見開き、膝から崩れ落ちた。
『
『鉄血工造を創設し、数々の功績に尽力し、素晴らしいコーヒーを振る舞った者として、ここに印す』
その名前を、見たくなかった──
「あ・・・あ・・・」
どこかで、別人だと思いたかった──
「愛海・・・さん・・・」
そんなのは、エゴだと解っている──
「僕は・・・僕は・・・」
だがそれでも、目の前の真実は変わらない──
「ああ・・・あああ・・・」
彼女は既に、死んでいたのだ──
翔の慟哭が響き、翔の目からは涙が溢れ、土を濡らす。
翔は土下座をし、顔が土にまみれるのも構わず叫ぶ。
「ごめんなさい!ごめんなさい!僕は・・・僕は!守れなかった!あの時、"アイツ"を破壊して・・・守れた気になってた!でも!でも結局!世界がめちゃくちゃになって!君を!守れなかった!ごめんなさい!ごめんなさい!」
静かな丘に、慟哭が響き渡る。
「まったく・・・そんなに泣き喚いてたら、こっちにも聞こえるじゃない」
振り向けば、ロイラが1人で立っていた。
翔は謝罪の事で頭が一杯でレーダーを見る余裕すら無かった。
「あらあら、涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃじゃない・・・しかも土までつけちゃって」
「ロイラ・・・さ・・・グスッ・・・僕・・・」
翔はどう答えれば良いか分からず、息を荒くしながら涙を流すばかりだった。
「やっぱり・・・愛海ちゃんの言ってた人って、あなただったのね」
ロイラはポケットからボイスレコーダーを取り出し、ボタンを押した。
《え~っと、私の声・・・入ってるよね?》
年老いてはいるが、それは紛れもなく翔の知る愛海の声だった。
《これは、私の知ってる翔・ニールセン本人でなければ聞くことが許されない内容。だから、別の人だったらすぐに切って・・・・・じゃあ、聞いてるのは翔ってことね》
翔は呆然とその録音を聞いていた。
《まず、これを聞いてるってことは私が何らかの理由で、既に死んでるって事。だからこんな方法でしかメッセージを残せなかったのは、ごめんね》
翔が出会った頃と同じ、優しく暖かい声が翔の心に入ってくる。
《翔・・・今、この世界はあなたが守ったのに、その原因を作った人は皆逃げて、そして再び自分達の手で壊してしまった・・・でも、あなたは悪くない。悪いのは再び壊すことを選んでしまった人達だから》
翔は微かに首を横に振る。
《何度でも言う。翔、あなたは悪くない。あなたが守ってくれたおかげで、私も父さんも、多くの人達も救われた。そして今の希望に繋がってる・・・だから、ありがとう》
風がそっと翔の頬を撫で、包むように吹いた。
《もし翔が戻ってきたら、きっとまた世界のために行動するんでしょ?だから、そのために私は鉄血工造を創ったの。東欧に立てるはずだった本社を日本に移すの、大変だったんだから》
近くの木々が揺れ、木の葉の擦れる音が流れるように風と共に鳴る。
《あなたが破壊した、エクシーナイン。あれがまた復活した時のために、七刀会を結成したの。だから鉄血だけじゃなくて、七刀会も頼って》
すると風が止み、周囲は無音となる。
《最後に・・・翔・・・ありがとう》
翔は愛海の墓を振り返り、それを見たロイラは口を開く。
「愛海ちゃんはね、あなたの事をよく話してたわ。飽きもせず楽しそうに何度もね・・・けど、あなたの事を責めたり悪く言う事は1度だって無かった」
震えながらゆっくりと立ち上がる。
そして涙を拭い、笑みを浮かべて・・・
「ありがとう、愛海さん・・・そして、ロイラさん」
翔がロイラの方を向くと、ロイラはボイスレコーダーを手渡した。
「これは翔が持ってるべき、そして・・・」
ロイラの表情は真面目なものになり、翔を見据えて敬礼する。
「あなたを、現時刻をもって本物の翔・ニールセンと認定。鉄血工造創設者、神城愛海の意向により・・・これより鉄血工造は、翔・ニールセンの戦力となる」
その後、七刀会の面々にロイラから通信が送られる。
《鴉、帰還せり。ナインボール所属の翔・ニールセンは鴉である》
読んでくださり、ありがとうございます!
今回は過去に大きく関わる話でしたが、どうだったでしょうか?
(5/28、第67話にバレットの話を入れておきました)
感想や高評価、お待ちしています!
●神城 愛海
身長160cm、享年53歳で7月9日生まれ。
明るく優しい性格で、近隣住民からは慕われていた。
父親と2人暮らしをしており、母親とは死別している。
鉄血工造を創設する前は、父親と共に喫茶店をしておりその腕は確かだった。
翔の消失後は友人達と共に七刀会を結成し、翔の帰還と世界の危機に備える。
鉄血工造を創設した後は、ロイラと共に戦術人形の開発を進めていき、日本の防衛に着手していった。
愛海の夢は翔と喫茶店を経営することだったが、翔と再開すること無く暗殺されてしまう。
●鴉の家
愛海がいつか帰ってくる翔のため、店名を変えた喫茶店。
内装は変えること無く、味もそのまま受け継がれている。
●七刀会
翔が帰ってきた時に世界が平和であるようにと、世界の危機に備えて愛海が友人達を集めて結成した組織。
愛海の他には・・・
ロイラ、武龍、クルーガー、ハーヴェル、リコリス、そしてウィリアムがいる。
しかし実際には正確な人数を悟らせぬよう、ロドンやリサ、ペルシカも協力していた。