鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

85 / 102
 不明なメッセージを確認。
 《カ、キ、オ、ル》




第74話 それでも君を、守りたかった

 1機のストークが、空を飛んでいる。

 

 その日、翔はルビー小隊とジェノを連れて日本へと向かった。

 目的は翔の個人的な用事だったのだが、護衛としてM200達はついてきていた。

 

 個人的な用事、とはいうものの翔の表情は緊張している様子であり、まるで誰かの安否を心配するかのようでもある。

 

 

 

 日本に着くと、翔はとある喫茶店へ向かった。

 建て直した様子の喫茶店には『鴉の家』と書かれた看板があった。

 

 翔は、深呼吸をすると喫茶店の扉を開いた。

 

「いらっしゃいませ~!」

 

 店員がにこやかに出迎え、席に案内される。

 翔は席に座ると、店内を見渡す。

 

「あの時と、そっくりだね」

 

 すると、新しく来店した客が翔に目を向ける。

 

「あっ!君達久しぶり!」

 

 見ればサンシャインと雷電、そして有澤夫妻がいた。

 有澤重工の社長夫妻が来ていることに、翔達は目を丸くしていた。

 しかし、社長である武龍の妻が抱いている赤子の隆文は翔を凝視していた。

 

 多少雑談を交えると、翔は武龍に頼み事を持ちかける。

 

「あの・・・僕が用事を済ませてる間、皆にちょっと見学させてくれませんか?」

 

「見学?別に良いが、時間掛かる事なのか?」

 

 翔は頷いたが、サンシャインは前と違う様子なのに気づいた。

 

「・・・何か1人じゃなきゃいけない事情があるっぽいね」

 

「そうか・・・なら任せておけ」

 

 そして翔は1人でどこかへと行き、M200達は見学のため武龍達についていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 M200達は有澤重工の見学のため、本社へ入る。

 そこで武龍は直々に見学のガイドを務め、様々な商品や工場を紹介してもらっていた。

 

 そして、IOPとペルシカを通じてランポルド達やMが作られた、その元となった空間の歪み・・・

 そこにも案内された。

 

「せっかくあのモジュールを積んだM200がいるんだ、これを見せておこうと思ってね」

 

 巨大な装置に囲まれた場所には、一見すると何も無いただの空き地に見える場所。

 広さは約12m四方だが、分厚い特殊ガラスに守られており、誰も入れないようになっている。

 

 近づいても問題は無いようで、武龍本人が近づいていく。

 武龍は研究員の1人に話しかけ、その研究員はあくびをしながら振り返る。

 

「調子はどうだ?」

 

「ふぁ~・・・また1つデータが取れましたが、前のより複雑なもので、解析には時間が掛かりそうです。ふぁ~」

 

「おいおい、寝てないのか?」

 

「だって解析するの楽しくて仕方ないんですもん」

 

 ジェノは何か無いかと、ガラスに顔を押し付けて凝視している。

 M200は不思議と引き寄せられる感覚がし、ガラスに触れてみる。

 

「あっ・・・」

 

 その瞬間、M200とMに情報が激流のように押し寄せてくる。

 

 

 

「翔ぅ!そろそろ昼飯にすんぞ~!」その言葉に返答し、鉱山の中で出前のラーメンを食べべべべべ、そこにMTが襲撃に現れカケル・L・レいヴんは作業用えむてぃーのパーツを組み換え、そのやり方は後に「」と呼ばれるものであり、その後ごごごごご、翔は"あああああああ"の開発の中核をニナニナニナニナニナ。しかし完成と命名の「人類に必要なんです!」が起こり、翔の///はiRAwakeLAmU、翔は999999999&&&00となりてAM…

 

 赤い海の中、M200とMは割れるように痛む頭を抑え、蹲って悶えていた。

 

「ぐうううっ!なんっ!ですかっ!?これっ!?」

 

「これはっ!これはあっ!!!あがっ!」

 

 情報の激流が終わると、2人はぐったりと横たわる。

 息を荒くしながら、MはM200の方を見る。

 

「・・・見ましたか?」

 

「・・・ええ」

 

「やはり・・・やはり、翔さんは・・・」

 

 するとMはボロボロと大粒の涙を溢し、拳を握り締めて海底を叩く。

 

「ボクは!守れなかった!管理者の娘で!1番!翔さんの近くにいて!それなのに!それなのにぃ!あの日!ボクはぁっ!あああああっっっ!」

 

 

 

 Mが大声で泣き出した瞬間、M200の意識は戻った。

 情報の激流が来てからここまで、1秒かかるかどうかの時間しか経っていなかった。

 M200はそっとガラスから離れると、ナディアの横に立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翔は丘へ続く道を、花束を持って歩いていた。

 その足取りは普段より重く、軽やかな歩みではなかった。

 晴れた空の下、周囲の木々からの木漏れ日が地面を照らしている。

 

 すると、前方から歩いてくる人影があった。

 

「あら?翔じゃない」

 

 歩いてきたのはロイラとエージェントであり、互いに軽く会釈をする。

 

「この先に用があるの?」

 

「そうですね、大事な・・・用事が」

 

 ロイラは翔を見定めるように目を細める。

 

「ふぅ~ん・・・まあ、野暮なことは聞かないわ。行きましょ、エージェント」

 

 そして翔は丘を登っていき、目的の場所へ辿り着く。

 

 

 

 

 

 丘の上は海と空が良く見える場所であり、中心には1つの墓があった。

 翔は墓の前に立ち、墓石に書かれている名前を見た途端、目を見開き、膝から崩れ落ちた。

 

 

神城(かみしろ) 愛海(あみ)

 

『鉄血工造を創設し、数々の功績に尽力し、素晴らしいコーヒーを振る舞った者として、ここに印す』

 

 

 その名前を、見たくなかった──

 

「あ・・・あ・・・」

 

 どこかで、別人だと思いたかった──

 

「愛海・・・さん・・・」

 

 そんなのは、エゴだと解っている──

 

「僕は・・・僕は・・・」

 

 だがそれでも、目の前の真実は変わらない──

 

「ああ・・・あああ・・・」

 

 彼女は既に、死んでいたのだ──

 

 

 

 翔の慟哭が響き、翔の目からは涙が溢れ、土を濡らす。

 翔は土下座をし、顔が土にまみれるのも構わず叫ぶ。

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!僕は・・・僕は!守れなかった!あの時、"アイツ"を破壊して・・・守れた気になってた!でも!でも結局!世界がめちゃくちゃになって!君を!守れなかった!ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

 静かな丘に、慟哭が響き渡る。

 

「まったく・・・そんなに泣き喚いてたら、こっちにも聞こえるじゃない」

 

 振り向けば、ロイラが1人で立っていた。

 翔は謝罪の事で頭が一杯でレーダーを見る余裕すら無かった。

 

「あらあら、涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃじゃない・・・しかも土までつけちゃって」

 

「ロイラ・・・さ・・・グスッ・・・僕・・・」

 

 翔はどう答えれば良いか分からず、息を荒くしながら涙を流すばかりだった。

 

「やっぱり・・・愛海ちゃんの言ってた人って、あなただったのね」

 

 ロイラはポケットからボイスレコーダーを取り出し、ボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《え~っと、私の声・・・入ってるよね?》

 

 年老いてはいるが、それは紛れもなく翔の知る愛海の声だった。

 

《これは、私の知ってる翔・ニールセン本人でなければ聞くことが許されない内容。だから、別の人だったらすぐに切って・・・・・じゃあ、聞いてるのは翔ってことね》

 

 翔は呆然とその録音を聞いていた。

 

《まず、これを聞いてるってことは私が何らかの理由で、既に死んでるって事。だからこんな方法でしかメッセージを残せなかったのは、ごめんね》

 

 翔が出会った頃と同じ、優しく暖かい声が翔の心に入ってくる。

 

《翔・・・今、この世界はあなたが守ったのに、その原因を作った人は皆逃げて、そして再び自分達の手で壊してしまった・・・でも、あなたは悪くない。悪いのは再び壊すことを選んでしまった人達だから》

 

 翔は微かに首を横に振る。

 

《何度でも言う。翔、あなたは悪くない。あなたが守ってくれたおかげで、私も父さんも、多くの人達も救われた。そして今の希望に繋がってる・・・だから、ありがとう》

 

 風がそっと翔の頬を撫で、包むように吹いた。

 

《もし翔が戻ってきたら、きっとまた世界のために行動するんでしょ?だから、そのために私は鉄血工造を創ったの。東欧に立てるはずだった本社を日本に移すの、大変だったんだから》

 

 近くの木々が揺れ、木の葉の擦れる音が流れるように風と共に鳴る。

 

《あなたが破壊した、エクシーナイン。あれがまた復活した時のために、七刀会を結成したの。だから鉄血だけじゃなくて、七刀会も頼って》

 

 すると風が止み、周囲は無音となる。

 

《最後に・・・翔・・・ありがとう》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翔は愛海の墓を振り返り、それを見たロイラは口を開く。

 

「愛海ちゃんはね、あなたの事をよく話してたわ。飽きもせず楽しそうに何度もね・・・けど、あなたの事を責めたり悪く言う事は1度だって無かった」

 

 震えながらゆっくりと立ち上がる。

 そして涙を拭い、笑みを浮かべて・・・

 

「ありがとう、愛海さん・・・そして、ロイラさん」

 

 翔がロイラの方を向くと、ロイラはボイスレコーダーを手渡した。

 

「これは翔が持ってるべき、そして・・・」

 

 ロイラの表情は真面目なものになり、翔を見据えて敬礼する。

 

「あなたを、現時刻をもって本物の翔・ニールセンと認定。鉄血工造創設者、神城愛海の意向により・・・これより鉄血工造は、翔・ニールセンの戦力となる」

 

 

 

 その後、七刀会の面々にロイラから通信が送られる。

 

《鴉、帰還せり。ナインボール所属の翔・ニールセンは鴉である》

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 今回は過去に大きく関わる話でしたが、どうだったでしょうか?
(5/28、第67話にバレットの話を入れておきました)
 感想や高評価、お待ちしています!

●神城 愛海
 身長160cm、享年53歳で7月9日生まれ。

 明るく優しい性格で、近隣住民からは慕われていた。
 父親と2人暮らしをしており、母親とは死別している。

 鉄血工造を創設する前は、父親と共に喫茶店をしておりその腕は確かだった。
 翔の消失後は友人達と共に七刀会を結成し、翔の帰還と世界の危機に備える。

 鉄血工造を創設した後は、ロイラと共に戦術人形の開発を進めていき、日本の防衛に着手していった。

 愛海の夢は翔と喫茶店を経営することだったが、翔と再開すること無く暗殺されてしまう。

●鴉の家
 愛海がいつか帰ってくる翔のため、店名を変えた喫茶店。
 内装は変えること無く、味もそのまま受け継がれている。

●七刀会
 翔が帰ってきた時に世界が平和であるようにと、世界の危機に備えて愛海が友人達を集めて結成した組織。

 愛海の他には・・・
 ロイラ、武龍、クルーガー、ハーヴェル、リコリス、そしてウィリアムがいる。
 しかし実際には正確な人数を悟らせぬよう、ロドンやリサ、ペルシカも協力していた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。