鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

87 / 102
 これはゲーム本編が始まる少し前の、ある探偵の物語。




番外編 Broken Trigger

 本屋の隣にある探偵事務所。

 そこへある女性が訪ねてくる。

 

「ようこそ、お嬢さん」

 

 正面にあるデスクに座っている男性が立ち上がり、挨拶をする。

 男性はブロンドのオールバックの髪に、灰色のスーツを着ていた。

 

 その男性はこの事務所の探偵であり、その相棒の人形は女性を応接用のソファーに案内し、コーヒーを入れに行った。

 人形はブロンドのボブカットに白いスーツを着ており、2人のスーツは色違いの同じ形であった。

 

「依頼があって、ここに来ました・・・」

 

 女性の目には涙が浮かんでおり、探偵は依頼を聞くことにした。

 依頼人である女性は、黒いロングヘアでブラウンのコートを着ているが、その髪はストレスのせいかボサボサになっていた。

 

「その・・・最近、ストーカーに遭っていて・・・眠れなくて・・・」

 

 依頼人の話によると・・・

 1週間前からストーカーが付きまとっており、猥褻な内容の手紙まで送られており、ほとんど眠れていないという。

 更に、警察には通報したものの、証拠不十分とされてしまっていた。

 

「なるほど、話は分かりました。ではこちらで証拠を集めてみましょう」

 

 

 

 20:00──

 

 依頼人の女性が仕事から帰る際、探偵と相棒はそれぞれ別の位置から依頼人とその周囲を観察し、ストーカーの証拠を掴もうとしていた。

 

「『ペタロ』、ストーカーは?」

 

 探偵がペタロと呼ぶのは、自身の相棒である人形である。

 ペタロは人混みに紛れながら応答した。

 

《依頼人を尾行する人物は見当たらず・・・そちらは?》

 

 探偵は依頼人の先を歩きつつ、周囲を警戒している。

 

「こっちもだ・・・だが、まだ粘るぞ」

 

《了解》

 

 しばらく歩いていると、洗い呼吸の人物が依頼人を尾行し始めた。

 緑のニット帽を深く被り、サングラスをかけている。

 服は黒に紫のラインが入ったジャージだが、サイズが合ってないのかダボダボになっている。

 

 探偵は依頼人に指示を出し、自分は少し道を外れる。

 依頼人は道の角を、同じ方向に3回曲がる。

 

「・・・アタリだ、奴がストーカーで確定。証拠は取れたから、後は依頼人を守るだけだ」

 

 探偵が依頼人に距離を近づけ、ペタロは依頼人の知り合いと偶然鉢合わせた風に装おうとしたが・・・

 

 ストーカーは依頼人の背後に駆け寄っていった。

 手に持っているものが街頭に反射して光る。

 ストーカーが持っているのは、ナイフだった。

 

「まずいっ!」

 

 探偵は依頼人に駆け寄り、ペタロはストーカーの前に立ち塞がると、ストーカーの右腹部に蹴りを入れる。

 探偵は依頼人を自身の背後に隠し、胸のホルスターからリボルバーを抜く。

 

「動くな!」

 

 暴れるストーカーは言葉にならない叫び声をあげているが、ペタロに取り押さえられて身動きが取れないでいる。

 ペタロは両手が空くように拘束すると、警察へ通報しようとした。

 

「離せ!俺の兄貴に手を出すな!」

 

 声のした方を向くと、モスグリーンのジャージを着てフードを被っている男がいた。

 先程の発言から、ストーカーの弟であるだけでなく、近くにいたということは協力者でもあるだろう。

 

 しかし問題は、ストーカーの弟の手には小型拳銃が握られており、それはペタロに向けられていた。

 ペタロに拘束されているストーカーは下卑た笑みを浮かべたが・・・

 

 1発の銃声が鳴り響いた。

 

「うあああっ!」

 

 ストーカーの弟の持つ小型拳銃、そのバレルに1発の弾丸が突き刺さっており、弾丸を発射できなくさせていた。

 探偵の持つリボルバーからは硝煙が出ており、この一瞬で撃ったのは明確だった。

 

 ストーカーとその弟は、信じられないといった表情で探偵を見る。

 探偵は余裕の笑みを浮かべていた。

 

「銃ってのは、使い手が信じれば当ててくれるもんさ」

 

 

 

 その後ストーカーとその弟は逮捕され、依頼人はストーカーの被害に悩まされる事は無くなった。

 依頼人が快調になっているのを聞き、探偵とペタロは拳を突き合わせた。

 

 地元では有名な探偵、その相棒は少し古い人形だが、パーツを新しいものに新調するのを続け、表情が少し乏しい以外に問題は無い。

 

 2人の探偵事務所は、これまで様々な事件の解決に協力してきており、地元警察からの信頼も厚かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある日、探偵は警察から依頼を受けた。

 内容は、行方不明となった人形の捜索だった。

 

 本来であれば、探偵の力を借りる必要など無いはずだが、数日前に大量のELIDが突然現れたことにより、町の警官の数は大きく減っていた。

 

 そのため、人形の捜索を依頼してきたのである。

 探偵は依頼を快く引き受け、人形の行方が途絶えたとされる場所へ向かった。

 

「なんだここ?痕跡がほとんど無い・・・」

 

 場所は廃墟となった工場地帯で、既に土地の買い手が見つかっており、近く住宅地やショッピングモールなどが建つ予定になっていた。

 

「僅かな痕跡は所々ありますが、それにしても数が少ないですね」

 

 痕跡という痕跡が悉く消されており、足跡はおろか服の繊維すら無かった。

 不気味な程に痕跡が無く、探偵はため息をつく。

 

「はぁ・・・これじゃあ、ここで何があったのかが全く分からないな・・・」

 

 しかし次の瞬間、探偵の腹部に何か衝撃が入る。

 

「グホァッ!」

 

 衝撃の強さと大きさ的に、咄嗟に殴られたと探偵は思ったが、ペタロは腹部を殴られたように体を曲げ、その場に倒れた。

 

「ペタロ!」

 

 すると、数人の男女が現れてペタロを拘束し、連れ去ろうとする。

 

「美しい、まさに天使だ!」

 

「本当に旧式なのか?」

 

「おい、さっさと行くぞ!」

 

 男女の会話を聞くに、人形天使教であると判断した探偵は立ち上がろうとする。

 

「お、お前ら・・・待て・・・」

 

 しかし、振り向いた男が探偵にテーザーガンを撃ち、探偵は意識を失った。

 

 

 

 

 

 探偵が目を覚ますと、病院にいた。

 すぐに看護師が医者を呼びに行き、医者と共に警官も病室に入ってきた。

 

 すぐに警官に何があったのかを説明するが、警官は口を濁していた。

 

「どうした?すぐに動けば、助けられるかもしれない!いなくなった人形だって、もしかしたらアイツらに拐われたのかもしれない!」

 

 警官は探偵に顔を近づけ、囁いた。

 

「・・・実は、署長が人形天使教と繋がりがあってな。人形天使教が関わってる事件は、捜査させてくれないんだ。俺だって、力になってやりたい」

 

 警官は、探偵の服の袖に急いで書き留めたメモを差し込み、探偵から離れた。

 

「事情は分かった。上に伝えておこう」

 

 そう言って警官は去っていった。

 警官が残していったメモには、最寄りの人形天使教の拠点が記されていた。

 

 

 

 

 

 探偵は病院から抜け出し、人形天使教の拠点に向かった。

 

 崖下の山中、そこに拠点はあった。

 

 途中で事務所に寄って予備の弾丸を持ってきており、数を確認してから拠点の裏口に入る。

 

 呑気にイヤホンで音楽を聴きながら、何かの部品を点検している男性の背後から奇襲し、イヤホンを外して口を塞ぐ。

 

「人形達をどこへ隠した?言え!」

 

 突きつけられた銃口に、男性はすぐに場所を教えてしまう。

 探偵は男性を殴って気絶させ、先へ進む。

 しかしそこからの探偵の行動は、監視カメラに映っておりすぐに武装した信者が集まってきた。

 

 探偵は迷わず信者を射殺していき、物陰に隠れてリロードする。

 廊下を進み、階段を降りる。だがそこで左右からの挟み撃ちに遭い、1人は倒せたもののもう1人に撃たれてしまう。

 

 撃たれたのは、右腕である。

 

 更に、そこに集まってきた信者達はペタロを含む5人の人形を連れてきた。

 信者の中に、階級が高いのか煌びやかな服装の男性がいた。

 

 

 

「全く・・・こんなに殺してしまうとは・・・」

 

「黙れ!今すぐ人形達を解放しろ!」

 

 探偵は左手でリボルバーを持ち直すが、背中を殴られて膝をついてしまう。

 

(バカなっ!?後ろには誰もいないはず!足音すらしなかったぞ!?)

 

 探偵は信者達に銃口を突きつけられ、ペタロ達5人の人形にも銃口が向けられている。

 

「あなたは信者達を何人も殺しました。そして、この人形にはあなたを呼び込んだ罪があります・・・よって、罰を与えます」

 

 信者達は、迷うこと無くペタロ達に向かって引き金を引いた。

 

「やめろおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

 ペタロは、最初は探偵の母が購入した家政人形だった。

 

 しかし、探偵が事務所を開いてからは母親の勧めもあり、ペタロは探偵業の手伝いを始めた。

 しばらくして、ペタロの素体を新しいものに変え、ペタロと探偵のできることは増えていった。

 

 2人の仲は深まっていき、家族と言える関係になった。

 

 互いに支え合う相棒であり、家族であり・・・

 旧式なんてのは関係無くなっていた。

 

 そんなペタロが、頭部を撃たれて人工血液と部品を撒き散らしながら機能停止した。

 

 探偵は信者を撃とうとするが、左腕が殴られたような衝撃を受けて折れてしまった。

 

「あなたは生かしておいてあげましょう。我らに逆らいし人間が、何を生むのか・・・それを知らしめるために」

 

 こうして、探偵は町の入り口近くに投げ出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベッドの上で、探偵は目を覚ます。

 

 今となっては、元探偵となっているが。

 時計を見ると、08:00だった。

 

「また、あの夢か・・・」

 

 元探偵がいる部屋は少し前まで住んでいた民家ではなく、質素だが明らかに上流階級のものと言える部屋だった。

 

「・・・許せない、許せない、許せない!」

 

 元探偵は自身の顔を掴み、歯軋りをする。

 

「あの、鴉!絶対に・・・絶対に、殺す!」

 

 その目に、かつての輝きは無く・・・

 あるのはただ、憎悪に燃え上がった目だった・・・

 

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 遅くなってしまい、すいませんでした。
 今回の番外編、探偵は誰か分かりましたか?
 ちなみに、前回の前書きは日本語にすると「任せたよ」になります。

 ではこれから、章毎の解説一覧を書いていきます。
 ついでに誤字脱字の点検と、解説漏れが無いか探していきます。
 解説漏れは、文字数が足りなければ解説一覧に載せます。

●探偵
 黒いオールバックの髪の探偵。
 地元では有名な探偵だった。
 射撃の腕はかなりのもので、地元では彼の右に出る者はいない程である。

●ペタロ
 ブロンドのボブカットで身長160cm。
 白いスーツを着ている。

 旧式であるが故に、表情が少し乏しい。
 しかし探偵の事は信頼しており、家族として扱ってもらえるだけでなく、相棒であることを誇りにしていた。

 名前はイタリア語で花弁を意味している。
 探偵の母親が家政人形として購入し、それからは共に過ごすうちに探偵業を手伝うようになった。
 新しい素体は、ペタロから頼み込んで得たものでもある。

 しかし、人形天使教の信者により破壊されてしまった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。