けれど、押し付けや盲信はいけませんよ?
ドイツ、ベルリン──
そこにあるホテルの1室に、6人の人影があった。
翔、フォートレス、アデリン、アーキテクト、ゲーガー、アクアビットマンである。
「さて、そろそろ始めよう」
翔達は今回、ドイツへプロメテウス計画とパラデウスについて調査するため、ここへ来ていた。
また、ルビー小隊は別のルートから入り、既に潜伏を開始していた。
翔とアデリン、アーキテクト、ゲーガーの4人は郊外から調べる事にし、アクアビットマンとフォートレスはパラデウスが関わっていると思われる『ガラテアグループ』について調べる事になっている。
ルビー小隊は潜伏しつつ、敵対勢力に何かしら動きが無いか監視している。
それぞれが分かれ、行動を開始していく。
しかし、ベルリンに来ているのは翔達だけではなかった・・・
翔は郊外へと車で向かっている際、すれ違った車に違和感を感じた。
何か・・・見知った者の気配だったが、任務を優先して頭に留めておくくらいにしておいた。
ベルリン郊外を進んだ先にあったのは、『ボーン村』と呼ばれる村だった。
ボーン村では電子機器の持ち込みは厳禁であるとのことで、それらの偽装が可能となっている翔だけで潜入することとなった。
潜入の際、難民に偽装するために汚れた服を用意し、肌もある程度汚す事にした。
車から降りて村に入ると、見知った人物を見かけたため近づいてみる。
近づくとその人物も翔に気づいた。
「・・・翔か?」
翔は微笑んで答える。
「他人の空似ですよ。僕は『ヒロ』、君は?」
銀治は翔も潜入していることを察して、偽名を名乗る。
「俺は『ロビン』だ。よろしく」
銀治の近くには1人の女の子がおり、翔の顔を見上げた。
「あなたも、ロビンと同じここの新人さん?」
「そうだよ。さっき来たばかりなんだ」
すると女の子は翔に向かって笑みを浮かべた。
「じゃあロビンと同じだね!私は『エリザ』。こっちに来て!」
翔は銀治と共にエリザに連れられて行った。
鉄血のエリザと同じ名前に、翔は思わず微笑んだ。
(もし向こうのエリザと会ったら、仲良くなれたりして・・・)
その後、銀治と軽い情報交換をした翔は銀治とは別の場所へ移動し、情報を集めていた。
すると正午の鐘が鳴り、難民達は並んで食料の配給を受け取りに行き始める。
配給窓口の前にいる、黒い帽子を被ったブロンドの長髪の女性、彼女がここを仕切っているという『エリヤ』だろうか。
翔は気にしつつも列に並ぶ。
周囲の難民達の話し声を聞く限りでは、どうやらエリヤで間違いないようである。
エリヤは食料を受け取りに来た難民達に、何かの冊子を配っていた。
そして受け取った人に丁寧に声をかけていた。
「神の賜りに感謝を、神の恩恵に感謝を、神を称えよう!神を信じる者に、幸福を安寧を」
そこまでは、翔は特に気にしなかった。
翔にとって、神の存在というのは「いるかいないか分からないけど、いると考えても良いんじゃないかな」という感覚だからだ。
それに、人々が心の安寧を得たり、己を律する事ができるなどあるなら、何を信仰していようとその人の自由である。
という認識を持っていた。
しかし、エリヤの次の言葉で翔は違和感を覚えた。
「神に背く者に災いと審判を。我々は神に与えられし、この肉体と両手で生きる。邪神を信ずる者はいずれ天罰が下されよう」
翔の中で、エリヤは警戒すべき対象となった。
それは、狂信者やカルトに見られる言動だったからである。
そして、エリヤは列の傍に跪く難民達を指差した。
しかし他の難民達は彼らから目を反らしていた。
(・・・邪神って、何を指しているのかな?)
翔は気になったが、列の近くにいた銀治がエリザに問いかけた。
思わぬタイミングで聞けそうだったため、翔は耳を澄ました。
「神に許されていない事だよ。電子機器を持ち込むとか、体に機械を埋め込むとか、娯楽に浸るとか・・・」
完全にカルトではないかと、翔は思いつつ聞こえない振りをし続けながら、跪いている難民達をチラリと見る。
彼らは酷くやつれており、一部はコーラップスによる汚染の症状が出ている者までいる。
あのやつれ方から見るに、長い時間まともな食事は摂れていないだろう。
翔は後でこっそり何か渡そうかと思案し始めた時、エリヤが衝撃の言葉を口にした。
「神の名はパラデウス!神は我らに恩恵を授けよう!」
ブレーメンにいるなら、どこかで必ずパラデウスに遭遇すると思ってはいたが、初手で当たりを引いていたのだ。
その後食料の受け取りが始まると、跪いていた難民達は離れていく。
その中には、片足が無い者がいた。
傷口から察するに、義足を無理矢理外されたのだろう。
翔はせめて、座れる場所まで肩を貸そうとする。
難民達が誰も手を貸そうとしないのは、おそらく宗教が原因だろうと思いつつ、1歩踏み出そうとする。
しかし、銀治も手を貸そうとしていたがエリザに止められていた。
「ダメよ!行っちゃダメ!」
翔は足を引っ込めた。
「罪人を庇う者は同じ罪に問われる・・・もし助けに行ったら、ロビンも裏切り者にされちゃうよ・・・」
翔は誰にも悟られぬよう、怒りを出さずにいた。
そして、翔の番が来る。
少し前にいた銀治は、エリヤにルールを守るよう言われていた。
冊子の中には、パラデウスの伝説や村のしきたりなどが書かれていた。
しかし肝心の教主や宗派などは書かれておらず、翔は更なる違和感を覚えた。
「あら、もう早速読んでるのね。毎日読めば、きっと沢山の収穫があるはずよ」
翔はエリヤにとって好意的な印象に見えたのだろう。
翔に向かって微笑み、翔も微笑み返して会釈をする。
そして翔は食料を受け取ると、近くのベンチに座って冊子を読みながらパンを齧った。
銀治はおそらく、エリヤの手伝いをしながら情報を集めるつもりだろう。
なら自分は、その周囲から情報を集めよう。
翔はそう思いつつ、冊子を閉じた。
情報を集めていると、"聖女様"という単語があちこちから聞こえてくる。
「あの、すいません・・・僕はここに来たばかりなのですが、聖女様とは、どんな方なんでしょう?」
「おお!お前はさっき熱心に聖書を読んでた奴か!聖女様ってのはなぁ・・・」
周囲にも冊子を読んでいたことが好意的に受け取られていたのだろう、問いかけてみた男性からすぐに情報を受け取れた。
聖女様、というのは村に週に1度来るか来ないかの女性であり、出会えるかは運次第。
だが、出会えればコーラップスの汚染を治してくれるという。
現状、アンチコジマ以外に汚染を治す手段など無いと思われるコーラップス汚染。
それが本当に治せるなら、その聖女とはどんな者なのだろうかと、翔は疑問に思った。
翌日──
村が騒がしくなっており、難民達はそわそわしていた。
翔は人が集まっている場所へ行くと、人混みの中心に1人の女性がいた。
紫がかった黒い短髪、白いローブに白いフード付きマントを着ており、首と手には滲んだ血が乾いた包帯を巻いている。
頭には白い花の髪飾りを付けており、優しく微笑んでいる。
周囲の難民達は、彼女を聖女様と読んでおり、跪いて祈りを捧げる者もいた。
翔の隣に立っている銀治と目配せをし、聖女を観察する。
彼女はモリドーとそっくりな顔をしていたが、翔はモリドーの事をまだ知らなかった。
すると、1人の難民が倒れた。
その難民はコーラップス汚染が酷かったが、聖女は近づいて静かに難民の容態を確認する。
そして傷口に神秘的な模様を描き、一連の儀式を執り行うと立ち上がった。
「もう大丈夫ですよ、少し休めばすぐに良くなりますから」
聖女は優しい声でそう言うと、立ち去ろうとする。
その難民の顔色は少しずつ良くなってきているのが判る。
そして周囲からは聖女を讃える声が次々に上がり、エリヤも声を上げる。
「嗚呼、これぞ神の祝福!聖女様が、今ここに舞い降りた!」
聖女は「自分にできることをしただけです」と言っているが、周りは讃える声を止めない。
そして食事は食堂ということになり、食堂に人が集まっていく。
翔は人混みへ体を滑り込ませ、周囲の人々の気づかない内に聖女のすぐ側へと接近していった。
読んでくださり、ありがとうございます!
では、ここからは鏡像論に入りましたがどうだったでしょうか?
感想や高評価、お待ちしています!
●エルプセン
長い青紫色の髪で身長170cm。
服装は白いノースリーブのシャツと大量のポケットが付いた緑のズボンを履いており、耳にはエンドウ豆のピアスを付けている。
面倒くさがりで寝ることを好む性格だが、狙撃する際は獲物を逃さないスナイパーとなる。
戦闘時には左膝に盾を装備しており、狙撃体勢に入ると展開し、計3枚の盾で被弾面積を減らしている。
しかしこの膝の盾も、本来起こり得た未来のものでもある。
●スナイパーキャノン(第5世代)
超高速の砲弾を発射する狙撃砲であり、超長距離からの狙撃に適している。
折り畳み式であり、射撃の際は構えて姿勢を安定させる必要があるため、射撃中は移動できない。
エルプセンはスナキャの中で最も連射力が高いものである。
●J
黒い短髪で黒い革ジャンを着ている男性。
シュタージのエージェントであり、本名は『ケヴィン』。
外面は軽薄そうな態度だが、実際は熱血漢であり若干天然である。
しかしその性格から彼を慕う者は多い。