鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 鏡に映るのは自分なようで、自分ではありません。
 本物はあなた自身であり、鏡は内面まで映せませんからね。




第83話 鏡を割る者達

 1発の青いレーザーがナカサワから放たれた。

 

 

 

 そのレーザーは、マハリアンとマハリアンに迫った人影の間を通り抜け、マハリアンに迫った人影は飛び退いた。

 その人影の前にアデリンが立ち塞がり、銃口を向ける。

 

「あなたは・・・!」

 

 マハリアンが恐怖の目を向けた人影。

 髪が白く、髪の先が紫になっており、背中からは蜘蛛のような白いアームが4本装備されている。

 

「まったく・・・下級ネイトのクセに邪魔しないでください」

 

 本性を露にした、モリドーだった。

 

「まあ、どの道あなた方には死んでいただきますけどね」

 

 モリドーが攻撃を仕掛けようとした瞬間、アデリンはモリドーの動きに合わせて激突し、壁のガラスを破って巨大な格納庫に落ちた。

 

「小賢しい真似をっ!」

 

 アデリンとモリドーは離れて立ち上がり、アデリンはモリドーに銃口を向ける。

 その頬はガラスで切れ、1滴の血が流れた。

 

「行って、ここは私がなんとかする」

 

 M4がすぐに降りようとしたが、増援のパラデウス部隊が迫ってきていたため、すぐに離脱しなければならなかった。

 

「・・・アデリン、生きて帰ってきて!」

 

 M4の言葉に、アデリンは微笑んだ。

 

「了解」

 

 

 

 

 

 同時刻、翔は目の前の集団を見据えていた。

 

「久しぶりだな、翔・ニールセン」

 

 多数のネイトを従えているのは、ナルシスだった。

 その目は、翔を見据えていた。

 

「久しぶり、ナルシス」

 

 翔は以前と変わらない様子で返答し、武器を下ろしている。

 

「なぁ、翔・・・ワタシは色々考えたんだ。ワタシやパラデウスのやってきたこと、お父様の事、そしてアンタ達の事・・・」

 

 ナルシスの瞳には、確かな意志が宿っている。

 

「そろそろ、ワタシなりの"答え"が出せそうなんだ・・・だけど今は、パラデウスとして、ワタシ個人として、アンタに挑まなきゃならない。だからこれだけ集めたんだ」

 

 ナルシスが両手を広げると、ネイト達が広がって翔を取り囲む。

 その動きや位置取りには、確かな統制が取れていた。

 

「さぁ、行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 推奨BGM『Panther』(AC4より)

 

 

「ターゲット確認、戦闘開始!」

「交戦、開始」

 

 それぞれの戦闘が、同時に始まった。

 

 ナルシスは初手でホバーブレードを扇状に飛ばし、翔はスライディングで回避しつつライフルを連射していく。

 放たれた弾丸に対し、ナルシスはホバーブレードで破壊しながら別のホバーブレードで攻撃し続ける。

 

 ナルシスの攻撃に合わせ、周囲の黒ネイト達は2人1組になって射撃タイミングをずらしながら射撃している。

 これはリロードの隙を減らし、弾幕を不規則にするためである。

 

「撃て!撃ち続けろ!バリアを剥がせ!」

 

 この場にいるのはナルシスと黒ネイト達だけではない。

 白ネイトが黒ネイト達の側に立っており、狙われた時にいつでも迎撃できる体勢をとっていた。

 

 ナルシスもネイト達も、動きはかつての比ではなかった。

 

 そして遂に、翔のPAが剥がされた。

 

 

 

 

 

 アデリンはフルチャージしたレーザーを撃ち、モリドーが体を捻って回避した。

 

「このっ!下級ネイトのクセにっ!」

 

 アデリンが持つナカサワの冷却中、モリドーは接近しようとするが、アデリンが左手に持っているプロヴォの連射により接近できないでいる。

 

「私は、下級ネイトという、名前ではない。私は、アデリン」

 

 プロヴォの弾丸は、格納庫にある兵器や機材に当たると大きな弾痕を穿った。

 あの威力をモロに受けたらどうなるか、モリドーは普段よりも注意深く観察している。

 

(1発撃ったらチャージ開始まで約4秒半、チャージが終わるまでに約2秒半・・・だいたい7秒はあのレーザーを撃てない、だったら!)

 

 モリドーは近くにあったスモークグレネードを3本投げ、アデリンは煙幕に包まれる。

 アデリンは周囲を注意深く警戒しつつ、煙幕から出ようとする。

 

 そこへ、真上からモリドーが勢いをつけて降ってきた。

 

 

 

 

 

 翔はQBとQTを連続て使いつつ、攻撃を回避していく。

 PAは剥がされているが、それだけで負ける翔ではない。

 

 放たれたライフルの弾丸が黒ネイトのレーザー砲を破壊し、続いて機械部分の手足も破壊していく。

 確実に減っていくネイト達だが、翔は翔で攻撃の回避に苦労していた。

 

 ナルシスのホバーブレードの威力は高く、飛ぶ際の衝撃波により見た目より範囲は広い。

 そして放たれ続ける黒ネイト達のレーザー。

 他の人間や人形ではすぐに撃破されていただろう。

 

 しかし翔とナルシス達の間には、圧倒的な経験の差があった。

 

 翔は極めて細かいブースト管理により、攻撃を回避していくと共に、レーザーの間を縫うようにしてライフルの弾を撃ち込んでいく。

 更に、翔はバトライを左手に持って撃ち始める。

 

 翔からの射撃が増えても、ネイト達は冷静に攻撃を続ける。

 どれだけ仲間が戦闘不能になろうとも、翔は殺さずにいてくれる。

 その翔に、ネイト達は敬意を払っていた。

 

 相手に敬意を払うことを教えたのは、ナルシスだ。

 

 そして翔がスライディングでレーザーを回避したその時・・・

 ナルシスのホバーブレードが、翔のライフルの横に突き刺さり、衝撃波でライフルが破壊された。

 

 翔はすぐに起き上がってバトライを右手に持ち替え、黒ネイトの右手をレーザー砲ごと破壊した。

 

 もう、残っているのは翔とナルシスだけとなった。

 

 

 

 

 

 アデリンはナカサワを撃とうとするが、モリドーは間一髪でナカサワの銃口を反らす事に成功する。

 

 ナカサワのレーザーは天井に命中し、着弾部分は熱で溶けた。

 しかし、ナカサワのレーザーを外してもアデリンは狼狽えず、プロヴォを連射しながら離れようとする。

 

「この距離から、簡単に離れられるとでも!?」

 

 すると突然、アデリンはモリドーに向かって突進してモリドーの腹部を蹴り飛ばした。

 

「グゥッ!このっ!」

 

 蹴り飛ばされたモリドーが顔を上げると、アデリンはモリドーを見下ろすように立っていた。

 しかも、銃口を下げている。

 

「なぜ、あなたは姉妹を殺そうとするの?」

 

「はぁ?」

 

 唐突の問いだった。

 

「姉妹なら、助け合おうとするか、関わらないようにするもの。でも、あなたは姉妹であるマハリアンを殺そうとしてる。どうして?何があったの?」

 

「それを聞いて、何になるんですか?」

 

 モリドーは立ち上がったが、アデリンはまだ銃口を向けていない。

 

「気になるの。どうしてそんなに殺したいのか・・・」

 

「ああ、そうですか・・・なら、私に勝てたら教えてあげますよ」

 

 モリドーはニヤリと笑うと、アデリンに急接近する。

 その突然スピードに、アデリンは回避が僅かに遅れてしまう。

 そのせいで、ナカサワがモリドーのアームに貫かれて破壊されてしまう。

 

「量産型の!下級ネイトのクセに!私に勝とうなんて!百年早いんですよ!」

 

 モリドーの猛攻に対し、アデリンはプロヴォを連射しつつ攻撃を回避していく。

 しかし、完全には避けられずに体のあちこちに傷を負ってしまう。

 

 だがプロヴォの弾丸は、モリドーのアームのうち2本を破壊した。

 

 

 

 

 

「ワタシは、アンタ達と過ごして、戻ってからネイト達やお姉様達と話して、今の自分と過去の自分で、向き合ってみたんだ」

 

 翔と向かい合い、ナルシスは語る。

 翔はそれを聞きながら、ヒビの多いパーツを外して落としていく。

 

「ワタシは改造のせいで苦しくて、それで八つ当たりばっかして、でも強さに溺れてて・・・だから・・・」

 

 ナルシスは、翔に全てのホバーブレードを向ける。

 

「ワタシはその鏡を割って、進みたいんだ!」

 

 ナルシスはホバーブレードを一斉に飛ばし、翔は正面のホバーブレードをレザブレで斬り払いつつ、ナルシスに接近していく。

 

 翔はホバーブレードをギリギリのところで回避しつつ、ナルシスの目の前まで接近した。

 しかし同時に、翔のバトライはホバーブレードによって破壊された。

 

 そして、ナルシスは翔に拳を振りかぶる。

 翔とナルシスは、同時に拳を顔面に撃ち込み、同時に倒れた。

 

「ナルシス・・・鏡は、割れた?」

 

「・・・ああ、割れたよ」

 

 鼻血を流しながら天井を見上げるナルシスは、どこかスッキリとした表情をしていた。

 

 

 

 

 

 アデリンは先程とは違い、突如モリドーへ接近し始める。

 

「おや?わざわざ近づいてくれるのですか?」

 

 プロヴォの連射を切らさずに連射し続けるアデリンだが、プロヴォの残弾は残り数発となっている。

 

「あなたとマハリアンは違うのに、どうして殺そうとするの?」

 

 残弾、残り10発──

 

「鏡と同じ。どちらもそっくりだけど、自分と向こうは違って、同じにはなれない」

 

 モリドーの眉が、一瞬ピクリと動く。

 

 残弾、残り6発──

 

「あなたは・・・姉妹を殺して、"本物"になりたいの?」

 

 モリドーの表情が、憤怒に染まる。

 

 残弾、残り2発──

 

「言わせておけばっ!」

 

 モリドーがアデリンの頭部に狙いを定め、アームを突き刺そうとした。

 その瞬間、アデリンはプロヴォから手を離すと同時に、モリドーの懐へ飛び込んだ。

 

「なら私が、あなたの"鏡"を割ってあげる」

 

「はぁ?」

 

 次の瞬間、アデリンは極めて近い距離からの攻撃を始める。

 そして拳をモリドーの心臓に向けて振るが、拳が当たる直前で右肩甲骨を押し出すと同時に、左肩甲骨を後ろへ跳ね飛ばすように引いた。

 

 この一気に急加速した拳は、モリドーの心臓へ向けて打ち込まれ、モリドーは吹っ飛んで輸送車へ激突した。

 

「ゴハッ!」

 

 そして、アデリンは動けないモリドーを尻目に、床に落ちたプロヴォを手に取った。

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 遅くなってすいませんでした。
 また、ナルシスとマハリアンの情報が抜けていたので、第75話と第6章の解説にナルシスの解説を、79話にマハリアンの解説を追加しておきました、すいませんでした。

 今回は2つの戦闘が同時進行する話でしたが、どうだったでしょうか?
 感想や高評価、お待ちしています!

●マハリアンの正体
 彼女は人ではなく、最上級ネイトである。
 しかし機械化手術は行っておらず、戦闘能力は皆無。

 また、彼女の血液を利用し、コーラップス汚染の血清を作ることが可能であり、それを利用して信者を増やさせられていた。

 彼女はパラデウスから逃れたいと思う一方、双子の妹でもあるモリドーも救いたいと思っている。

●モリドーの正体
 最上級ネイトの1人であり、スパイとして行動していた。

 武装は4本の蜘蛛のようなアームである。

 お父様に心酔しており、お父様の為ならばあらゆる手段に手を出す事を厭わない。
 しかしお父様からすれば失敗作であり、成功作にかなり近いマハリアンの事を憎んでおり、殺そうとしている。
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