鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 紡がれていく想いは、いずれ大きなものになります。
 どう紡ぐか、にもよりますが。




第85話 想いを紡げ

 大勢の足音が近づいてくる。

 

 他の職員を殲滅したポーン達が、1人また1人と合流して集まっていく。

 

 

 

 そこに立ち塞がるのは、グレイだった。

 

 

 

「グレイッ!記憶は、どうなった!?」

 

 すぐさまグリクが駆けつけ、グレイはグリクに向けて微笑んだ。

 

「グリク・・・私と戦ってくれる?」

 

 グリクは僅かに逡巡したが、すぐに頷いた。

 

「・・・分かった!」

 

 2人はポーン達に向かって突撃していった。

 それを見たアクアビットマンは、笑ってルークの上方へと飛び上がった。

 

「いっけぇぇぇっ!」

 

 放たれたアンチコジマの塊は、ルークの装甲に着弾すると爆発し、残骸となり果てたルークの脚部は吹き飛び、転がっていった。

 

 華麗に着地したアクアビットマンは、グレイとグリクの方へ歩み寄る。

 グリクは構えようとするが、グレイがそっと制止する。

 

「記憶、戻ったみたいですね・・・では聞きます。グレイさん、あなたはこれからどうしますか?」

 

 AK-15が銃口をグレイに向けるが、フォートレスが再び立ち塞がる。

 更に、フォートレスのMGの銃口はAK-15とRPK-16に向けられていた。

 

「そうね・・・グレイには後でちゃんと聞かせるとして、とにかく今は、"パラデウス"ではある・・・としか言えないわね。けど安心してちょうだい、敵ではないから」

 

 そう言って、グレイは微笑んだ。

 その表情はどこか晴れやかであり、清々しささえ感じられた。

 

「いずれ、また会いましょう」

 

 グレイはグリクを連れ、その場を去ろうとした。

 しかしここでAK-15がARとナイフを構えて飛び出した。

 

 そこへフォートレスが立ち塞がったが、AK-15が放った弾丸を防がずに受け、ナイフを右腕で受け止めた。

 更に、右手でARを掴んで自身の腹部へ押し当てた。

 

 フォートレスの被弾した部位や、ナイフが突き刺さった腕からは血が滴り落ちている。

 被弾した部位は胸や腹部にも及び、フォートレスはふらついている。

 

 しかし、フォートレスはアーム付きのシールドを床に突き刺し、自らが倒れないよう支えている。

 

「お願いです。今は、待ってください・・・お願いです・・・」

 

 アクアビットマンの方は、アクシスをAK-15に向けてアンチコジマのチャージを開始している。

 そのアクアビットマンへ、AK-12、AN-94、RPK-16は銃口を向ける。

 

 そして、AK-15が引き金を引こうとした瞬間──

 

「そこまでよ」

 

 アンジェの一言に、AK-15は引き金から指を離した。

 

「あの2人はもう去ったわ。なら、私達がここで争っても意味が無い。さ、帰還するわよ」

 

 渋々、といった様子でAK-15は離れ、反逆小隊は去っていった。

 それを見届けたフォートレスはふらつき、倒れそうになる。

 

「フォートレス!」

 

 アクアビットマンはフォートレスを支え、肩を貸すとその場から撤退していった。

 

「すいません、手間を取らせてしまって・・・」

 

 

 

 

 

 ドイツでの作戦が一段落し、翔達は拠点に帰還した。

 

 フォートレスはすぐに修理に回され、モリドーは一時的に牢屋へと入れられた。

 ネイト達の方は一時的に空き部屋へ住むことになった。

 

 しかし、多数のネイト達の加入により、拠点の増築が急務となった。

 だがそれは、すぐに解決することになった。

 

「これが、作業用の人形達さ」

 

 増築を進めている作業用ノーマルモデル達。

 茶色のパッツンヘアの髪に、黄色い作業着を着ており、肩、胴体、前腕、膝から下に赤茶と黒の縞模様の装甲を身に付けている。

 

 彼女らはクラフターが開発した、作業用のノーマルモデル『ディギー』である。

 

 黙々と進む増築に翔は安堵しつつ、翔はネイト達に拠点内の案内をするアデリンと22Rに目を向けた。

 これなら心配はいらないだろうと思い、翔は自室へ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翔が布団に入って間もなく、翔は久しぶりに赤い海の中にいた。

 体を起こすと、正面に立っている者がいた。

 

「久しぶり、翔」

 

 長い青髪で瞳も青く、オレンジ色の服と灰色のスカートを着た女性がいた。

 その女性を見た瞬間、翔はすぐさま土下座をしようとした。

 

 しかし、女性は素早く動いて翔の肩を掴んで止めた。

 

「待って、あなたが謝る必要は無いわ。あれはどうしようもなかったし、あなたは悪くない。何も悪くない」

 

 女性はそう静かに告げ、翔をそっと抱き締めた。

 

「翔、あなたは悪くない・・・誰も責めることはできないし、私がさせない・・・それと、今日会いに来たのは別の理由があるの」

 

 女性は翔の隣に座ると、1つの質問をした。

 

 

 

「ねぇ・・・M200の事、どう思ってるの?」

 

 その問いに、翔はキョトンとした後に顔を赤くして目を逸らした。

 

「え、えと・・・その・・・す、好き、だけど・・・」

 

 女性はいたずらっぽく微笑み、翔に顔を寄せてくる。

 

「どこを、どんな風に?・・・大丈夫よ、今ここには私と翔しかいないから」

 

 すると、翔はゆっくりと話し始めた。

 

 

 

 

 

 翔は恋愛をしたことが無く、家族愛や友愛は知っているものの、恋愛は知らなかった。

 外見の綺麗さやかわいさは知っているが、やはり恋愛だけは経験したことが無かった。

 

 そしてM200と出会い・・・

 戦術人形とはいえ、どんな性格なのか?

 どんな戦い方をするのか?

 

 恋愛とは全く関係無い事ばかり考えていた。

 明確に仲間となってからでも、恋愛感情など持っていなかった。

 

 しかし、転機が訪れた。

 

 翔が鉄血から独立し、送別会が行われた日の夜である。

 自身の苦悩をM200に吐露し、M200は言ってくれた。

 

「ボクが、あなたを信じます。それに、あなた1人で背負わせるわけにはいきません。ボクが、ボク達がいますから」

 

 そう言って、月明かりに照らされながら微笑んでくれた、あの時のM200の顔が、堪らなく綺麗に思え、胸の辺りがカァッと熱くなるのを感じた。

 

 その時からである。

 

 M200の事がいつも意識するようになっていった。

 声、視線、匂い、彼女の全てが熱く感じた。

 この感覚がどういうものなのか、分からなかった。

 

 更に、次第に彼女と一緒にいるだけで嬉しく思うようにもなった。

 一緒にいるだけではない。

 笑っている姿を見ているだけで、共に歩いているだけで、嬉しく思えてきていた。

 

 そしてM200に告白された瞬間、頭の中で何かが吹き飛ぶような感覚がした。

 

 その時に、翔はそれが"好き"という感情なのだと気づいた。

 

 

 

 

 そこまで話すと、翔は両手で顔を覆った。

 

「こ、この感情をどうしたら良いのか、判んないよ・・・」

 

 すると女性はクスリと微笑み、翔の頭を撫でた。

 

「小さい頃はいじめられて泣いてた翔が・・・色々あって、今や恋愛までするなんて・・・でも大丈夫、機械の私が言うのもなんだけど、心のまま愛しちゃえば良いのよ」

 

 翔が手を顔から離し、女性の方を見る。

 

「私を誰だと思ってるの?あなたの"姉"である以前に、私は"管理者"の1人よ」

 

 翔の姉は立ち上がり、翔の手を引いて立たせる。

 

「M200は悪い子じゃないわ、むしろとっても良い子よ。だからあなたは、あなたのままでいなさい」

 

 そう言って翔の姉は微笑んで去っていった。

 翔は、その背に向かって叫んだ。

 

「ありがとう、"パル姉"!」

 

 去っていくパルの先には、朧気ながら巨大な兵器が浮かんでいるのが見えた。

 

 腰から上はかろうじて人型だが、腰から下は異形と言える姿をしていた。

 前方へ向いている蜘蛛の足のような4本の突起、しかし5本目の突起は背後へと向いている。

 

 その姿は、上半身を除くとまるで手のようにも見える。

 

 

 

 

 

 翔が目を覚まし、体を起こすと「パキリ」と小さな音がした。

 手の下を見ると、布団の上に5mm程の割れた赤い結晶があった。

 

 翔が触れてみると、結晶は粒子となって霧散していった。

 その結晶が何だったのか、翔は首を傾げた。

 結晶の事を考える前に、部屋の扉がノックされた。

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 遅れましたが、新年明けましておめでとうございます!
 しかしAK-15の見た目を77話と前話に記載し忘れいたため、追加しておきました、すいません。

 今回はグレイの記憶が戻り、翔がM200をどう思っているかが出ましたが、どうだったでしょうか?
 感想や高評価、お待ちしています!

●AK-15
 銀の長髪でAK-12とよく似た顔であり、黒い戦闘服を着ている。
 ロシアの国家保安局製の戦術人形で、反逆小隊所属。種別はAR。

 寡黙かつ強面であり、滅多に笑わない。
 効率を最優先しており、感受性に乏しい。しかし怒った時は凄まじい勢いで攻撃に入る。

 ロシア最強の戦術人形と呼ばれ、ショーの最高傑作でもある。
 その戦闘能力は凄まじく、肉弾戦を最も得意としている。

 なお、メンタルアップグレードに伴って大幅な素体の強化が行われ、素体のスペックは並みの戦術人形を凌駕している。

●ディギー
 茶色のパッツンヘアの髪で身長150cm、肉体年齢は16歳。
 黄色い作業着を着ており、肩、胴体、前腕、膝から下に赤茶と黒の縞模様の装甲を身に付けている。
 作業用ノーマルモデルであり開発者はクラフター。

 主な武装は両腕のドリルと背部のロケット砲。

 無口だが、好奇心旺盛な性格をしている。
 基本的に喋らないものの、ディギー同士のメンタルを介した回線で常に繋がっており、連携力は他のノーマルモデルの比ではない。

 戦闘自体は得意ではないものの、自衛用の武装を装備している。
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