鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 何事も、やり過ぎてはいけません。
 しかし、人も機械も繰り返してしまうものなのですね・・・




第86話 やりすぎた者、やられすぎた者

 ナインボール、拠点。

 その工廠にて──

 

 

 

 ジェノはクラフターの前で正座させられていた。

 クラフターは両手にククリナイフを既に持っており、静かに怒りを燃やしていた。

 

「・・・で?こっそり有澤重工へ旅行感覚で行って、空間の歪みから得られるデータを、ソシャゲのガチャ感覚で集めまくったと?」

 

 ジェノは冷や汗をかきながら視線を下に向けた。

 

「はい・・・で、でもきっとあれだけ集めたんだから、SSRとか出るんじゃないかなぁ・・・って?」

 

 クラフターはニッコリと笑みを浮かべ、判決を下した。

 

有罪(ギルティ)

 

「そんなぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メンタル空間を利用したVRでの訓練場──

 

 マップは『OLD TOWN.3』であり、荒廃した町並みが広がっている。

 瓦礫や建物などの障害物は多いが、行動可能領域が他と比べて若干狭い事で知られている。

 

 倒れたビルの前で、22Rが黒縁のメガネを拭きながら立っていた。

 しかしその表情は曇っている。

 

「なんでいきなり訓練場で、新人の試験なんてやらされるのだ?あとなんで若干狭めのマップなのだ?こんなの、絶対ロクでもないやつなのだ!」

 

 そしてメンタル空間に扉が現れるが、中から扉を破壊して3人の戦術人形が現れた。

 しかしその3人の姿はそっくりだった。

 

 

 

「ま、まさか・・・」

 

 髪はインナーカラーが黄色い青のセミロングヘアで、青に黄色いラインの入ったスポーツウェアの上に、青と黄色の装甲を身に付けていた。

 

 しかし、その両腕は異形だった。

 人工皮膚は無く、代わりに装甲で覆われている。

 そして肩には装甲板がついており、複雑な機構が備わっていた。

 

 3人同時に、両腕をバンザイをするように上に向ける。

 そして、そのまま駆動音と共に背後へ回る。

 更にそれに合わせて両腕の内側から一対のアームが現れ、両方共上にを上げる。

 

「予想の、斜め上だったのだ・・・」

 

 その両腕は、肩にある隠されたものへと接続され、振り抜いた。

 振り抜かれたものは、板のような棒にも見える。

 

 しかし、直後に刃が前方へスライドし、斧となる。

 

 

 

「行くぞダウンギャンブル!ダウンギャンブル!ジェットストリームアタックだ!」

 

 新たな戦術人形は、三つ子だった。

 その名は『ダウンギャンブル』。

 

「こ、こんなのかませなのだ!3対1とか卑怯すぎるのだ!」

 

 三姉妹は足並みを揃えて踏み出し、太陽に照らされた刃はギラリと光る。

 

「改修が終わってねぇって話だが・・・」

 

「アタシら3人が負けるわけねぇだろ!?」

 

「行くぞおおおおお!」

 

 三姉妹はブースターの出力を全開にし、更に縦一列になって突撃していった。

 

「ウオオオオオオオオオオ!!!」

「ヤァアアアアアアアアアア!!!」

「チェストオオオオオオオオオオ!」

 

 射撃武器を持たぬ三姉妹に、22Rは全力で引き撃ちにかかる。

 

 ブースターを吹かすだけでなく、壁を蹴ってエネルギーの消費を軽減して離れつつ、両手のレザライをチャージしていく。

 しかし機動力はダウンギャンブル達の方が高かった。

 

 22Rはフルチャージしたレザライで射撃するが、ダウンギャンブルは装甲で受けてそのまま突き進んでいく。

 被弾した部位は溶け、その周囲もパルスによるダメージを受けている。

 

「やっぱり胴体は装甲厚いのだ・・・なら!」

 

 22Rはレザライをダウンギャンブルの脚に向け、チャージせずに連射し、脚部の破壊を狙った。

 

 しかし、戦闘のダウンギャンブルは一瞬だけブースターを止め、後ろの2人がその前へと入れ替わった。

 単純だが、確実に接近までの時間を稼げる方法である。

 

 そして22Rが逃げ続けるのも限度があった。

 エリアの領域である。

 領域限界は壁になっているわけではなく、領域から出たら敗北という条件になっている。

 

(領域外へ誘導すれば!)

 

 22Rはワザと領域ギリギリへ移動し、振り返る。

 ダウンギャンブル達が迫り、ブレードを振る姿勢に入った瞬間、22Rは右へQBすることで回避した。

 

 ダウンギャンブル達はそのままの勢いで領域外へ行ってしまうかと思われた。

 しかしダウンギャンブル達は地面に片足を突き刺して急停止し、そのままの勢いで旋回する。

 

 空振りした斧はアームとの接続部近くにスライドし、その場で研がれて先端に戻る。

 

 そして突き進むダウンギャンブル達に、22Rは追い付かれてしまう。

 

 先頭のダウンギャンブルが右に寄りつつ、両腕の斧を左へ向けて振り上げ、そのまま22Rの左腕とレザライを破壊する。

 次のダウンギャンブルは先頭とは真逆の行動を取り、22Rの右腕とレザライを破壊する。

 

「トドメだあああああっ!!!」

 

 最後のダウンギャンブルが、両腕の斧を22Rの鎖骨へ向けて振り下ろし、22Rは撃破判定となった。

 

「っしゃああああああああああ!」

「勝ったぞおおおおおおおおおお!」

「うおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

 現実にて、勝利の雄叫びを上げるダウンギャンブル達だが、22Rは憤怒の表情で訓練場を飛び出した。

 

「こんな試合にした奴!絶対見つけ出してやるのだぁぁぁ!」

 

 しかし、ダウンギャンブル達に捕まってしまう。

 

「待てよ!遊ぼうぜ!」

「このままなんて勿体無ぇだろ!?」

「とりあえずストレコの顔にパイぶつけようぜ!」

 

 22Rは暴れるも、引きずられて行ってしまった。

 

「イ~ヤ~だ~!HA☆NA☆SE!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 金のショートヘアが風に揺れ、眼帯の無い右の瞳に燃える街が映っている。

 

 燃える街を見下ろしているランポルドは、別の新人に実戦テストの現場監督をするため、武装したまま廃ビルの屋上に立っていた。

 

 目標はとされているのは、テロ予告を出していた組織である。

 人間は少数だが、粗悪品のノーマルモデルを使用することで戦力を増やしていた。

 

「敵は不運、いや自業自得か・・・テロを起こした結果、"アイツ"とやり合うハメになるとはな」

 

 見下ろしている街からは、1人、また1人と次々に敵が撃破されていく光景が見えている。

 しかし、敵が粗悪品のノーマルモデルを使用しているとはいえ、作戦開始から3分も立っていない。

 

 すると、ノーマルモデル達が全滅したため、ノーマルモデル達の指揮官が葡萄色の4脚型大型兵器、トゥランプルに乗って現れた。

 

《テメェなんざ、コイツでぶっ潰してやる!》

 

 トゥランプルは全身をバリアで覆っており、通常兵器では中々

 

 空に浮かぶ新人は、敵には理解できない文字列の歌を歌いながら、トゥランプルへ銃口を向けた。

 

 

 

HF(エイチエ~フ)(ハ~イフ~ン)227(ニ~ニ~ナ~ナ)♪」

 

 新人は青いロングヘアで、黒い装甲を身に付けていた。

 その装甲は、敵のノーマルモデル達による銃弾を弾いていた。

 

CB(シ~ビ~)(ハ~イフ~ン)209(ニ~ゼ~ロキュ~ウ)♪」

 

 脚部はダウンギャンブルより細身だが、頭部、胴体、腕はより分厚い装甲になっていた。

 そして、高い機動力によりトゥランプルの機銃やミサイルは外れていた。

 

AB(エ~ィビ~)(ハ~イフ~ン)107D(イ~チゼ~ロナ~ナディ~)改造(か~いぞ~う)タ~イプ♪」

 

 肩は縦長の四角いパーツが取り付けられており、腰にはもう1対の脚があり、4脚型となっていた。

 

L4A(エ~ルフォ~エ~)(ハ~イフン)119(イ~チイ~チキュウ)♪」

 

 その両手には22Rより大型のレザライを持っており、見方によっては横にした"9"にも見える。

 レザライは銃口から青白い光を発し、少しすると一際大きく輝いてチャージが完了する。

 

 放たれた青いレーザーは、ノーマルモデルを一撃で跡形もなく溶かしていった。

 

 そして、胸の下と背中に2つずつ、前足の太ももの外側に1つずつ、後ろ足の股部分に1つ、それぞれブースターが付いていた。

 それにより、空を滑空するように飛んでいた。

 

 高度が下がれば壁を蹴って登り、壁を蹴ってすぐさま壁との距離を離していく。

 

 トゥランプルは一方的に攻撃され続け、更には新人の武器は全て高い火力のため、バリアの耐久はみるみる減っていった。

 更に、常に上を取られ続けているため武装の射角が届いていなかった。

 

「レザスピヴェス四の力、見せてあげる」

 

 バリアの剥がれたトゥランプルに、新人は銃口を向ける。

 そして、両肩の"箱"からトースターでパンを焼いたように、2つずつの別の箱が飛び出る。

 

 その箱には複数の穴が開いており、『ハイスピードミサイル』、『ハバス』が片方3発、計6発発射された。

 

 更に、フルチャージしたレザライをタイミングをずらして引き金を引き、1発目でトゥランプルはよろけ、もう1発でモロに当たったレーザーが穴を穿った。

 

 その穴に6発のハバスが命中し、トゥランプルの胴体は爆発して地に伏した。

 

 

 

 ランポルドのいる屋上へ、新人が壁を蹴って登ってきた。

 

「ねぇ、もっと強い相手はいなかったの?」

 

 新人は不満そうに燃える街を見下ろした。

 それを見てランポルドは表情を変えずにいた。

 

「これはあくまでテストを兼ねた任務だ・・・が、不満なら後でフレモントとでもやり合ってろ」

 

 すると、回収に来たストークが降下してくる。

 ランポルドは乗り込む前に、新人に向けて振り返る。

 

「次の任務も頼むぞ・・・『カルサワ』」

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 今回は新メンバーが増えましたが、どうだったでしょうか?
 感想や高評価、お待ちしています!

●パル・ニールセン
 データが破損しています。

●ダウンギャンブル
 髪はインナーカラーが黄色い青のセミロングヘアで、身長160cm。肉体年齢は17歳。
 青に黄色いラインの入ったスポーツウェアの上に、青と黄色の装甲を身に付けている。

 武装は『武器腕』ブレードのみである。

 常にテンションが高く、突撃に拘りがある性格。
 三つ子だが、3人とも同じ容姿と同じ性格であるため、見分ける方法が無い。
 しかし三姉妹曰く、見分ける必要は無いとのこと。

 戦闘では、両腕が変形した武器腕ブレードを使った近接戦闘に特化しており、三姉妹で連携して行動する。

 ジェノがガチャ感覚で空間の歪みからデータを取ったため、まさかの三つ子で現れた。

●カルサワ(本名:Au-L-K29)
 青いロングヘアで、身長163cm。肉体年齢は18歳。
 黒い装甲を全身に身にに付けている。
 種別はレザライ。

 武器はレザライと肩に内蔵したハバス。

 楽観的な雰囲気だが、常に周囲を俯瞰している。
 兵器の性能を調べるのが趣味。

 脚部は細身だが、頭部、胴体、腕はより分厚い装甲になっており、肩は縦長の四角いパーツが取り付けられており、腰にはもう1対の脚があり、4脚型となっている。
 そして、肩のパーツにはハバスを内蔵している。

 戦闘では空中を滑空するように飛び、周囲を俯瞰しつつ狙撃している。
 なお、レザライとハバスの組み合わせは極めて高い火力になっている。
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