魔王待ち構えるは黒狐   作:起床後即就寝

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ちょっと面白そうだと思って頂けたり、喜んで貰えたりと嬉しいです。


X GEATS

謎の道化師風の男から渡されたクロスギーツレイズバックルを片手に持ち、勝手に装備させられた長方形の黒い箱状の機械――デザイアドライバーを腰に巻いた状態で、俺はこの真っ暗空間を歩いている。

 

そして不意に足を止め、その場に四つん這いになった。

 

「出口、ないんですけど……」

 

そうなのだ。この空間出口が何処にもないのである。

あれ程の力を持っていたあの男が閉じ込められてたって時点で悟ってはいたとはいえ、まさか本当に出口が無いとは思わなかった……

 

ったく、出口ない真っ暗闇って無限地獄かなんかですかぁ?お生憎様、どれだけ歩いても無限に暗闇が広がってるだけだから、状況的にはめっちゃピッタリですねぇ!

 

「……ここマジで無限地獄なんじゃ…」

 

よくよく考えたらそうかも…だってあいつ、相方と一緒に世界滅亡RTAとか言って世界滅ぼしまくってたんだろ?

そんな危険人物普通の所には突っ込まんよな……普通の所には。

 

とりあえず自分が今何処にいるのか分かったのはデカい。その上でどうやってここから出るかを考えよう。

 

まず普通に出口探すというのは無し、出口なんてある訳ないもの。

じゃあ次に俺をここに放り込んだであろうエヒトとかいう神に祈る……いやそいつのせいでこうなってるのに誰が祈るったんだよ。

さっきの男は…あいつも閉じ込められてるから意味無いか……

 

じゃあ他の方法は……?そう思いながら黒と青竹色のレイズバックルを見詰める。

 

「……」

 

X GEATS』

 

ジョイントが地味に硬いバックルを二つに分割し、ドライバーの左右のスロットにセット。

 

『BLACK OUT』

 

両腕をX字になるように組み、開いて両側でフィンガースナッ………フィンガース、…フィンガースナ……。

 

「……」

 

無言で腰からバックルを装填したドライバーを外し、一言。

 

「フィンガースナップ、できねぇ……」

 

どうする…?フィンガースナップをしないっていう手もあるにはあるが……いや、でも元の持ち主がやってた以上やる他ないよな……

 

気を取り直して変身――の前に練習するか。えっと、確か親指の先っぽに中指を乗せて、次に薬指を親指の付け根に添える。

そんで次は……あそっか、中指を親指の付け根に当たるように滑らせるんだった。

 

そい。……カスッという音が鳴るだけで肝心の音は鳴らなかった。

気を取り直して二回目、そい。……再びカスッという音が鳴るだけだった。

三度目の正直、そい。……………。

 

「フィンガースナップ、練習しよ……」

 

そして俺の地獄の日々が始まった。

どうすればあのあの男のように、まるで水が流れるかのような動作でフィンガースナップできるのだろうか?

 

俺は何度も頭を悩ませて答えを導き出し、その答えが間違っていたことを思い知らされ、その度に新たな答えを見つけた。

だがその答えも間違えだと思い知らされ、途中で数えるのもやめたとはいえ感覚的に万は超えたかと思いながら、藁にも縋る思い挑戦したその一回で、ようやく成功した。

 

「や、やった……俺が、フィンガースナップを…」

 

一度成功しコツを掴めば後は簡単。その後はたまに失敗することはあれど、何度鳴らしても良い音が返ってくるようになった。

それ故に、ようやく準備が整ったと何日か、何週間か、はたまた何ヶ月ぶりかの変身をしようとし――カスッという空気が抜けるような音が"左手”から響く結果になった。

 

「……」

 

……そう、クロスギーツの変身には"両手”でのフィンガースナップが必要。それに対して俺が練習していた右手――即ち”片手"だけのフィンガースナップ。

つまりは……

 

「練習タイム再び、か…」

 

半ば絶望しながら再びその場に座り込み、今度は左手を構える。そして意を決して指を滑らせッ――!……カスッという無情な音が響いた。

 

その事に溜め息を吐き再び指を構える俺。最終結果で語ると、利き手の右手よりも左手の方が遥かに難易度が上だった。

 

まぁそんなこと等で色々あって、俺はようやくクロスギーツに変身できるという段階までこぎつけた。

……フィンガースナップに集中し過ぎたからか、何故クロスギーツに変身しようとしているのか覚えてないのはあれだが…多分変身したら思い出す筈だ。うん、きっとそうだ……

 

「じゃ、じゃあ気を取り直して」

 

X GEATS』

 

地味に硬いジョイントを外し、バックルを二つに分割。

それぞれをドライバーの左右……ドライバー着けてなかったわ。

 

『DESIRE DRIVER』

 

腰にデザイアドライバーを押し付けると、自動的にベルトが巻かれ固定された。

内心どんな技術なんだよとは思ったものの、気にしたら負けだと思った為、そのまま左右のスロットにバックルを装填した。

 

『BLACK OUT』

 

バックルをセットすると、どこか不気味な音楽が流れ出す。そのBGMを耳に入れながら両腕でXを刻み、開いてフィンガースナップ。

……やった、上手くいったぞッ!

 

「変 身!」

 

いくらなんでも深過ぎる、無限の如く終わりない喜びに内心首を傾げながらも、ドライバーから飛び出ていたスイッチを押し、ドライバーとその表面にセットされているバックルを反転させる。

 

『REVOLVE ON』

 

すると左側のスロットに装填されていたバックルのパーツが展開され、黒い九尾の狐が姿を現した。

そしてパーツが展開された際に同じく展開されたスロットルレバーを押し込んだ。

 

直後、黒い霧とオーラを放ちながら大小それぞれの円状の装置が出現、小さい方の円が左右に開き『X GEATS』のロゴに変わる。

 

DARKNESS BOOST

 

同時に現れた漆黒の九尾の狐が俺の周りを縦横無尽に駆け回り、ロゴが一瞬だけ上半身状のアーマーに変じた後に、パーツが組み替えられ今度は下半身のアーマーに、漆黒の狐が上半身のアーマーに変形する。

 

そして俺の左右に上半身と下半身それぞれのアーマーが配置されると、まるで背中から生える翼のように背後へと出現した黒色の狐の尻尾が、俺を呑み込むかのように包み込み、アーマーが装着された。

 

X GEATS

 

黒狐のアーマーを身に纏い、文字通り”変身"した俺はその両手に黒い剣と銃剣をそれぞれ握り締めており、その仮面の瞳を紫色に光らせた。

 

『READY FIGHT』

 

「これが…クロスギーツか……凄まじいな」

 

これだけの力があるってことは、神の力を奪ったというのも案外嘘じゃないのかもしれないな……そんな風に、変身した直後から感じる圧倒的な力の奔流に、俺は圧倒されていた。

 

……そして肝心の変身した理由なのだが、思い出せない…いや、この言い方は適切じゃないか。

正確には一瞬思い出しはしたのだが、あまりにも強大な力(クロスギーツ)の前に頭が空っぽになってしまったのだ。

 

今は何とか理由を思い出そうと頭を悩ませているのだが……クロスギーツのくそかっこいい見た目で頭を抱えていると…なんか、酷く滑稽に思えてしまって……うん、忘れよう。

 

仮面越しに頬をパンと叩いて意識を切り替える。

 

「よしっ!まずは俺が何をしたかったのか、或いは何をしたいのか、それから考えてみるか」

 

まず一番やりたかった両手フィンガースナップはできた。じゃあ次は……決め台詞とかか?

 

「……狐だし、『お前も化かされてみないか?』とか…いやでもあの男みたいに『この世界と共に消えろ』っていうのも捨て難い……」

 

私怨というか私情も入ってはいるけども…やっぱりそういう台詞ってかっこいいからな……男である以上俺も憧れてしまう。

あーでもないこーでもないと、あれこれ考えていた俺だったが、突如ある一言が頭に浮かんだ。

 

「――『ここからがハイライトだ』。うん!いいじゃん。かっこいいし意味も通る」

 

何故か他に並ぶ物無しと確信出来るほどしっくりくる、この言葉を決め台詞にしようと決めた。

 

……さーて、決め台詞は決まったから次………

と、そこまで考えた所で俺は周囲を見渡した。相も変わらずな真っ暗闇で殺風景な景色である。

 

「ここ、出るか」

 

そして俺は当初の目的を思い出した。

 

「でも出るっつったってどうやって出ればいいんだ?」

 

見た感じ出口は見当たらない。当然である。フィンガースナップ心を奪われる前に散々探し回ったのだから。

……となると、だ。やるべきなのは――

 

「―――この空間を、ぶっ潰す」

 

即断即決、すぐさまスロットルレバーを一回押し込む。

バックルの黒狐の九本の尻尾から紫色の炎状のエネルギーが放出され、俺はそのまま天高く跳躍した。

 

X GEATS STRIKE』

 

そして落下しながらコサックダンスの如く連続キックを地面に向けて放ったのだが……

 

「ダメか……なら次だ」

 

凄まじい速さで修復されて行く地面を見て失敗と判断し、次なる策へと移る。

今度は変身時に呼び出した銃剣と長剣をそれぞれ握り締め、長剣のグリップにあるボタンを操作する。

 

するとそれぞれの刃が青い炎のようなオーラを纏い始め、俺が装着しているクロスギーツの仮面の複眼が、妖しく輝き出す。

 

「ハァッ!」

 

そして二本の剣と銃剣でX字状に斬撃を放った。

青黒いXのエフェクトがとてもかっこいい斬撃が放たれたのだが、結果はご覧の有様。またしても凄まじい速度で修復されてしまった。

 

……こうなるともう最大火力で一気に消し飛ばした方がいいかもしれないな。

幸い各必殺技の効果は目で確認しているから問題ない。流石に最高必殺だけ弾かれるなんてことはないだろうしな。

 

再びスロットルレバーに手をかけ、今度は二回押し込む。

 

DARKNESS BOOST TIME

 

背後の黒い十本の尾が展開されながら少しずつ、しかし確実に禍々しい赤いオーラが纏われて行く。

やがてオーラが全身を覆い――俺は再びスロットルレバーを押し込んだ。

 

X GEATS VICTORY』

 

そして連続キックの時と同じように跳躍、キックのポーズで地面に向かい突撃するのは先程と変わらないものの、今回はそのままのポーズを維持し、足先に全ての力を込め続けた。

 

「オォォォォォォォォォォ!!!!!!」

 

そして必殺技が命中すると――世界が変わった

どこまでも美しい自然が目に入り、国らしき場所は栄えている。理由は分からないが、国民達は安堵し満ち足りているようだ。

 

……だがそれらが見えたのも一瞬のこと。瞬きをした極僅かな一瞬の内に、俺はまたあの空間に閉じ込められた。

 

「は?ふざけんなよ〇ね」

 

思わず暴言が口から飛び出たが、どうせ誰も聞いてないし大丈夫だろう。それよりもこのクソみたいな空間だ。

せっかくぶっ壊してやったというのに元通りに戻りやがったのだ。こんなんどうしろと?

 

「……落ち着け、あれならば或いは……」

 

"創成の力”、俺はそれにかけることにした。しかし俺はその力の使い方を教わっていない。

当然だ、この力を渡して来たあの男ですら知らないのだから知りようがない。

 

……とりあえず、大事なのは理想を願う心だって言ってたよな。

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