魔王待ち構えるは黒狐 作:起床後即就寝
大事なのは理想を願う心……って言われてもな。まず理想を願うってなんなんだよ?どんな理想を願うとかも言ってくれないと分からないんだが?
理想って一口に言っても色々あるんだよ。金が欲しいだったり、愛が欲しいだったり、平和とか平穏が欲しいとかさ。
そういうの全部ひっくるめての理想?嫌々スケールデカ過ぎないか?
クロスギーツの漆黒の鎧を身に纏いながら思考を巡らせる。確かに宿っている”創成の力"、それを動かす為の鍵である”心"。
俺は何とかしてこの真っ暗空間から出たいと思っている。勿論、取れる手段は選ばない。使えるものは全て使う。
「……試してみるか」
仮面の奥で目を瞑り、この空間からの脱出、そして後の復讐の為あの世界への帰還を強く願う。
この力の源だという創成の神に願い続け――しかし何も起こらなかった。
……そんな破壊的な理想は認められないってか?でもそれはあの男が大暴れしたのを見るに違うか。
それとも、やっぱり心の要素が入ってないのが原因なのか?……けど、概念も法則が違ううんたらかんたらな俺ならなんとかできるかもって言ってたしな。
もっと本気で、祈れば……或いは。
「俺の、俺の…願いは……」
ここからの脱出……違う。
あいつを助ける……それもある。けど、違う。
あの世界に、本当の故郷に帰る……いや、これも違うな。
なら、なんだ…?俺の願いは……
「――嗚呼、そうか。そうかァ…そうなのかァ……!」
そうだな。そうだよなぁ…俺の願いって言えば、
「あの世界を、ぶっ壊す」
散々俺を拒絶しやがったあの忌々しい世界……ぐちゃぐちゃのめちゃくちゃにしてやったらさぞや楽しいだろうなァ…!
ついでに邪魔なこの世界も壊してやるか。
あの男に引き合わせてくれたことに感謝こそするが、ハジメさえ見つけられりゃ用無し。
元はと言えば、あの魔法陣のせいでこうなったんだ。文句は言わねぇよなぁ?
「ククッ。クロスギーツ様々、だな」
俺の内から渦巻く何かが、ドライバーの反応炉を通じてレイズバックルに流れ込んで行くのを感じる。
『Con…!』
呼応するように双眸を光らせる黒い狐に、ドス黒く淀んだ、禍々しいその何かこそが、このクロスギーツの力の源なのだと理解した。
なるほどな。これが理想を願う心ってやつか。意外に判定緩いもんなんだな。もっとこう、高潔な理想とかそっち系だと思ってたわ。
「……言っちゃぁなんだが、多分俺には高潔とかは似合わんだろうしな」
あの男――先代クロスギーツこと"神殺しのメラ”が見せた神殺しの黒狐の
強大という陳腐な言葉には収まらない、あの暴力的な力が解放された時、世界はどんな風に壊れるのか……それが今から楽しみでしょうがない俺には、やはり高潔なんぞ似合わない。
「破壊だ」
「鏖殺だ」
「殲滅だ」
「全てぶっ壊してやるッ!復讐の時だァ…!」
『DARKNESS BOOST TIME』
不気味な音が辺りに響き渡り、体を覆う鎧に無数の力が流れ込んで来る。
十本の尾がゆらりと華開いて行くのはさっきと同じ、体のあちらこちらから滲み出るようにして力の残滓が溢れ出してくるのもさっきと同じ。
……けど、その色はドス黒い漆黒だ。全てを呑み込む
Gooooon…!Goooooon…!
「クククッ!アハハハハハァッ…!!」
どこからかおどろおどろしい鐘の音までもが鳴り響くようになり、遂には高揚からの笑いを抑えきれなくなる。
止まらない。止まらない。笑いが止まらない。
永遠に笑っているように感じる。ずっとずっと、笑い続けている。
俺は嬉しい、喜ばしいんだ。
ようやく、ようやくだ……ようやく、俺にも巡ってきたんだよ、運命がッ!
「その第一歩ォ……盛大になァァァ!!!」
『X GEATS VICTORY』
俺を中心として、ドス黒い暗黒の波動が隅々まで広がる。闇に呑み込まれた空間が、ねじれ、歪み、裂け、砕けていく。
「アハハハハハハハハハーッハッハッハッハハハハ!!!」
……やがて、砕け散るようにして消え去った全ての裏側から、眩いほどの光が差し込み――逆にその全てが
何も無かったその空間から、光り輝く夕焼けに照らされた、幻想的な草原へと切り替わったのだ。文字通り、全てが。
「ほう…」
両手に握られた長剣と銃剣――クロスレイジングソードと、ギーツバスタークロスの刀身を打ち鳴らせ、感嘆の声を漏らす。
……正直に言おう、この声は本心だ。本当に心から、この美しさに目を奪われた。
バックルをドライバーから引き抜き、変身を解除する。
手をまじまじと見つめ、先程まで己が纏っていた神殺しの力に思いを馳せる。
「――随分と派手にやったもんじゃないの?」
「うぉっ!?」
「くははははははっ!いい反応だなぁ!」
こいつも出てきたのか!?てっきり死んだと思ってたんだがな……
「オアイニクサマ、自分の力で殺されるほどマヌケじゃねんだよ」
「いてっ」
ただのデコピンなのにクッソいてぇ…!
「まっ!随分面白れぇもん見せてくれた訳だしな、今回ばかりは忘れてやるよ」
「お、おう」
ケハハと高笑いを上げる道化のような男。
心底楽しげな表情を浮かべた神殺しのメラが、ニヤニヤと嫌な笑みでこちらを見やってきた。
「やっぱりお前に渡して正解だったな。こりゃあ人生まだまだ捨てたもんじゃねぇ!って笑えたわ!」
「……こちらこそ、だ。ありがとよ」
いいってことよ!メラがそう言おうとした瞬間――その顔に影が刺す。
「あん?」
「人…?」
その影の正体は人。
絶世の美女もかくやといった美貌の女だった。
「オイオイオイオイ、ちょっとくらい空気読めよまじでさァ……」
心底萎えたという感情を隠そうともしないメラ。
やって来たその女は、そんなメラの様子を気にも止めず、真っ直ぐとある一点を見据える。
「世を歪ませる混沌よ。神の命により、貴様を排除する」
――狙いは俺か……
神々しいオーラのようなものを全身から発する女の背には、かなりデカイ翼が生えている。
こいつ、まさか天使ってやつか?俺って天使にまで嫌われんのかよ……
「おぉ怖い怖い…目線だけで人殺せそうな目」
……なんて、口ではそう言うものの、実際のところ、俺はなんの心配もしていなかった。
「――おいおい舐めてんのか?」
なぜなら、この男がいるのだから。
「ガッ!?」
突如として、白い女が草原へと叩き落とされる。
ロクに反応もできなかったのか、受け身もなにも取れなかったその女によって、そこそこの大きさのクレーターが生まれた。
「貴様…何者だ…!」
「あーいいっていいって、そういうの。神ごときの…それも下っ端の雑用風情の話なんぞ、聞く気欠片も持ち合わせてないんで?」
あらよっと。神殺しのメラがそう軽く告げた瞬間、その体が激しくブレた。……いや、違うな。攻撃したんだ。それこそ、俺の認識できないほどの速度で。
単なる仮説でしかないとはいえ、実際のところ当たってると思う。――あっ、女が木っ端微塵になった。やっぱりか。
長年怒り恨み辛み殺意などの負の感情溜め込みまくった上で、そんな全てに復讐できる機会を手に入れた主人公……ニコニコ本社爆発バ━━\( •̀ω•́ )/━━ン