前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8768字。

導入回なんで転生後の世界は次回からです。


なんで前世の俺は神の知り合いがいるの?

「ただいまー」

 

ドアを開けて家の中に入る。

 

「やっと帰ってこれた...もう疲れた死ぬ...」

 

背負っていた鞄をドンっと玄関に置いて、洗面所に向かって歩いて行く。後でちゃんと片付けておこう。後で。

 

「なんで応援のためだけにこんな炎天下の中外にいなきゃいけないんだよ...」

 

今日はテニスの大会の応援をしに行ったのだ。団体戦のメンバーに入っていないのに、片道二時間往復三千円近くかかる遠いところまで行かないといけないのはちょっとおかしいと思う。朝八時集合とか狂ってる。学校でバス出してくれればいいのに。

 

「準決勝は良い戦いだったけど決勝ボロ負けだったなぁ...やっぱ強いわあそこ」

 

流石に前回優勝校には勝てない。けれど、第二シードに相応しい準優勝だ。ぜひ関東大会ではもっと勝ってほしい。

 

「さっさとお風呂入ろ。運動してないのに汗がヤベェ」

 

置いておいた今日の朝の寝巻きにとりあえず着替える。汗べっちょりのままお風呂が沸くまで待つのは嫌だ。でもシャワーでは済まさない。ゆっくりお風呂に入りたいのだ。

 

「ヤッベ早く全部の部屋エアコンつけないと。暑すぎんよー」

 

冷房をつけ、27℃に設定温度を変更する。部屋がある程度冷えてから28℃に戻すのだ。こんな暑い中、政府推奨の温度に戻すなんて俺はどれだけ偉いのだろう...ダメだ、疲れで変なこと考えてる。

 

「はぁ、荷物片さないと...」

 

お風呂が沸くまで15分以上はかかる。それまでに荷物を片付けるとしよう。

 

「水筒は...お風呂出たら洗お。ペットボトルまた買っちゃったな...うわ、もうゴミ袋一杯だ。ゴミ捨ての日までまだあるのになぁ」

 

荷物と言っても、あるのは水筒や途中で買ったペットボトル。あとはタオルとかスマホの充電器くらいだ。あと行き帰りの暇つぶしのためのラノベもあったか。タオルは洗濯カゴに突っ込み、充電器は充電させておく。ラノベは読み切っていない物以外を本棚に綺麗に戻しておく。

 

「そろそろこの作品新刊出てくれないかな...」

 

本棚にはまだ隙間がある。信頼できる友人に貸していて空いている隙間もあるが、作品ごとにまとめて本棚にしまっているので将来性を見込んで空けているところもあるのだ。その隙間がないと新刊だけ別の本棚にしまうことになってしまうし、順番に並べようとすればその先にしまってあるものを全部移動させないといけないためこんな方法をとっているのだ。

 

「風呂沸くまでに読み切れるかな...っとと、今ベッドに座るのはやめておくか。汗臭くなるのはいやだし」

 

ついいつもの癖でベッドに座ろうとしてしまったが、まだお風呂に入っていないのだ。勉強机の椅子に座って読み始める。

 

「やっぱおもろいなこれ...異世界系は当たり外れ大きいけどやっぱこれ当たりだね。主人公の力があまりないのがいいね。仲間がちゃんと強いし、敵の幹部が四天王方式じゃなくてまとまって攻撃してきてるのも珍しくてよき。こういうのだよこういうの」

 

普段からいろんな作品を調べている成果が出たようだ。本当に面白い。トップ10に...ギリ入らないぐらいだが、そもそもの母数が多いから相当面白いと言っていいだろう。自分調べだがな。

 

そんな時、お風呂が沸いた音が聞こえた。五分前に鳴るはずの音は集中しすぎて聞き逃していたようだ。

 

「うわ、あとちょっとなのに...まぁ出てから読むか」

 

仕方ないので、栞を挟んで本を置く。読み切ってから入ることも考えたが、汗でベタベタなのが嫌だったので先に入ることにした。

 

「あー...やべ、準備してなかった。タオルタオルっと」

 

バスタオルや着替えの服を用意する。これであとはお風呂に入るだけだ。

 

「おっふろーおっふろー!」

 

脱いだ服を洗濯機の中に入れて蓋をする。洗濯するのは後だが、臭いが外に漏れ出るのを防ぐためだ。そして浴室の中に入る。

 

「とりあえず汗流さないとな」

 

まずはシャワーで軽く体を流す。あらかた流した後、風呂に入る。あー、あったかい。至福の時だ。

 

「疲れが溶けてく...応援だけの俺がこんなんなってるってことはあいつらもっと疲れてるんだよな多分。すげぇよほんとに」

 

多分だが、今日試合をやった人は夜は泥のように眠るのだろう。俺はいくつかアニメを見ないといけないから夜更かしする予定だが。明日は部活も休みだし、夜更かしして怒る奴もいない。こういう時、一人暮らしは自由で楽だ。

 

「あっ、米炊くの忘れてた...まぁいっか。おかず作る間に炊けばいいし。電力だけ心配だけど、流石にブレーカー落ちたりしないよな...?」

 

お腹が空いてきて、夜ご飯は何を作ろうと考えた時に気づく。一人暮らしだとご飯を自分で用意しないといけないのは面倒だ。自由と引き換えの家事はなかなかに面倒で、親の大切さを思い出させる。

 

「まぁいっか。今考えても意味ないし」

 

夜更かしすると決めているので、無駄な思考で体力を使うわけにはいかない。実際、疲れでもう眠くなってきているのだ。今日のところは早めに寝て明日くつろげばいいと一瞬考えたが、一度決めたことは変えないと心に決めているので、夜更かしの計画は続行だ。今までに、一度決めたことを変えていいことが起きた試しがないからだ。

 

「それよりも明日何するのか考える方が有益だな。うん。何しよっかなー」

 

とりあえず、アイスを買いに行くのは確定している。さっき食べようとして、無かったのに気がついたのだ。このクソ暑い夏、一日一回アイス食べないと生きていけない。

 

「せっかく家出るならアイス以外にも何か買いたいな...遠出してプラモとかモデルガンでも買うか?いやでもアイス溶けるなそれだと。普通にコンビニ行って帰ってくるか」

 

アイス買うなら遠出はできない。そもそも炎天下の中遠出しようだなんて一瞬でも思ったのがおかしいよな。プラモやモデルガンはまたの機会にしよう。夏休みはまだまだ長い。いつか買えばいいのだ。

 

「帰ったら何しよう...やりたいこと多すぎて決めれないな」

 

俺の趣味は多岐にわたっており、内容的に俺はいわゆるオタクと呼ばれるような人種にあたるだろう。ゲームアニメ漫画ラノベに限らず、ミリタリー方面にも多少の心得がある。軍服とかを集めてるわけではなく、ただ銃カッケーという理由でモデルガンをコレクションしているだけだが。

 

そもそも俺はアニメの影響を受けやすいのだ。キャンプのアニメを見たらキャンプしたくなるし、登山アニメを見れば山に登りたくなる。バンドアニメを見ればバンドをしたくなるし、天体観測をしたくなったこともあった。長続きするものは少ないが、このおかげで多趣味になっている。

 

「流石にもう一回外出るのは嫌だし、家でできることといえば...」

 

溜まってるアニメを見ていくのもいいし、同じように溜まってるラノベや漫画類を読んでいくのもいい。積みゲーをやっていくのもいいかな。積んでたプラモも...マズイ色々溜まりすぎてる。買いすぎだな。

 

「……宿題はまだいいでしょ。どうせすぐ終わるし。俺天才やし」

 

天才と言ったのは比喩ではない。定期テスト学年9位だし。微妙な数字だと思った人は全体の母数を考えて欲しいものだ。自己肯定感高く、自分を天才だと思っていれば精神衛生的に安全だ。というわけで宿題は後回しだ。今は遊びたい。

 

「とりあえず明日になったら考えるか...ふわぁ...眠い...」

 

とてつもない眠気が襲ってくる。今寝たら明日の予定が全部パァだ。体洗って目を覚ますか。そう思い、浴槽から出ようとする。

 

「…もうちょっと浸かってようかな。なんか出たくない。眠くなくなったし」

 

意識したら眠気が飛んだ。疲れているし、もうちょっと入ってもいいだろう。

 

「こんなことならケータイ持ってきとけばよかったな。いや、そういや電池切れかけてたな。ダメか」

 

充電器もう一個持って行っていたら電池余ってたんだろうな。そんなふうに軽い軽い後悔を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ダメだな。ここまでしか覚えてないや」

 

何度思い出そうとしても、そこから先の記憶がない。

 

「ほんとここどこなんだろ」

 

なぜか俺は真っ白な空間にいた。方向感覚を失うくらい真っ白で、歩こうとして一瞬転びかけた。それくらい本当に真っ白で、ほかに形容する言葉が見つからなかった。最初は誘拐でもされたのかと思ったが、俺が誘拐される理由がわからないし、こんな空間が現実にあるとは思えない。

 

「これは夢?夢なのか?」

 

頬をつねってみる。

 

「痛く...ないな。なんだ夢か。これが明晰夢ってやつ?」

 

こんな何もない夢なんてあるのだろうか。自分の身一つしか出てこない夢とかあるの?服すら着てないんだが。

 

「ってか最後の記憶が風呂だけど大丈夫なのか?夢見てるってことは寝てるわけだし、早く目覚めないと溺れ死ぬくね?」

 

「もう死んでるからここに居るんじゃぞ」

 

「そうそう死んじゃう...って、え?死んでる?は?えっ...へ?」

 

「だからもうすでに死んでいると言っておるじゃろ」

 

どこからか声が聞こえる。けれど、前後左右どこにも姿はない。

 

「誰だ⁉︎ってか死んでるってどういうことだよ冗談はよしてくれ」

 

「冗談でもないぞ。死んでると言ったら死んでる。それが事実じゃ」

 

「誰だよふざけたこと言ってるやつ...ってかそうだこれ夢だったわ。いくら荒唐無稽でも夢なら逆に納得できるな」

 

「夢でもないぞ。痛みがなかったのは死んでるからじゃ」

 

「はいはいそういうタイプの夢ね。それで?あなたはどこのどいつなんですか」

 

「神じゃ」

 

「神...なるほどそういうのが出てくるやつか。ファンタジー系の夢かな?姿はない無形の神なのかな?」

 

「上だ」

 

「上?」

 

その声に従って上を見る。

 

「浮いてる...ほんとに神っぽいな」

 

上を見ると、いかにも神ですよといった風貌の老人が宙に浮いていた。地面と並行に浮いてるのは俺が全身を認識できるようにするためか?だったら地面に早く降りてくれればいいのに。ずっと見上げるのも首が疲れる...いや、全然疲れないな。痛みがないのと同じで疲れもないみたいだ。

 

「ぽいじゃなくて本当に神なんじゃが...本当にまだ夢だと思ってるなら認識を改めた方がいい。お主は本当に死んだのだ」

 

そう言いながら神を名乗る老人は地面に向かって降りてきた。最初からそうしてくれればよかったのに。

 

「へー。それで?」

 

何を言ってもお前は死んでると連呼されるので、一旦話を合わせておくことにした。面白そうな夢だしせっかくなら楽しまないと。

 

「まだ夢だと思ってるな...仕方ない。お主が死んだその瞬間を見せてやろう」

 

「え?」

 

一瞬の頭痛のような痺れと共に、頭の中に映像が流れ込んでくる。なんだ...これ?

 

「こんなことならケータイ持ってきとけばよかったな。いや、そういや電池切れかけてたな。ダメか」

 

そんな俺自身の声が聞こえる。見えている映像は、風呂に入ってる俺だった。そして次第にウトウトしだし、船を漕ぎ始める。そのままスースーと寝息を立てながらゆっくりと頭の位置が下がっていき...やがて水の中に沈み、ブクブクと泡が出る。

 

「あっ、泡でなくなった。えっ?死んだ?マジ?」

 

映像の中の俺は、完璧に溺死していた。夢が見せている幻想だと一蹴したいが、それはないと俺の頭がそれを否定する。これはマジで起こった出来事だとでもいうのか?

 

「お主は過度の疲労と風呂の作用によって入浴中に失神、そのまま溺死したのじゃ」

 

「…ほんとのほんとに?」

 

「本当じゃ」

 

「マジのマジ?」

 

「マジのマジじゃ。何回言わせる」

 

「ま、マジかよ...チクショウあの本読みきっておけばよかった...!」

 

ものすごい後悔に襲われる。どうしてこうなってしまったのだろうか。こんなことならお風呂をシャワーだけで済ませばよかった。

 

「はぁ...それでここは死後の世界みたいなところってことか?」

 

風呂場で死んだから裸なのだろうか。なんかちょっと恥ずかしい。

 

「正確には現世と死後の世界の間じゃな。天国と地獄どちらに行くか決める場所といったところだ」

 

「…ってことはあなたは閻魔大王だったり?」

 

「そのものではないが、そんなところじゃ。お主の生前の行動で行き先を決めさせてもらう」

 

しょうがない。死んでしまったものはもうしょうがないとして、これからを楽しむことにしよう。意識あるうちはどんなことでも楽しまないと損だ。

 

「では始めるとしよう。仮谷(かりや)幸希(こうき)、お主の生前の行動を見させてもらう」

 

「善行も悪行も全部洗いざらい話すやつか...確か嘘ついたら鏡みたいなのでバレるんでしたっけ?というか補佐官みたいな人がいるはずじゃ...ワンオペなの?」

 

地獄の書記官みたいなのが閻魔大王の補佐をしているみたいな話を何かで聞いたことがあるが、やっぱり実際は違うのだろうか。

 

「前はいたんじゃがな。最近は手順が楽になって一人でできるようになったんじゃ。お主も何もいう必要はないぞ」

 

「じゃあどうやってやるんですか?」

 

「魂を見るんじゃよ。魂にはこれまでの全てが記録されている。尋問するよりもそちらの方が楽だろう?」

 

「魂は嘘つかないってか...さぁどうぞ見てらっしゃい。大した善行はないけど悪いこともしてないし、多分天国にはいけるでしょ」

 

神がこちらをじっと見つめる。魂とやらを見ているのだろうが、今の俺は全裸なのでめっちゃ恥ずかしい。一応モノは両手で隠しておく。

 

「ふむふむ...ん?」

 

えっ、なに怖い。一瞬驚いたように目を見開いたぞ?いったい何を見たんだ怖いぞ。

 

「お主...戸崎和人じゃな!こんな早く来るだなんて思ってなかったからびっくりしたわ!」

 

「戸崎...?だ...誰?」

 

「ワシじゃよワシ!あの時の神だよ!思い出せないのか?」

 

俺に神の知り合いはいないはずだけど。

 

「本当に覚えてないのか...会えば思い出すようになってるはずだったんだがのう」

 

「えっと、話がよくわからないんだけどどういうことですか?」

 

異様に興奮した様子の神に恐る恐る質問する。

 

「前世じゃよ前世。前世でお主はワシと会っているのじゃ」

 

「そりゃ死んだらここに来るってんなら会ったことあるんだろうけど...そんな反応するほど親しくなったの?」

 

「いや、お主とは結構特殊な出会いをしてのう...今説明するから待って。かくかくしかじかまるまるうまうま」

 

「そんなのでわかるわけ...うわ頭に情報が!」

 

頭にとてつもない量の情報が流れ込んでくる。それを、まるで自分が体験してきたかのような感覚に陥りながらなんとか整理していく。

 

「えーっとつまり...どっかの神が馬鹿やって魂を初期化していたところを、これたどっかの英雄じみた一般人が解決した。前世の俺を殺すことで、か。そして前世の俺があなたに会って、通常通り生まれ変わることができた、と」

 

「そうじゃそうじゃ」

 

それにしてもさっきのかくかくしかじかとかは情報共有の呪文かなんかなのか?する必要ないことやりそうなやつじゃないし。

 

「うん。前世の俺があなたに会っていたってのはわかった。そして魂を読んで、俺が生まれ変わりだと分かったから喜んだ、とそういうことでいいのか?」

 

「そうじゃ。そして前世のお主とはとある約束をしていてのう」

 

「どんな約束だ?」

 

「そもそもあの場にいた全員に、望む世界で生まれ変わるというお礼をするつもりじゃった。けれど、全員が選んだのは普通の世界じゃった。お主も例外じゃない」

 

「まぁ、俺が普通の世界に生まれてた時点でわかってたけど...いや、普通じゃない世界を知らないからあれが普通の世界なのかは知らないけど」

 

「でもお主はそれより前に、ワシに望む世界を告げていた。片桐陽介たちに同調して結局は普通の世界に行くことにしたが、その時お主はこう言った。『さっき言ったことは次俺が神のところに行ったら頼むわ!』とな」

 

「あーっ...なるほど?その約束を果たしてくれる...ってことか?俺覚えてなかったけど?」

 

「いいんじゃ。片桐陽介も英雄じゃったが、お主もワシにとっては英雄じゃ。人が百年近く来ず、名前を失い力を失い、ほぼ消えかけていたところにお主が来たのじゃ。お主がいなきゃワシは消えていた。その借りを返す時が来ただけのこと」

 

「なるほど...まぁ、色々言っても意味ないしね。ありがたくそのお礼を貰っておこうかな」

 

俺自身は何もしていないが、相手がお礼をしてくれるってんなら受け取るだけ得だ。ちょっと気がひけるところはあるが、生き返れるならなんでもいい。

 

「それで、前世の俺が望んでた世界ってどんなの?」

 

前世の俺がどんな世界を望んだのかわからない。自殺を考えていた人間だし、自分の思ってるようなのじゃないかも...

 

「世界観にはあまり言及してなかったのう。剣と魔法と、魔王とか勇者とかが居るような世界としか言ってなかった」

 

「…最っ高じゃねぇか!いいセンスしてるよ前世の俺!」

 

そういう異世界を俺は待っていた。

 

「世界観の指定はそれだけだったから、行く世界はこちらで決めさせてもらったぞ。ちょっと訳ありじゃがな」

 

「ん?訳あり?どんな訳があるの?」

 

「簡単に言うと、このままだと魔王が世界を支配してしまう」

 

「なるほ...え?魔王勝利ルートなの?勇者はどうしたのさ」

 

「勇者御一行はこのまま歴史が進んでいけば魔王軍にやられて全滅する」

 

「このまま...ってことはもしかして俺にその未来を変えろとそういうわけ?」

 

「元に戻す、の方が正しいんじゃがな」

 

「戻す...?」

 

「この世界は本来通るべき歴史から逸れていっているのじゃ。さっき説明した魂の初期化のせいでのう」

 

魂の初期化がどう関係してくるのだろう。

 

「魂が初期化されたことで、本来生まれるべき人が生まれなくなり、逆に本来生まれないはずだった生き物が生まれるようになったのじゃ」

 

「なるほど?それで世界が変わってしまって勇者敗北ルートになってしまったとそういうわけか」

 

バタフライエフェクトというやつだろうか。最初に起こった出来事の時点で暴風吹いている気がするけど。

 

「それで結局俺がその未来を変えるってことでいいの?」

 

「そうじゃ」

 

「できるかな...魔法使えるらしいけどどんなもんかわからないし、運動神経そんないいわけじゃないから剣とか振れるかわからんし」

 

世の転生系ラノベ主人公はよく転生してすぐにあんな動けるなとつくづく思っていたが、自分はあんな機敏に動ける自信がない。普通無理でしょ。目の前に死が迫ってる状況で動けるはずがないんだよなぁ...

 

「多分大丈夫じゃろ。そういうのを補助する仕組みがあるようじゃ」

 

「へー」

 

「それに、特殊な力も託すことになってるしのう」

 

「特殊な力...?あっ!もしかして転生特典とかそういうやつ⁉︎」

 

世の転生系ラノベ主人公がよく貰ってるやつだ。

 

「えー、何にしようかなー!」

 

「…なんか楽しそうじゃが、もう決まってるぞ?」

 

「へ?」

 

「与える能力、もうすでに決められているぞ?」

 

「…嘘でしょ⁉︎どんなやつさ!」

 

できれば自分で決めたかったぞ。変な能力だったら恨むぞマジで。

 

「周囲の物体の速度操作じゃ」

 

「速度操作?あー...強そう」

 

周囲の物体全ての速度を操作できるって普通にチート臭くね?自分を光速近くまで加速させればほぼ全ての敵瞬殺できるでしょ。最悪、魔王の速度をゼロにすればほぼ終わりじゃね?

 

「速度といっても、向きは変えられないんじゃがな。速さだけじゃ」

 

向きがないってことは、ベクトルの方の速度じゃなくてスカラーの方の速さか。それでも強すぎな気がするけど。

 

「そんな能力あるなら危険ほとんど無さそうだな。どんな魔物やモンスターが出ても、光速で辻斬りするだけで倒せるだろうし」

 

「確かそれだとつまらないとか言って制限をつけていたのう。最初はほとんど加減速出来なくして、範囲も周囲一メートルとかにして少しずつ成長していくようにしてと言われたぞ」

 

「……はぁ⁉︎」

 

なんだよそれ!そんなので異世界生きてけると思うなよ前世の俺!成長していくのは楽しそうだけど最初の段階で死んじまうかも知れないんだぞ⁉︎今度は老衰で穏やかに死にたいぞ俺!

 

「生き残れる自信がなくなってきた...」

 

「まぁそこまで心配はしなくて良いじゃろ。最初はあまり強い魔物のいない場所に転移させるつもりじゃし、勇者パーティーに入れて貰えば魔王までの道中も安全じゃろ」

 

「それならまだ...いけるか?」

 

勇者パーティーに入るのがそもそも厳しそうだけど...全滅を防ぐには仲間に入ってた方がやりやすいか。なんとかしよう。

 

「あっ、そうだ。魔王倒したら俺ってどうなるの?もしかしてそのままその世界に残れる?」

 

「残れるぞ。魔王を倒せば自由に生活しても良いぞ」

 

「第二第三の魔王が出てきたりしない?」

 

「魔王は何度も出現してるようじゃが...全部同一個体らしいぞ」

 

「ってことは毎回倒しきれてないか、封印して魔王を退治してる感じか。復活する系の魔王か...面倒なやつじゃんそれ。魔王ってどれくらいの周期で現れるとかある?」

 

「ばらつきはあるが、毎回百年は必ず間が空いているのう。大体百年から三百年くらいじゃな」

 

「じゃあ一回倒せば俺が生きてるうちは安全か」

 

倒せるかどうかが心配だけど。

 

「だいたいの説明はこんなところでいいかのう。細かい説明は向こうでするから早速ゴーじゃ!」

 

「えっ、ちょっ、まだ全然説明足りない...っ⁉︎」

 

踏みしめていたはずの地面が消えた。突如として地面に穴が空いたと認識する前に、俺は落ち始めた。

 

「せめて心の準備を整えてからにしてくれよーーっ!」

 

俺、仮谷幸希は落ちていく。今、この瞬間に手に入れた力を無意識のうちに使って、落下速度を微弱ながら遅くして落ちていく。それでも、せいぜい重力加速度が9.8から9.7になったくらいの、微妙な差だ。

 

結局、ほとんど減速することなく俺は緑の森に落ちていった。




死亡代行サービスの最終回の日が2032年5月25日。
狭間の世界の人々が生まれ変わるのはその後の日からだとして、主人公は高二の設定だから一番早いとしても2049年の夏に死んでることになるんです。
だからどうあがいても今の俺たちからしたら未来の人物になるんですよね...ほとんど文化レベルは2023年と変わってないと思っておいてください。

仮谷くんは今の高校生とさほど変わらない、普通の高校生だと考えてこの作品を読んでもらえると助かります。

あっ、あとタグはこれから増やしていくつもりです。
なんのタグをつければいいのかまるでわからん。
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