前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8362字。

前回の続きなんですが、今回も会話・説明ばっかりです。
ほんと、戦闘描写よりも会話の方が書きやすいのなんなんだ?


魔力の前借り

「食べ終わったことだし...私の番行くわよ」

 

ニアの番が来た。正直、ニアの実力がどれくらいのものなのかすごい気になってるんだよな。いろんな人に天才だと言われるその力。気にならない人などいないだろう。

 

「私の長所は、カスタム魔法。詠唱なしの高速脳内筆記で大量の魔法を同時に使うのが得意よ」

 

やっぱ、自分でも言うくらいカスタム魔法が得意なんだな。俺みたいに、既に描かれている魔法陣でカスタムを起動するんじゃなく、脳内でゼロから描き出してるのは普通にすごい。それも、戦闘中にだ。まぁ、魔法図鑑を閉じたまま使ってるって言ったら俺の方が色々言われるんだろうけど。

 

「使える魔法の説明は...口頭だと面倒だから直接流すわね」

 

ビリィッッと頭に痛みが走る。情報を一気に流し込まれた。無○空処かな?

 

「こりゃあ...すごいな。記憶定着しやすくなってんのも魔法か?」

 

「復帰早っ。そしてなんでそんなことわかるのよ...」

 

「まぁ加速と速度探知で色々とな」

 

普段から速度探知の情報を処理するために思考速度を加速させてるからな。こういうのも慣れてる。攻撃にも転用するくらいだし。

 

「思考共有の亜種かなんかか?」

 

「まぁそんなところよ」

 

「思考共有って便利だよな。攻撃にも使える」

 

「……どういう意味?」

 

「魔物とか魔族に対して大量の思考情報を送りつけて、少しの間動きを鈍らせる」

 

「そんなのできるわけないでしょ...えっ、あんたできんの?」

 

「うん」

 

「……後でじっくり聞かせてもらうとして、そろそろみんなも復帰したわよね?」

 

「なん...とか」

 

「きゅ〜...」

 

復帰した人もいるが、ぷよ○よみたくバタンキューしてる人もいるな。なお、ステラである。

 

「とりあえず大丈夫そうだし、話続けるわよ。魔法の説明はさっきので十分だから省くとして...魔力は相当増やしたから余程のことがなければ切れないわ。多分、この中の誰よりも多いはずよ。勇者より多いかは、まだ聞いてないから断定できないけれどね」

 

「へー。どれくらいあるんだ?俺よりも多い?」

 

「そりゃ当然...とう...ぜん...うん、私の方が多いわね。ギリギリだけど」

 

この感じだと、本当に僅差なんだろうな。まぁ、俺は速度操作で裏技みたいな感じで増やしたし、それに勝ってるってことは相当前から魔力量を増やしていたはずだ。素直に努力がすごい。

 

「あんた、歳はいくつ?年下よね?」

 

「18だ」

 

「なのにこの魔力量...能動的に魔力を増やそうとし始めた歳は?」

 

「意図的に魔力枯渇させ始めた時期ってことだよな?...カイスに寄った時からだからだいたい一年くらい前だな」

 

「一年...」

 

「まぁ裏技だ。後で話す」

 

「……絶対最初にした方が良かったわねこいつ」

 

「こいつって言った?こいつつったなお前」

 

こりゃ敵対心というか、対抗心が生まれた感じだな。二人称に感情が乗ってやがる。

 

「こほん...私は魔法使いだけれど、一応運動できないこともないわ。もし、仮にだけれど、魔力がなくなってしまっても逃げ回ったり弱い魔物を蹴り飛ばすくらいはできる。それに、魔道具もいくつか持っているから、魔法拡散の中でもある程度戦えるわ」

 

うん、普通に運動できるんですね...まぁ、魔法拡散がある以上、ある程度動けないとすぐ詰んじゃうんだろうな。動けるに越したことはないし、旅で歩いたりもあるから体力は必要だ。

 

「説明はこんな程度ね」

 

「はい、質問いいか?」

 

「なによ」

 

「そんな目で睨まなくても...風の噂で聞いた、というか実際に体験したことではあるんだが、ニアは死んでさえいなければどんな傷でもすぐに治せるっていう魔法が使えるんだってな。さっき流し込まれた情報の中にはなかったけど、それはどんな魔法なんだ?」

 

「……言っておいた方がいいか。結果だけ見ればすごい魔法のように思えるけど、実際はとても使い勝手が悪い。戦闘中にはとても使えない。というか、この魔法は聖域の中でしか使えないわ」

 

「条件つけて魔法の効果を高めているのか?」

 

「それもあるけれど、この魔法は魔力を超大量に使うわけ」

 

「魔力を回復させながらじゃないといけないってわけか」

 

あれ?でもすぐ治るって聞いた気が...

 

「話を最後まで聞きなさいよ...回復させないといけないってのはあってるわ。でも、回復させるのは魔法を使い終わった後。前借りした分の魔力まで回復させなくてはいけないからね」

 

「……前借り?」

 

「そもそもこの魔法は一つの魔法じゃなくて、大量の魔法を混ぜ合わせた複合魔法。回復はすぐにできるけれど、その分魔力を喰う。だから、未来から足りない分の魔力を前借りして、魔法の発動に使うの」

 

時間操作系の魔法か?少なくとも、俺は知らない魔法だ。

 

「そして、遠い未来から引っ張り出すことはできない。だから聖域で魔力を効率よく回復させる必要がある。魔法を使ってしばらくは、聖域から出ることさえできなくなるわけ」

 

なるほど、だから戦闘中には使えない、と...

 

「一応、その魔法は私が見つけたもので、誰も知らない魔法。戦闘中に使わないのもあって、共有するのが憚られたから流さないでおいたわ」

 

「そういうことか...今このタイミングで聞けてよかったな」

 

「どういう意味?」

 

「聖域の中でしか使えないってのを知らなかったら、多分いざって時にその魔法に頼って無茶する選択をしてたと思う。だから今知れてよかったと思ったわけだ」

 

「普通の回復魔法も使えるけれど、こんな魔法使わないに越したことはないわ。油断しないで、お世話にならないようにしなさい」

 

「わかってるよ。ところで、俺の速度操作で魔力回復速度を加速させれば戦闘中にでも使えるんじゃないか?」

 

「聖域じゃないと無理よ」

 

「そ、それなら、僕の聖剣の力を使えば...」

 

恐る恐る、といった感じで手を挙げながらライトが口を開く。

 

「……それじゃあちょうどキリのいいところだし、バトンタッチしましょうか、勇者さま?」

 

「さ、様はちょっと...」

 

「こいつちょっと人見知りなんだ。普通に接してやれ」

 

「そう...じゃあライト、聖剣の力ってなに?」

 

柔らかい口調で質問をするニア。

 

「え、えっと...この状態の聖剣は、周囲に聖域を展開することができるんだ」

 

「し、周囲に聖域を?」

 

いつだったかは忘れたがそういえば、勇者は聖域を操るみたいな、そんな話を聞いた覚えがある。

 

「そう。周囲の魔素を全て反転させて、聖素にするんだって。制限状態だから15秒くらいしか展開できないけど、どこでも魔力を回復させたり、魔物から逃げたりできる...と思う」

 

「そりゃすごいな。15秒あれば結構魔力を回復できる。ただの魔物なら聖域に入ってくることはないから一時的な安地も作れる。弱いところが見つからないな」

 

クールタイムがどれくらいか、範囲がどれくらいかにもよるが、この世界において重要な要素である聖域を、戦闘中に展開できるのは物凄いアドになる。強いとしか言いようがない。

 

「今、引き出せる聖剣の力はこれだけ...鞘に収まってるけど、一応この状態でも切れるみたい」

 

「それって抜けないの?」

 

「まだ抜けない。制限を解かないと...」

 

「その制限ってのはなんなんだ?どうやったら解けるもんだ?」

 

「シレンの穴の完全踏破」

 

「なるほど...」

 

だから必ず攻略しないといけないわけか。鞘の状態でも切れるって、それ鞘の意味あんのかと言いたくなるが、ちゃんと鞘から出して剣として使えるようにしないとな。あの言い方だと、剣として使えるようになったら別の効果を使えるようになりそうだし。

 

「オーケー聖剣についてはある程度理解した。次は勇者としての力だな。二人から継承した力はどんな感じだ?」

 

「え...っと、まだあまり理解しきれてはないんだけど、あまり言うことはない...かな。魔法は、ニアのより少ないし、カスタムは少なめ。一応、ニアの知らない魔法があるみたいだけど...」

 

「なにそれ、後で教えてちょうだい」

 

「う、うん...だから、実はもうあまり言うことがなかったり...後で実演するから、その時に出来ること見せるよ」

 

「わかった。よーしじゃあお待ちかねの俺のターンだな」

 

色々話さないといけないことあるからな。さて、どれから話そうか...

 

「うん、めっちゃ見られてるから、まずは魔法から行きますか」

 

ポーチから魔法図鑑を取り出す。

 

「これが、俺が魔法を発動するのに使っている魔導書、魔法図鑑だ」

 

「戦闘中にこれを開くわけ?えらく非効率的ね」

 

「一応言っておくが、これを作ってくれたのはリヒト、お前の父親だぞ?」

 

「流石はお父様!きっと私には理解もできない特殊な力がこの本にはあるのね」

 

おおぅびっくりした。もしやファザコンか?

 

「あと、俺はこれを閉じたまま、このポーチに入れたまま使っている。リヒトも、その想定で作った」

 

「閉じたまま...まさか、直接魔力を流し込んでるわけ?どんな神業よ」

 

「リヒトが言うには、俺の魔力操作技術は天才レベルなんだと。俺の速度探知で、使いたい魔法陣が描かれているページを探し出して、そこにピンポイントで魔力を流すことが可能だからこんな構造になったわけだ」

 

「だいぶデタラメね...見させてもらうわよ」

 

「どーぞどーぞ」

 

ニアが魔法図鑑を開き、ページをめくっていく。隣に座っていたステラが、それを覗き込んでいた。ステラは俺がこれを持っていることを知らないから、気になるのだろう。

 

「これは...お父様が知ってる魔法が描かれているのね」

 

「ああ。まぁ、後ろの数ページは俺が作った複合魔法だったり、ガネルの冒険者に教えてもらった魔法だったりするんだけどな」

 

「そう...この魔法陣はなんの魔法?念動と物質生成と...軌道変更?」

 

「跳弾鏡射か。鏡を作って辺りにばら撒き、魔法とか矢を跳ね返しまくって跳弾を当てるっていう複合魔法だ。一応ステラのサポート用に作ってたものだったりする」

 

「私?」

 

「ほら、集団戦をしてると、弓矢の射線が通るタイミングが少し減っちゃうから、鏡に向かって撃てば跳弾で当てれるようになると援護しやすいかなーと思って。まぁ空を飛べるからいらないとは思うけど」

 

元々はステラに教えるつもりだったけど、魔法が苦手みたいだしな。役目はないかもしれん。

 

「うーん...でも後で教えてね」

 

「おけ」

 

「じゃあこの魔法は?物質転移に似ているけれど」

 

「あー、それは略奪つって、基本的には相手がその瞬間に一番頼りにした武器を盗むことができる。剣とか弓矢を奪えたり、挙句の果てにはスキルとか魔法を適性ごと盗める」

 

「……それはつまり、盗んだものは本人が使っているのと変わりない感じで使用することができて、かつ相手はその魔法を使えなくなる...というわけね?」

 

「そうそうそんな感じ。ただ、めっちゃ魔力使うんだよこれ。俺ですら魔力半分弱持ってかれるし」

 

「そう...あっ」

 

「……今、略奪使おうとして魔力使い切ったろ」

 

「本当に相当使うのね...」

 

「俺は多少適性があるから使えたけど、ほとんどの人は使えないと思う。あと、この魔法を発見した奴はほぼ消費なしで連発してた」

 

「なにそれ羨ましい」

 

「ああでも、一回でも自分で使ったことある魔法は盗めないから、ニアが使ってもあんまり意味ないかもな」

 

「なら必要ないわね...もしかして、この魔法陣がクミリアが言っていた魔法かしら」

 

全力疾走の魔法陣を開き、指差す。

 

「そうだ。俺がこれを速度操作と雷装と同時発動させると、音速を超える」

 

「音速...それはすごいけれど、この魔法陣少し効率が悪いわね。ここを削って、ここに描いてる魔法陣をこっちに移せば効率上がるわよ」

 

「それじゃダメなんだよ。閉じたまま使うなら、こっちの方がいいんだ」

 

「……確かにそうね。でもそれなら、ここを変えれば...」

 

「あっ、確かに...?やってみないとわからんな。後で試すわ」

 

「ちょっとお二人さん?話がどんどんズレているのご存知でない?」

 

「何を言ってるのかわかんないよ〜」

 

「おっとすまんすまん。魔法の改造は後でやるとして...次は速度操作かな」

 

速度操作についての説明をする。何も知らないニアがいるため、前にミルキーにやったくらい細かい説明を、あの時よりもわかりやすく整理して説明した。

 

「なるほど...ということは、この異様な速さの魔力回復はあんたの仕業ってわけね」

 

「そうだ。後で実演しないといけないんだから、魔法使えないと面倒だろ?」

 

「そうね、助かるわ」

 

そう言ったニアは、少し考えるような仕草をとったのち、また口を開く。

 

「その魔法、魔力枯渇後にも使えるとかではないのよね?」

 

「そうだけど、それがどうした?」

 

「一年足らずで魔力をここまで増やすなんて普通じゃ到底出来ないことだから、その速度操作で何かやったのだと思っていたのだけれど、違ったのね」

 

「それには抜け穴があってだな...シレンの穴の近くに、魂を入れ替えるダンジョン的な場所があったんだ。速度操作は魂に宿るけど、魔力量は肉体依存だから速度操作で魔力を増やす荒技ができた」

 

「そしてそれの被害者が僕」

 

「被害者言うな」

 

「そんな場所が...あんた、これからは私の魔力増強に付き合いなさい」

 

「暇な時には付き合ってやんよ。暇ならな」

 

「呼んだら絶対来なさい」

 

「へいへい...あっそうだ。これ誰に渡すか決めないと」

 

懐中時計のチェーンから指輪を取り外す。

 

「俺の戦力紹介からは少しズレるが、これを渡す人を決めたい」

 

「なにこれ、指輪?」

 

「ああ、夜のうちに魔力を貯めておくと、何かしらの攻撃を喰らった時に過去改変を起こして自動的に守ってくれる代物だ」

 

「これ、一昨日手に入れた奴...?」

 

「そうそう。俺が持つよりも、他の人に持ってもらった方がいいと思ってな。俺は自分で回復できるし」

 

「もしかして...回復手段を持ってないの、私だけ?」

 

「なら、ステラちゃんが持てばいいんじゃない?」

 

「だな。後衛がダメージ受けると困るし、その中でもステラは空を飛ぶからレストの守りも届かない。被弾の可能性高いから、ステラが持っておいた良さそうだ」

 

はいこれ、とステラに指輪を渡す。

 

「おぉ...大切にするね♪」

 

そう言いながら、ステラは指輪を左手の人差し指につけようとして...

 

「……大きいねこれ。サイズ合わないや」

 

「俺がとってきた奴だからかな...うん、俺みたいに首からチェーン下げてくくりつけてくれ。指につけなくても、それで身につけたことになる」

 

「指につけたかったな〜」

 

とりあえずといった感じでポケットに突っ込むステラ。無くさないでくれよ...?

 

「んじゃ、説明に戻るか。えっと、あと説明してないのは武器か。色々あるから一つずつ説明していくぞ」

 

「先に聞きたいんだけど、なんであんたそんなに色々持ってるわけ?器用貧乏にでもなりたいの?」

 

「器用貧乏言うな。オールラウンダーと言え」

 

「カリヤちゃんと弓使ってくれてる?」

 

「まぁそれなりにはな」

 

「じゃあその変な剣はなに?」

 

「これは刀つって...じゃあこれから説明しようか。これはだな...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんと、カリヤが最後でよかったね」

 

「話すことも、見せることも多いからな...いやー疲れた」

 

口頭での説明が終わり、今はカリスの外に出て一人ずつ実演をしているところだ。聖域である、ステラの訓練場を使わせてもらっている。

 

「さーて、あとは俺の全力疾走だけか...最後に一番疲れるのが残ったな」

 

「どれだけ速いのか、見させてもらうわよ」

 

「音より速いから、この距離だとまともに視認できるかわからんけどな」

 

減ったスタミナを回復させ、一旦魔力操作に集中する。

 

『雷装』

9934、9935ページ 全力疾走

 

「よーし走るぞー」

 

能力全開で一秒走ってみる。

 

「よっと、こんな感じでいいよな」

 

全力疾走と雷装を解除。来た道を六秒くらいかけて戻ってくる。

 

「どうだ?見た感じ」

 

「速い...けど、かなりオーバースペック気味じゃないかしら」

 

「まぁ、普通の魔物相手には過剰だわな。スタミナも一分ちょいで切れるし、流石に普通の戦闘じゃ使わないさ。これを使ってなお追いつけない奴がいるのが問題なわけで...」

 

「……誰よそいつ」

 

「アクセルっていう、音速で走れるやべー魔族。なんなら、雷装手に入れてるからもっと速い」

 

ってか、魔族についての情報共有忘れてたな。多分俺が一番詳しいだろうし、これも後で説明しておかないとだな...

 

「少し気になっていたのだけれど、その雷装ってのはどうやって手に入れるものなの?ライトも持っているみたいだけど」

 

「正直に言ってよくわからないんだよな。かみな...天の怒りに撃たれて手に入れたってのは共通してるんだけど、それ以外はよくわかってないんだよな」

 

アクセルは俺の雷装の電気で手に入れていたけど、雷装は雷の再現だから天の怒りに撃たれたと言っていいだろう。

 

「そうなのね...調べてみたい」

 

「前にリヒトに調べてもらったことがあるんだけど、原理は究明されたんまがスキル取得条件は分からずじまいだったんだよな。今どうかは知らないけど」

 

もしかしたら俺がカイスを出てからも、解析を続けているかもしれない。本来なら勇者にしか使えないはずの雷を、普通の人にも使えるようになったのは異例なことであり、曖昧なスキルとしてではなく、きちんとした魔法として扱えないかと考えて研究をしている可能性は十分にある。

 

「……あれ?そういやなんだけど、情報共有が終わったらカイスに行くって言ってたよな?サクッと流しちゃったけど、なんでカイスに行くんだ?」

 

「そっか、言ってなかったわね。勇者の力を受け取りに行くわ」

 

「勇者の力?...ああ、天の怒りを操る力か」

 

そういえば、リヒトが勇者にしか使えない雷の魔法が描かれた本を持っていたはずだ。それを受け取りに行くのだろう。普通に雷装使ってたから忘れてたけど、雷装自体は勇者特有の力ではないんだよな。

 

「そうよ。雷装が使えるから要らないかもしれないけれど、一応貰っておきましょ」

 

「まぁ多分雷装よりも便利だとは思うけどな。スタミナ使わないだろうし、空気中にも流せるだろうし」

 

雷装はそのままだと電圧弱くて空気中に流せない。勇者の力の方は、多分これが解消されているはず。そうじゃないと、特別感薄いしな...まぁ、なぜかアクセルとかライトの雷装の方が威力高いんだけど。ライトは普通に斬撃の形で放ってたりしたし。これ、俺の雷装が弱いのか、それとも二人の雷装が強いだけなのか、よくわからん。

 

「そもそも雷装自体、結構なイレギュラー要素なんだけれどね」

 

「まぁそりゃそうなんだけど」

 

というか、俺が雷装を手に入れたという事象によって、相当な未来の改変が起こっている気がする。俺が雷装を手に入れてなければ、ステラやレストの雷装はなく、そもそも存在自体知られていないのだからライトやアクセルも雷装を得ることは無かっただろう。そして、ライトが雷装を手に入れてなければ勇者には選ばれていないはず...ほんとにイレギュラーだな雷装って。

 

まぁ、もっと言ってしまえば、ニアが俺の命を救っていなければ雷装の存在が明らかになることはなかったわけだから、雷装の存在によってこの先の未来がどれだけ変わろうと、ニアのせいだということで...

 

「……っと、このまま話し続けていると陽が暮れちゃうわね」

 

「確かに、勇者選定から意外と時間経ってるんだよな。ついつい話が逸れていくせいで」

 

「全く、誰のせいかしら...全員の実演も終わったことだし、そろそろカイスに向けて出発しましょうか」

 

「だな。カイスも、あの移動魔法で行くのか?」

 

「そうよ。門の前にゲートを設置してあるから、少し歩けば着くわ」

 

「ちょっと思ったんだけど聞いていいかな」

 

「なに?クミリア」

 

「さっきカリスに来た時もそうだったけど、なぜ町の中に直接転移しないんだい?」

 

「それは...癖みたいなものね」

 

「あー...もしかしてあれか?カイスの中に直接入ると不法侵入みたいになるからか?」

 

「そう、それよ」

 

「……どういうこと?」

 

「私は魔法の発動に集中するから、代わりに説明しておいてちょうだい」

 

「了解した。カイスはな、門を出入りする時に誰が通ったのかが記録されるんだ。だから転移で直接中に入ると、記録上ではいないはずの人がいるってことになって面倒なことになるわけだ」

 

「なるほどね。転移の魔族もいるわけだし、なるべく誤解されない方がいいか」

 

「開けたわよ。早く入りなさい」

 

クミリアに説明をしている間にゲートを開けたみたいだ。少し離れたところで何か話していたらしきステラ、レスト、ライトの三人がこっちに来る。

 

「よーしじゃあカイスにしゅっぱーつ!」

 

今度もステラが一番にゲートに入っていった。他の仲間も続々と入っていき、俺たちは別時空へとショートカットしに行った。




多分、次回も次回で会話多めになると思うんですよね。
戦闘だらけになるのは次々回ぐらいからかな?
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