前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8447字。

ちょっと飛んで十五階層攻略です。


暗闇と惑わしの光

第十五階層

 

「真っ暗...だね」

 

十五階層に入ると、その先は闇だった。

 

「だな。リアル一寸先は闇だ」

 

「なにそれ?」

 

「ことわざだ。この先何が起きるかわからないことの例えだな」

 

「へー、面白いね」

 

「んで、真面目に話するけどマジで見えないな。どうなってんだこれ」

 

「光を出しても変わらないわね」

 

ニアが光源魔法で灯りを出すものの、闇は一切晴れない。光はあるんだが、そこしか見えないんだよな。壁とか床とかが一切照らされない。

 

「なんだろうこれ、光を完全に吸収してる感じなのかな」

 

おそらく、吸収されてしまい反射光がなくなっているため見ることができないのだろう。それを証明するかのように、ニアが出した光は普通に俺たちの身体を照らしていた。床は目に映らないから、距離感覚が狂って違和感がすごい。

 

「そういうコンセプトみたいだね。記憶によると、魔物も見えないみたいだから、気配とか音とかで索敵する必要があるみたい」

 

「まぁ俺がいると、索敵の心配ほぼなくなるんだけどな」

 

姿が見えないくらいで安心して油断しまくってる奴を返り討ちにするのが一番楽しいまで...一番は違うな、うん。でも、相手してて楽なのはそう。

 

「とりあえず進むか。俺が魔法で、速度探知で得た情報を整理して必要な分だけみんなに送り込むわ。ちょっと最初はびっくりするかもだけど、早めに慣れてくれ」

 

5114ページ 黒のみ 思考共有

 

何気に初めてまともな目的でこの魔法使ったなと思いながら、みんなに送りつける情報を整理する。

 

「送るぞ〜それっ」

 

送りつけると同時に、みんなの肩がビクッとなる。

 

「ノイズはあらかた消して、地面とか壁とかみんなの位置とか、必要な情報だけ送ったつもりだが、どうだ?魔物が入ってきたらわかるようになってるが、これで戦えそうか?」

 

「とりあえず移動はできそうかな。戦うってなるとどうなるかわからないけど」

 

「戦闘はクミリアと...ニアに頼もうかな。クミリアには気配探知があるし、ニアも探知魔法あるだろうし。俺は三人の目になってやらんといけんから、二人で敵は倒してくれ」

 

「わかった」

 

「カリヤも音の探知魔法使ってやれば、三人も戦えるようになるんじゃないかしら」

 

「音だと魔物なのかクミリアたちなのか直ぐにはわからないからちょっとな。それに、速度探知の整理で結構脳のリソース持ってかれてんだわ。集中しないとやばい」

 

「…もし集中が途切れて、整理しないまま情報が送られたらどうなる?」

 

「さぁ?頭がパーになるんじゃない?」

 

「怖っ!き、気をつけなさいよね...」

 

「そりゃもちろん。まぁほんとにパーになるかは分からんけどな。良くて頭痛、悪いとしばらく行動不能って感じかな。動くための思考が、送り付けられた思考で堰き止められちゃうんだよね」

 

「万が一にもそうならないように、しっかり守らないと...」

 

「だな。頼むぜレスト。きっちり守ってくれよ?」

 

「そりゃもう当然」

 

「というか、カリヤはこれを攻撃にも使ってるんだっけ...?」

 

「魔族と、そこらの雑魚魔物にな。頭の出来が弱い魔物だと、これ一発で普通に死んでたりする。魔族でも結構動き止められるんだよな。アクセルには脊髄反射で反撃されたけど」

 

動きを封じることはできてるけど、なんだかんだ次に繋がってないことの方が多いんだよな。フロートの時は絶対零度領域で近寄れなかったし、アクセルの時はさっき言ったみたいに反撃されたり他の魔族に魔法を封じられたりしたし。あくまで動きを封じれているだけ...って感じだ。

 

「多分今やったら前よりも威力出ると思うんだよね。情報量増えてるし」

 

「これもう逆に、それだけの情報を即座に処理して普通に生活できてるカリヤがすごいというか、おかしいよね」

 

「すごいはいいとして、おかしいはもう侮辱やんけ。褒め言葉違うからなそれ...加速があるから今のところなんとかなってるんだよ」

 

しかも、みんなが思ってるよりも魔族に送りつける情報量は多いというね。自分で適当な思考を加速しながらやって、それも一緒に送りつけてるって言ったら、多分もっとおかしいって言われるんだろうなぁ...

 

「今のところって?これからどうなるかわからないの?」

 

「なんかこのままだと、いつか能力範囲の拡大に加速が追いつかなくなるんだよね。下手すりゃ速度操作が使えなくなるかもーなんて」

 

「ちょっと何よそれ。困るわよ」

 

「心配はしなくてもいいぞ。これも多分でしかないけど、魔王討伐する前になることはないから。年単位で先の話になるかな」

 

「そう...それならとりあえずは平気かしら」

 

「一応それを解消できそうな方法も見つかったから、ほんとに気にしなくていいからな」

 

楔による制限をうまく使えば、能力の範囲を一時的に狭めることができる。工夫次第では、自分の好みの大きさまでいじることもできなくはない...?って感じだな。

 

「そもそも、魔王倒したら速度操作なんてオーバースペックなもの使わなくていいわけだし」

 

まぁ結局依存しちゃって、なんだかんだ使いそうな気がするけど。魔法図鑑を使いこなすのに速度操作が必須だから、能力を使わないとなると魔法図鑑を使わないってことになっちゃうしね。流石にそこまでの不便は許容できないと思う。

 

「正直に言って、速度操作のない俺ってどう?」

 

「速度操作がなくても魔法があるからそれなりに戦えるんじゃないかしら」

 

「速度操作を使わないとなると速度探知で魔法図鑑のページを探せないわけで、これまで通りに魔法は使えないぞ」

 

「あー...」

 

「おい言葉に詰まるなせめて何か言ってくれなんでもいいから」

 

「微妙?」

 

「それはそうなんだけど、ステラに言われると結構ヘコむぞ...?」

 

「でも、カリヤはカリヤのまんまだよ。言っちゃえば、私と初めて会ったときみたいな感じに戻るだけだし」

 

「あそっか、言われてみればそうかも...っと、とうとう敵さんのお出ましだ」

 

と、俺が言った頃にはもうクミリアが魔物を殴り飛ばしているというね。俺が探知した情報はすぐさまみんなに共有されてるわけだから、こうなるのはまぁ当然なんだけど。

 

「魔法も飛んでくし...このまま話しながらでも問題なさそうだな」

 

クミリアの打撃とニアの魔法によって、一瞬で天に召されていった魔物たち。死ぬ前は完全に闇に紛れていたけれど、死体となった今は光の吸収をしないみたいで普通に視認することができた。本来は真っ白なんだな...

 

「今んところ、道はグネグネはしてるけど全部一方通行だしなんの障害もないよな」

 

「一番の障害の暗闇が全く意味を成してないからでしょそれ」

 

「こういうギミック系のダンジョンってさ、ギミック解くと途端に面白くなくなるよね」

 

「ダンジョンになに面白味を求めているのよ」

 

なんかニアがツッコミポジに落ち着いてる気がするの俺だけ?

 

「……そういやなんだけど、シレンの穴のダンジョンって全部勇者パーティーを強化するためのものなんだよな?」

 

「そうだけど、それがどうしたのよ」

 

「ライトの聖剣の記憶の話じゃ、ダンジョンは俺たちを強化するタイプのものと、魔王軍対策を促すタイプの二つがあるんだったよな?」

 

「そうだよ」

 

勇者パーティーを強化する目的の階層というのは、言ってしまえばそのまんまの意味。特殊な力を芽生えさせる...とまではいかないまでも、コンビネーションをさせたり、新たな戦い方を見つけたりといったことをさせてくる。

 

魔王軍対策ってのもそのままの意味。強い魔物と戦ったり、魔族や魔王が仕掛けてくるであろう特殊な状況で戦うことを強いられるダンジョンだ。今までの階層はこれにあたるのがほとんどである。

 

「多分この階層って前者じゃん?」

 

「そうだろうね」

 

「入る時にライトが言ったみたいに、本来なら音とか気配で索敵しながら進むのが本来の想定ルートなわけで...この方法で楽して突破しちゃ為にならないのでは?」

 

「確かにそうかもだけど、別にいいんじゃないかしら。使えるものは使ってなんぼよ」

 

「でもみんなが各々索敵できた方がいいんでない?だってほら、分断されたらどうすんのって話で。転移の魔族がいる以上、急に分断される危険性は十分にある」

 

俺なんて、ガネル側の洞窟からカイス側の洞窟へと飛ばされたからな。まぁ距離はともかく、そんなんがいつ起こってもおかしくないってのは事実だろう。

 

「それもそうね...そうなると、一人ひとつは探知系の魔法なり魔道具なりを使えた方が良さそうね」

 

「だなー、ステラに使える魔道具持ってたりしない?ニア」

 

「一つ持ってるわ。魔法拡散下で私が使う目的だったものだけれど、ステラちゃんに渡しといた方が良さそうね。はいこれ」

 

「ありがとー、後で使い方教えてね」

 

「わかったわ」

 

「そういやレストって探知系使える?」

 

「一応カイスで習ったけど、適性があまりなくて上手く使えないんだよね。使えないほどではないから、多分大丈夫」

 

「そっか。まぁレストは孤立しても自己防衛できるだろうし、問題はなさそうかな。敵が魔法使ってくれれば、探知に使う魔力も回収できるだろうし」

 

盾役だけど普通に攻撃にも使えるし、魔力銃もあるしで、生き残ることに関してはレストの右に並ぶ者はいないんじゃないかってレベルだ。

 

「……およ?これもう終点?」

 

魔物と出会っても、すぐに二人が倒してしまうので本当に障害なくボス部屋前まで来れてしまった。ギミック優先で、魔物の強さがそこまでだったのが悪いなこれ。この階層を作った人は、見えないだけじゃ妨害にあまりならないことを知った方がいいと思う。

 

「そうみたいだね。さっさと入ろっか...まぶっ⁉︎」

 

クミリアが扉を開けたのだが、開けた隙間から漏れ出てきた光でまず目がやられる。そして、扉が勝手にガン開きになり、みんなまとめて部屋の中に吸い込まれる。

 

「目が...目が!」

 

「ちょっ、みんなさっきまでずっと暗闇の中目を開けてたわけ⁉︎なんでそんな無謀なことしてんのさ!」

 

どうせ目なんて開けてても意味ないんだから、当然閉じるよな普通。俺がおかしい?もし急に明るくなってもある程度対応できるようになるし、少なくとも悪いようにはならないんだが...まぁ、俺の場合は速度探知に集中するためってのもあるが。

 

「てっきり最後まで暗いままだと思って...」

 

「目を開けてた方が、頭の中の情報とリンクしやすいから...」

 

つーことは俺のせい?ライトが言及してないってことは勇者の記憶に深く残ってなかったということ。過去の勇者パーティーたちは、聴覚に頼るために皆目を瞑っていたのだろう。楽したツケが回ってきたと見るべきか。

 

「ってか敵来てる!とりま伏せてみんな!」

 

この部屋の上から吊り下がっている灯りのようなものから、死神チックな黒い何かが降りてきていた。今のところ、目が見えている俺しか対応できる者はいない。俺が守るしかない。

 

「くそ、光で距離感が測りにくい...!」

 

とりあえず、思考共有を切っておく。戦闘に集中するためなのもそうだが、間違ってノイズを送りつけてしまう危険性があるため、仲間を危険に晒さないためにも解除する。

 

「ならこっちから近づく...!」

 

白い光をバックにしているため、距離感が測れない。ならば近づいて、速度探知で位置を捉えるまで。地面を蹴り、魔物へと近づく。

 

「……えっ?」

 

近い。少なくとも、五メートル以内には絶対にいるはずだ。魔物は能力範囲内に入っている。そのように見えている。

 

「なん...で...」

 

そのはずなのに。速度探知は何も捉えていない。速度探知に反応しないものなどあるわけがない。どんなものにも速度という情報は存在する。それが光速だろうと、ゼロだろうと、速度として俺は知ることができる。

 

「くっ...!」

 

ダガーを一本取り出し、魔物に向かって投げる。けれど、ダガーはすり抜けて何も起こらない。

 

そして、魔物の鎌が振られる。命を刈り取る形をしているそれから逃れるため、俺は咄嗟に左腕の盾を向ける。

 

しかし、鎌は盾をすり抜ける。

 

だが、俺の腕はすり抜けなかった。

 

腕が斬り飛ばされ、赤い血飛沫が飛び出し...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「違う!幻覚だ!」

 

俺の目には、左腕が切り落とされて、傷口から勢いよく血が噴き出しているのが見える。けれども、速度探知では、腕は普通にある。血など出ておらず、そもそも少しも切れていない。

 

「攻撃も、お前自身も、全てが幻覚!俺の脳が作り出している妄想にすぎない!」

 

速度探知は嘘をつかない。視界情報と食い違っているのなら、間違ってるのは目の方だ。腕を切り飛ばされたことによる激痛も、俺の脳が作り出している幻覚なのだ。

 

「幻覚を引き起こしてる奴の正体は...どうせあの光だろ!」

 

とりあえず敵の正体を断定し、一旦着地する。さっきの、魔物に近づくのが目的の跳躍では、いくら加速したところで光には届かないからだ。

 

「みんな、そろそろ目は慣れたか」

 

「うん、一応...っ⁉︎」

 

みんなが俺の左腕あたりを見て、絶句したような顔をする。

 

「みんなで共有してんのか...大丈夫だ。これはあくまで幻覚。ほんとに切れてるわけじゃない」

 

「そ、そう...なの?」

 

「俺の能力はそう言っている」

 

というか、同じ幻覚を共有してるって奴、CH○OS;HE○Dのギガロマ○アックスみたいだな。幻覚、妄想ではあるけれど、今の俺たちにとっては限りなく現実に近い。速度探知がなかったら、完全に現実だと思い込んでいたことだろう。

 

「おそらく、原因は天井から吊り下がってるあの光源だ。あいつを攻撃すれば、この幻覚は治まる...はずだ」

 

「わかったわ。あれを攻撃すればいいのよね」

 

ニアとほぼ同タイミングで上を見上げる。そこには、さっき俺の腕を切り飛ばしてきた死神チックな魔物が、数十体フヨフヨと浮いていた。

 

「あいつら全部存在しない!気にせずぶちかませ!」

 

ニアの魔法が灯りに向かって飛んでいく。魔法は魔物をすり抜け、灯りに...

 

「当たんない⁉︎」

 

「あれすらも幻覚ってことか...?」

 

こうなると、この目に映るものは何一つ信用することはできない。この仲間達が偽物であるというシナリオではなかったのだけまだマシだな。それに、おそらく聴覚は無事だ。この階層のコンセプトは、視覚に頼らないこと。道中もこのボス部屋も、それは一貫している。聴覚に従えば、現実を知ることができる。

 

「ニア、探知魔法を使ってくれ。俺は見えない魔物がいないか警戒する」

 

存在しないものが見えている。それは逆に、存在しているものが見えていない可能性を示している。万が一見えない魔物に襲われてもいいように、みんなの近くに立ち速度探知で索敵を続ける。

 

「今やるわ」

 

ニアは目を閉じ、探知に集中する...やばい。あの幻覚の魔物たちが近づいてきている。幻覚とは分かっていても、切られる痛みは到底無視できるものではない。あれだけの数に切られればひとたまりもないだろう。

 

「幻覚を晴らす方法...魔法拡散で突破できるほど甘くないだろうし...感覚の遮断とかか?いやでも...」

 

幻覚の魔物が迫ってきている。早急に対処する必要が出てきた。急いで対抗策を考えるが、あまりいい案が出てこない。魔法拡散は一つの手だが、ニアの探知魔法を阻害してしまう。それで魔物たちに何の意味も及ぼさなかったら悪影響しか残らなくなる。やるわけにはいかない。

 

「くそっ、どうすれば...!」

 

「……さっきから、みんな何を見てるの?」

 

「ライト...?急に何を言って...」

 

「上なんて、何もないじゃん」

 

「何もないってお前、上には魔物たちが...ってか幻覚なんだけど、ライトお前見えてないのか⁉︎」

 

「みんなに何が見えてるのかはわからないけど...灯りを潰せばいいんだったよね?」

 

そう言って、ライトが聖剣を持って走り出す。

 

「ちょっ、そっちには何も...いや、何かあるのか?」

 

ライトが跳び上がり、何もない虚空に向かって聖剣を振り下ろす。すると、バキンッ!という音が鳴り響き、それと同時に近づいてきていた魔物たちがかき消える。

 

「これは...やったってことで...いいのか?」

 

幻覚をもたらす異様な光はなくなり、部屋の中は少し薄暗い程度になる。俺の左腕も普通に見えるし、痛みもなし。入ってきた扉とは反対側の扉が開いているのを見るに、攻略完了したと見ていいだろう。

 

「何が何だかわからないうちに終わっちゃった...」

 

「幻覚辛い...敵の気配もなくて攻撃できないし、わけわからなかった」

 

ステラとクミリアが似たような感想を言いながら立ち上がる。

 

「カリヤの腕がないのを見た時、どうすればいいかと...」

 

「実際には一切傷ついてないんだから、そう落ち込むなレスト。ほんとの攻撃が来た時にちゃんと守ってくれればそれでいいから」

 

落ち込んでるレストをケアしながら、俺はライトがなぜ幻覚を受けていなかったのかについて考える。大方、勇者としての力ということなのだろうが...ならなぜ初日の自己紹介の時に言わなかったのか、という話になる。

 

そしてもう一つ不思議なことがある。それは、勇者の記憶になぜこの幻覚のことが言及されていないのか、ということである。幻覚を喰らったのは俺たちだけなのか、それとも別の方法で幻覚を無効化できる術があったのか...

 

「なぁライト。お前、幻覚を一切見てないのか?」

 

「その幻覚っていうのがよくわからないんだけど...みんなには何が見えていたの?」

 

「上に眩い光を放つ灯りがあって、鎌を持った黒い魔物が襲いかかってくる。俺はそいつに腕を切り飛ばされて、血がめっちゃ出る幻覚を見せられた」

 

「そんなのを...なんで僕には見えなかったんだろ?」

 

自分でもわからないのか...なんでなんだろう。

 

「勇者としての力だったりとかはしないのか?って、知ってたら最初から言うよな」

 

「あー...もしかしたら、それかも」

 

「え、どういうこと?」

 

「前に、聖剣に制限がかかってて、シレンの穴を踏破することで解除ができるって言ったよね。それ、勇者の力もで、少しずつ本来の力が使えるようになっていくんだって」

 

「そうなのか...幻覚を受けなかったのはそれのおかげってことか?」

 

「多分。自身に降りかかる悪影響の軽減、無効化みたいな感じだと思う」

 

「まだ五分の一すら終わってないのにそんな強い力貰えんのか...」

 

というかなるほど。勇者の記憶に幻覚についての言及がなかったのは、勇者たちは幻覚を喰らっていなかったからか。それなら納得...だけど、仲間は普通に幻覚を喰らってるわけで、しっかりその話を聞いて後世に残して欲しかった。

 

「デバフの無効化ねぇ...どんなもんなんだろ。ちょっとライトその場でジャンプし続けてくんない?」

 

「意図がよくわからないけど...」

 

ライトが跳び始める。それに対して、速度操作で減速を試みるが...

 

「うわマジだ。減速できねぇ。すごいなこの耐性相当使えるぞこれ」

 

速度操作の減速すら防ぎ切るって、普通にすごいことなんだよな。速度操作って神様が作り出した力なわけだし、そうそうないはずなんだが...まぁ、勇者の力はこの世界の女神から供給されてるものなわけで、無効化できるのは当然とも言えるか。

 

「なぁ、他にこれから手に入る力ってわかったりしないか?わかる範囲で教えてくれよ」

 

「そうね。あらかじめわかっていたら、それを手に入れることを前提として動くことができるわけだし、是非教えてもらいたいところだわ」

 

「お、教えたいのは山々なんだけど、聖剣の方はともかく、勇者の力の方はいつ手に入るかわからないんだよね...勇者の記憶も、その場面にならないと引き出せないし」

 

「そりゃそっか。手に入るって知ってたならデバフ無効化もあらかじめ言ってるし、あんな反応しないわな」

 

「知らないうちに手に入っていて、気づかないなんてこともあるかも...」

 

「それはないわね」

 

「だな、必ず気づくように設計されてるだろ多分。現にこの階層はそうだったわけだし」

 

この階層は、今回手に入れた自分に降りかかるデバフを無効化するという力を知るためのものでもあったのだ。あくまで自分に降りかかるものに限るというのも、幻覚は防げて道中の暗闇は無効化できないところで察することができる。暗闇は壁や床、魔物に付与された光の吸収効果によるもので、ライト自身に魔法をかけられたわけじゃないからな。

 

「今後はライトを気にしながら動かないとだな。突破口がどうやっても見出せないとかいう状況に陥ったら、ライトが新たな力を得てないか確かめる必要がある」

 

「そうね。頑張りなさいよライト」

 

「いてっ...うん、わかったよ」

 

ニアに軽く背中を叩かれるライト。いつか、物理耐性とか魔法耐性とかを手に入れる時が来るんだろうか?

 

「それじゃあ今日はここまでにしましょうか。みんなー帰るわよー」

 

今日で八階層終わらせた。昨日よりも一つ多い。

 

そのせいか、それとも幻覚で強烈な痛みを叩き込まれたからか、疲れがすごかったので、町へ戻った俺はそのままベッドへインするのであった...




まだまだ強化される勇者の力。
ただ、なんだかんだ実力の描写が一番されてないのって勇者なんで、どれだけ強くなったのか分かりづらいという...
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