前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
前回ラストの奴の補足からスタートです。
「あれ?減速できる?」
試練の穴に入る前に遊びでライトに減速をかけてみたら、普通に効いてしまった。
「デバフは効かないんじゃなかったっけ?どゆこと?」
「今のところは、シレンの穴の中でしか効果が発揮されないんだ。試練の穴を完全攻略すれば外でも使えるようになるんだけど...というか、イタズラするのやめて?」
「それはごめん」
「何遊んでるのよ...これから鬼門に挑戦するんだから、今のうちから集中しときなさいよね」
「はーい」
そう、今日一発目に挑戦するのは、第二十五階層。勇者の記憶によると、最初からボス部屋であり、特殊な環境で強大な魔物と戦わされる。ダンジョン全体で見て、中ボスポジといったところか。四分の一ごとに同じような即ボス部屋の構造になっているらしい。
「着くまでの間に軽くおさらいしておくか。まず、入るとどんな場所に出る?はいステラ答えは?」
試練の穴の前に着いたので、坂を降りながら昨日の会議で話したことのおさらいをする。
「なんかだだっ広い平原!」
「はい正解。なんで洞窟入ったら平原に出るのかはわからんが、そこら辺は置いておこうか」
もう、空間が歪んでるとか拡張されてるとか、そんなんじゃ説明できんよな。完全に転移のレベルやんけ...まぁ実はどこまでも広がる平原のように見えてるだけで、壁に景色が写ってるだけだったりすんのかもだけど。
「じゃあ次。どんな魔物が出てくる?レスト答えてみて」
「空を飛ぶ異形の鳥みたいな奴...だっけ?」
「正解...本当にそうかはわからないけどな。実際の姿はライトにしか見えてないわけだし、形容が正しいのかは見てみないとわからん」
鳥ってのは合ってるんだろうけど、異形ってのが気になる。ライトの見てる勇者の記憶が俺たちにも見えればよかったんだが、思考共有でも見れないっぽいんだよな。
「僕に絵の才能があれば見せられたのに...」
昨日ニアが試しに絵で説明してみなさいよとライトに言い、現れる魔物の姿を描いてもらったのだが...ライトの名誉のために、あまり深くは言及しないでおこう、うん。
「あと問題にするなら...」
「なら逆に問題。魔物の弱点はなに?カリヤ」
「基本的には雷。それ以外の魔法はほとんど効果がなく、物理的要因で地上に叩き落とすのが吉」
「よし。魔物の使う魔法はみんな把握してるわよね?聞いた方がいいかしら」
「大丈夫だよ。それはそうとニア、だいぶカリヤと調子あってきたんじゃない?」
「協調性は大事だもの」
それ、二、三日前の自分に言ってやれ。
「よし、おさらいも終わったところだし、魔力も十分。早速入るとするか」
目的地である、第二十五階層の横穴前までやってきた。
「だね、入ろう」
入ってきた瞬間に攻撃される万が一の可能性を考え、レストが扉を開ける...が。
「うわわっ⁉︎」
第十五階層の時のように、扉を開けるために取っ手に手をかけた途端にガン開きになり、吸い込まれるように中に入る。
「いってて...なんか、俺以外の人が扉開ける時大体こうならない?どゆこと?」
実は、今みたいにボス部屋の中に吸い込まれることは二度目ではない。あの十五階層以降、俺以外の誰かが扉を開けるたびにこうなる。二、三度あったか...俺が偶然引き摺り込まれない扉を開けてるだけなのか、俺自身に何か問題があるのか...
「ってかみんな早く体勢立て直せ!」
そんな考え事をしている場合ではない。急いで立ち上がり、周囲を見渡して魔物を探す。
「あっ、いた」
ステラが斜め上を指差した。だだっ広い平原の、雲一つない空の中、そいつはいた。
「うわぁ...SANチェック入りそうな見た目してる...」
この見た目を何かで例えるならば、シャン○ク鳥が一番近い気がする。これがTRPGなら確実にSANチェック入るねこれ。
「いや、翼竜に近いのか...?まぁいいや、戦闘開始!」
みんな一斉に戦闘態勢に移る。
「手筈通りに行くぞ!」
「オーケー!」
まず、クミリアと共に走り出す。平原を駆け抜け、魔物の真下付近まで近づく。
「「せー...っの!」」
同時に地面を蹴り、魔物めがけて飛び上がる。
「来たよ!」
接近は許さないとばかりに、魔物が炎を俺たちに向けて放ってくる。おいおい、平原に炎を放つなんてな...真下に人が来たら炎を放つ。記憶通りだ。
「「はいっ!」」
クミリアと互いの足の裏を合わせ、蹴ることで炎を回避する。
「次だ...」
普通の人には到底できない、クミリアの身体能力と、俺の速度探知による空間認知があってこそできた曲芸。
それはただ目立つための陽動。本命が空に飛び立っていることを悟られないための囮だ。
「頼むぞステラ!」
俺たちが気をひいているうちに空を飛んでいたステラが、魔物の眼球目掛けて矢を放つ。
「片方...上出来だ!」
片方の眼は瞬きによって硬い瞼に防がれてしまったが、もう片方には浅いがしっかりと眼球に刺さっている。初っ端から片目を潰せたのは幸運だ。
4014ページ 黒 青 障壁
障壁を空中に設置し、それを足場として跳躍する。先ほどのステラの攻撃によって、少しだけだが魔物の高度が下がっている。この高さならこの跳躍で十分に届くだろう。
そしてそれは、反対側でニアのサポートを受けて跳躍したクミリアも同様。俺とクミリアで、真反対の方向から魔物に近づく。これで、魔物はどちらか一方しか攻撃することができない。
「……チッ!こっちに撃てよ!」
クミリアに対して、氷を用いた魔法攻撃を放つ魔物。ニアがサポートしてるから問題はないだろうが、同時攻撃はできなくなった。
「叩き落とすには火力不足...でも高度は落とさせてもらう!」
魔物の真上へと移動、落下速度を一気に加速させて飛び蹴りを背中に叩き込む。
「っと、危ねぇ...!」
こいつの特徴は、魔法耐性と反撃。魔物の皮膚表面に極薄の魔法拡散のようなものが貼られており、並大抵の魔法は即座に無効化されてしまうのだ。速度のある魔法なら魔力に拡散される前に命中するのだが、威力は期待できない。当たるとはいえ、威力はだいぶ落ちてしまっているのだ。雷くらいしか、使える魔法はない。
そして、案外厄介なのが反撃の方。こいつは背中に乗られるのを極度に拒む習性があるらしく、一定以上の重量の物が乗ってすぐに針のようなものが皮膚から出てくるのだ。すぐと言っても、一秒くらいのタイムラグはあるのだがこれのせいで連撃を叩き込めないのが面倒だ。
「一旦離脱...」
魔物の背中から飛び降りた俺は、一旦全員の位置を確認する。ステラは魔物の左斜め上あたりに位置している。潰した眼の方だから、うまく魔物に見えない場所に位置どり続けているのだろう。
クミリアは一旦着地、ニアにバフをかけてもらっているようだ。レストもその近くにいる。そしてライトは、そこから少し離れたところで手を上に掲げていた。
「この位置は感電する...!」
『雷装』
俺が雷装を使って一秒後、天空から雷が落ちて魔物に命中する。当然、まだ近くにいた俺にも飛び火...というか、雷が伝って電流が走るものの、雷装を使ったおかげで被害ゼロ。すぐに次の思考へと切り替える。
「やっぱ雷が一番効果的か...でも、叩き落とすならまだ手はたくさんある!」
雷によってさらに高度を下げた魔物を見ながら着地。そしてすぐに手を地面に触れさせる。
714ページ左上 黒 黄 土流
4009ページ 黒のみ 水道
ここから魔物の上へと、水の道を作り出す。そして土を流動化させて水の道へと流し込み、大量の土砂を魔物の上へと運搬する。
「物体として存在しているこいつなら、魔法拡散は効かねぇ!落ちな!」
魔法を解除し、大量の土砂を魔物の真上に落とす。
「ああクソ、針で撒き散らされて終わりか」
一定重量が乗ったことにより針が飛び出し、それによって土が吹き飛ばされてしまった。これだとあまり意味がない。
「なら水を...」
膨大な量の水を塊にして、叩きつける。相当な質量になるだろうし、針が出てもあまり飛び散ることはないだろう。
「ってどうやって集めんだそれ無理だろ」
現実味がないとして、すぐに選択肢から消す。さて、どうやって叩き落とすか...
「準備できたけど、第二撃行く?」
「そうだな...とりあえずやりながら考えよう。今度は二人一緒に行くぞ」
ニアのバフにより、準備万端になったクミリアと共に、魔物の真下を横切る形で跳躍する。
真下を通った瞬間、ちょうど当たるようなタイミングでまたしても炎が放たれる...が、片目が潰れているためか、タイミングは合っていても角度が微妙にずれていた。加減速を駆使して避けるつもりではあったが、何もせずに通ることができた。
そしてそこで、レストが炎を右腕の盾で吸収したのが見えた。最終的にレストのカウンターで倒すのもアリだなと考えながら、攻撃の軌道を決める。
4014ページ 黒 青 障壁
「1、2の...3!」
3カウントでタイミングを示し、障壁を二人同時に蹴って上に飛ぶ。
「魔法来るよ!」
「なーにこの程度造作もない!」
この、本来なら普通に直撃する魔法も...ちょっと減速をかけてやればほらこの通り。タイミングがずれて当たらなくなる。俺に当てたいのなら、単発で直撃を狙うのではなく、動く先に面で攻撃を仕掛けるくらいしなければ無駄だ。
「よーしクミリアやってやれ!」
魔物の真上までやってきた。俺がこう言うと、クミリアは腕をグッと伸ばして魔物に拳を向ける。空気の腕の発動条件が満たされた。
魔法は拡散されて、無効化される。けれど、速度があれば別。発動と同時に空気の腕が形成され、一瞬ではあるが拳が魔物に命中した。
さらに、クミリアは空気の腕を振り回し、魔物の周囲の気流を乱しにかかる。それによって魔物が飛ぶのに必要な揚力も乱され、飛行困難になる。
ドンッ!
魔物が地面に叩き落とされ、大きな音と共にほんの少しの粉塵が舞う。
「今だ!翼をもぎ取れ!」
再度の飛行を許すわけにはいかない。急いで翼をもぎ取りにかかる。
7002ページ 黒のみ 金属生成
落下しながら、適当にクナイを生成して投げる。前に作ったことのある毒性のクナイではない。この距離では刺さる前に自壊してしまうし、毒は魔法拡散で無効化されるため無意味だからだ。
そして当然、クナイも刺さるは刺さるがすぐに消滅してしまう。だが今回はこれでいい。すぐに傷口が開くことで、出血させる。
直接切りに行けたらよかったのだが、今の俺は落下中。それもかなりの高度なので、減速をかけて降りることしかできない。だから、攻撃はみんなに任せる。
「……なにっ⁉︎」
ライトが聖剣で翼を切り払おうと動き始めたその瞬間、魔物が上に勢いよく跳ねた。さっきまでいた場所の地面が盛り上がっている。自分の体を魔法で跳ね上げたってわけか。
「逃がしちまったか...なら、また撃ち落とすだけだな」
着地、そして上を見る。
「羽ばたいてない...滑空?」
魔物は翼を大きく広げているだけで、一切羽ばたいていなかった。風系統の魔法で翼に風を当て、無理矢理滑空しているのだろう。けれども、自重を支え切ることはできておらず、待ち続けていればいずれ落ちてくるだろう。まぁ、また地面を操作して打ち上げれられると話は別だが。
「さっきみたいに近づいて叩き落とすか...」
「やばいよカリヤー!」
なんだなんだ?ステラが大声を出しながら降りてくる。
「空すごい暴風吹いてる!飛んでらんないよ!」
「もう近づかせねぇってか...こうなりゃレストのカウンターでいくか?」
思考を回し、自分達の持つ手札で使えるものがないかを高速で精査していく。
「ねぇ、また空気の腕で掴むっていうのは」
「いや、いい手を思いついた。準備する」
少し前、地面を土流で抉り取って消費したのだが、その場所に移動する。そこには、おそらく見えちゃダメなんだろうなという感じの金属の地面があった。
『製作』
その金属を少し拝借し、二本の剣を作り出す。
3780ページ上 黒のみ 筆記
剣の柄に魔法陣を描き込む。
「よし、加速させれば当たるはず...ってか当たってくれ」
二本の剣を弓につがえ、目一杯引く。
「何をするつもり?」
「奴を引き摺り下ろす。魔法でな」
手を離すと、ヒュンッ!と剣が高速で飛んでいく。弦の戻る速度を加速させたため、普通に射った時よりも早く飛んでいった剣たちは、風によって少し軌道がずれたものの魔物にちゃんと刺さってくれた。
「よーし、戻ってこい」
剣に描き込んだ魔法陣を起動する。描いた魔法陣は、重力操作。魔法は無効化されず、剣が引っこ抜けないようにするためゆっくりではあるが、少しずつ魔物が落ちてきていた。
「何で魔法が...ああ、そういうことね」
「魔法が無効化されるのは、あくまで皮膚表面近くだけ。少しでも離れれば、普通に魔法は使える。刺さった剣を対象に魔法を使えば、魔法拡散の影響を受けずに引っ張れるって寸法だ」
重力操作で剣を引っ張り、魔物を空から引き摺り落としていく。落とす場所は...ここだ。
「ここなら空へは戻れまい!」
土のない、金属の地面が露出している場所に魔物を落とした。ここなら、土を操作して自分を跳ね上げるなんてことをされる心配はない。
それに、これは想定外のことではあったが、魔物が地面に激突した時に、刺さっていた剣がさらに食い込み、その身体を貫いていた。下に向けて重力は向け続けている。これならもう動くことはできないだろう。
「みんな!一斉攻撃!」
「言われなくても!」
ステラが幾つもの矢を撃ち込む。クミリアは空気の拳を叩き込む。俺は刀を少し伸ばしながら振って翼を切り、ライトは聖剣に雷を宿らせて直接切りに行っている。
もうこうなったら、作戦なぞ何もない。各々できる攻撃を叩き込み、動けない相手を始末していくだけだ。
もちろん魔物も無抵抗ではない。ちょくちょく魔法を撃ってくる。けれど、ほとんどレストが盾で吸収してしまうし、レストの手が届かないところに飛んでいったものはニアが対処しているため、俺らに被害が来ることは全くなかった。二人とも攻撃手段が無くて手持ち無沙汰なのだが、きちんとサポートしてもらえてほんと助かる。
「ナーイスステラ!このままいくぞ!」
少しずつ消耗していく魔物。今さっきステラがもう片方の眼も矢で潰してくれたおかげで、さらにやりやすくなった。もうヤケになっているのか、適当に魔法撃つようになってきてるけど、ちょくちょく自爆してる。これ、もう何もしなくても倒せるんじゃ...?
「カリヤー魔力貯まったけどどうする?」
「おっ、そりゃいいみんな一旦退避ー!」
オートで針の反撃くるから、物理攻撃しにくくて攻めあぐねてたところあったんだよな。カウンターで倒せるなら、それで倒したい。
というわけで、一旦攻撃をやめて魔物のいるところから少し距離を取る。
「さて、カウンターするなら相手に強力な一撃を叩き込んで欲しいわけだけど、どうする?」
レストのカウンターは、受けた攻撃を全て跳ね返すというもの。相手に攻撃してもらえなければ、発動はできない。
「誘引で魔法をこっちに撃ってもらうか?それとも、眼を魔法で回復してやって、強力な魔法を狙って撃ってもらうか?」
「回復してから痛めつけるのなんか嫌だな...」
「なら前者にするか?」
「いや、前にカリヤがやった奴にしようよ」
「前にやった奴?...ああ、そういうことね」
「なになに?どんな奴?」
「じゃあ実演するか。自作自演のカウンターをな」
魔物に突き刺さっている剣の重力を操作して、今度は魔物を空高く持ち上げる。完全に貫いているおかげで抜ける心配がなく、かなりの速度で持ち上げることができた。そして、重力操作を解除して魔物を自由落下させる。
それとほぼ同時、レストが盾同士を接触させ、盾の力を完全解放させる。右腕の盾にくっついていた魔力結晶が全て消費され、レストからもいくらか魔力を吸い取り、盾が一気に展開される。
そこに魔物が落ちてくる。天空から落ちてきた魔物の運動エネルギーは相当なもの。魔物が展開された盾に触れたその瞬間...グチャッと潰れて吹き飛んでいく。
けれど、消滅していない。どう見ても死に体だが、どうやらまだ息をしているらしい。流石はボスといったところか...
「僕がやる」
俺が飛び出そうとしたが、それよりも前にライトが動き出していた。レストの盾が収納されていくところの横を通り抜けて前に出て、手のひらを魔物に向ける。
水と雷、それを空気で包んで撃ち出し、それに後追いするように炎を放つ。
魔物に触れる直前に、爆発が起こる。魔法が関与してはいるが、これはあくまで自然現象。魔法拡散には引っかからない。
故に、爆発によって魔物は吹き飛び、撒き散らした血潮ごと消滅していく。
「……よし!レストにライトナーイス!はいハイタッチ!」
「イエーイ」
「い、いぇーい?」
二人とハイタッチをする。
「いやー今回は男どもが大活躍だったね」
「クミリアさ、言い方どうにかなんない?それに、みんな大活躍だったでしょうが!」
ステラは魔物の両眼を潰してくれたし、空の状況を教えてくれた。クミリアはやっぱり物理攻撃の主力だし、地面に叩き落とすのに貢献したぞ。ニアは...
「私何もしてない...」
「い、いやそんなことないだろ?魔法が意味ないんだからしょうがないって」
「カリヤがやったみたいな攻撃はできたはずなのに...なぜ思い浮かばなかったのかしら...」
ああだめだショボくれモードに入っとる。こんなんなってるの初めてじゃね?どう接すればいいのかわからん。
「何もしてないってことはないでしょ。サポート助かったよ〜」
よかったクミリアがケアしに行ってくれた。ニアのサポートを一番受けていたのはクミリアだし、しっかり持ち直してくれるだろう多分。
「魔法も受け止めてくれたし、そのおかげでこっちも戦いやすかったんだから。それに、こういう時何をしなけれはならないのか考えるいい機会になったと思うよ。何事も成長するための種なんだから」
「……そうね、少し試してみたいこともあるし、次は挽回するわ」
「その調子だよニア」
うん、完璧。
「あっ、そうだカリヤー」
「ん?なんだステラどうかしたか?」
「実は指輪の力使っちゃって...」
「っ!被弾したのか⁉︎今回復魔法を...」
「ああ大丈夫!怪我はしてないから、受けたの一発だけだし。そのおかげで近づけないことがわかったんだけどね」
「なるほどそういうことか...ほんとに一回だけなんだよな?怪我してないんだよな?」
「うん。そんなに心配してくれなくてもいいのに」
「心配するよしないわけないじゃん!本当に怪我だけはしないようにね...?危なくなったらレストか俺を呼ぶんだぞ?」
「ちょっと過保護すぎるんじゃなーい?」
「前に、分断されることを考えて一人でも動けるようにしておいた方がいい、みたいなことを前にカリヤが言ってなかったっけ...?」
「う、うるさいやい!」
揶揄うんじゃないよクミリア。そして、レストは痛いところをついてくるのやめなさい。俺はトルクから頼まれてんだよステラを守れって。そりゃ魔王や魔族との戦いの中で一切傷を負わせないなんてことできるわけないけど、こんなところで約束を破るわけにはいかないんだ。
「流石に今日の探索はこれで終わりにしようとは言わないけど、今日一日は気をつけるんだぞステラ。ほんとに...いやマジで」
「流石にちょっとしつこいよっ!」
「うっ」
怒られた...
「ねぇカリヤ。私ってそんなに頼りない?危なっかしい?」
「いや、そんなことはないんだけど...」
「そんなに心配ならちゃんと守ってよ私のこと。私に傷ついてほしくないんでしょ?」
「それはもう当然守るけど...ああでもずっとそうしてるわけにもいかないし...」
「なんだ、自分でもわかってるんじゃん」
「ずっと守ってるだけじゃダメってのはわかってる...けど、今はまだ守りたい。ステラが怪我したら、多分あの景色がフラッシュバックする」
トレントにやられ、全身の至る所に火傷を負って弱ったあの姿。俺がここまでステラを心配するのは、トルクとの約束もあるが、これが原因なのかもしれない。俺の判断ミスが招いたアレを、もう一度起こさせたくないのだ。
「そっ...か...」
ステラも思い出したみたいだ。俺があの出来事を少なからず引きずっていることにも気付いたのだろう。少しだが、怒ってしまったことに対してバツが悪そうな顔をする。
「……でも、私はあの頃よりも成長した。今度は私がカリヤを助ける番なんだから。ちゃんと今の私を見て」
「今の...ステラ...」
確かに、俺の認識が九ヶ月前から変わっていない部分があったのかもしれない。人は成長する。俺がここまで成長できたように、ステラも成長したのだ。
「わかった。まだ心配なのは否定しきれないけど、ちゃんと見るよ。強くなったところ、見せてくれる?」
「うんっ!」
そう返事をしながら、ステラは小指を立ててきた。
「……?」
「指切りげんまんしよ?」
「そう...だな。約束しよう」
ステラと小指を絡ませる。
「「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます!指切った!」」
「約束だよ。破ったら本当に針飲ませるからね〜」
「怖い怖い...破んないから安心してくれ」
「……前に言ってた指を切るとか針を千本飲ませるってのはこういうことだったのね...」
ボソッとニアがつぶやいたのが聞こえた俺たちは、顔を見合わせて少し笑った。
カリヤくんステラのこと本当の妹だと思ってるんじゃないかってレベルで溺愛してる気がする。
兄に託されたとはいえ、そこまでの扱いされると怒るよなそりゃと言った感じ。
自分自身着地点がどうなるかわからないまま書いたけど、なんとかいい感じにまとまったんでヨシ!