前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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9016字。

ニアとの決闘後半です。


魔法拡散の弱点

魔力銃の銃口をニアに向ける。

 

「新技と言うくらいなのだから、さぞかし面白いんでしょうねぇ」

 

「なんで新技=面白いなのかは知らんが、まぁまずは小手調べだ」

 

両方のセーフティを解除して、オーバー○ォッチのト○ーサー的な感じで構えながら引き金を引く。

 

その瞬間、既製品のセミオートマチックからフルオートマチックと改造された魔力銃から大量の魔力弾が放たれ、ニアの身体を撃ち抜く。

 

「っ...⁉︎」

 

大量の魔力弾をモロに喰らい、少しよろめくニア。

 

「俺は小手調べと言ったはずなんだが、まさかこれでへばるってこたぁねえよな?」

 

「今の連射速度は...速度操作ね」

 

「いーや違う。改造した銃そのものの性能さ」

 

少し横に移動しながら魔力銃を撃ち続ける。魔力銃にはリコイルがないため、フルオートでも弾がブレることがなく全弾命中させることは容易だった。

 

「やっぱ魔力でもこの速度この密度で当てりゃダメージ出るもんなんだな。このまま削らせてもらうぜ」

 

中距離から魔力弾を浴びせ続ける。一応言っておくが、弾丸も改造してある。先端を尖らせて、回転して捻り込むように着弾するような形にしているため、普通の魔力弾よりも威力が出る。

 

もっとも、フルオートと魔力弾の改造のせいで、一定数撃ち込むと少しの間だが撃てなくなってしまうようになってしまったが。まぁリロードのようなものだと割り切っているし、それは加速で短縮できるからほとんど問題はない。

 

「ほらほら、魔法拡散じゃ防御出来ねぇもんなぁ?魔法でガードするか、自力で避けるかしねぇと終わるぜ?」

 

魔法拡散は魔法を魔力に分解する、というものだ。元々魔力の塊である魔力弾を、魔法拡散で無効化することはできない。そして、命中した瞬間に魔力は霧散してしまうため、ニアの魔力操作で俺の魔力を利用して攻撃するあの技も使えない。

 

俺から魔力をもらうことができない以上、障壁や魔法などを使って身を守るのは、魔力の無駄になる。それならいっそ走って逃げ回り、魔力を使わないで避け切って俺に魔力を浪費させる...そう考えたのだろう。ニアは魔法での迎撃や防御を止め、脚を動かし始める。

 

それを見て俺は、右手はそのまま撃ち続けながら左手の魔力銃のスイッチを切り替え、ニアの進行方向少し先少し奥に向けて引き金を引く。

 

「……っ、転っ⁉︎」

 

「引っかかったな。足元がお留守だぜ」

 

脚が何かに引っかかったかのような動きをしながらすっ転ぶニア。転んだニアに向けて右手の魔力銃で弾丸を撃ち込む。

 

「くっ...ワイヤーね!」

 

「正っ解!」

 

スイッチを切り替えたことで変わったのは、フルオートセミオートとかではなく、魔法の種類。このモードはワイヤーの射出。撃ち出したり巻き取ったり、うまくやればこれで立体的な移動をすることも可能だ。今までは走ったり跳んだりと、どうしても直線的な移動になってしまっていたが、これからは曲線的な移動も可能というわけだ。

 

4014ページ 黒 赤 障壁

5000ページ 黒のみ 魔法復唱

 

空中や、地面の上などの至る所に障壁を設置しておく。ワイヤーで移動するための土台だ。

 

「新技ワイヤー殺法の実験台になれ!」

 

空中に浮かんでいる障壁の一つにワイヤーを撃ち込み、立体軌道を開始する。

 

「ほらほら反撃してみなよ。どうした?速すぎて追えねぇってか?」

 

ワイヤー射出、巻き取り、加減速全てを状況に応じて使い分け、予想だにできない動きをしながらニアに魔力弾を撃ち込んでいく。

 

「それとも、魔力が足りなくてできないってかァ?一方的すぎて面白くねェぞオイ!」

 

あーテンション上がってきた。頭が冴え渡ってる。久しぶりにここまで速く動けて気持ちがいい。このままボコしてゲームセットだ!

 

「そこまで言うならこっちにだって...!」

 

「おおっと、そいつは通さねぇぜ」

 

ニアの周囲から魔法の発射点が現れたのを見て、瞬時にかつ正確に魔力弾を撃ち込む。

 

「っ⁉︎」

 

魔力弾が当たったことによりニアの魔法が暴走、制御を失ってあらぬ方向へと飛んでいく。自滅には至らなかったのは、ニアの運が良かったからとしか言いようがないな。

 

「お前が妨害にも使えるって言ったんだぜ?少しは警戒しときな」

 

反射神経、反応速度の加速と魔力弾の速度があれば、ある程度の距離からであれば大抵の魔法は発動前に潰せる。完全に霧散させるまでにはいかないが、今みたいに制御を手放させることは可能だ。

 

「さーて、そろそろ第三のモード解禁といこうか」

 

右手の魔力銃のスイッチを切り替え、第三のモードへと変更する。

 

「『雷装・銃』」

 

魔力銃に雷装を流し込んだことでできた新たなスキルを発動し、魔力銃だけに電流を纏わせる。

 

「たーっぷり味わいな」

 

引き金を引く。

 

「……何も...でない?」

 

ニアの目には、魔力銃から何も発射されてないように見えていることだろう。俺も、目では見えていない。確かにそれは撃たれたがな。

 

「いや...まさか⁉︎」

 

「はいドーン」

 

もう一度引き金を引くと、小規模な水素爆発が起こり爆風でニアが軽く吹っ飛ばされる。

 

「お手軽起爆銃だ。雷装の適性ある人にしか使えないけどな」

 

ライトのあの起爆魔法を見て、自分もあんな感じに前準備なしにコンスタントに使いたいと思って作った代物だ。雷装・銃が使えれば理論上誰にでも可能だが、そもそもそれを手に入れるには電流が流れている銃を手に取って引き金を一度でも引かないといけない。なのに普通は電流に触れた時点で指が硬直してしまうため、手に入れることすらままならないという。

 

「もう一発...いや、今度は五、六発一度にいこうか」

 

六回、ニアの周りを囲むように狙いをつけながら引き金を引く。水が電気分解されて生じた混合気体を風魔法で包んだものが射出され、一定距離を飛んだのちその場で静止する。

 

そして魔力操作でマガジン内の魔法陣を切り替える。引き金を引いた時に魔力が吸い取られるが、その流れる行き先を変更したのだ。

 

「はい、またドーン!」

 

引き金を引くと、銃口から超小型の、火花と言っても差し支えないレベルの炎が飛び出して空中で静止していた混合気体に着火、水素爆発を引き起こす。

 

気体生成と着火を別のモードにしてもよかったのだが、いちいちスイッチを切り替えるのが面倒だったので魔力操作で変更するシステムになっている。ほんの少し切り替えるだけなので、魔力はほぼ使わず一瞬で切り替えることができる。

 

魔力弾、ワイヤー、起爆銃、この三つが現在俺が持つ魔力銃の性能だ。

 

「さぁ最初の威勢はどこ行ったよ、反撃してみな」

 

なんとか走って爆風から逃れたニアを煽りながら、ワイヤーを使って移動する。今使ってるこの起爆銃も、魔法拡散の影響を受けないものとなっている。厳密には、起爆前の混合気体や着火に必要な炎は分解できてしまうが、着火後の爆発はもはや自然現象なので分解されずに済むのだ。魔力銃が意図せず魔法拡散対策と化しているな。

 

「新技出した俺を圧倒して完全勝利するんじゃなかったのかァ?...ん?」

 

今、一瞬ニアの体が、こう、なんていうか...ブレたような?

 

「ってか、どっから取り出した?その魔力銃」

 

ブレたのが直ったと思ったら、ニアの手には魔力銃が握られていた。

 

「まぁいいや。どうせニアも改造してんだろ?撃ってみろよ」

 

「そうね...撃ったらあんた負けるけど、それでいいわけ?」

 

「あ?勝てると思うなら撃ちゃあいいだろ。なんで俺に確認取る必要がある?」

 

「そう...忠告したわよ!」

 

ニアが銃口をこちらに向けながら、魔力銃の引き金を引く。

 

その瞬間、周囲の至る所から光が溢れ出した。これは...魔法陣の光?

 

「クソ、銃はブラフか!」

 

4014ページ 黒 赤 障壁

 

急いで今乗っていた障壁から跳び、今設置した障壁へとワイヤーを使って移動する。

 

ニアの魔力銃は、銃から何かを撃つものではなかった。大量の魔法陣を同時に起動するためのトリガーに過ぎなかったってわけか...いや、違う⁉︎

 

四方八方、地面や結界、挙句の果てには俺が設置していた障壁にまで描かれていた魔法陣から魔法が放たれた。そしてその発動した魔法陣の中に、俺が描いたはずのものが紛れ込んでいた。

 

「魔法陣強制発動ってわけか...!」

 

魔法図鑑の魔法陣や、俺の魔力銃の魔法陣が発動していないのを見るに、あらかじめ魔力が込められている魔法陣を強制的に発動させるものなのだろう。仕掛けていたトラップがすべて無駄撃ちさせられてしまった。

 

「クソ、面倒な...!」

 

障壁の展開とワイヤーの立体軌道を利用して、発動した全ての魔法から避けていく。俺が描いた魔法陣は障壁で受け止められるから比較的簡単に対処できる。それに対してニアが描いたものは、どいつもこいつも閃光のような貫通効果を持っているせいで避けるしかない。

 

「チィッ!」

 

7801ページ 黒 青 未来跳躍

 

流石にワイヤー軌道だけでは避けきれなかった。出来るだけギリギリまで魔法を引きつけ、転移する。

 

「よぉニア。反撃は終わりか?またまた俺のターンだ!」

 

魔法陣を使い切ったのを確認する。さぁ、もう一つのワイヤー殺法のお披露目だ。

 

1799ページ左上 黒のみ 路面凍結

 

「スケートしよーぜー!」

 

床一面を完全に凍り付かせる。凹凸なし、完っ璧な即席スケートリンクの完成だ。

 

「ちょ、お、おわわっ!」

 

「なーに勝手にすっ転んでんだ運動音痴かよ」

 

転ぶならせめて俺が攻撃し始めてからにしてくれない?まぁ気にしないでおこう。魔力銃を両方ともワイヤーモードに変更しておく。

 

「まったく...ショーはこっからだぜ?」

 

ワイヤーを壁に撃ち込み、引き戻す勢いを利用して氷の上を高速で滑る。

 

「いつまで転んでんだ。ダガー使えてたら瞬殺だぞ?」

 

なかなか立てないニアの真横を滑って通り過ぎる。その時に、今移動している方とは真反対、さっきまでいたところの方向に向けてもう一本の魔力銃でワイヤーを撃ち込んでおく。

 

「ほらほら、このまんまじゃT○REみたくミイラだぜ?」

 

左手のワイヤーを一度壁から外して巻き取り、また別の方向に向けて発射して方向転換する。右手のワイヤーはそのまま永遠と伸ばし続け、時計回りにぐるっと一回り。貼られているワイヤーをくぐってもう一回転し始める。

 

「まさか巻き付ける気⁉︎」

 

「ミイラつったろ!」

 

ニアの周りをぐるぐると回って、ワイヤーを体に巻き付けていく。氷とワイヤーの推進力のおかげで普段の最高速度を優に越しているため、あっという間に身動き取れないまでに巻きつき動きを封じる。

 

「そしてー...このワイヤーは魔法をよく通す!」

 

こいつはリサ○サのマフラーみたいに魔力や魔法をよく通す。そして、もちろん電気もだ。

 

「痺れな!『雷装』!」

 

「くっ...!」

 

魔法拡散でワイヤーを分解されて逃げられる。やっぱ普通の物質でワイヤーを作っておけばよかったか...魔法製だからこうなるのは予想ついてたから、大したダメージはない。向こうの魔力を削れたからオーケーだ。

 

「さーて、まだまだ魔力弾喰らってもらうぜ!」

 

二つとも魔力弾モードに切り替えて、氷の上を滑りながら撃ち込む。

 

「なんであんたは転ばないの...!」

 

「転ぶわけねぇだろ運動音痴!」

 

まぁ実際には、速度操作で何とかしてるだけなんだが。加速を解除すれば、速度は加速前のものに戻る。その性質を利用して、速度ほぼゼロの状態から一気に加速して走ることで、移動は素早く、停止はほぼ一瞬ですることが可能になる。カー○ィのエア○イドのルイン○スターみたいな挙動をしてるといえば伝わりやすいだろうか。あんな感じだ。

 

9930ページ 黒のみ 跳弾鏡射

 

適当に反射できる鏡をばら撒き、そこに向けて魔力弾を撃ち込む。これで狙いをつける作業も要らなくなった。一発一発の威力は低くとも、手数でゴリ押して少しずつ削っていく。

 

「ほらほら、このままじゃジリ貧ってやつだぜ?魔力銃以外に切り札はねぇのかァ?」

 

と、こんな感じで煽ってみると、ニアは無言で魔力銃をブッパしてくる。

 

「エイム悪すぎねぇか?手ェ震えてんぞ!」

 

ニアの放った魔力弾は跳弾鏡射の鏡に当たって跳ね返り、自分に当たる始末。自分の魔力だからダメージはないが、確実に無駄に魔力を消費した。運がいいな。

 

「こんな鏡...!」

 

ニアが魔法拡散で鏡を全て消去する。そして、その魔力を使い魔法を撃ち込んでくる。

 

「こんなん避けるのは造作でも...って地面狙いかよ!」

 

避けた魔法が地面に当たり、氷を一瞬で溶かし尽くしてしまう。

 

「煽りはもう聞き飽きたわ。終わりにしましょうか」

 

ニアが魔力銃の引き金を引く。辺り一帯が、魔法陣から放たれる光で埋め尽くされる。なかなか立ち上がらないと思ったら、氷がある段階で既に描き込んでいたのか...でも!

 

「その魔法を待っていた!」

 

地面を蹴り、空中に躍り出る。魔法の飛んでくる方向を、下からの一方向に限定させる。

 

「さぁ来い!...次元収納!」

 

9902、9903ページ 次元収納

 

「な、何ですって⁉︎」

 

空間に穴を開け、そこにニアの魔法を収納する。

 

「できるってのは実験済みなんでなァ!その魔法、利用させてもらうぜ!」

 

閃光のような、障壁貫通効果持ちを二、三個、普通の魔法も同じ量を収納し、保存する。

 

「ニア!その魔法拡散には大きな抜け穴が三つある!」

 

着地後、飛んでくる魔法を走って避けながら叫ぶ。

 

「一つは魔力弾を防げないこと!もう一つは自然現象、二次災害は防げないこと!」

 

ここで方向転換、ニアに向かって走る。

 

「最後の一つ!テメェ自身の魔法は防げない!!」

 

9902、9903ページ 次元収納

 

次元の穴を開き、そこからニアの閃光を撃ち出す。

 

魔法拡散は、自分自身の魔法を魔力に分解することはできない。そして、閃光であるが故に障壁で防ぐこともできない。自力で身を捩るなどして避けるしかない。

 

けれど、速度操作で初速が加速されている閃光を今から避けることは無理だ。ニアにはとてもできない。軌道変更が間に合うかどうかだが...間に合わない。

 

閃光がニアに命中し...は?

 

「すり抜けたなんで⁉︎」

 

くそ、よくわからん。もしやあれは本物のニアじゃないのか?いつのまにか幻覚に惑わされている?閃光がすり抜けて驚いているのはニアもなのは表情からわかるけど、それすらも幻覚...?

 

「……近づけばわかる!」

 

幻覚かどうか確かめるなら近づくのみ。速度探知で見破ってみせよう。

 

「本物...!」

 

それはそれでよくわからんがもう気にせず攻撃するしかない。閃光がダメなら、ニアの普通の魔法を使うしか...

 

「ってクソっ!」

 

7801ページ 黒 青 未来跳躍

 

避けられないくらいの密度で魔法が迫ってきていた。未来跳躍で回避を...ハァ⁉︎

 

さて、何が起こっているのか説明しよう。

 

未来跳躍はちゃんと発動し、転移は成功した。速度探知で安全が確認できている場所に飛んだから、絶対安全だったはずなんだ。

 

まぁ、注意不足と言えばそれまでなんだが...俺は魔法を避けるために、0.1秒で五メートル移動した。発動したその瞬間に探知していた範囲のギリギリ端の位置に転移したのだ。

 

探知範囲外からも魔法が来ていることを知らずに、だ。

 

転移した瞬間、目の前に魔法があった。

 

そんな時、人は何を考える?

 

走馬灯が浮かぶ人がいるかもしれない。そもそもそんな思考をする前に撃ち抜かれるかもしれない。

 

俺は足掻いた。まだ負けられない。思考を最大限加速させ、対処法を思案する。

 

障壁は無理。間に合わないし貫通される。

 

未来跳躍は間に合わない。さっきの発動でのクールタイムの0.1秒と、そこから再度魔法を発動して、実際に転移開始するまでのタイムラグの0.1秒。この0.2秒というわずかな時間すらもない。

 

左手の盾を動かして逸らす暇もない。

 

こうなると...魔力で受け切るしかない!

 

「っっっ...!」

 

右腕皮膚表面に魔力を集中、超高密度で魔力を織り込み、即席の壁を作り出す。魔法、魔力貫通効果を持つ閃光でも、超高密度で編み上げられたことにより物質化した魔力の壁は通り抜けられない。

 

「ぅ、ぐ...っ、あ゛ア゛!!」

 

魔法の相殺、それと同時に、耐えきれなくなった俺の右腕が吹き飛ぶ。幻覚の痛み、血飛沫ではない。リアルな感覚がぐちゃぐちゃの断面から伝わってくる。速度探知が、漏れ出る血液全てを検知し、その現実を脳に叩き込んでくる。

 

「終わりじゃ...ない!!」

 

出血多量、それに伴って魔力も大量に漏出する。ガードのために右腕に殆どの魔力を注ぎ込んでいたため、右腕と共にその魔力も持っていかれたのだ。

 

「最後の...攻撃だ!」

 

もう魔力はほぼ残っていない。次元収納一回発動させるのがギリギリってところだ。もうこれに賭けるしかない。

 

「自分の魔法で...」

 

9902、9903ページ 次元収納

 

次元収納を開く。ニアの魔法が飛び出す。閃光ではないから、障壁一発で防がれてしまう儚い攻撃。

 

周囲から魔法が飛んでくる。どうやら、身を守るよりも攻撃を優先したようだ。ニアが避けるそぶりはない。

 

勝った。この距離この速度なら、ニアの魔法が俺に当たるよりも前に、こっちの攻撃が当たる。先に致命傷を与えてしまえば、発動中の魔法は全て解除され俺に攻撃が当たることはない。

 

最後の懸念点は、さっきの閃光で起こった謎のすり抜けだが...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……勝った」

 

ニアの土手っ腹と胸に魔法が突き刺さり、そのまま貫いたのをハッキリとこの目で捉えた。

 

ニアがゆっくりと倒れ込むのを、加速した反射神経と思考速度で見届ける。

 

そして俺は、倒れていくニアの、まるで勝ったと言わんばかりに口角の上がった笑顔を見た。

 

それをみて俺は気づく。完璧に致命傷を与えたはずなのに、周囲から迫ってくる魔法はいまだに消えていない。

 

まさか、ギリギリ致命傷を免れていた?即死していなかった?そのせいで魔法が消えるのが遅れている?

 

まずいまずいまずい。この魔法を喰らえば、どう考えても俺が先に死ぬ。勝負は俺の負けになる。どうか、この魔法を喰らうよりも前に、ニアが死んでくれますように...

 

そう願った俺の目には、さっきまでの傷がまるで夢か何かだったかのように消え去って無傷のニアの姿が映った。

 

私の勝ちよ

 

ニアがそう呟いたのを口の動きで認識した。

 

その瞬間、魔力が尽き、加速が解除されて思考速度が常人レベルにまで低下。

 

何かを考える暇もなく、俺は無数の魔法にすり潰された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さんっざんイキっといて負けんの恥ずかしっ...!」

 

手で顔を覆いながら悶々とする。

 

「恥ずかしっ!」

 

「そんなに落ち込まないのー」

 

「うぅ...ありがとステラ」

 

俺、復活...復活したのか?

 

「ってか最後のあれなんだったんだよ。確実に撃ち抜いたはずなんだが?何であっこから無傷の状態に戻ってるわけ?」

 

みんなも見てたよなぁ?と聞いてみる。

 

「正直速いし魔法いっぱい飛んでるしで終始何やってるのかわからなかったよ」

 

「「わかんないでもすごい!」」

 

あれ、フレアとミレアってこんなポンコツさんだったっけ?ニアがいるから賢さ落ちてない大丈夫?

 

「で、実際なんだったんだ?新魔法?」

 

「魔法じゃないわ。まぁやってることは魔法に近いけれど、魔力操作の類いね」

 

「魔力操作じゃ怪我の回復はできんだろ」

 

「そういうことじゃないわ。魔力の身体を作っていたのよ」

 

「魔力の身体?...あー、そういうこと」

 

あれだ、ワー○リのトリ○ン体に換装してるみたいなそんな感じだ。魔力を使って身体を作り、元の体は別次元に格納してるとかそんなんだろ。

 

ってか、めっちゃ偶然なんだけどネタ被りしたわ。ワイヤー銃は木○藍のスパイダーを参考にしたものだし。他にも、動きを止める鉛○を再現しようとしたり、メテ○ラみたいな炸裂するやつも再現したりしようとしたけど結局やめたりしてる。まぁニアがワー○リ知ってるわけないし、本当に偶然被っただけなんだよな。

 

「……あそっか、だから魔力銃取り出した時に一瞬体がブレてたのか」

 

元の体から魔力銃を取り出したから、換装が一瞬溶けたのだろう。今思うと、めっちゃ怪しかったよなアレ。何かしらあると疑ってもよかったけど...速度探知にちゃんと反応してたから本物だと思い込んでしまった。

 

「閃光がすり抜けたのも魔力の体だったからでしょうね。あれには私も驚かされたけど」

 

「自分でもびっくりした顔してたもんな」

 

「まさかそんな効果があるとは思ってなかったわ。被弾しても問題ない装甲くらいにしか思ってなかったから。気づけてよかったわ」

 

「こっちもさっきのでこいつの改善点見つかったから、戦えてよかったと思ったわ。またやろうぜ」

 

「受けて立つわ」

 

「受けて立つって、なんでニアがチャンピオン側なんだよ」

 

「勝ったんだから当然じゃない?」

 

「俺に不利な条件つけといて何言ってんだか...まぁいい、次は勝ちをもらうぞ」

 

「今度も私の勝利よ」

 

しばらく睨みつけ合う。

 

「……んで、その魔力の体はどうやって作るんだ?」

 

「じゃあそっちは魔力銃について教えなさい」

 

「そりゃもちろん」

 

戦った後は、情報交換。互いを高め合うため、得た力は全て開示する。

 

「……ねぇ、話してるところ悪いんだけど、ちょっといい?」

 

「なんだ?ステラ」

 

「二人とも魔力切れしてる...よね?」

 

「そうだな」

 

ニアも、魔力の体が弾けた時に全て持ってかれて枯渇してしまったみたいだ。体を作るのにまず多くの魔力を使っていて、残る魔力も攻撃に使ってほぼゼロだった時だったからしょうがない。

 

既に魔法を撃っていて、それで決着がついたからよかったものの、もし俺が何らかの方法であの場面から生存していたら、両者魔法が使えなくて膠着状態になってたんだよな。

 

「どうやってカイスに帰るの?」

 

「「あっ...」」

 

俺もニアも、魔力切れのせいで魔法が使えない。今から馬車を取って乗るのも難しいだろう。そして自然回復を待っていたら、おそらくもう次の日になってしまう。

 

「ヤッベェ今日使い切ったんだった回復できん...!」

 

頼みの綱のポーションも、二人とも次元収納にインしてる。俺は二、三個はポーチに常に入れるようにしているのだが、今日試練の穴で使ってしまっていた。

 

「収納に突っ込んでるから財布もないし...えっ、野宿確定?」

 

こんなことならお金も少しは携帯しておくべきだった...ん?

 

「これなーんだ?」

 

「「す、ステラ様ぁ...!」」

 

神様仏様ステラ様、ちゃんとお金を持ち歩いていたステラのお陰でポーションを買うことができ、その魔力で俺たちは帰ることができたとさ。




頭の中だとめっちゃアクロバティックな動きしてるのに、それを文字に起こせないの辛い...ニアの魔法を避ける時、大体が板野サーカスみたいになってるってことだけ伝われば問題ないですね。
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