前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8512字。

四十七階層ですが、そっちは早めに終わります。


静かに罠を超え、高速を討つ

第四十七階層

 

「うん、やっぱ速度探知やべーわ」

 

「今に始まったことじゃないでしょ」

 

「まぁそうなんだけどさ...やっぱトラップって場所わかっちゃうともう何の意味もないんだなって」

 

四十七階層はトラップだらけの迷路みたいなものだったが、速度探知で位置がわかってしまうタイプのものだったため、恐ろしく早く探索することができていた。

 

「念には念を入れて魔力で探知もしてるけどさ、ノーミスだよ?ダメでしょこれ」

 

中には特定のトラップが起動してないと先に進めない、みたいなのもあったが、どれとどれが連動しているのかとかも分かってしまうから被弾なく進めるし、ほんと製作者泣かせだな。

 

「ってなわけでボス部屋ついたけど、ここのボスってどんな感じなんだ?記憶だとどうなってる?」

 

「ボス自体はめっちゃ弱いらしいよ。一撃加えただけで死ぬみたいだし」

 

「ってことはなんだ?ギミック系か?」

 

「そうだよ。正確には部屋にギミックがある感じらしいけど」

 

ライトの説明によると、通った瞬間に最初の位置に戻されるような罠が部屋の至る所にあって、それを避けながら進むらしい。しかも、魔法拡散が張られているらしく魔法は使えない。魔力操作で探知しろってことなんだろうが...速度操作があるし簡単だろう。

 

「よーし突入だ」

 

扉を開けてボス部屋の中に入る。

 

「うっわ。これ地面だけじゃないんだな...」

 

空中にもあるんだな、強制最初からやり直しゾーン。

 

「……空中にあるのってどうやって対処すればいいんだ?魔力って普通は空中に流せないはずだろ」

 

「その常識を変えたカリヤが言う?」

 

「だからこそよ。今までその常識が残ってたってことは、前の勇者たちの代でもそうだったってことだろ?つまり、空中に魔力を流さなくても問題ない別の方法があるはずなんだよ」

 

「そっか、空気に魔力を流さない、別の方法で何とかしてたはずだもんね」

 

「まぁ普通にトライアルアンドエラーで無理矢理突破したのかもしんないけど。ゾーンが動いてるわけでもないから出来ないわけじゃないし...そこんところどうなんだ?」

 

「……あっ」

 

「ん?どした?」

 

「なんか、代によってこの部屋のトラップの数が変わってるみたい。ここに来るまでの時間で変わるのかな...?」

 

「ああ、爆速で突破したから罠の数増えてるってことか...サクサク突破したの裏目に出たな」

 

「でも、聖域展開で罠の位置がわかるみたいだから、それでなんとかしてたみたいだね」

 

「なるほど...ってか、聖域展開って魔法拡散の中でも使えるの?」

 

「今のところはそう。シレンの穴を突破していくうちに、他の魔法も普通に使えるようになるみたい」

 

「デバフ無効の一環なのか...?まぁ今はあんまり関係ないか。さっさと突破するか」

 

まず、ゴールの方を見てみる。

 

「あいつを倒せば終わりなんだよな?」

 

ちっこいモフモフみたいなのが向こう側の扉の前にいた。アンゴラウサギみたいだな。

 

「……こいつで撃ち抜けたりしないかな?」

 

魔力銃を取り出して引き金を引く。

 

「チッ、届かないか」

 

秒間五十発の魔力弾が飛び出すが、一部魔法が無効化されてしまい、本来の射程から大きく減衰してしまっていた。そのため、ボスまで半分も行かないところで消えてしまった。

 

「近づくしかないかぁ...どうする?みんなで行く?それとも俺だけで行く?」

 

「誰か一人行けばいいんだから、カリヤ行きなさい」

 

「おけ」

 

一人で、速度探知でトラップの位置を確かめながら進む。通れる隙間はかなり狭いが、攻略できないと試練として成り立たないため、一応通れなくはないって言える程度の隙間だ。

 

自分の体とトラップまでの距離を掴めるので、当たる気配は微塵もなし。見上げていて、しかも動かないトラップに当たる奴なんていない。さながら、遠○邸に忍び込むときのアサシンのように、サクサクーっと進んでいく。

 

「……行き止まりだけ気をつけないとな」

 

ちょくちょく分かれ道のような感じになっており、不正解の道は最終的に来た道以外全てトラップなゾーンに行き着くことになる。大体は通りにくい方の道が正解なため、迷うことはほとんどなかったが。

 

「一回こっから撃ってみるか。当たるかも...」

 

大体半分くらいの位置までやってきた。もしかしたら当たるかもしれないので撃ってみる...

 

「やっぱ当たんないかぁ...でももうちょいなんだよな」

 

もう少し近づければ当たりそうだ。けど、探知で得た情報的に、こっから一旦後ろに戻って大回りする必要ありそうなんだよな。それはなかなかに面倒なんだよな...

 

「んー...あっちから近づいてもらうか」

 

地面に手を触れ、手のひらから魔力を流し込む。標的は五メートルよりも余裕で遠いけど、魔力の感覚を頼りにすればきっと当てられるはずだ。

 

魔力の移動速度を一律にし、何秒流したかで距離を測る。あと...3、2、1、よしここ。その魔力の密度を高めて、ボスの後ろ足あたりを狙って...突き上げる!

 

「よし!」

 

地面から飛び出した魔力の塊がボスの足を突き上げ、前へと転倒させる。これで射程圏内。今すぐぶっ放せば...あれ?

 

「ボスどこ?消えた?」

 

「えっ、うわっ!」

 

ステラの声?

 

「え、えい!」

 

パフンッ、ポンッ!

 

後ろに振り向くと、なんか拳を突き出してるステラと、その拳のあたりから白いモヤ的なのが浮かんでるのが見えた。

 

「……ボスも転移される系?」

 

おそらくだが、前に転がされたことによってボスが強制転移トラップに接触し、ステラたちのいた所へと転移、ビックリしたステラが思わず小突いたことで、死に至ったのだろう。あれで死ぬって、ホントにボス自体は弱かったな...

 

「あっ、トラップ消えた」

 

まさかの決着だったが、トラップが消えた以上ちゃんと終わったってことだよな。よかったよかった...転移の原理がよくわかんなくなったけど。

 

生物のゼロ時間転移は普通はできないはずなんだ。魔族のアレは例外だとしても、人間には不可能だ。だから、このトラップは厳密には転移ではなく、時間操作や過去改変系なんだと思っていた。シレンの穴を飛び降りた時のあの現象と同じものだと思っていたわけだ。

 

けど、それだと魔物がステラたちの方に転移した理由が説明できない。謎が深まってしまった...

 

「……まぁいいや。さっさと行こーぜー」

 

「そうね、ご苦労様カリヤ」

 

「見た?見た?俺の魔力操作凄くね?」

 

「はいはいすごいすごい」

 

「おざなりだなぁ...」

 

呆気なくて終わった感があまりないが、今日の探索はこれで終わりだ。さっさと出口に向かう。

 

「この感じだと明日には半分超えそうだな。気合い入れないと」

 

横穴から出て、シレンの穴の坂を上へと登る。

 

「そうね、そのためにも、今日は目一杯休みましょ」

 

「だねー」

 

「……そういえば気になってたんだけど、なんでいちいち上に登る必要があるの?ここからでも次元移動なら出れるんじゃない?」

 

「いやーそれが無理なんすよクミリアさん...正規の方法で外に出ないと、地に足をつけた途端に元いた場所に戻されるんだよ」

 

「へー。となると、出口で待ち伏せされてたら回避できないんだね」

 

「おいあんまそういうことを言うんじゃない」

 

「どうするー?魔族が待ち伏せしてたら」

 

「本当にやめてくれ怖い」

 

「こう言った心配は普段ならカリヤがすることでしょうに...でも実際、今までなかっただけであり得ないわけじゃないから、少しは警戒しておいた方がいいのかもしれないわね」

 

「ニアも言いますか...やだなー来てたらやだなー、疲れてる状態で来られるのが一番嫌ですわ」

 

「カリヤ的には、誰に一番来て欲しくないの?」

 

「転移と魔素使う姉妹の魔族かな。毎回毎回透明になったまま攻撃してくるから面倒で仕方ないんだよな。次点でフロート。一見一般人と見分けつかないのがもう厄介だし、魔法のレパートリーがどんだけあるのかわかんないから戦いづらい」

 

「アクセルはどうなの?一度負けたわけだけど」

 

「負けたってか相打ちっていうか...まぁアクセルも十分やばい。けど、死ぬ危険がないから安心できる」

 

姉妹も俺を殺そうとはしないだろうけど、アクセルはちゃんと死なない程度に攻撃してくれるはずだ。そういう意味では楽ではある。まぁ、戦闘になるかは怪しいけれど。

 

「……あーよかった誰もいない」

 

シレンの穴から出るが、周りを見渡しても人はいない。透明化されてたらアレだが、待ち伏せはとりあえず無さそう...かな。

 

「よかったよかった。よし、さっさと帰ろうぜ。なんか雨降ってるし」

 

シレンの穴の中には雨入ってこないんだな。というか、穴の真上には雲一つない。そういう結界かな?

 

「そうね...っ!」

 

「ん?...うわぁ...」

 

()()を見た俺は先頭に立ち、出てくるものに最大限の警戒を行う。

 

「久しぶりに見るぜ転移現象...!」

 

空間の歪みが発生している。でも何でわざわざこんなことを?魔素を扱える魔族がこの周囲の魔素の濃度を跳ね上げさせれば、すぐにでも転移が完了するというのに何故それをしない?何か理由があるのか、それとも転移の魔族の独断なのか...考えるのは後だな。さて、歪みはそこまで大きくない。一体何が出てくる...?

 

「……あー、マジかよ」

 

転移してきたそれを見た俺は、一旦緊張を解く。その代わりに、後ろにいたクミリアの緊張が高まったが。

 

「やっほ、カリヤ。久しぶり」

 

「メロンパン入れみたいな登場しやがって...アクセル、何のようだ」

 

目の前にいる、アクセルに向かって話しかける。まだ戦闘しようという意志は感じない。しばらくは会話を許してくれそうだ。

 

「久しぶりにカリヤと戦いたくなってね。付き合ってよ」

 

「試練いくつか攻略してきた後で疲れてんだ。後日ってわけにはいかない...よね?断ったらどうなるよ」

 

「そうしたら誰もいない場所に転移で連れて行ってもらうことになるかな。そーれーにー...次会ったら戦うと、カリヤも言ったはずだけど」

 

「そういやそっか...じゃあ戦ってやる。瞬殺されても文句言うなよ」

 

俺が瞬殺されても知らねーぞほんと。味気ないとか言われたら俺は泣く。

 

「あと言っとくけど、俺だけと戦え。周りを巻き込むんじゃねーぞ」

 

「わかってるさ。まぁ、まとめてかかってくるのでも別にいいんだけど」

 

「それと、転移の奴らに襲わせるのもダメだ。あくまで俺とサシの勝負。このタイミングでの戦闘行為はこれだけにしてもらいたい」

 

普通なら、この場での、なんて表現をするところだけど、そうしたら転移されて別の場所で戦闘しますってことになりかねない。揚げ足取りされないように言葉を選ぶ。

 

「いいよ。そういうことだから、君たちも手を出さないで私たちの戦いをその場で見ておいてくれ」

 

「ってなわけで、何もせずその場で待機しておいてくれ。念のため、他の魔族が攻撃してこないか警戒しながらで頼む」

 

「わかったわ。バフはいるかしら」

 

「いらない。俺一人の力でやる」

 

みんなを下がらせて、アクセルと共に少し広い場所へと歩く。

 

「……雨の中戦うの嫌なんだけどなぁ...」

 

「どうしてだ?」

 

「速度た...あっぶね言うところだった。言うわけないだろんなもん」

 

ナチュラルに自分の弱点言おうとしたよ今。流石に気が緩みすぎだな。集中しないと...

 

「そりゃそうだな...この辺でいいだろう。始めようか」

 

「オーケーやろうか」

 

アクセルと少し離れて向かい合う。

 

1799ページ左上 黒のみ 路面凍結

 

「っ⁉︎」

 

アクセルが走り出す寸前に周囲の地面を凍結、思っきし滑ったアクセルが俺の横を通っていく。

 

「速度で負けてんだから足潰すのは当然だよなァ?」

 

魔力銃を抜き、滑っていくアクセルに向けて引き金を引く。

 

「それが最近噂の魔力銃か!」

 

大量に魔力弾を浴びながら、自らの爪と指を凍った地面に突き刺し、無理矢理静止するアクセル。動きの止まったところにさらに魔力弾を撃ち込み、ほんの少しずつだがダメージを与えていく。弾速が速いから、ちゃんと動きを読んで少し偏差撃ちすれば簡単に当てることができる。これなら速度に追いつける。

 

「問題はないな...まずはこの氷を砕く!」

 

指を地面から引っこ抜き、勢いよく跳び上がる。蹴りで丸ごと氷を打ち砕くつもりだな。

 

「着地狩りィ!」

 

4571ページ 黒のみ 触手・水

 

背中から水の触手を出し、地面に対して飛び蹴りを仕掛けているアクセルを迎え撃つ。

 

「よし!掴ん...っ!」

 

『雷装』

 

触手でアクセルの脚を掴むことに成功したのだが、嫌な予感がしたので急いで雷装を発動させる。それと同時に、触手を通して超高電圧の電流がこちらに流れ込んでくる。

 

「クソ、何つー力だこいつ...!」

 

こちらも雷装を使っていなかったら、即座に感電して気絶していただろう。その威力を裏付けるように、アクセルの足付近の触手はすぐさま電気分解されて拘束から逃れる。そして着地と同時に、地面の氷も分解しつくしてしまった。

 

前々から予想していたことではあったが、やはりアクセルの雷装は俺のものよりも遥かに威力が高い。ライトの扱う雷装や、天の怒りの力と比べると流石に劣ってしまうが、電圧電流共に高い。そうなった原因はいろいろ考えられるが、今はどうでもいい。

 

重要なのは、雷装の純粋な力勝負では俺に分はないということ。そして、速度でも負ける。周囲の魔素濃度がそこまでなため本調子ではないんだろうが、それでも以前戦った時よりも速い。全力疾走と雷装を使っても、後手に回るのが限界だろう。

 

9934、9935ページ 全力疾走

 

ひとまず、すぐに全力疾走を発動させてアクセルの動きに対応できるようにしておく。

 

「君からもらったこの力、結構頑張って練習したんだ。その成果を見せてやろう」

 

「そうかそうですか興味ねェなァ!」

 

魔力銃を撃ちまくり、超高速で動くアクセルを撃ち抜いていく。この速度でも、動きを読みさえすれば当てることができる...が、問題は回避だ。

 

「くっ...!」

 

速さの差がありすぎて、能力範囲にアクセルが入った瞬間に回避行動を取らなければ問答無用で攻撃を受けてしまう。そして読みを外しても喰らってしまう。俺の攻撃を受ける魔物の気持ちがわかるような気がするな。クソゲーだわ。

 

「そんなんじゃダメージにはならない!ちゃんとした武器を取りなカリヤ!」

 

そんなことを言うアクセルを無視して、俺は魔力銃を撃ちながら回避に専念する。障壁を出したり、未来跳躍をしたり、拘束で足を止めたりと使える手を全て使って避けていく。

 

「そっちが攻撃しないなら、永遠と戦うことになるぞ!」

 

「永遠だァ?変なこと言うなァお前」

 

攻撃を上手く捌きながら言う。

 

「お前のスタミナ切れが先だ」

 

「何を言って...なるほど、そういうことか」

 

本来は、スタミナ減少速度なんて操作できない。普通の動きだと微々たるものすぎて、探知すら難しい。けれど、雷装発動中ならば違う。雷装によってスタミナ減少が著しい時ならば、その速度をさらに加速させることができる。以前、レストやワンナに対してやったことだ。

 

こうやってずっと避け続けていたのはアクセルのスタミナを削るため。加速に集中するために、攻撃をせず、付かず離れずの距離を保ち続けていたのだ。

 

「ほらもうちょっと動きが鈍りつつあるんじゃねェかァ?」

 

もちろん、俺も全力疾走のせいで相当スタミナが削れていく。けれど、必要最小限の動きで避けているおかげか思っていたよりかは減っていない。これならこの後の展開にスタミナを残したまま移行できるだろう。

 

「それと...アクセルお前、雷装の扱いが雑だな。穴だらけだ」

 

空いている左手の人差し指に雷装を集中させ、魔力弾を撃つ時のような要領で射出する。電流は降っている雨を経由してアクセルの胸付近に命中する。

 

「んくっ⁉︎」

 

電流を喰らい、少しのけぞるアクセル。本来ならば雷装を使っていれば電気に耐性かつくのだが、どうやらアクセルは攻撃に全振りしているご様子。そもそも使えるようになってから日が浅いから扱いが雑だ。きちんと制御ができていなくて、降ってきている雨に漏電しまくっている。この点だけで見ると、雨降っていてよかったと思えるな...

 

とまぁ、以上の二つによって、身体の一部分だけだが雷装が通っていない箇所があった。そのおかげで本来なら意味のない雷装での攻撃が役に立っている。

 

威力で負ける?それなら、技量で勝負するのみ。一年という経験のアドバンテージと、雷や電気そのものの知識を有していることでのアドバンテージをフルに使い、アクセルを傷つけていく。

 

「反撃開始だぜ」

 

魔力銃をしまい、ダガーを持って雷装を流し込む。そして...

 

神様、楔を打つ。いつものだ。

 

『了解じゃ』

 

ドスッ、と心臓に痛みを感じる。が、それは一瞬。すぐに全身に力がみなぎってくる。

 

「な、速い⁉︎」

 

「追いついたぜアクセルさんよォ...ここで決め切る!」

 

戦闘に使わないほとんどの魔法の一時使用禁止という楔を打ったことによる速度操作能力の強化。範囲が広がったことにより脳の負担は増したが、さらなる加速によって今のアクセルの速度にやっと追いつくことができた。

 

使い慣れたダガーを使い、アクセルに攻撃する。ここで減速も活用し、速度の差を作り出す。既に速度は同等、今から能力範囲外に出ることは叶わない。永遠と減速し続け、一方的に攻撃するのみだ。

 

「っ...!」

 

雷装の通っていない箇所は速度探知で認識できる。そこを狙ってダガーを振り、ダメージを刻んでいく。

 

「ははっ!私より速い奴なんて見たことがない!やっぱり君は凄いよカリヤ!」

 

「それが遺言ってことでいいんだよなァ!」

 

「そんなわけがあるか」

 

アクセルは地面を蹴り、上へと避難する。が、無駄だ。俺もついていくだけ。それに、一度跳べば軌道は変えられない。逆に攻撃のチャンスでもある。

 

「トドメ...!」

 

「そうはいかないよ」

 

「ああ゛くそ忘れてた!」

 

アクセルは空中で真横に跳んだ。前にも見せていた、原理不明の空中ジャンプ。おそらく魔道具の力だろうと踏んではいたのだが、その存在をよりにもよってこの瞬間に忘れてしまっていた。アクセルに能力範囲外に出ることを許してしまう。

 

「逃すか...絶対!最終手段だ!」

 

9931ページ 略奪

 

アクセルに対してワンナの略奪を発動させる。アクセルの固有能力は肉体そのものの強化。似たような魔法は俺も使ったことがあるものの、アクセルの能力そのものを使った経験はないため、略奪はきちんと発動する。

 

「う゛ぅっ...この...痛みは...!」

 

魂に刻まれた固有能力を盗むことはできない。けれど、痛みで動きを封じることはできる。

 

「トドメ...!」

 

全速力で、動きの止まったアクセルに近づきダガーを振って...!

 

「……くそ、ここでかよ...!」

 

あと一歩。あと一歩のところで、魔力が切れてしまう。シレンの穴での消耗に加えて、魔力銃や雷装、全力疾走での消費。そしてダメ押しの略奪。あの場でアクセルの動きを止めるには略奪しかなかったが、そのせいでまだまだ余裕があった魔力をほとんど使い尽くしてしまった。

 

魔力が切れたことで、全力疾走も速度操作も雷装も、アクセルを足止めしていた略奪も全て解除されてしまった。

 

「痛みの...お返しだ」

 

アクセルが動き出す。速度操作を使ってるわけでもないというのに、その動きはスローモーションのように鮮明に見えた。

 

()()が虚空から突如現れるのも、全て見えていた。

 

「っ!」

 

持っていたダガーをアクセルに向けて投げる。最も容易く避けられてしまったが、それによって生まれたわずかな時間を使い、目の前にある()()を掴み取る。

 

「ぐふっ⁉︎」

 

と同時に、超高速の蹴りを腹に喰らう。

 

一瞬の痛みと共に凄い勢いで吹っ飛ばされ、地面で何度もバウンドしてしまう。

 

「く、そ...痛ぇじゃねぇか...!」

 

「決着...だな。またいつか戦おうカリヤ。次は互いに本調子、全力で戦おうじゃないか」

 

「おいコラ待ちやがれ!...逃げられたか」

 

急いで立ち上がり追いかけようとしたが、その時には既に転移によって逃げられてしまった。

 

「…はぁ、負けたかぁ...」

 

立つのをやめて地面に転がり、手に持っていたものを見る。

 

「指輪...ステラとニアの仕業かな」

 

おそらく、俺の魔力が切れた瞬間に、ステラが持っていた指輪をニアに渡し、物質転移で俺のもとまで届けてくれたのだろう。この、過去改変によって自動的に防御してくれる絶対防御の指輪をだ。

 

「さては、いつでも守れるように準備してやがったなぁ...?」

 

やばいと思った瞬間に飛ばせるようにしていたのだろう。そうでもなきゃ間に合わないタイミングだった。

 

「手を出すなって言ったんだがな...ははっ、後で感謝しねーと」

 

指輪をギュッと握り込み、起き上がる。

 

ステラの魔力と、ニアの魔法に助けられた。あの攻撃をまともに喰らっても別に死ななかっただろうが、それでも守ってくれたことには感謝だ。

 

「ダガー回収してみんなのところに戻るか...っとと」

 

立ち上がれなかった。この脱力感は...一時的に刺した楔の副作用だな。魂が疲労してるわ...

 

「眠...

 

半ば気絶するような形で、俺は眠りについたのだった。




4000字ちょいで無理矢理アクセル戦をぶち込んだ結果、またしても勝ちかけてしまうという...アクセルさん手を抜かないで負けないで。
……なんでアクセル戦をこのタイミングで入れたかって?
シレンの穴のネタが切れ気味だからさ!
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