前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8707字。

ついに五十階層、やっと半分ですね。


ゼロから形成されし雷雲

「ついに半分か...意外と長かったな」

 

第五十階層の横穴前で会話する。

 

「カリヤがいるから、歴代の勇者たちよりも早いんだけどね」

 

「まぁ脱法攻略しまくったもんな。そりゃそうなるわ」

 

ギミック系の階層は、速度操作のおかげでその大体を無視して突き進んだ。ブレ○イやティ○キンの祠を、非正規ルートで攻略するみたいな...いや、あれは全部想定されてるようなもんだからちょっと違うか。速度操作は完っ璧に想定外だろうし。

 

「魔力スタミナ共に回復が早いってのも要因だろうねー」

 

「今に始まったことではないけれど、カリヤ的には速度操作に頼りすぎだから心配だったりするのかしら?」

 

「まぁな。よくわかってんじゃんニア」

 

「どう?今回はカリヤ抜きでやるってのは」

 

「……俺はまぁ良いけど、それで大丈夫か?魔法しか効かないんだぞ?」

 

この階層のボスは、魔法耐性のあった二十五階層のボスとは反対に、物理耐性を持っている。魔法しか効かない敵なのだ。耐性といっても、物理攻撃に対して磁石のように反発し、避けられてしまうと言った感じなのだが。

 

というわけで、魔法を使えないステラは戦いに関与できない。物理一辺倒のクミリアも、少しは魔法を使えるもののほとんど戦えないだろう。

 

戦えるのは、魔法使いのニア、スートの魔法を受け継いでおり雷も使えるライト、俺、あとはギリギリレストってところだ。

 

「魔法攻撃しかできないなら、俺も戦った方がいいと思うんだが」

 

「カリヤは今回囮になってもらうわ」

 

「マジ?あー...スライムだからか?」

 

「そうよ。あんたが持ってるって噂の小瓶があれば、囮に使えるはずよ」

 

「どこで噂になってんだよ...」

 

今回戦う相手はスライムだ。しかも、戦う場所が場所だけに、かなり面倒になりそうなんだよな。

 

「というわけで、作戦は頭に入ってるわね?」

 

「ああ。ニアが使う切り札ってのがなんなのかわかってない以外はな」

 

なにやらニアさん、新技を使ってくるらしい。さてさて、いったいどんな魔法なのやら。

 

「使うって時になったら言うから、その時は全員離れてね」

 

「りょーかい」

 

結局教えてくれないわけだが。ちょっと怖いから先に教えてほしい。

 

「んじゃ、開けるぞ」

 

俺が扉を開ける。

 

その先に足の踏み場はなかった。なお、文字通りの意味である。

 

扉の先は空中であり、地面がないのだ。横を見れば雲一つない青い空。そして下を見ればこれまた青。広い広い水溜まり。

 

「情報通り、果てのない湖ね」

 

扉から下を覗くニアが呟いたのが聞こえる...が、どう考えても海だよなこれ。うん、この世界には海がないからそうやって表現するしかないんだろうな。

 

「足場はなし...か。んじゃ、いくぞ」

 

地面を蹴り、全員で扉の先へ飛び込む。

 

ニアは飛行魔法で空を飛び、落ちるクミリアは魔道具で空を飛ぶステラが回収、ライトはいつのまにか追加されていた聖剣の効果で水面に立つ。どこぞの英雄王かな?そしてレストは、水の魔法の応用でライトのように水面に立っていた。いつのまにそんなことできるようになったんだ?サラッとレストも成長してんだよな。

 

4014ページ 黒 赤 障壁

 

俺は障壁を蹴ることで横へと勢いを移し、これまた設置した障壁に着地する。

 

「っとと、取り出さないとか」

 

9902、9903ページ 次元収納

 

スライムの残骸が入った小瓶を取り出す。と、それと同時に海の底からバッシャァ!と巨大なスライムが飛び出してくる。

 

「おっ、来やがったな。ほんと、よく引きつけるねぇ...さぁこっちだ!」

 

4014ページ 黒 赤 障壁

 

常に魔法陣に魔力を流し続け、いつでも空中に障壁を設置できるようにする。俺は攻撃しないため、これだけ流しておけば問題ない。

 

「おっ、結構来るねぇ。こりゃ本気で逃げないとダメかも...!」

 

魔力銃を両手で持ち、ワイヤーモードに変更、障壁にワイヤーを射出して立体移動を始める。

 

「あとついでに『雷装』っと」

 

雷装を発動しておく。ライトが雷をいつ落とすかわからないので、身の安全のためにも発動しておく。

 

「うっわ相手が相手だと完全アウトなやつが来た」

 

海の中から触手のようなものが大量に伸びてくる。囮が俺でよかったなと思いながらそれを避けていくと、触手が一本一本丁寧にニアの魔法で撃ち抜かれていた。

 

「めっっちゃ攻撃してぇ...」

 

俺が避けてニアたちが攻撃することで、ちゃんと少しずつ削れてはいるんだが...攻撃したい欲がどんどん出てくる。避けてるだけだと暇なんだよなぁ...

 

あ゛あ゛っ⁉︎目がぁっ⁉︎ライトの雷の巻き添え喰らったびっくりしたすんません攻撃しないでちゃんと逃げるんで許して!

 

あーびっくりした久しぶりに雷直撃受けたわ...うん、真面目に避けるのに集中しよう。暇なのには変わりないから、周りの状況をよく見て...およ?

 

俺を追っていた触手がどこかへ向かっていく。その方向にはレストがいた。触手はレストの右手に持つ盾に吸い込まれるように動き、そして動きを大きく逸される。

 

どうやら、ヘイトを一時的に買ってくれたみたいだ。だが、それも少しの間だけ。レストが盾を左腕に付け直すと同時に、ヘイトはこっちに向く。

 

「おっし視力回復。レストありがとー!」

 

レストに感謝しながら、スライム避けを再開する。

 

「よっ...と、こりゃかなり時間かかりそうだな」

 

避けながら、スライムの消耗具合を見る。ニアの魔法が触手をぶち抜き、切り飛ばすものの海に落ちればまた融合する。なので、削れるのは魔法が直撃した部分だけ。ちまちま削るしかないので、時間がかかること間違いなしだ。

 

「雷も...連発できるわけじゃねーしな」

 

ライトの雷を避け、スライムに直撃させながら呟く。あれはまぁまぁ魔力を消費する。それに、今のところ一撃で削れる量が多いのはライトの雷なのだが、それでも何百発直撃させないと削りきれないだろう。海の水でエネルギーが逃げてしまうため、水面から出てきた分にしかダメージを与えられないからだ。

 

「魔力切れも心配っすねぇ...」

 

しかも厄介なのは、魔力の回復ができないこと。現状、シレンの穴の中ではライトの聖域展開を使わなければ魔力を回復することができない。けれど、聖域展開は地面に聖剣を突き刺さなければ発動できないのだ。

 

勇者としての力のおかげで水面を歩けてはいるが、地面ではない。突き刺せないので、聖域展開は発動できず、魔力を回復できない。故に、一発一撃が重要であり、外すわけにはいかない。それがこのスライム戦を難しくしている。

 

「ったく、俺も攻撃に参加してりゃ、もっと速いってのにな...ん?」

 

速度探知が異変を感知する。

 

「なんだこれ。水面に温度差がある?」

 

ニアの仕業か?よくわからんが、場所によって水面の温度が違う。それによって、水温の高いところからは多くの水が蒸発していて、ちょっとした上昇気流が生まれていた。

 

「でもいったい何のために...」

 

こんなことに魔力を使って何をしてんだ?よくわからんが、まぁ何かしら意味があるんだろう。

 

「ああくそ、ジメジメしやがる...嫌な感じだ」

 

こんなに湿度高いのは久しぶりだ。水蒸気が速度探知に引っかかりすぎて、ちょっと頭痛くなる。

 

「……ん?暗くなって...雲?」

 

ああそっか、上昇気流で上がっていった水蒸気が空で冷やされて雲になってんのか。

 

「雨でも降らせようってか...?」

 

ゴロゴロゴロ...

 

「おいおい、マジかよ...!」

 

上を見上げた俺は、思わず笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここまで多くの種類の魔法を同時に使うには、流石にいちいち脳内に魔法陣を描いてられない。あらかじめ描いておいた魔法陣に魔力を流し込み、必要な魔法を発動させる。

 

この湖の温度を位置ごとに操作し、風魔法で水蒸気を空へと運搬。空では気温を下げることで水蒸気を冷やし、人工的な雲を作り出す。

 

そして、雲の中にある水分を氷に変化させ、互いに衝突させて、電荷とカリヤが呼ぶものを溜めていく。

 

ゴロゴロゴロ...

 

兆候の音が鳴る。準備は完了した。

 

「撃つわ!みんな退避!」

 

ライト、レストが水面を走り、スライムから距離を取る。カリヤは...直前に避けるつもりみたいね。

 

「さぁ、雷鳴響かせ天より敵を穿て!雷よ!」

 

カリヤの姿が消える。未来跳躍による回避だろう。

 

ドカンッッ!!

 

轟音が鳴り響く。私が作り出した雷がスライムに突き刺さり、その体が勢いよく弾け飛ぶ。強烈な衝撃波が周囲の空気を叩き、鼓膜が破れたんじゃないかという錯覚に襲われるが、それは気のせいだとすぐに切り替え、弾け飛んだスライムの破片に閃光を撃ち込み消滅させる。

 

「はは、こいつは凄ぇ。ニア!あんた最っ高だ!」

 

カリヤの賞賛の声が水面近いところから聞こえる。

 

「当然よ!雷はあんたたちだけのものじゃない。私にだって使えるんだから!」

 

これが私の雷。カリヤの知識をもとに私が作り上げた、私にしか扱えない自然現象の雷。まだライトのそれには威力は及ばないけれど...まだ成長できる先がある。私は努力をやめない限り、必ず追い越せる。

 

「ところでニアさんよ。だいぶ削れたとはいえ、まだ生きてやがりますぜあいつ。今の奴二発目撃てるのか?魔力大丈夫?」

 

いつのまにかカリヤが隣にいた。さっきまで下にいたのに、いつの間に...

 

「問題ないわ。ライトのそれよりかは、魔力効率良いもの。なんなら、飛行の方が魔力使うわね」

 

「マジっすか...」

 

雷を直接作り出すわけではなく、雷が出来る環境を整えるのに魔力を使っているからだろう。適性の差もあるだろうけど、消費魔力はかなり少ない。

 

それに、威力も申し分ない。自然現象の雷であるが故に、雷だけでは物理耐性を持ったスライムを削り取ることはできないものの、弾け飛んだ体に閃光を撃てば滅することができる。物理攻撃に対して反発する、あのスライムの特性がいい方向に作用しているのだ。雷が一瞬でスライムの内部に入り込むため、反発したスライムが四方に内側から弾け飛ぶといった原理だろう。

 

実に運がいい。このまま何発か撃てば、必ず倒せる。けど、それだと味気ないわね。

 

「けれど、何発も撃つのは品がないわ」

 

「品がないって...戦いに品を求めてどうすんすか」

 

「もう一発撃つ必要はないわ。というより、あとはあいつらがやってくれるもの」

 

「あいつらだぁ?...うっわマジ?」

 

私が指差したのは、雷の落下点。そこには、赤い正三角形の小さな魔物が大量に蠢いていた。

 

「テトラじゃんあれ。うわキューブもスフィアもいつのまにか生まれてやがる。ちょっとニア、何さらっと妖精を顕現させてるわけ?」

 

「雷とあの妖精たちは密接に関係しているという仮説を立てたのはカリヤでしょう?雷を起こせば、そこにあの妖精たちは自然と現れる。そして、一度起きた雷を持続させ続ける。私の制御を離れても、あの妖精が死なない限り永遠と雷を落とし続ける」

 

既に雲を維持させるための魔法は切っている。けれど、再度雷は落ち、スフィアとスライムに命中。スフィアは分裂し、スライムは弾け飛ぶ。そして、弾け飛んだスライムを閃光で撃ち抜いている間に、キューブは雲へと電気エネルギーを送り込み雷の原料を供給する。

 

「それと、研究中に知った思わぬ誤算が一つ」

 

テトラが私のもとに集まり出す。

 

「雷を人為的に作り出した場合、あの妖精たちは雷を作り出した者の手先となる」

 

「……へ?」

 

「さぁ、こっから先は私の独壇場よ!」

 

空を飛びながら、近くに集まってくるテトラに指示を出す。合体を繰り返して形を組み上げ、スライムに突貫させる。

 

人型に近くなったテトラがスライムに殴りかかる。まぁ、物理攻撃は避けられてしまうわけだけれど、その表面から放たれる電撃は避けられない。

 

魔法攻撃を喰らい、スライムがごくわずかだが消滅する。そしてその瞬間、空から雷が降り注ぎ、またしてもスライムが弾け飛ぶ。

 

「これでやっと三分の一ってところね...」

 

閃光で弾け飛んだスライムを撃ち抜きながら呟く。思考は魔法陣の生成にあらかた使っているので、考えるには口で呟くしかないのだ。

 

「それなら...弾けなさい。スフィア」

 

増殖して増えていったスフィアを、一体を残して融合、爆破させる命令を出す。即座にスフィアは動き出し、水中へと移動してスライムの間近で爆発。スライムの潜む湖の水を一瞬で押し退け、吹き飛ばす。

 

「命令以上のことをやってくれるのはありがたいわね」

 

スライムの全身が湖から出た。すぐさま水面を凍り付かせ、逃げも隠れもできないようにする。

 

「キューブ、集合」

 

自然発生により段々と増えてきていたキューブを私の周りに集合させる。

 

「一点集中、隊列用意」

 

私のすぐ前に一体、その少し後方周囲に他のキューブを配置し、それぞれエネルギーを生成させる。

 

キンキンキンキンッ!!

 

キューブの中で氷の粒の衝突する甲高い音が響き渡る。うるさい...けれど、仕方ないわね。

 

「……発射!」

 

周囲のキューブが、光線を前方にいる一体に向けて撃ち込む。それによって一点集中された光線がスライムに向かって発射される。

 

「……ポジ○ロンライフルかな?」

 

十数体分のエネルギーが凝縮された光線はスライムを撃ち抜き、七割ほどを消し飛ばす。カリヤが何か言ってるが、いつも通りわけわからないので無視しておく。

 

「これで...最後!」

 

キューブを私の頭上に移動させ、雷雲の下へと共に移動する。ズバンッと雷が落ちるが、全てキューブに吸収されて私には届かない。

 

「キューブ!一斉射撃!」

 

雷のエネルギーを直で受けたキューブたちが、それぞれ光線を放つ。光の速さで放たれた光線は、残るすべてのスライムを撃ち抜き、消滅させた。

 

「ふぅ...終わりね」

 

キューブ、スフィア、テトラを全て雷雲の方まで移動させる。

 

「後始末はしっかりと...ね」

 

増えに増えたスフィアを融合し起爆。爆風により雷雲が散り散りに吹き飛ばされ、最初から何もなかったかのような空に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごいなニア。まさか雷雲を魔法で作り上げるとは...」

 

切り札が切り札すぎる。勇者にしか使えない雷の力を、自力で再現しやがったわけわからん。

 

「私にかかればこんなこと楽勝よ」

 

ああ、天狗になってんのが目に見えてわかるな...まぁそれくらいすごいことではあるんだが。

 

「楽勝って...確かに、必要な魔法はそこまで難しいものでは無さそうだったけどさ、普通はできんて」

 

「そりゃ普通はできないわよ。私の魔法の技術と、カリヤの雷の知識がなければ到底できないわ。私としては、なんであんなことを知っていたのか不思議なのだけれど」

 

「はは、なんでだろーなー」

 

「あくまで誤魔化す気ね...まぁいいわ。どうせ話す気ないでしょうし」

 

「いーやいつかは話すぞ。そうだな...シレンの穴完全攻略したら話すってことにしようか」

 

今決めた。俺の生い立ち、転生のこととかその他諸々を話すのはシレンの穴攻略後にしよう。タイミング的にも良いだろうし、多分それまでの間に少しだけ俺に対する疑念が湧くだろうし...な。

 

「ってか俺のことよりもさっきの奴について教えてくれよ」

 

「後にしましょうよ後に。色々聞きたいこともあるでしょうけど、とりあえずここから出ましょ」

 

「あー、そうだな。ずっとここにいても魔力の無駄だし」

 

ずっと水の中に落ちないように何かしらの魔法を使っていないといけないから面倒だ。さっきニアが作った氷もキューブの光線で壊れてしまったから足場もないし。

 

「ってか出口上なのかよ...」

 

入った時と同じくらいの高さに、出口の扉が現れていた。なんであんなところに出てくる設計にしたんですかね...

 

「もし空を飛べる奴が一人もいなかったらどうすんだ?」

 

「私のこれがあるから大丈夫じゃない?」

 

「あそっかカリスの英雄はそれ持ってるんだっけか。詰むことはないのね」

 

ステラの魔道具があるから、必ず一人は飛べるようになってるのか。抱えて一人ずつ運べば問題ないと...まぁ、勇者や魔法使いが飛行魔法を持ってないわけないからそんな心配いらないんだろうけど。

 

「……ってか、クミリアどうした?そんな項垂れて」

 

何故かはわからないが、ステラに抱えられているクミリアがすっごい項垂れてた。なんかぶつぶつ言ってるしちょっと怖い。

 

9037ページ 黒のみ 飛行

 

「どったの?」

 

飛べないレストを抱えて、出口に向かって空を飛びながらクミリアに聞いてみる。

 

「………」

 

ダメだ。何か言ってるのは確かなんだが、なんて言ってるかはまるでわからん。

 

「よし、ここで話しましょうか」

 

なんとかニアの喋ってる内容を聞こうと悪戦苦闘しているうちに扉まで辿り着き、久しぶりに地へと足をつける。

 

「まず聞きたいんだけどさ、いつの間にあんな魔法練習してたんだ?」

 

クミリアは項垂れたままだが、ひとまずニアの魔法について聞くことにする。あんな雷雲を作ってたら、噂になっていてもおかしくないはずだ。

 

「次元移動のあの空間内で練習したわ」

 

「なるほど、だから噂に聞かないわけだ...」

 

「はいはーいしつもーん!あの妖精ってどんな感じで動かしてるの?」

 

「頭の中でこうしろって命令を出せば勝手に動いてくれるわ。自律行動もさせられるから、結構便利ね。雷も防げるし」

 

雷を防げるって結構便利なんだよな。ニアは雷装使えないから雷を喰らえばひとたまりもないわけだけど、キューブやスフィアに吸収させることでノーダメにできる。そのまま攻撃にも転用できるから、自滅の危険なく攻撃に集中することができる。

 

「んじゃ俺からもう一個質問。今回は海...いや、湖だったから雲を作りやすかったけど、普段はどうすんだ?」

 

「水分も魔法で作り出すわ。少し魔力消費は多くなるけれど、問題なく使えるわよ」

 

「なるほど...あの妖精たちって雷雲のあるエリアから出たら消滅するんだったよな確か。ってことは移動しながらの戦いには向かない感じか?」

 

「そんなこともないわよ。上手くやれば雲を広げることもできるし、風で雲そのものを移動させることもできるから、移動しながらでも使えるわ。まぁ、陣取って戦える方が楽なのは確かだけれど」

 

「というかそもそも、今回は屋外のようなものだったから雲できたけど、屋内で使えるのか?魔王城の中とか、そういう場所でも使える?」

 

「一応問題ないわよ。面倒は増えるけれどね」

 

「オーケー俺からの質問は以上だ後でその魔法のやり方教えてくれ」

 

「わかってるわよそれくらい。で、他に質問はあるかしら?」

 

「ないよー」

 

「ない...かな」

 

「そう、それなら最後に補足するわ。みんなの使う雷装と違って、私の使う雷は自然現象の範疇よ。だから、物理耐性持ちの魔物には効かない可能性があるわ。今回はその耐性がいい方向に働いたけれど」

 

「自然現象の雷に、その再現の雷装、完全に魔法であるライトの雷。それぞれ違いがあるから使い分けができて良いな」

 

相手の持つ耐性に合わせて雷を撃ち込めるから、これまで以上に戦略に幅ができた。しかもニアの雷、魔法拡散対策にもなる気がする。先に雷雲を作っていればという前提ありきだが、一度できて妖精たちによって循環された雷雲は魔法拡散では散らせないはず。上手くやれば、魔法拡散下でも雷を当てられるだろう。

 

と、俺がそんなことを考えていたその時。

 

「みんな...かぁ」

 

クミリアがボソッと呟いた。

 

「私だけ...」

 

「ん?なんだって?」

 

「雷使えないの私だけ...」

 

あっ...それで落ち込んでたのか。今まで雷装を使えないのはニアとクミリアの二人で、同じ仲間がいたから雷装を持ってないことでの疎外感のようなものがなかったのだろう。

 

しかし、今回ニアが雷を扱える力をつけてしまった。雷を使えないのはクミリア一人になってしまった。雷装を使えるようになりたいって絶対に言うなと俺たちが散々言っているため仕方なく我慢していた不平不満が、ポロポロとこぼれ落ちているみたいだった。一人称が私になってるし、これは相当心にきてるな。

 

「私の存在意義って...」

 

「そこから迷走してんの⁉︎クミリアにしかできないことだってあるだろ落ち込まないでくれよ」

 

「雷...みんな使えていいなぁ...」

 

ああダメだこれ。どう慰めれば良いのかまるでわからん。周りにできて自分にだけできないことがある人に、どうやって声をかければいいのだろう。

 

「グローブ的なのに雷装流して、受け渡しできれば早いんだが...危険だしなぁ」

 

ステラへの雷装の受け渡しは簡単だった。電気が流れるのは矢尻の部分だけなため、そこにさえ触れなければ扱えたからだ。

 

レストの時は強引だった。というか、こっちは受け渡すつもりはなかったのだが、俺が投げた盾を無理矢理掴み取って適応したのだ。痺れる手を物ともせず、力を手に入れるために掴み続けた。そして、なんらかしらの土の魔法を用いながら、投げ飛ばす形で盾を捨てた。

 

しかし、クミリアの場合そうはいかない。まず、体に流す雷装は受け渡せない。グローブのような道具を媒介して受け渡す他ないが、危険すぎる。直接手にはめる必要があるからだ。

 

レストの時と似たような要領でやればできると思われるかもしれないが、レストの事例は完全なる偶然だ。投げられた盾は何回か土の盾で弾かれており、空気中への放電もあってかなり電力が弱まっていた。同じ状況の再現なぞできず、そもそもグローブで受け渡しできるかもわからない。まず無理だと考えた方がいい。

 

「……ねぇクミリア。雷の力を使えればいいのよね?」

 

ニアが、しゃがみ込んで項垂れているクミリアと目線の高さを合わせながら話す。

 

「使える...の?」

 

「やろうと思えば...ね。クミリア、後でカリヤと戦いなさい」

 

「……へ?」

 

なんで俺が戦うことになってるんだ...?




ニアさん覚醒、そしてクミリアしょんぼりモード。
次回はクミリアと戦う回になります多分。
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