前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8238字。

今回書くのめちゃ時間かかった...やりたかったことだけどうまく書けている気がしない。


ゾンビにオクスリ投擲

第五十六階層

 

「うわホントだゾンビだ」

 

この世界にはアンデッドがいる。死体に魔素が蓄積することにより、人間の姿のまま魔物化したものがそれだ。

 

そんなアンデッドとは別に、ゾンビと呼ばれるものがいる。このゾンビは、人間の死体から生まれるものではない。他の魔物と同様に、無から生まれるタイプの魔物なのだ。

 

見た目はザ・ゾンビといった感じの腐った人間だ。普段の動きはすっとろいが、人間を認識した途端走って近づいてくる。そして首筋にかぶりついて肉を食いちぎるんだと。怖い。

 

今、俺は曲がり角から顔だけ出してそのゾンビを見ているわけだが...

 

「攻撃するんじゃなくて、回復をぶち当てる...で、いいんだよな?」

 

この世界のゾンビは、ゾンビにありがちな、回復魔法を当てることでダメージを受けるタイプの魔物なのである。普通の魔物は正の方向に生命力を持って生まれるが、なんでもゾンビは生まれる時に生命力がマイナスに振り切ったまま生まれるようで、回復をぶつけてプラス方向へと増やしていきゼロにすることで殺せるらしい。マイナスをゼロにするとか、ジ○ニィかな?

 

「そうよ。それをぶつけてやりなさい」

 

ニアが、俺の持つ瓶を指差しながら言う。

 

「まるでニアが作ったみたいな言い方だけど、これ俺が作ったんだからな?」

 

この瓶の中には、液状の回復薬...のようなものがある。結構昔に、回復効果のある草だとか魔物の素材なんかを色々ぶち込んで作っていた劇薬だ。回復なのになんで劇薬なのかって?めっっっちゃ薄めて使わないと再生効果が強すぎて、がん細胞大量発生するヤベェやつだからだ。今手に持ってるやつはちゃんと薄めたものである。

 

「あんだけ混ぜたのに透明なのいまだに謎なんだよな...なんてものを作り出してしまったんだ」

 

そう思いながら、俺は曲がり角を飛び出してゾンビに向かって回復薬入りの瓶を投げつける。

 

パリンッと瓶が割れ、中の回復薬がぶちまけられてゾンビにかかる...うわ、一瞬で溶けて消滅した。回復力えぐ。

 

「よし、はい次」

 

『製作』

 

割れてそこらへんに散らばった瓶のかけらから瓶を再生成する。そして左手に持っている、回復薬の原液が入った瓶からほんの少しだけ移し、大量の水で薄める。この一連の作業を製作スキルだけで実行する。

 

そして走って近づいてくるゾンビに今作った瓶を投げる。瓶は割れて中身がぶちまけられ、ゾンビは消滅する。

 

『製作』

 

そして製作でまた瓶を作って投げて...の繰り返し。製作で消費する魔力と、回復薬の原液がある限り続くゾンビ殺しのループだ。

 

「よし、この辺のゾンビは全部殺したぞ。出てきて良いぞー」

 

「製作スキル一つでそこまでできるの普通におかしいわね...」

 

「製作便利なのにあんまり使ってる人いないんだよな。なんで使わないの?」

 

「その、過程に魔法が使われていてもスキルを使えるところまで成長させるのが面倒だからよ」

 

「そこめんどくさがるからダメだと思うんだよ。上手く使えばリターンでかいんだから、最初面倒でも使うのがミソなわけで...」

 

まぁ俺も、こんな用途で使うとは思ってなかったわけだが。普通に日常の中で使う気満々で、戦闘には使わないと思って成長させていたんだよな。ただ、今だと魔力銃の改造に使ったりなんなりで戦闘にも使うようになってきている。戦闘中に別のマガジンを製作して別の魔法を撃つとかできるようになったんだよな。たまに使える便利スキルだ。

 

「それは置いといて、この階層はカリヤのおかげで何とかなりそうね」

 

「力説したのに置いとかれた...いつものことを言うけど、これがなかった場合どうしてた?」

 

もう恒例となりつつある、分断された状況にて同じ魔物と相対したときに、どう対処するかを考えるいつもの流れに入る。

 

「私とカリヤとライトが回復魔法ぶつけて終わりだと思うわ。レストも使えるんだったわね?」

 

「うん、何発か使わないと倒せないとは思うけど、一応」

 

「なら、問題はクミリアとステラちゃんね」

 

そう、二人は回復手段を持たない。厳密にはクミリアは自己回復はできるのだが、ゾンビに対して必要なのは他者回復魔法なので、実質的にゾンビに対する攻撃手段を持っていないのと同じだ。

 

「手っ取り早いのは魔力銃でなんとかする、だな。ってか、今作って渡しておくか」

 

9902、9903ページ 次元収納

『製作』

 

必要な材料を次元収納から取り出し、回復魔法を射出できる魔法陣が中に描かれたマガジンを作り出す。

 

「ほれっ、これでとりあえずなんとかなるはずだ」

 

「ありがとー」

 

「私に撃てるかなぁ...」

 

「いくら魔法の適性がないとはいえ、効率良くしてるから何発かは撃てるはずだ。あとは練習次第って感じだなっと、ゾンビ来たわ」

 

また瓶を投げては製作してのループに戻る。どのゾンビも瓶を投げるだけで消滅していくので、ほぼ苦難なく進めていた。本来なら他者への回復は時間がかかるため、大量にどんどん迫り来るゾンビたちへの対処に手間取るところなんだがな...まっ、この回復薬がなかったとしても、俺が再生魔法を使ってそれを加速させれば済む話なので、どっちでも変わらないのだが。

 

「どうせだから二人とも魔力銃の練習しとく?いざって時に上手く撃てなかったじゃ困るし」

 

とまぁ、そんなわけでかなり余裕が生まれているため、魔力銃の練習でもさせることにした。

 

「じゃあそうしよっかなー」

 

二人が魔力銃を取り出してマガジンを入れ替えるのを速度探知で確認する。

 

「よし、じゃあ遠くにいるやつ狙って撃ってみてくれ。近くに来たやつは俺が処理するから」

 

「わかったー」

 

ステラは空を飛んで射線を確保、クミリアは俺の左側に立って魔力銃をそれぞれ撃ち始める。

 

「どんな感じだ?」

 

「意外と魔力使わないねこれ。これなら使えるかも」

 

「ちょっと狙うの難しいけどねー」

 

「射程伸ばそうとしたら、弾丸サイズめっちゃちっちゃくなっちゃったんだよなそれ。頑張って狙ってくれ」

 

ステラは弓矢の経験があるからか狙うのが上手いけど、クミリアのエイムが悪すぎる。不器用ってことで片付けられるレベルではあるけれど...ちょっと下手すぎ?まぁ今は結構離れたところから撃ってるわけだし、いざとなれば近距離で連射すれば良いしな。さしたる問題じゃないだろう。

 

「ってかボス部屋まだ?単純作業すぎて暇すぎる...」

 

「暇なのはこっちのセリフよ。そして、暇にしてる原因はカリヤ自身よね?」

 

「まぁそうなんだけど。なぁライト、あとどれくらいでボス部屋かわかったりする?」

 

「そこまで細かいことはわからないかな...勇者の記憶って結構曖昧なものだし」

 

「そっかしゃーない。地道に進むしかないか」

 

瓶を投げながら、少しずつ先に進んでいく。

 

「……うわ後ろからも来やがった」

 

ジャンプしながら後ろに振り向き、瓶を投げて後ろから来ていたゾンビを消滅させる。

 

「両方から来るとかめんどくせぇー...リポップすんなよなー」

 

「後ろは私に任せなさい」

 

「よしニア任せた」

 

後ろから来るゾンビはニアに任せることにした。数は少ないし、任せても問題ないだろう。

 

そうして、迫り来るゾンビを滅しながら進むこと五分。前方から来るゾンビが減ってきて扉が近づいているんだなと思っていたら、すぐに扉が見えてきた。

 

「よーしやっとボス部屋だ...ちょっと覗いてみよ」

 

扉を少しだけ開き、隙間から中を覗く。

 

「相当デカいのが一体いるだけだな...もうこれ投げて終わりじゃね?」

 

左手に持っている、原液の入った瓶を揺らしながら呟く。

 

「いちいち薄めて投げるのめんどいし、もうこれ投げていいよね?作ろうと思えば、材料集めて作れるモンだし」

 

「いいんじゃない?」

 

「んじゃ行ってくる」

 

扉を開け放ちボス部屋の中に入場する。

 

「天に召されよー!」

 

大きく振りかぶり、瓶を豪速球で...球じゃねぇわ。まぁ凄い速度で巨体のゾンビに投げつける。

 

瓶がゾンビに命中して割れ、中身をぶちまける。液体が触れた瞬間、ものすごい煙のようなものが噴き出し、姿が見えなくなる。

 

「煙すっご...っ⁉︎」

 

煙の中から拳が飛んでくるのが、速度探知によってわかる。後ろからみんなが来ているから、回避はできない。

 

4014ページ 黒のみ 障壁

 

障壁を生成し、飛んできた拳を受け止める。

 

「障壁...攻撃されたの?」

 

「ああ。まだ死んでねぇのか...?いや、おかしい。ここまで拳デカくなかったよな...?」

 

さっき扉から覗いた時に見た体の大きさと拳のサイズが合っていない。明らかに、巨大化している。

 

「まさか魔族...?」

 

巨大化現象といえば魔族だが...この前のアクセルのこともあったし、一枚噛んでいるかもしれない。

 

「ってか煙で何にも見えん...」

 

障壁に拳が当たる音が何度も聞こえる。速度探知でもその動きは探知できる。けれど、煙によって視界が遮られているため、いかんせん状況把握が難しい。部屋の中だから煙が逃げる場所もないし、このまま待ってるだけじゃ何も解決しないな。

 

9902、9903ページ 次元収納

 

次元収納に無理矢理煙を押し込み、視界を確保する。

 

「うわやっぱデカくなってる。魔族め...」

 

「いや、魔族のせいじゃないと思う」

 

そう言いながら、ライトが俺の横に来る。

 

「どういう意味だ?」

 

「よく見て、体が腐ってないでしょ?」

 

「えっ?...うわほんとだ」

 

デカくなってることに気を取られていて、腐っていた体が普通の体に戻っているのに気づかなかった。いやまぁ、普通の体っての知らないんだけどな、魔物だし。

 

「このボスだけ、回復しすぎると生き返る...で表現合ってるかわからないけど、やりすぎると死を通り越しちゃうんだ」

 

「なるほど、オーバーフローして生命力がプラスになるやつねオーケー」

 

大体わかった。回復薬が強すぎていとも容易くオーバーフローして、巨大化まで引き起こしたんだこれ。戦犯じゃん俺。

 

「歴代勇者の中で、二回しか起こってないことみたいだから、見落としちゃってた。ごめん」

 

「いや、謝らなくて良い。話聞く前に突っ走ったのは俺だしな。それに...」

 

「それに?」

 

「普通の攻撃が効くようになったわけだから、逆に戦いやすくなったわけだ。回復よりも、傷付ける方が何倍も簡単だ。だろ?」

 

「そう...だね、簡単だ」

 

「じゃあ行こうか。一回でピッタリプラマイゼロにするのは難しいから、まず目指すはゾンビモードへの移行だ。削り切るぞ!」

 

「了解!」

 

と、方針を決めたところでボスが拳を振りかぶる。何度やったところで無駄だ。そして、それを利用することにする。

 

「みんな散開!」

 

全員障壁の裏から飛び出し...レストだけ残ったなナイスアドリブ。俺が障壁を消すと、レストが盾を起動して拳を誘引し、斜め上へとスタミナを吸い取りながら逸らす。

 

元々の目論みとしては、全力の拳を障壁解除によって空に切らせ、つんのめらせることで行動を制限させようとしていたのだが、レストの動きによってそれ以上の効果を得られた。

 

「レストナーイス!畳み掛けるぞ!」

 

勢いよくすっ転んだボスの足元側に周り、俺とクミリアでボスの背中の真上に跳ぶ。

 

「「せーっの!」」

 

二人で超加速キックを放ち、ボスの右脚に叩き込む。バフと速度操作の物理保護により、こちらは無傷のまま、ボスの脚をぐちゃぐちゃにする。

 

そして次の瞬間には、ニアの氷柱魔法によって左脚が切断されていた。これで、体の三割近くを潰したわけだが...まだゾンビには戻らないな。こりゃ相当削らないとダメみたいだ。

 

「次は腕...はやってくれてるからそれ見てからだな」

 

ライトが色彩剣装を使いながら右腕を肘から切り飛ばし、ステラは氷装の矢で左手を地面ごと凍り付かせる。これでゾンビ化は...してないな。というか、切っても切ってもサイズに変化がない。魔素注入によって巨大化した魔物とは仕組みが違うなこれ。おそらく、オーバーフローした瞬間のゾンビ化もしくは蘇生のタイミングでサイズが変わる感じだろう。

 

「なるほど、こうなったら首を掻っ切るか...?絶対オーバーフローするけどやるっきゃねぇ」

 

「それじゃあ先にクミさんが!」

 

クミリアがすぐさま飛び出し、ボスの頚椎に拳を叩き込む。

 

「骨こっなごなだよ」

 

「なんちゅー報告だ助かる」

 

『色彩剣装 原色・緑』

 

クミリアのおかげで骨に遮られる心配がなくった。なので威力重視の赤ではなく射程の緑の光を刀に纏わせながら跳び、鞘の加速を合わせて抜刀する。

 

「首の皮一枚残り...ってか、まだゾンビ化しないのか」

 

首をほぼほぼ切断したのち、そんなことを思いながらトンっとボスの頭に着地する。

 

「えっ、うわっ」

 

……今の着地が致命傷になったのだろうか、大量の煙のようなものがボスの体から噴き出す。

 

「マジかよ...でもこれ、オーバーフローほとんどしてないのでは?」

 

足場としていたボスの体が消滅する。けれど、これだけではまだ倒せたかどうかわからない。能力の範囲外でゾンビ化している可能性もある。

 

9902、9903ページ 次元収納

 

とりあえず次元収納に煙を収納して...

 

「いない...な」

 

視界良好、けれど見渡してもゾンビの姿は見えない。

 

「倒したってことかな?」

 

「でも扉は閉じてるよ?」

 

「……待て、ってことはもしや、めっっちゃちっちゃいゾンビがいるとかそんなことか?」

 

うっわめんどくせぇ...あれだろ?まずちっちゃいゾンビを頑張って見つけて、めっちゃちっさい回復かけて殺さないといけないわけだ。面倒の極み。

 

「こりゃ地道に探すしかないわけだ...ニアも探すの手伝ってくれ。俺はとりあえず走り回って探すわ」

 

「ここいるよ」

 

「今回クミリア大活躍だなオイ」

 

目がいいなぁやっぱり。

 

「ちょこまかしやがるなぁ...とりあえず動き止めるか」

 

速度操作で少しずつ速度を落としていく。元の速度が遅いおかげで、結構早めに動きを止めることができた。

 

「よしオーケー。どうやってトドメ刺す?」

 

「私がこれでやるよ。回復量も小さいと思うし」

 

「よし頼んだステラ。多分距離減衰が必要だから結構下がってほしい」

 

「わかったー」

 

ステラが魔力銃を構えながら後ろに下がる。

 

「あーもうちょい後ろ、そうそこらへんで良いと思う。そこからこいつ撃てる?」

 

「いけるいけるー見えてるから」

 

引き金が引かれ、回復弾が射出される。弾は消滅寸前のところでボスに命中、わずかな量の煙が噴き出し...後には何も残らなかった。

 

「ナーイスステラ!ちっこいのによく当てたな」

 

「止まってるんだから外すわけないでしょー」

 

「だな。よし出よーぜー」

 

ボスが完全に消滅したため、出口の扉が開いている。今日はこれで終わりだし、さっさと帰ろう。

 

「……ねぇ、レストは?」

 

「レスト?あれ、確かにいないなどこ行った?...って倒れてる⁉︎」

 

レストはちょうど最初にボスの攻撃を逸らしたところらへんで倒れていた。なんで?と考えるよりも前に駆け寄る。

 

「レスト!大丈夫か!生きてるなら返事しろ!」

 

肩を揺らしながら、大きな声で呼びかける。

 

「ん...」

 

うるさいと言わんばかりに、肩を掴んでいる俺の手を叩く。

 

「すっごい熱...!さっきまでこんなんじゃなかったはず...とりあえず運ぶぞ。掴まってくれ」

 

レストを背負う。

 

「今すぐ町まで戻るぞ。原因不明だから手っ取り早くニアの魔法で治す。頼むがいいな?」

 

「わかったわすぐ行きましょう」

 

全員の速度を加速、最高速度でボス部屋を出て横穴から螺旋の穴へと戻り、そのまま上へと登る。そしてニアの天威魔法で急いで町へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫...なんだよな?」

 

「ええ、完璧に治したわ」

 

レストはニアの魔法のおかげで完全に回復した...らしい。今は宿のベッドでぐっすりと寝ている。

 

「それにしても、なんであんな急に体調不良を引き起こしてたんだ?もしや煙が悪さした?」

 

「それも考えられるけど、それだと私たちが影響を受けてないのはおかしいわ。とすると、考えられるのは一つ」

 

「レストだけが影響を受けた理由...それってなに?ニアさん」

 

「レストはボスの攻撃を盾で逸らしたわよね?たしか、スタミナを吸い取る力もあったはず。ボスのスタミナを吸い取ったせいで、何らかしらの悪影響を受けた...というものよ」

 

「そりゃどうなんだ?ゾンビ状態のボスならまだしも、オーバーフローして普通の生物に戻った状態のボスから吸い取ったんだから、問題ないと思うんだが。前に連続で魔物からスタミナを吸い取ったことがあったけど、その時はなんともならなかったし」

 

「そうとはいえ元々はゾンビよ。何が起ころうと不思議じゃないわ」

 

「まぁそりゃそうか...」

 

「そもそも、魔物からスタミナを吸い取ること自体、なかなかに危険なことなのよね。古代の魔道具のおかげでそれなりに危険は取り除かれているのでしょうけど、治す側としては多用はしないでほしいものね」

 

たしかに考えてみれば、スタミナは活力や生命力に直結しているものだ。人間とは体の仕組みもつくりも違う、魔物からそれらを奪い取ることは危険だと言えるかもしれない。

 

魔力と同じと考えても良いかもしれない。他人の魔力をもらうと、体の一部機能に支障をきたし、結果的に魔力の自然回復が止まってしまう。それと似たようなことが起こっているのだ。魔素と聖素とで、活力にしているものも違うしな。

 

あと、今のニアの説明で今まで疑問に思っていたことが解決した。俺はリヒトに、相手のスタミナを吸い取る魔法を教えてもらってない。存在しているということは小耳に挟んだことがあり、その度に何故教えてくれなかったのか疑問に思っていた。使うとまずいから教えなかったんだろう。なんか、前にもこんなことがあった気がする。

 

「……あれ?そういやなんだけど、結局レストの症状って重度の風邪だったんだよな?」

 

「そうね。ゾンビのスタミナを吸い取ったことによる悪影響で体力の低下を引き起こし、免疫がグッと落ちてなった風邪よ」

 

「そういった病気って、魔法で治さないようにするんじゃなかったっけ?耐性菌が生まれないようにーって」

 

「それは普通の魔法じゃ菌を滅しきれない可能性があるからって話よ。私の魔法なら確実だから問題ないのよ」

 

「なるほどだからか」

 

「まぁ...そのせいで明日一日、カイスから出られなくなっちゃったけれどね」

 

「あそっか、魔力の前借りのせいで聖域の中にいないといけないんだっけ」

 

「正直、カリヤに治してもらう方が早かったかもしれないけれど...どうせ大事を取って明日は休みにするでしょうし、いいわよね?」

 

「うん、元々休みにする予定だったのはそうなんだが、その魔力の前借りで拘束されるやつさ、速度操作で加速させれば早く解放されるんじゃないの?」

 

ニアはこれから、前借りした分の魔力を回復し切るまでは聖域から出られなくなるわけだが、魔力回復速度を加速させれば早く終わりそうな気がする。

 

「無理よ。前借り分を回収し切るまで、魔力回復が止まるもの」

 

「あっ、そういう感じなのね」

 

確かに確認してみると、ニアの魔力回復速度がゼロになっていた。自然回復するはずだった魔力を、治癒を発動した時間に送っているためだろう。

 

「明日の夜には戻ってるでしょうから、明後日には響かないわ。レストの様子を見ながらだけれど、明後日から攻略再開しましょ」

 

「だな...それじゃ、俺一旦外出るわ」

 

「何しに行くの?」

 

「吸い込んだゾンビの煙を捨てに行く」

 

「ああ、そういうこと...行ってらっしゃい。早めに戻るのよ」

 

「お前は俺の親か?行ってくる」

 

宿を出て、そのままカイスを出る。そして一分程度走り、誰にも迷惑をかけなさそうな場所で止まる。

 

「ここら辺なら問題ないだろ多分」

 

9902、9903ページ 次元収納

 

次元収納から煙を取り出す。大量にあるから、それなりに時間がかかるだろう。開けっぱでとりあえず放置だ。

 

「それにしても...まさかレストがダウンするとはな。あいつは何があってもピンピンしてると思ってたのに」

 

生存能力に長けているからなレストって。珍しく攻撃的な守りをしたから、そのしっぺ返しを喰らってしまったのだろうか。

 

「雷装の時もしかり、レストは死なない程度の無茶をする癖があるからな...ちょっと心配だ」

 

レストが倒れた場合、それを埋める替えはいない。英雄選抜試験で争ったルードは捕まっているからだ。

 

魔王討伐および全員生還。それを成し遂げるためにも、もう少しレストに気を配っておこうと心に誓いながら、俺は煙を出し切った次元収納を閉じてカイスに向かって走り始めた。




この作品を書き始める前から、今回のゾンビに回復薬投げつけまくる話を書くってのは決まっていたんですが、アンデッドを先に出したせいで危うく設定崩壊するところだったという事実。
何故俺は後先考えず話を作っているんだ...!
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