前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8050字。

今回は一階層をサクッと終わらせて、次回への導入にします。
やっとやりたかったことができる...


疲労は重なり、駄々こねる

第五十七階層

 

「カリヤあんた...大丈夫なのよね?」

 

「一応...な。めっちゃ寝たから、大丈夫なはず...多分」

 

ニアが心配してくれている。俺のことを案じて記憶を封印したというのに、それが解放されてしまったのだ。ニアの性分的に、気にするのは当然と言ってもいいかもしれない。

 

「本当かしら...」

 

「大丈夫だ、問題ない。ちょっとステラを見ると手が震えるけど、マジ問題ない」

 

「完全にダメじゃないそれ」

 

ちょくちょくフラッシュバックする...また記憶消した方がいいのだろうか?

 

「私は私だよ?フロートじゃないから大丈夫なのに...」

 

「そうは言ってもな、トラウマってのはそうそう抜けないものなわけで...まぁ、ゆっくり治してくよ」

 

「ちゃんと見て慣れてねー」

 

「善処する」

 

「……僕への心配が...一つもない...!」

 

あっ、ごめんレスト。元々はレストが負傷したから昨日休みになってたんだった。フロートのせいで吹っ飛んでたわ。

 

「レストはゾンビのせいとはいえただの体調不良でしょう?私が治したのだし心配する必要ないわ」

 

「酷い...」

 

まぁ...うん、しゃーない。

 

「そんなことは置いといて、これから挑む階層の話しようぜ。確か、個別訓練だったろ?」

 

「今回はカリヤ誰のところに行くんだろーねー」

 

「さぁ...?」

 

まぁ傾向的に、一番俺から近い人に巻き込まれるってのはなんとなくわかってるけどな。

 

「今考えても無駄よ。各自、やることやって早く戻りましょ」

 

「そうだね。じゃあ行こうか」

 

『勇者、及び英雄の存在を認識』

 

「この音キンキンしてうるさいんだよねぇ...」

 

『空間拡張、隔壁生成、擬似転移を開始します』

 

それなー、とクミリアに同意しようとしたけど、声に出す前に分断が完了していた。

 

「今回は...レストか」

 

どうやら、今回俺が巻き込まれたのはレストの訓練らしい。

 

「僕のところに来たんだ...いつもカリヤって、何も手出ししないで見てるんだっけ?」

 

「ああ。病み上がりだろうけど、頑張ってねー」

 

「もちろん、病み上がりだからって手を抜くつもりはないけどさ...カリヤも、自力で回避できるやつは回避してね?」

 

レストの訓練は、もちろん盾。さまざまな方法で飛んでくる攻撃を無傷で突破することが求められる。

 

「そりゃ回避はするさ。訓練の邪魔しない程度にだけどな」

 

「ハッキリ言っちゃうと、カリヤがいるだけで邪魔なんだけどね。護衛対象が二人になるわけだし」

 

「邪魔言うなよ酷いなオイ」

 

無傷を求められるのは、レスト本人だけではない。人型の人形のようなものを守る必要があるのだ。人形がいつも通りいるのが見えたことで、カリヤがいるならもしかしたら人形はないのかもという希望が打ち砕かれたらしい。だからって邪魔は酷くねぇっすか?

 

「んで?こいつが元祖邪魔?」

 

勝手に歩き出してる人形を小突きながら聞いてみる。

 

「あっ」

 

「えっ?」

 

『訓練失敗。リスタート』

 

視界が揺らいだかと思えば、ここに移動した直後の状況に戻っていた。俺とレスト、それに人形の立ち位置が戻っている。

 

「……なるほど、こうなるわけか」

 

「こうなるから、こいつに触ったらダメだからね?どんなに進んでも、攻撃が当たってなくても、ちょっと体が当たっただけでまた最初から。早く終わらせたいからノーミスでいくよ」

 

「りょーかい、って勝手に動くのなんなの?こいつ」

 

「それが一番面倒なんだよね...見え見えの罠があるのに容赦なく突き進むし、射線通りまくってる場所に無警戒で通ってくし...もし僕からの攻撃が許されてたら、さっさと気絶させて自分で運んでる」

 

恨みすごいな...そしてあれだろ?気絶ってのも、盾でスタミナ吸い切って動けなくするって意味だろ?なかなかにエグいことしてますねレストさん。

 

「カリヤはその人形のすぐ近くにいて。急に止まったり走ったりすることがあるけど、速度探知があるからすぐに対応できるでしょ?」

 

「まぁな。人形に触れないように頑張りますわ」

 

ギリギリのところまで人形に近づき、そこで突然走り出す人形に驚きながらもついていく。

 

「あっ...ぶね」

 

人形めがけて飛んできた矢を弾くレスト。弾いた先に俺がいたけど、自力で避けた。

 

「だいたい走り出したら攻撃飛んでくるんだよね!」

 

元々の反射神経がすごいのもあるけど、何度も何度もこの人形に苦しめられたせいで、もうどんなタイミングで攻撃飛んでくるのかがわかるようになってるんだな。

 

というか、実際の仲間は勝手に飛び出すとかそんなことするアホじゃないんだから、これじゃ訓練にならない気がする。もうちょい人形の知能上げても良いんじゃないっすかね?

 

まぁでも、この感じなら一発突破十分狙えるんじゃないかなと思う。傾向と対策がちゃんとできてるし、病み上がりでここまで動けるならコンディションいい方だと思うし。

 

……今人形の野郎、明らかに不自然な地面のへこみに足突っ込もうとしてるけど大丈夫なんか?...あっ、やっぱりダメなんすね。案の定罠が作動して、小さな鉄球が至る所から飛んできた。

 

あらかた弾けているレストに驚きだが、そんなレストでも全ての鉄球を弾くことはできず、人形に一発命中。最初の位置まで逆戻りする。

 

「……はぁ」

 

あっ、レストがピキッとる。そりゃ怒りますわな...

 

「こうやって、たまに回避不可能な初見殺しが来たりするんだよね...先に自分でその罠を作動させるしか方法ないし、ほんとこの試練作った人頭悪いと思う」

 

レストにここまで言わせるって、本当にイラついてるんだな...

 

まぁ、俺は関与しないって決めてるし、人形に当たらないように気をつけながらレストが頑張っているのを見届けましょうかね...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっっっと終わった...神経擦り切れたもう無理」

 

人形を最後まで護衛することに成功し、擬似転移される前の場所に戻ってきた。試行回数一桁だけど、初見殺しに殺されまくったせいでレストの精神的疲労はエゲツないだろうな。

 

「お疲れ様レスト」

 

「あっ、レストと一緒だったんだねカリヤ」

 

「まぁな。いつも通り関与はしてないけど」

 

「意外と時間かかってたみたいだけど、どんな感じだった?」

 

「完璧に守ってても護衛対象が勝手に罠を踏み抜く初見殺しを七回はされた」

 

「あー、だからこんなに疲れてるんだね...」

 

「ってか、まだステラしか終わってないんだな。結構時間かかったし、みんなもう戻ってるもんだと思ってたけど」

 

「みんな遅いよね。それだけ難しいってことなのかな...私もついさっき終わったんだけどね」

 

「そっか...っと、一人戻ってきたな」

 

クミリアが戻ってきた。それに続いて、ライトも戻ってくる。

 

「おかえりー」

 

「ただいまーってレストどうしたの?」

 

「不可抗力の初見殺しに七回やられて精神病み中」

 

「大変だったってのが今のでよくわかった。少しは協力してあげたら?」

 

「そうしたらレストの訓練にならないだろー?」

 

「でもカリヤの訓練にはならないわけでしょ?それってどうなわけ?」

 

「みんなの動きを見ることが俺の訓練だ。遊撃担当なわけだからみんながどんなふうに動くのかを知っておかないといけないだろ?」

 

なるほど確かにといった顔をするクミリア。その後、ちょっと目を離した隙にレストの横にしゃがみ込んでいて、ぐてーっとしてるレストの頬をツンツン突いていた。やめてやれ。

 

「ライトもお疲れ。魔力回復させながらニアを待ちますか」

 

「そうだね。じゃあ聖域出しとくよ」

 

いつも通り聖域展開をしてもらい、みんなの魔力を回復しておく。

 

そして魔力回復が終わったら、ニアを待ちながら駄弁っていた...のだが。

 

「なんか遅くね?」

 

結構待ったのだが、なかなかニアが戻ってこない。

 

「苦戦してるのかな?」

 

「ニアに限ってそんなことあるか?どんな状況でも大体ゴリ押しできると思うんだけど」

 

「そうだよねぇ...魔法使えないとか?」

 

「あー...それはある」

 

「魔法使えないは確かにありそうだね。普通に動けはするけど、格闘できるかって言われるとそうじゃないし」

 

「だよな。もし、マジで魔法禁止喰らってて、めっちゃへばって帰ってきたなら、クミリアはニアに格闘技を教えるべき」

 

「一応教えたことはあるよ。結果はそこそこだったけど」

 

「やったことあったのか。知らなかった」

 

「自由時間の時にこっちで勝手にやってたから、カリヤは知らなくて当然かな」

 

「そうなのか...そこそこって言ったけど、実際どのくらい動けてた?」

 

「大会で一回戦は突破できるくらいかな」

 

「悪い、俺準々決勝からしか見てないから、一回戦のレベルよくわかんね。まぁなんとなーくはわかったけど」

 

「でもこれ、バフありの話だからさ」

 

「あっ...」

 

魔法なし、バフなしの格闘戦はダメってことですねわかります。

 

「……もし、ガチで疲労困憊で戻ってきたらさ、みんなで拍手でお出迎えしようぜ」

 

「だね」

 

「もしかして...私のことで何か話してたかしら...?」

 

あっ、汗びっしょりで息絶え絶えのニアが帰ってきた。

 

「お疲れ様ニア」

 

「お疲れー」

 

「ほんとにお疲れ様...」

 

「それはあなたもでしょ...レスト...」

 

ぐてーっとしているレストの隣に倒れ込むニア。もう一歩も動けないといった感じで倒れてる二人だけど、倒れてる理由が正反対なのちょっと面白い。レストは精神的疲労で、ニアは格闘による肉体的疲労だ。ほんとお疲れ様。

 

「ゆっくり呼吸して疲れを癒すんだぞー。スタミナ回復加速させるからなー」

 

5092ページ 黒のみ 再生

 

スタミナ回復速度加速するついでに、再生魔法を流し込んでおく。早く回復してもらわないと、次の階層に行けないからな。明日筋肉痛で動けないってなられても困るし。

 

「あ^〜助かるわー」

 

老人みたいな声出さないでもらえますかね...?

 

「それ僕にも...」

 

「レストは精神的疲労だろ俺には治せん。自力で頑張れ」

 

「そんなー」

 

そう言いながらレストは立ち上がった。案外余裕あるなこいつ。

 

「ごめんなさいねほんと...魔法使いの訓練で魔法使えないとか、どうなってんのよ製作者の頭おかしいんじゃないの?」

 

「お前もそれ言うのかよ...今回の経験を糧に、これからどうするつもりですかニアさん?」

 

「クミリアと特訓するわ絶対...」

 

「だってさ。クミリア頼んだぞ」

 

「オッケー帰ったらやろうねニア」

 

「せめて明日にして...」

 

「それ先延ばしにしたら永遠とやらない奴だぜ?善は急げってことで今日からやりなさい」

 

「なら今日は終わりにして帰りましょう」

 

「いや、それは急ぎすぎだ今日まだ一個しかやってないだろ」

 

「えーもう終わりでよくない?」

 

「言動がレストみたいになってるぞ...ってか、もうスタミナ戻っただろ?筋肉の疲労も取った。動けるはずだ」

 

「身体はそうでも、心は動きたくないと言ってるのよね...」

 

「動きたくない、じゃないんだよなぁ...ほら立て!筋力で俺に勝てると思ってんのかぁ?」

 

思いっきり手を引いて、抵抗するニアを立ち上がらせ...

 

「られねぇ⁉︎おっも...ニアテメェ重力操作使ってんじゃねぇ!」

 

「もう動きたくな〜い〜帰るのー」

 

幼児退行起こしてません?この人魔法なしで運動しただけでこうなるの?

 

「はーい立つよー」

 

おお、片手で持ち上げたぞクミリア。やっぱすごいっすねぇ...

 

「あうぅ...」

 

「なんか、この姿見てるとニアちゃんって呼びたくなるね」

 

「だなー、ってかなんでステラってニアだけさん付けしてるの?」

 

「んー...なんとなく?」

 

他のみんなは呼び捨てしてるから、何か理由があるのかなと気になってはいたのだが、まさかなんとなくだったとは。まぁさっきの言い方的に、気分で呼んでるだけなんだろうな。

 

「ニアちゃーん次も頑張ろー」

 

「ちゃん付けやめて...わかったわ次行くわよ」

 

「よし来た。ニアのやる気がアップ始めたから気が変わる前にさっさと次行こーぜー」

 

横穴を出て少し坂を下り、次の階層の横穴に入る。

 

「ところで、次の階層ってどんな感じなんだ?ライト」

 

「異質も異質...って感じかな。ああでも、カリヤとレストは経験あるからそんなこと思わないかもだけど」

 

「俺とレストが経験済みってどういうことだ...?よくわからんから詳しく頼む」

 

「精神を交換するんだって。それで一個ダンジョンを攻略するみたい」

 

「なるほどそういうことね」

 

シレンの穴からすぐ近くにあるダンジョンと似たような感じか。だから経験あるって言ったわけね。

 

「精神の交換かぁ...どんな感じだった?」

 

「なんかもう違和感だらけさ。考えてみ?この身長差を。手足の長さが違うから動きづらいし、スキルは身体依存だから咄嗟の行動に支障が出る」

 

「目線の高さも変わるし、確かに動きにくそうだね」

 

「まぁ、そのおかげでレストがどんなことができるのかなんとなくわかったけどな。互いのことを知るにはいいと思う」

 

「そっかぁ...どんな人と入れ替わることになるかなー」

 

「……ちょっと待って。入れ替わりって、流石に男女を考慮してくれるわよね...?」

 

「あー...たしかにどうなんだろ。ちょうど三人ずついるわけだけど、三人の中でうまい具合に入れ替わってくれるのかな?ライト、そこんところどうなんだ?」

 

「そういうのは...特にないみたいだね。普通に男女でも入れ替わるっぽい。ああでも、バラバラに入れ替わるんじゃなくて、それぞれ一対一で交互に入れ替わる感じみたい」

 

おおっとここで深刻な問題が出てきたぞ...どうあがいても、必ず一組は男女で入れ替わり起こすって不味くね?こりゃかなり揉めるぞ...いや、揉めるってそういう意味じゃないけど。

 

まぁ、なんとなく男女関係なく入れ替わるんだろうなとは思っていたが。だって、今回は運良く男女半々になったわけだけど、その代によって人数比は変わるだろうし。男しかいない女しかいないとか普通にあり得るし、紅一点や黒一点の場合もあっただろう。男女縛りがあったら入れ替われないとか欠陥すぎるし、縛りはないと考えた方が現実的だな。

 

「入れ替わる人を操作できたりしないの?」

 

「それはできないっぼいかな。入れ替わる基準があるらしいから」

 

「それってどんな基準?」

 

「似たような役割を持っていて、かつ異なる面を持っている人同士...だって」

 

「んー...よくわからんが、こんな感じか?ニアとステラは共に遠距離攻撃担当。だけど、手段は魔法と矢で違うから入れ替わるみたいな」

 

「そうそうそんな感じ。歴代勇者パーティーでは、ほぼ毎回と言って良いくらいカリスとカイスの英雄が入れ替わってるから、もしかしたらそこは確定してるのかも」

 

なんとなーくだが、理解できた気がする。と言っても、わかりやすいのはその二人だけで、俺含めた後の四人がどう入れ替わるかはまるで検討つかんが。

 

「ステラちゃんと入れ替わるならよかったわ...」

 

「魔法使えるってこと?やったー!」

 

「ということは...クミさんが必ず三人のうち誰かと入れ替わるってことか」

 

「たしかに、そうなっちゃうんだよな...クミリア大丈夫か?」

 

「まぁそこまで気にしないかな」

 

「それならよかった。んじゃ、どうせ行き止まりのところで入れ替わるだろうからさっさと進もうか」

 

あらかた問題が片付いたので、入れ替わりが起こるところまで移動し始める。そして着くまでの間、俺はもう一つの問題について考えていた。

 

その問題とは、俺は入れ替わるのかどうかということ。どうやら俺は、このシレンの穴に認識されてない節がある。個別訓練の階層で、神の使い専用の訓練場所に転移されないことや、ボス部屋の扉を開けた時の挙動の差から感じ取ったことなのだが、今回の入れ替わりはどう処理されるのだろう。

 

俺だけ入れ替わりが発生しないで、残る五人でうまい具合に入れ替わるのか、それとも普通に入れ替われるのか。レストと行ったダンジョンだとちゃんと入れ替わってたから、同じ原理だとしたら俺も参加できるんだろうけど...やってみないとわからないな。

 

ただ、もし入れ替わらなかった場合面倒なことになるんだよな。どうしてカリヤは入れ替わらないのーって絶対騒ぎになる。だからちゃんと入れ替わってくれ頼む。

 

「……あっそうだ。これ外しとかないと...」

 

服の襟に手を突っ込み、右肩に包帯でくっつけている翻訳の石を取り外して手に持つ。

 

「なぁみんな。もし俺と入れ替わったなら、俺にこの石を渡してくれないか?」

 

「なにその石」

 

「俺が生きていくのに絶対に必要なものだ。だから頼む」

 

「僕と入れ替わった時はそのまま僕が持ってなかったっけ?」

 

「あの時はたしかにレストが持ったまんまだったけど、今回はちょっと状況が違くてな。俺が持つ必要があるんだ」

 

レストと入れ替わった時は、周りにレストしかいなかったから翻訳の石本来の効果もあってそのままでよかった。けれど今回はみんながいるため、俺が持たないと俺と入れ替わった人としか話せなくなってしまうのだ。

 

「というわけでよろしくー」

 

「よくわからないけど、了解」

 

よし、これで解決できる問題は解決し切ったな。あとは、自分も入れ替われるかどうか祈るだけ...

 

「でも入れ替わったところで、あんまりやること変わんないよね、この三人」

 

急にレストがそんなことを言ってきた。指差してる人的に、三人ってのは俺とライトとレスト自身を指しているんだろうが...

 

「どういう意味?」

 

「僕とカリヤが入れ替わっても、速度操作と盾って魂依存なせいで本人にしか使えなかったんだよね。ライトの聖剣も本人にしか触れないから結局ライト自身が持つしかないだろうし、僕ら三人はこの試練あんまり意味ないかなーって」

 

「たしかにそうだな。背丈変わったり、適性が違うから使える魔法が変わるとかはあるけど、それぞれが持つ特有の力を試せないってのはちょっと微妙だよなーっと、着いたな」

 

突き当たりにたどり着いた。おそらくここで入れ替わって、ついでに転移もするのだろう。

 

『六人の生命を認識』

 

……今、六人って言ったよな?ってことは俺も参加できるってことだよかった。

 

「ちょっと待って二人とも、記憶だと『記憶置換、精神置換、準備...完了』

 

「悪いライトよく聞こえなかった。今なんて言った?」

 

転移前の音声のせいでよく聞こえなかった。

 

『空間拡張、擬似転移及び、身体交換を開始します』

 

ライトに聞き直したが、それを聞く前に身体交換とやらが起動、俺たち全員プツンと糸が切れた操り人形のように倒れ込み、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いっつつ...もうちょいこうさ、椅子とか用意して座らせてから入れ替わらせてくれないもんかねぇ」

 

どうやら倒れた時に手を擦りむいたみたいで、ちょっとヒリヒリする。製作者さんもうちょい配慮できなかった?

 

「そしてこの声と背丈的に...俺はレストと入れ替わったわけね」

 

立ち上がったおかげで確証を得た。というかまたレストか...何基準で変わったんだろ。後で考えてみよ。

 

「ちょうど都合よくみんなまだ寝てるし...先に翻訳の石回収しちゃおーっと」

 

スヤスヤと寝ている俺に近づき、手を開かせて...石が無い。意識を失った時に落としちゃったのかな...あ、よかった結構近くにあった。

 

「まぁ遠くまで吹っ飛んでても、速度探知があるからすぐに探せるだけどな。ワッハッハ」

 

そう、こんなふうに...あれ?

 

「あれ?あれあれ?速度操作が...使えない?」

 

どゆこと?なんで速度操作使えないわけ?魂に能力が宿ってるわけだから、入れ替わっても使えるはずじゃ...え?」

 

そこで俺は気づいた。前にレストと入れ替わった時には床に落ちていた盾。それがまだこの腕に付いたままなことに。

 

そういえば意識を失う前、あの謎の音声が言っていたのは記憶置換と精神置換、そして身体交換。もし入れ替わっているのは記憶と精神だけで、魂はそのままだったとしたら?

 

魂自体が入れ替わっていないのだとしたなら、俺が今速度操作を使えないのも、レストの盾をそのまま装着できていることにも説明がつく。

 

「……マジ?」

 

この世界に来てから初めて、速度操作無しの生活が始まった。




次回は精神を交換して、人の身体と能力で戦ってもらいます。
貴重な速度操作を使えないカリヤくんが見れる回なんで、必見です。
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