前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8453字。

今回は戦闘無しです。
説明多めかも...?


武器倉庫をこの身に

「なぜ、折れているんだい?」

 

ゴゴゴゴゴ...と効果音がつきそうな感じで怒っているのは俺で、怒られているのはレスト...というわけではない。

 

怒っているのはこの刀を作った二人のうちの一人、クルスだ。レストが折ってくれちゃった刀を直してもらうためにクルスの店に持ち込んだのだが、沸々と怒りが込み上げているのが目に見えてわかる。刀折られて怒るとか鋼○塚さんかな?...いやまぁ、自分が丹精込めて作ったものを壊されたら大体の人がこうなるとは思うが。

 

「いやー説明するとちょっと長くて複雑でそれなりに面倒なんだが...まず単刀直入に言うと、折ったのは俺じゃない」

 

「切りつけたら相手が固すぎて、ということでいいのか」

 

「いや、そんな言い方で情報操作しようとしたわけじゃなくて、ガチで俺が使って折れたわけじゃないんだよ」

 

「なぜ他人に使わせた」

 

「それも意図的なものじゃなくて不可抗力なわけで...」

 

いやまぁ、入れ替わったとはいえ刀だけは俺が持つってこともできたんだよなぁ...言わないでおこ。

 

「ちゃんと説明するわ。一旦その後ろ手に握ってるトンカチ的なものは置いておこうか、うん」

 

速度探知で見つけたそれを置くように促しながら、なぜ刀が折れたのか経緯を話し始める。

 

かくかくしかじか...

 

「なるほど、それは仕方がないと言え...なくもないな」

 

よかった、よかった!めっちゃギリっぽいけどオーケーみたいだ。なんとかデッドエンドを回避した感じがする。

 

「直しておくよ。自分で壊したなら料金取ってやろうと思ってたが、この理由なら取らないでおこう」

 

「今後修復費は取らないって話だったはずなんだが...?」

 

「気分によっては取る」

 

「ひでぇぞ契約違反だっ!」

 

「冗談だ。本気に取らないでくれ」

 

冗談に聞こえないんだよなぁ...

 

「あっそうだ。修復の金属片がちょっと減ってきてるから、補充お願いしてもらって良い?」

 

「わかった。補充もしておこう」

 

ポーチから刀を即時修復するための金属片を入れた小さな袋を取り出し、クルスに渡す。

 

「ちょっと悪いが、修復には時間がかかる。製作一つじゃ直せないものでな...少し時間を潰してもらいたいんだが、いいか?」

 

「それは問題ない。陽が沈む前くらいに回収しにくるから、それまでに作ってもらえればいいから」

 

「了解した。流石にその時間までには作れるさ」

 

「じゃあ頼んだクルス。良い出来を期待しているぜ」

 

そう言って俺は店を出る。懐中時計を見ると、おおよそ日没まであと二、三時間といったところか。今日は二階層しか攻略してないのに、思いの外時間が経っててビックリするな。

 

「さて、ライトに言われたものを回収して来ますか」

 

9936、9937ページ 次元転移

 

町中でニアの次元転移を発動して、縮尺の小さい世界へと移動する。ニアは町中で使うのを躊躇してしまう癖があるけど、俺にはそんなのないからカイスの中以外でだったら普通に使えるようになっている。

 

そしてサクッと移動してシレンの穴の前に着いた。速度操作も合わせると、数秒で四十キロを移動できるからめっちゃ楽だなぁ...次元収納と未来跳躍とかの適性を利用できるおかげで、消費魔力も結構少ないってのも楽な理由だな。

 

「えーっと、たしか八十七階層だったっけか...」

 

回収してほしいと言われたものは、今攻略しているところよりも二、三十くらい下の階層にある。ソロで回収してこいってなかなかに鬼畜なこと言うなぁと思ったけれど、その回収する物ってのがあまりにも魅力的すぎたので了承した。

 

「まぁ回収するのはいいんだけど、問題はそのあとだよなぁ...」

 

攻略していない階層よりも下に行ってしまうと、横穴から魔物が出てくるようになっちゃうんだよな。別に戻れないほどではないんだけれども、面倒という点で見れば、できれば避けたいところではある。

 

「避けようないし、行くしかないんだけどねー...行くか」

 

ヒョイっとシレンの穴に飛び込む。普通に降るよりも、飛び降りて速度操作で減速を相殺しながら降りる方が楽なんだよな。あっ、でもこの角度だと一段上のところに着地するなこれ。ちょっとは歩いて降りないとダメそうだ。

 

「着地っと...魔物出てくる前に入るか」

 

今着地したとこも、まだ未攻略の横穴だ。急いで降りて八十七階層の横穴に入る。

 

「具体的にどこにあるってのは分かってないんだったよな」

 

ライトが言うには、全ての世代の勇者パーティーがそれを手に入れたわけではなく、運良く見つけられた二、三回しか例がないらしい。そしてなぜか、勇者の記憶にはその物の取得方法が残されていなかったらしい。

 

「となると、わかりやすいところにはないはずだから隠し扉とかがある感じなのかな。速度探知があれば見つけられんだろ」

 

魔物からドロップする...みたいなゲーム的なことは確実に起こらない。また、宝箱みたいなのに入ってるとかいうこともないはずだ。

 

シレンの穴を設計した奴は、そんなわかりやすいことしない。めっちゃ複雑で面倒で、苦労しないと手に入れられないようなところにあるはずだ。例えば、いろんな場所にあるスイッチを正解の順番で起動させる必要があって、しかも一個一個が一番遠い場所に設置されてるとか。これでも生ぬるい気はする。

 

「というか、魔物全然出ねぇな。そういうコンセプトか?」

 

戦闘系じゃなくてギミック系なんだろうな。歩いてみた感じ、ひたすらに迷わされる迷路タイプってところか。

 

「そんなのついさっき迷わされたあそこと比べりゃどうってことないだろどうせ...いや、あそこは迷路が主体じゃないし、より酷くなってるかも...?」

 

まっ、ちょうどいいしこの機会にゴールまでの道全部覚えてみるのもいいか。ロケハンしとこ。

 

「……おっ、スイッチ発見!とりあえず押しておこ」

 

壁にあるめっちゃ小さな出っ張りを押し込む。とりあえず順番とかは関係なく押してみることにした。

 

「……魔力が流れたな。もしや、これ辿れば行けるか?」

 

スイッチを押したら壁の裏側で魔力が流れていった。電線に電気が流れ続けるような感じで、ずっと魔力が流れているから壁沿いに歩けば速度探知で追うことができるなこれ。

 

「なんだよ全然余裕じゃんか。罠とかもないっぽいし、回収だけならこれ追うだけでいけるじゃん」

 

速度探知様々だな。ロケハンは回収し終わってからやるか。さっきまで通ってきた道の方に魔力流れていってるし。

 

「……あれ?ここさっき通ったとこだよな?なんでスイッチあるんだ?」

 

魔力の流れをきちんと辿っていったら、一度通ったところでその流れが途切れており、さっき通った時には無かったスイッチがあった。

 

「なるほど、一個起動しないと次のは出ないわけか...ってことはさっきのは始点で確定なわけね。ラッキー」

 

まぁこれ、速度探知なかったら一個押すたびに全ての場所探さないといけないから、なかなか鬼畜ではあるんだよな。スイッチもめっちゃ小さいし。これを何度続けないといけないのかはわからないけど、最初に見つけた勇者たちは凄いなと思う。だって、これを続けた先に何かを得ることができるってのが確定してないわけだし。根気強いなぁと思う。

 

「みーつっけた今度は天井か」

 

ピョンと跳んでスイッチを押し...

 

「痛てぇ突き指した」

 

スイッチと言ってもほんの少しの出っ張りなわけで、ほんの少ししか押し込むことはできない。ちょっと強く押しすぎて痛めてしまった。

 

「こんなんで回復使う奴他にいないぞまったく...」

 

5092ページ 黒 青 再生

 

カスタムで指にだけ再生をかけ、軽い突き指をほぼ一瞬で治癒させる。

 

「よしオッケー。スイッチ探し再開だな」

 

今度は前へと魔力が流れていったので、普通に先に進む。

 

「ってなんだよすぐ行き止まりか。そしてここにスイッチと」

 

行き止まりの壁にあったスイッチを押す。意外と近くにあったな。

 

「……って、え?もう終わり?」

 

ゴゴゴ...と隠し扉的なものが開き出した。三つで終わりとかマジ?もしや考えるのめんどくさくなっちゃったのか製作者さん?

 

「ってかそれよりも、さっきまでこんな空間なかったよな...?空間ごと転移してきたのかな?」

 

速度探知で、この行き止まりの先は壁で埋まっているとわかっていたからこそ、ここで終わりなのかと驚いたのだ。考えられるのはさっき呟いたように、スイッチを押したことでこの先の空間が転移してきたってことくらいだな。そうでもしないと、壁を破壊されて不正入場されかねないし、あり得なくはない。

 

「まぁいいや。回収しよっと」

 

現れた空間に入ってみる。

 

「おぉーこれは明らかに何かありそうな感じの内装してんな...ご褒美のつもりかな?」

 

部屋の中央に浮いている正六面体のそれを掴み取る。

 

「これが装備即時着脱の魔道具ねぇ...」

 

今手に入れた魔道具は、まぁ簡単にゲームっぽく言うと、装備プリセットを保存していつでも取り出したりしまったりできる道具だ。自分の次元収納と装備の情報をこいつにリンクさせてから使うと、次元収納の中にある装備を一瞬でいつものように装備することができるのだ。これがあることにより、ただでさえ多すぎる俺の装備を常につけておく必要がなくなった。

 

本来、次元収納の中に武器を入れて必要な時に取り出す、というのは魔法拡散の存在により推奨されていない。いざって時に取り出せないという事態を防ぐために、常に持ち歩く必要があった。けれど魔道具は魔法拡散の中でも使うことができる。思う存分収納に突っ込み、本当に緊急時用の武器一つとこの魔道具一つ持ち歩くだけで良くなったのだ。

 

「ってかどんな技術だよほんとゲームみたいだな...」

 

こんな技術が後世に伝わっていないって、相当なロスだよな。解析できたらいいんだけど、あまりにも魔法陣が内部で折り重なりすぎて速度探知では解析できなさそうだ。ニアとリヒトならできるのかな?

 

「とりあえず登録は後でやっておくか。刀ないから今やっても意味ないし」

 

魔道具をポーチの中にしまう。武器をしまえると言っても、このポーチと魔法図鑑は出しっぱだろうなと考えながら隠し部屋を出る。

 

「……えーーっと?」

 

さてこっからはロケハンだと思っていたのだが、明らかにさっき通ってきた道じゃない。別物に変わってしまっている。それに魔物までいるじゃないか。

 

「隠し部屋開けられたから、ハードモードってか?」

 

なんかアンデッド屋敷を思い出すな...これはロケハンの前に、一旦脱出か?

 

「……来る!」

 

魔物がこっちに気づき、走ってきた。ダガーを抜いて構え、迫ってくる魔物にすれ違いざまの斬撃を...

 

「すり抜けた⁉︎」

 

なんで⁉︎と思って振り返ってみれば、魔物がいない。それどころか速度探知にも引っかかっていない。というか範囲外に出る前に消え去った。

 

「未来跳躍?...ってか道も元に戻ってる⁉︎」

 

えっ、なにこれよくわからん頭宇宙猫なるわ。今何が起こったんだ...?

 

「ダンジョンの構造ごと変わるってどゆこと...あっ、また魔族のせいだな?」

 

前にあったぞこんなこと。これ、魔物とかじゃなくて俺が転移されてるパターンだな?もう慣れたぞ。

 

「とりあえず後方確認...うん、行き止まりだな」

 

前回は、後ろが出口だったんだよな。今回は道が前にしかないし、とりあえず分かれ道に着くまでは前に進むしかないな。

 

「うーん...転移したにしては、通ったことある道のような?」

 

なんか今さっき、隠し部屋に入る前に通ってきた道をそのまま反対向きに通ってるような、そんな感じがする。

 

「わけがわからないよ。なんか頭痛くなってくる...」

 

ひとまず進んでみるが...あれ?この分かれ道って...もしや、こっち進めば...

 

「うっわ出口じゃん戻ってきちゃったよ」

 

なんか普通にシレンの穴第八十七階層の横穴から出たぞ?転移されてたわけじゃないのかよ。何が現実で、何が俺の想像の非確定情報だったのかわからんくなってしまった。

 

「なんだ?結局魔族は一切関与してなかったってのか?もう魔族が転移させてましたってシナリオの方が頭使わんくて良いから楽まであったぞ...」

 

「……ってかマズイこのままいたら魔物が!」

 

俺は今横穴から出てしまっている。このままだと上の階層の横穴から魔物が出てきて、襲いかかってきてしまう。幸い能力の範囲内にはまだ魔物はいないみたいだ。急いで駆け抜ける準備を...

 

「……いないし。あれか?やっぱり転移されててここはシレンの穴に似せて作っただけの別の場所なのか?」

 

いや、それよりももっと納得のいる説明がある。あるにはあるんだが...

 

「まさか、マジで認識されてないとはな...」

 

俺はシレンの穴に存在を認識されていない。そんな仮説を立てていたわけだが、マジで現実味を帯びてきた。

 

認識されていないがために、上にある横穴から魔物が現れない。このシレンの穴に入るときは、いつも誰かと共に中に入っていたために気づくことができなかった。

 

よくよく考えると、レストと底まで飛び込んだ時や、アクセルが俺を追いかけて中に入った時はすぐに魔物が出てきていたような気がする。一度だけ、レストと盾を回収しに来た時に一人で入ったことがあったが、その時魔物が出なかったのはすぐに離脱したからだと思っていた。もしそのまま居続けていれば、魔物が出てこないことに気づけたのだろう。

 

認識されていないがために、ダンジョンがきちんと機能しない。扉を開いても吸い込まれなかったり、個別訓練に巻き込まれたりといったことが起こる。他にも、ソロで横穴に入ってしまうと、そもそもダンジョンの仕掛けが一切起動しなくなってしまうらしい。

 

さっき入った階層のダンジョンは、おそらく一定時間で構造が変わったり魔物が現れたりするようなギミックがあったのだろう。それが起動しなかったために、えらく簡単な構造のままになっていた。そしてスイッチの位置は変わらず残っていたために、三つ押すだけで隠し扉が開いた。スイッチが三つと少なかったのも、ギミックがある前提だったからだろうな。

 

さらに、隠し扉の先の空間が急に現れたことにも説明がつく。スイッチ三つが押され、隠し扉が開く条件が満たされた。けれども、ダンジョンは起動していない。その矛盾を防ぐために、とりあえずダンジョンに誰もいないにも関わらず起動して扉を開いた。

 

ダンジョンが起動したことにより、魔物が生み出されたり構造が変わったりした。それが、俺が隠し部屋から出て見たあの光景だったのだろう。そして、魔物が俺に襲いかかってきたタイミングでダンジョンが機能停止して魔物も消えた。依然として中に誰もいないのだから、停止した。そういう認識なのだろう。

 

「シレンの穴に認識されてないのって、俺がこの世界の人間じゃないからなのかなぁ...」

 

認識されてない理由は、大体こんなところだろう。これくらいしか考えられる理由がない。

 

「人間の魂とは認識されてないけど、生物としては認識されてるから入れ替わりが出来る...ってことかな」

 

シレンの穴の全機能に認識されていないとすると、それはそれで矛盾が生じる。穴に飛び込んだ時の減速現象や、入れ替わりなど、俺にも干渉してきたことはいくつもあったからな。

 

けど、生物としてなら認識されていたと考えれば、一応の筋は通る。入れ替わりはあくまで精神と記憶の置換で、魂に関与していないから入れ替われる。減速現象も、魔族であるアクセルが影響を受けていたわけだし人間以外にも影響があると考えられるからだ。

 

スイッチを押して隠し扉がきちんと作動したのも、それで説明はつく。あれは人間の魂であるか否かは関係ないからな。使い魔的なものに押させることだってできるわけで、人間が押すことに限定する意味はない。

 

「そういや、個別訓練の時は勇者及び英雄の存在を認識とか言ってたけど、入れ替わりの時は六人の『生命を』つってたな...六人の方に意識を向けてたせいで、そこの表現の違いに気づけなかった」

 

一応だが、気付ける場面はところどころにあったわけだ。その度に都合の良い解釈をしてしまったわけだが。

 

「……って、そうなるとロケハン絶対できないじゃん。やろうと思ってたんだけどな...」

 

俺がソロで入ってもダンジョンが起動しないのだから、なんの意味もない。ここはもう大人しく帰ったほうが良さそうだな。

 

「どうせなら非生物として認識してもらった方が、こっから次元転移できたから楽なんだけど...しゃーねぇ登るか」

 

次元転移をするために穴の外へと向かう。前は急いで登っていたけれど、魔物は出てこないとわかっているし、時間も余裕があるためゆっくり歩いて登って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなー見て見てー」

 

刀も回収して今は夜、宿でみんなに回収した魔道具を見せている。

 

「よく一日で見つけられたね...六人で数日かかって見つけたものなはずらしいんだけど」

 

「まぁ色々あってな...」

 

不正マシマシで手に入れましたわ。

 

「で、なんなのそれ」

 

「あれ?ライトみんなに説明してないの?」

 

「うん。手に入れられるかわからなかったから、見つけてきたら言おうと思ってて」

 

「そうなのか...なら俺から説明してみせよう。実演でね!」

 

魔道具を胸の位置で構える。

 

「『古代道具(アンティークギア) 起動(ブート)』!」

 

詠唱により魔道具が起動する。起動した魔道具から光が溢れ出し、その光が消えたかと思えば俺の体にいつもの装備が取り付けられていた。盾も刀もダガーも弓も、全ていつもの場所にある。

 

「おお!一瞬でつけられるんだ!」

 

「すごいすごい!」

 

「どこから武器が出てきたの?それに、魔道具はどこに?」

 

「武器は魔道具とリンクさせた、俺の次元収納の中から呼び出した。魔道具は、起動中は俺の中に取り込まれてる」

 

「何その技術...意味不明だわ」

 

魔力で身体を作るとかやったニアに言われたくないと思うぞ多分。

 

「……ねぇカリヤ。さっきの詠唱って...」

 

レストが、自身の盾を指差しながら聞いてくる。

 

「そうだな、それと同じ詠唱だ。多分、作った人が同じなんじゃね?」

 

レストの盾もこの魔道具も、両方アンティークギアのようだ。あっちは盾に詠唱させていたけど、詠唱が同じだからなんらかしらの関係はありそうだな。レストの盾も現代の魔法では再現できない事象を起こすことができるわけで、古代の魔法技術が凄まじかったことが読み取れる。

 

「いやーこれめっちゃ便利だわ。ずっとダガーも弓も刀も全部持ってないといけなくて邪魔で仕方なかったのが、これ一つで全部解決だ」

 

「武器もしまえるって良いなー動きやすそう」

 

「それクミリアが言う?武器持ってないじゃない」

 

たしかにそうだよな。そういうセリフはライトとかステラが言う奴だぞクミリアよ。

 

「んでライト、これは俺が持つってことで良いんだよな?聞いた話じゃ、いつも勇者が持ってたとか言ってたけど」

 

ライト自身が言っていたことだが、この魔道具を見つけた全ての世代において、勇者がこれを所有していたらしい。聖剣はそれなりのサイズなわけだし、他の装備もあることを考えると重量がかさむ。それを解消するという目的と、そもそも勇者が何においても優先されるべきという風潮により、そうなったようだ。

 

「だってその大荷物だし、どう考えてもカリヤが使った方がいいでしょ。普段の生活見てて、ちょっと大変そうだったし」

 

「そんなふうに見えてた?そこまででもないんだけど...まぁいっか。それなら思う存分使わせてもらうよ。『古代道具(アンティークギア) 休眠(ドーマンシー)』」

 

装備が次元収納にしまわれ、胸から魔道具が出てくる。

 

「本当に取り込まれてるのね...ちょっとその魔道具調べてみたいのだけれど、いいかしら?」

 

「いいけど、一旦次元収納とのリンクを切らないといけなくなるから明日でいいか?」

 

「いつでも良いわ」

 

「……そうだちょっと自慢してやろー、ニア見てて」

 

「なによ急に」

 

「『古代道具(アンティークギア) 限定起動(リミテッドブート)』」

 

詠唱をすると、ほんの少しだけキューブが光り出す。

 

「……何も起こらないわよ?」

 

「こいつは言わば鍵みたいなものでな...さっき次元収納とリンクさせてるって言ったろ?これを起動するだけで...ほいっと、こんな感じで中のものが取れる」

 

魔道具のすぐ近く、何もなかったはずの場所から突如としてダガーが出現し、俺はそれを掴み取る。

 

「つまり、この魔道具があれば次元収納を発動しなくても中身を出せるってわけだ。すっごい便利じゃね?」

 

「ず、ずるい!ちょっとそれ私に渡しなさい!」

 

「無理なんだよなぁ...レストの盾と同じで、リンクさせた所有者以外は触れないようになってんだ」

 

「今すぐにリンク切って渡しなさい早く!」

 

「ちょっ、流石にその剣幕で来られると怖いぞってなわけでさよなら俺は部屋に戻らせてもらう!」

 

魔道具の報告が終わったからもう用はない。明日貸すつってんだから今日は大人しく引き下がれとニアに向かって叫びながら、俺は部屋へと戻った。




シレンの穴に認識されてないどうこうの話ありますけど、なんとなくで流しちゃってもほとんど問題ないんで、ふんわりニュアンスだけ掴んでもらえれば結構です。
それ関連でもう一個大事なことがあるにはあるけど、そっちはまだわかりやすいはずなんで、その時が来たら説明また頑張りますのでよろしくお願いします。
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