前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
ついに聖剣が鞘から抜ける...?
「六十階層おーわり!」
第六十階層のボスを倒したので、出口の扉が開く。
「そして終わったってことは...?」
「ライトの剣が抜けるってわけだ。ほら抜いてみてよ」
「厳密には抜けるわけじゃないんだけどね...ここでやっても斬る相手がいないし、次のボス相手にやろうかな」
「ん?時間制限ある感じか?」
「そういうわけじゃないんだけど、それなりに魔力を喰っちゃうからさ」
「なんだそうなのか。じゃあ期待して待ってよ」
そう言いながら次の階層へと向かう。
「次ってどんなギミックあるんだ?」
歩きながらライトに聞く。
「自分にも他人にも、バフをかけることができないってやつ」
「へー、バフ禁止か...それってクミリアキツくね?」
クミリアの力は、もちろん本人の筋力によるところもあるけれど、その多くはバフのおかげで成り立っているところがある。バフを使えないとなると、クミリアは相当パワーダウンしてしまうのだ。
「たしかにキツいけど、それってカリヤもじゃない?加速できないとかカリヤじゃないじゃん」
「俺を速度操作だけの男だと思うなよ〜?減速さえ使えれば仕事できるんだぞ俺」
まぁそもそも、加速が本当に使えないかってのはまだわからないんだけどな。魔法拡散の中でも通常通り使えるイレギュラーなわけだし、バフ禁止でも普通に使える可能性はある。ライトに減速が効かないみたいに、使えない可能性も十分あるけど。
「そういや、ライトってどうなるんだ?ライトってデバフ無効があるわけじゃんか。バフ無効がデバフ扱いなら、普通にバフを使える可能性ない?」
「たしかにどうなるんだろ?」
「普通にバフ使えるよ。けど、さっき言ったバフ無効って、他者からバフを受け取ることできないみたいだから、自分には使えるけどみんなにかけるってのはできない感じになると思う」
他者から受け取ることもできないというのは、魔道具でバフをかけるってのもできないようにするためだろうか。だいぶ徹底されてるな。
「そっか。じゃあこの階層の主戦力はライトになりそうだな。聖剣の件も併せて、期待するぜ」
ちょうど横穴のところまで着いたので、入場する。こっから先はバフが使えないわけだが...
「うわほんとだ。バフが無効化されてる」
肉体に直接刻み込んでおり、ほぼ常時バフを発動しているクミリアが反応する。
「再生は起動したままだから、そこはまだマシって感じかな」
「そんなクミリアに朗報だ。なんと速度操作が普通に使える」
「えっ、それほんと?」
「何から何まで規格外よねその力...」
「もしかしたらいけるかなーとは思ってたけど、俺もまさかいけるとは思わなんだ」
シレンの穴に飛び込んだ時の減速現象は速度操作を貫通して減速させてきた。同じシレンの穴のギミックなのだから、同じように速度操作が無効化されるんだろうなーと、どちらかといえば無効化される可能性の方が高いと内心思っていた。
速度操作がバフ判定されていないのか、俺の魂がシレンの穴に認識されていないがゆえに、魂に刻まれた能力である速度操作が無効化されていないのか...どっちなのかは知らんけどまぁいいや。使えるってことだけわかってりゃいいか。
「ってことで、クミリア一緒に動こうぜ。普段ほどの火力出るかはわからないけど、サポートするぜ」
「よろしくお願いねー」
「じゃあ進むわよ。基本的にはライトが先頭ね。レストもバフを使えないから先頭を任すわけにはいかないし」
「うん、お願いライト」
「俺が加速させればよくね?」
「カリヤはクミリアにつきなさい。レストは私が補助するわ」
「おけ了解」
ひとまず、魔物が出てくるまで進む。
「おっ、来た来た」
バフ禁止なんてギミックしてるんだから、やっぱ魔物出てくるのが早いな。こりゃ戦闘続きになりそうだ。
「んじゃ行くぞクミリア!」
「もち!」
ライトが聖剣を振って魔物を切り倒しているすぐ横を二人で走り抜ける。
「って装備するの忘れてたクミリア攻撃よろ!」
「なにしちゃってんの⁉︎」
『
クミリアが魔物を殴っている間に魔道具を起動して、装備を身につける。使い始めて初日だから未だに慣れないな...
「よしこっからは参加するぜ」
ダガーを抜き、魔物を切り裂く。普段速度操作以外のバフは適宜必要な時に使う感じでやってきていたから、俺はほぼいつもと変わらない感覚で攻撃することができた。
「そういや雷装って使えんのか...?」
『雷装』
「……ダメだ発動しないな。バフ判定されたか...」
「要らない要らない!こいつら大したことないからそんなの使わなくても勝てるよっ!」
クミリアはドンッ、と魔物を蹴り飛ばし、ボウリングの如く後続の魔物を吹き飛ばしていく。
「まぁたしかに弱いけれども...こいつらバフ受けてるっぽいんだよな。見知った種類のはずなのに、記憶よりも速いし硬い」
「こっちは使えないのにあっちは使えるってちょっとクミさんイラついちゃうねぇ...」
「その怒りをぶつけてこい」
「オッケー...そぉい!」
空気の腕を振り回し、吹っ飛んでいった魔物に追撃するクミリア。魔物は...消えたな。道中でも倒したら消えるタイプか。
「あとはライトのとこのだけど...もう倒してるか」
後ろを見ると、ライトが最後の一体を処理したところだった。だいぶ残してきたつもりだったけど、やっぱバフがあるから強いな。
「よし、先に進むか」
この調子でいけば、少なくとも道中はサクッと攻略できるだろう。ボスは流石に火力不足で苦戦するだろうけど、ライトが聖剣を抜けば十分勝てるはずだ。
とりあえず苦戦するまでは、クミリアのサポートについて、無心で戦い続けることにしよう...
「なんだかんだ苦戦することなくボス部屋まで来れちゃったな...」
「ここまで何もなかったからこそ、どれだけ強い魔物が来るの?って心配になるね」
「油断せずに行きましょ。ライト、ボスの情報は?」
「えーっと...」
「……どうした?もしかして情報無し?」
「あー、いや見えた見えた。なんか下の階層に行くにつれて、ちょっとずつ記憶が見えにくくなってるんだよね」
「少しずつ攻略情報が減ってくのか。まぁ全部わかってたら難易度低くなりすぎるもんな。んで、ボスはどんな奴?」
「なんかゴーレムっぽい。バフがないとキツそうだね...」
「やっぱそういう感じのボス出してくるよな。聖剣を鞘から抜いて使えるようになったんだから、思う存分試し切りしろよこいつでって感じで作ったんだろう」
こういうところはちゃんと考えて作ってるんだなと感じる。その他のギミックの難易度設定はイカれてるけど。
「んじゃ、さっさと入ってライトを活躍させるか。みんな、全力でライトの援護に回るぞ」
「わかった」
「りょうかーい」
「よし、開けるぞ」
扉を開け、ボス部屋の中に入る。
「いくよ...『聖剣展開』!」
ついに聖剣が鞘から...
「へぁっ⁉︎」
鞘から剣が抜けると思ったら、鞘が開いた。パカっと開いて、ガシャガシャと動いていく。ドミ○ーターみたいな感じで展開した鞘が動き、それ自体が刃と化す。
「スッゲェ勇○パースだ!」
勇者が勇○パースしてる!というか、たしかに鞘の状態でも切ることはできていたけれども、まさか鞘が変形して本物の刃へと変わるとは...刀身も長くなってるし。結構長くなってるけど、めっちゃ振り回しにくそうだな。扱い切れるのか?
……あっ、なんか既視感めいたものがあると思ったら、あれだ。キル○キルの武滾流○怒だ。展開方法は若干違うけど、あれに似てるんだ。
「すぅー...っ!」
深呼吸しながら大量のバフを自身にかけたライト。一瞬で地を駆け抜け、聖剣を振りながらボスのゴーレムの足下真横を走り抜ける。
「うそ...でしょ...?」
相手はゴーレムだ。それはそれは防御力が高く、硬かったのだろう。けれども、真の姿を現した聖剣の前には紙も同然。
ゴーレム自身、足を動かそうとしてバランスを崩すまで、切られたことにすら気づかなかっただろう。その切れ味も壮絶なものだが、斬撃の速さも凄まじい。速度操作で反射神経を最大まで加速させていた俺にしか、ライトの動きを視認することができた者はいないだろう。
「何あの速さ...いつ切ったってのよ」
「聖剣の力を解放しただけであんな速くなるって驚きだよなぁ...切れ味もエグいけど」
またしてもライトは高速で移動し、ゴーレムのもう片方の足を切る。また一太刀。一振りであの太く硬そうな足を切り飛ばしてしまった。
「もうあれライトだけで倒せるんじゃねぇか?」
両足を切り飛ばし、完全にゴーレムの機動力を削いだライトはすぐさま上半身を狙って跳ぶ。今度は腕のようだ。えらく慎重だな。あの剣なら最初から首を狙えばいいだろうに...
「っ...⁉︎」
「切れて...ない?」
ライトが不思議そうな声を出して驚きながら、ゴーレムの腕と聖剣で鍔迫り合いのように押し合っていた。なぜ切れない?少しは刺さっているのだが...覚醒した聖剣よりもあの腕は硬いってのか?
「なら次は首...!」
ゴーレムの腕を蹴って一度離れると、ライトはすぐに首めがけて切り掛かる。
「ここもかっ...!」
首にも刃があまり入らない。さっき足を切り飛ばした剣と同じなのか疑いたくなるな...
「なんで切れないんだ?時間制限はないって話だったはずだろ?」
「……あの鎧のせいじゃない?」
「鎧?...ああ、確かに上半身だけ付けてる...ように見えなくもないな。でも、いくらバフがかけてあったとしてもあの挙動はおかしくね?」
よく気づいたなレスト。来てない部分との境目が一切わからないぞ。鎧がめっちゃ薄いか、鎧をつけていると気付かれないようにゴーレムを設計したかだな。やっぱ盾使いだから、鎧とかにも詳しいんだろうか...
でもさっき言ったように、鎧であの切れ味の聖剣を受け止め切れるとは到底思えない。何かタネがあるなこれは...
「……ってなんか降ってきた⁉︎」
天井から棒状の何かが降ってきた。あれは...金棒か?
「魔物に武器支給とかどうなってんだよ...ってかくっちゃべてる場合じゃねぇ加勢しないと!」
ライトがゴーレムの金棒と鍔迫り合いしている。あの武器にも何かしら細工がしてあるのか、足のように切ることができていない。バフによる腕力で押し返せていたけれど、攻撃が通っているわけではないからキツそうだ。ライト以外まだ動いてないし、全員で加勢しに行かないと...
「いや、ちょっと待ちなさい」
「何言ってんだニア。流石にライトも負けはしないけど、一人じゃキツイぞ」
「もう少しで何か分かりそうなのよ...急に聖剣が効かなくなった理由が」
「そんなもん戦いながら考えれば「それはカリヤしかできないわよ」...まぁそっか」
ニアは頭の中で魔法陣を描くから、あまり思考には脳のリソースは割けない。
「ならニアは待機でいい」
「……後付け」
「あー、なんだって?」
「わかったわ。何故あの鎧と武器が切れないのかがね」
「手短に説明頼む」
「なら送り込むわ」
「っ!」
ビビビっと頭の中に情報が流れ込んでくる。
まず見えたのは、ニアの見たマナの様子。ダンジョンの中は、全て魔素で埋め尽くされている。聖素は本来一切含まれていない。
けれども、ライトの聖剣の周囲だけ、そこだけは聖素だけ漂っていた。鞘の状態のまま地面に突き刺して行う魔素反転聖域展開と同じように、周囲の魔素を聖素に反転させているのだろう。
そして、魔素は魔物や魔族の力の源であり、その濃度によって大きく力が変わる。もし周囲が全て魔素で埋め尽くされていたら、それはもう強化されまくりだろう。
そこで、だ。もし攻撃の当たる瞬間だけ、その攻撃する場所付近の魔素を無くしてしまったらどうなるだろう。当然、魔物の力が一時的に弱くなり、刃が通りやすくなる。魔素がなくなるだけでなく聖素で埋め尽くされるわけだから、なおさら攻撃が効くようになるだろう。これが、ゴーレムの足をいとも容易く切ることができた理由だ。
なら何故鎧と金棒は切ることができないのか。それは、聖剣の力は魔物にしか通用しないから。聖素に反転することで脆くなるのは、魔物だけ。ニアの推測によると、あの鎧と金棒はゴーレムが元々持っていたものではないらしい。
ゆえに、聖剣の力が通用しない。ただ単に切れ味のいい剣ぐらいの効果しか出すことができないわけだ。普通の武器で攻撃するのとなんら変わりない。
「理解した。ライトだけじゃキツイすぐに加勢する。行くぞクミリア!」
「いいわ行きなさい!援護するわ!」
クミリアと二人で走り出す。その上をニアの魔法が突き抜け、ライトに向かって振り下ろされようとしていた金棒に直撃する。
「って効いてない⁉︎」
少しよろめいただけ。何かしらの魔法耐性を得ているようだ。すぐに金棒はライトに向かって振り下ろされる。
「させないよ!」
一旦クミリアから離れ、振り下ろされる金棒との間に割り込む。そして盾を斜めに当てて逸らす効果を発動させ...られないっぽいので減速をうまく使って受け流す。
「付与された魔法も無効化されるのか...こりゃ面倒だな」
おそらく、障壁も突破されるだろう。バフのない俺の膂力では受け流すのが限界だ。押し返したりできるのはライトだけだろう。
「つまり俺たちの勝利条件は、ほぼ魔法無しの物理攻撃であの鎧を砕き、ライトの聖剣を通すこと...って感じか。鍵はクミリアだ」
クミリアのところまで戻り、二人でゴーレムの胸付近まで跳ぶ。
「っ、でもバフのないクミさんじゃこの鎧貫けないよ!」
二人で加速しながらキックを叩き込むが、鎧はびくともしない。そりゃそうだ。魔物特攻が意味無しとはいえ、聖剣は聖剣。素の切れ味は相当なものだろう。それでも少し食い込むくらいだったのだ。こんな蹴りなんか屁でもないだろう。
「この程度の鎧なら、あともう少しでもバフがあれば貫けそうなんだけど...!」
「それマジか?」
「手応え的にはね。足だったけど」
少しのバフさえあれば...か。でも、バフは使えないんだよな。もし使えたとしても、バフを受け取ることもできないんだったはず...受け取るって、どういう定義だ?他者からバフを受け取ることを禁止するって、他者とは?どこか言い回しに違和感がある。何か、抜け穴がありそうな気がしてならない。
「でもバフ使えないから意味ないか。もっと考えないと...」
「……あっ、できる!バフ使える!」
あった。この状況で、みんなにバフをかけられるかもしれない技が一つだけあった。これなら原理的に、普通にバフをかけることができるはずだ。
「えっ?それホント⁉︎」
「ああホントだ!しかも全員な!ついでにデバフもできるぜ!」
魔法図鑑に魔力を流し込む。そこから先必要なのは、俺の技術だけだ。
「さぁ行こう!ミュージックスタートだ!!」
3751ページ上 黒のみ 演奏
爆音を辺りに撒き散らす。音階によってきちんと対象を指定し、魔物にはデバフを、みんなにはバフの音楽を耳に届ける。
「これ...ミルキーちゃんの音楽⁉︎」
「こいつは直接バフやデバフを振り撒くわけじゃない。ただ単に、音楽を聞いた奴の体が勝手に活性化されたり、鈍ったりするだけ。言ってしまえば代謝のようなもの。バフを受け取ったわけじゃないんだ」
「なるほど、そんな抜け穴があったわけね...うん、これならいける!」
クミリアが跳び上がった。加速によるサポートをするため、俺も跳び上がる。
「二人でいくよ!せー...」
落下速度を加速させながら拳を振りかぶる。
「「のっ!!」」
ドゴォッッ!
「「砕けた!」」
二人で拳を叩き込んだ鎧の一点、そこが砕け散り、奥にあったゴーレムの外装が露わになる。
「ライト今だ!」
ライトに向かって声をかける...が、反応がない。後ろを見ると、金棒の攻撃に押されて思うように動けていないようだった。
「カリヤ!」
ライトを助けに行こうとしたその時、レストの声が聞こえる。ニアとステラのところから、走ってこっちに向かってきているってことは...そういうことだよな!
「受け流せレスト!」
「言われなくても...!」
クミリアから離れ、こっちに向かってくるレストのもとまで近づき、レストの走る速度を加速させる。
次の瞬間には、レストはライトのすぐ近くまで辿り着いており、左腕の盾を金棒に押し当てて真横へと逸らす。
「さぁ行けライト!」
「援護するね!」
ライトが鎧に空いている穴に向かって跳ぶほんの少し前、ステラが援護として矢を二本放つ。矢は二本ともゴーレムの目に刺さり、行動を一瞬鈍らせる。
レストとステラの二人で作った隙は、今のライトの前ではあまりにも大きい隙だ。身体と聖剣に雷を纏わせながら、目にも止まらぬ速さで...
「速え...」
やばい。動き出しの瞬間しか視界に捉えることができなかった。気づいた時には、ライトはもうゴーレムの身体を鎧の内側から斬り裂き、バラバラにしてしまっていた。
「なんつー速さだよ...もう最強じゃん」
音速...とまではいかないまでも、普通に速すぎる。下手したら、大会中のアクセルくらいの速度は出てるんじゃないか?ここまで速く動けんのか...
「ヤッベェ、なんかワクワクしてきたなにこの気持ち」
六十だぞ?シレンの穴の五分の三でここまで強くなるってなると、全部攻略しきったらどれだけ強くなんだよ。というかこれやって倒せない魔王ってどれだけ強いんだよそっちも怖くなってきたぞ。
「ふぅ...『聖剣納刀』」
消えゆくゴーレムの中から出て、軽く息を吐いたのち聖剣を元の形に戻すライト。俺はそこに近づいて声をかける。
「ライトあの速度はなんなんだ速度操作無しであれはエグすぎんだろ」
「ちょっ、ちょっと怖い...」
「途中までのはまだ見えたけど、最後のあれは俺でも見えなかったぞ。サラッと普段の俺より速く動いてるんじゃないよ」
「最後のは...ほら、あの妙な音楽があったから...」
「あそっか」
「それに、カリヤがたまに使ってる複合魔法を使ったからあんなに速くなっただけで、聖剣のバフはそこまででもないよ。もちろん、聖剣展開だけでそれなりには速くなるけど」
「あっ...なんだそういうことか」
びっくりした。全力疾走のバフのおかげでもあったのか。まぁそりゃそうだよな。雷装も使ってたし、あれだけ加速できるのは納得しかない。
「って、全力疾走使って大丈夫だったか?あの速度で突っ込んだら普通に怪我しかねないはずなんだけど...」
「それは大丈夫。聖剣のおかげである程度の衝撃は勝手に受け流してくれるし、怪我しても少しくらいなら治るようになってるから」
……たしかに、会話を始めた時にあった、ライトの体の小さな擦り傷が消えてる。聖剣が治したってのか...自己回復もあるとか聖剣万能すぎない?
「でもこれ...結構魔力使っちゃうっぽい。魔力回復も同時にできるけど、ちょっとしか回復できないからジリジリと削られちゃう感じかな」
展開中は聖剣の周りは聖素で満たされる。だから聖域の中と同じような感じで魔力を回復できるはずだ。その回復量を上回る消費となると、一人で長時間使うのは難しそうだ。
「俺が近くにいたら加速で魔力問題は解決するだろうけど、ずっといれるわけでもないから使い所を考えないとダメそうだな」
「そうだね。消費を考えて、ここだってところで使うようにするよ」
「話は終わったかしら?」
「ん?ああ、うん。ちょうど終わったとこ。もう次進むか?」
「少し休憩を取るわ。あれだけ動いたのだから、ライトも疲れているでしょうし」
「うん、ありがたい」
「よし、それじゃあ休憩にするか」
「あとカリヤはこの爆音をどうにかしなさい」
「あ、ごめん忘れてた」
演奏魔法を解除する。ループ再生させてたから、切ることを完全に忘れてしまっていた。というか、よく爆音の中話してたな俺たち...
「耳キンキンする...カリヤ、いつものを出しなさい」
「へいへい」
体内に取り込まれている魔道具を介して次元収納にアクセスし、休憩のいつものお供となっているお菓子(自作)を取り出す。
「甘くていいのよね、これ」
「美味し〜」
「ゆっくり休憩して、次の階層に臨もうか...ニアさん?あなたボスが魔法耐性持ちだったからあまり仕事なかったはずだよね?そんなにいっぱい食べるんじゃないぞ食いしん坊め!」
「いいひゃないのよへつに」
「モゴモゴ咀嚼しながら喋んじゃねぇハムスターかっ!」
「ニアちゃん...」
「ねぇカリヤ、ハムスターってなに?」
ああ、途端にカオスになった。完全にピクニック空間が形成されたけど、ここがダンジョンだってこととかついさっきまで戦ってたことをもうみんな忘れてるよな。
まぁ、それが俺らのパーティーの雰囲気であり、心地いいんだけどな...いやでもカオスはもうちょいどうにかしてほしいわやっぱり。
最近話の終わらせ方がわからなくなってグダッてしまう...
グダるのもそれはそれで彼ららしいと言えばそうなんですけれども、もうちょいビシッと締めたいこともあるんですよね。
久しぶりに、魔族サイドの描写を入れるとかもありか...?