前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
魔族と戦わせたいなーってことで、第六十七階層です。
第六十七階層
ライトから、次に挑む階層について聞いていたのだが...
「えっ、魔族?」
「うん」
なんとこの階層では、魔族が出てくるらしい。まぁ流石に本物が出てくるわけではないらしいけど。
「俺たちの記憶から情報を抽出し、擬似魔族を作ってそれと戦うとか毎度のことだけど技術力どうなってんだよ」
その場で擬似魔族を作り出すってどゆこと?サクッと生命を創るんじゃないよまったく...
「そっちに驚くの?」
「わかるわカリヤ。どんな魔法をもって創り出すのか興味があるわ」
「ああダメだこっちもだ...」
最初の頃はどうしてこんなにも話が逸れていくのかわからないと言っていたニアも、魔法が絡めば積極的に逸らしにいくようになったなぁ...まだ常識人側だけども。
「話戻したいんだけど、いい?」
「いいよどんどん戻しちゃって」
「カリヤがそれ言うのは違うんじゃ...話戻すよ」
ライトが仕切り出す。こういう取りまとめ役をやっとライトもできるようになってきた。
「さっきカリヤが復唱したけど、魔族は僕達の記憶が基となって創り出される。今回は多分四体」
「アクセルとフロート、あと名前は知らんが転移と魔素使いの二人だな」
「多分ほとんどカリヤの記憶が使われるでしょうね」
「まぁそりゃ、全員と戦ってんのは俺だけだからな...でもクミリアもアクセルと戦ってんだから使われるだろ」
「でもあれは魔族体じゃなかったしさ。逆にあれの記憶を使われて弱くなるのもやめて欲しいかな」
「弱くならないでくれってどうなんだ...?」
「あっ、先に言っておくけど、必ずしも全員倒さないといけないってわけじゃないよ。ガネルの闘技場みたいな感じだから、死んでも問題無し。負けても突破扱いになるんだって」
「へー...でも、できるなら倒したいよね」
「いやー無理でしょ」
「カリヤあんた、なにやる前から諦めてるのよ」
「いや無理だろ。だって全員同時に出てくるんだろ?一人ずつ出てくるならまだしも、全員同時に戦えって言われたら無理としか言いようがない」
「あなた一人で戦うわけじゃないのよ?人数的に有利なのだから行けるわよ」
「それは魔族と戦ったことがないから言えるんだ。あと、さっき一人ならまだしもと言ったが、一人だけでもキツいぞ」
「なんで?カリヤ何回か勝ってるんでしょ?」
「戦うたびにボロボロになってるってのを忘れないでほしい。あと、勝ったつってもそれは手加減ありでの話だ。奴らの中で、俺は殺さないってことになってるからなんとか戦いになってるだけで、本気を出せばどうなるかはわからない。遊びで俺とニアがいる部屋に一人乗り込んでくるフロートとかいう魔族もいるんだぞ?一人だからといって勝てるかどうかはわからん」
「本気を出せばって言うけど、カリヤの記憶が使われるんだから、手加減状態の魔族と戦うことになるんじゃない?」
「……ステラお前天才か?」
確かにそうじゃん。俺が知ってることしかしてこないんだから、あれ以上の動きはしてこないんだ。
「ってことは...まぁ勝てるかどうか確率は一割程度ってところかなぁ」
「一割なら余裕じゃない」
「余裕って...」
「ゼロじゃないのだから勝てるわ。ここにいる六人ならね」
「……そういうのは魔王のいる部屋の前とか、魔王城に乗り込む前にしような。こんな六十七とか中途半端な階層でやることじゃないぞ」
「うるさいわね...勝つために情報全て吐きなさい」
「情報吐けって仲間に対して使うフレーズじゃないよな...吐けと言われても、あらかた前に話したよな?」
「単体の性能はね。今知りたいのは、全員揃った時にどんな相乗効果が生まれるのかよ」
「あー、そういうことね...ならその前にライトに質問したいんだが、その創り出される魔族って、どの状態のが出てくるんだ?」
「……ごめん、ちょっと言ってる意味がわからなかった」
「なんで言えばいいかな...ほら、フロートって一定時間触れた相手の姿や能力を模倣できるじゃん?そして模倣したやつはストックできるみたいなんだけど、ストックゼロの状態で創られるのか、それともストックしてたって俺が知ってるのを全て備えた状態で創られるのかってことが知りたい。もっと簡単に言えば、最強の手札を持って出てくるのかどうかってことだな」
「なるほど、そういうことね...うん、多分全部ストックされた状態で来ると思う」
「マジか...よしちょっと待て、一旦こっちで整理してから話すわ」
まず、それぞれのスペックから考えていくか...
アクセルの固有能力は、身体強化。シレンの穴は魔素で埋め尽くされているから、自動的に最高速度の音速を必ず叩き出してくる。そして雷装もあるからさらに加速するだろう。
次、フロート。さっき例には出したが、案外実際よりも弱くなるかもしれない。俺が知ってる分しかストックしてないはずだから、最大残機はおそらく百もないだろう。その残機は直近で戦った時に一瞬で削ったものがほとんどで、その時なんの力を模倣した姿を切ったのかはほとんど認識していないから、そのストックは意味をなさないだろう。
なので、おそらく使える力は、ミリフの水分操作、カイの熱操作、アクセルの身体強化、ワンナの略奪、ステラの弓矢技術...くらいだろう。他の魔族の力も持っている可能性はあるが、実際に使っているところは見ていないので多分今回は使えないはずだ。
次は...転移の魔族にしよう。まず考えないといけないのは転移だけど、やろうと思えば俺らを転移させることもできるだろう。一回転移されたことあるしな。けど戦闘中にやられたことはないから、多分動き続けていれば転移はされないはず。地面とか壁の中に送り込むことができるかはわからん。わからないからやってこないはず!
そして、魔族たちはバンバン転移して攻撃してくるはず。魔素で埋め尽くされた空間だから、タイムラグ無しのゼロ時間移動となって俺たちに襲いかかってくるだろう。
ただ、転移の魔族がどんな攻撃するかはあまりわからないんだよな...魔法ならあらかた使えるんだろうけど、透明化しながら戦ってるし二人いたからどっちが使った魔法なのか判別しにくいのもあって、こいつも相当パワーダウンしそうだな...
「って今思ったんだけど、俺転移と魔素操作の魔族は姿見てないんだよね。速度探知のおかげでシルエット姿はわかるんだけど、透明化状態で出てくるかな?」
「うーん...それは戦ってみないとわからないかな。透明になって出てくるか、輪郭だけ再現して黒塗りの人体模型みたいになるかも」
「おけ了解」
疑問点を確認したし、あとは魔素操作の魔族だけだな。まぁ、固有能力は魔素操作だけじやないってのはわかってるんだが、具体的にどういう力なのかってのはまだ分かりかねてるんだよな。でも知識としてはあるから、火球が急にデカくなったりとか、障壁を蹴ると急加速するとか、そういった行動はちゃんとしてくるだろう。
使ってくる魔法は、転移の魔族同様いまいちよくわからない。多分あっちが使える魔法はこいつも使えるのだろう。姉妹、もしくは双子なわけだし、そこら辺は似通っているはずだ。そしてこいつは、肉弾戦もちょくちょく使ってくる。急加速もあるから、気にする必要はあるだろうな。
とまぁ、個人のスペックはこんなところか...こっからはどんな連携をしてくるかを考えるか。
まず、魔素操作の魔族が周囲の魔素を増幅させて、全員の力を増幅させる。それによってアクセルはさらに加速するな。転移の魔族はアクセルやフロートを転移させてくるのは言うまでもない。
……今気づいたが、おそらくフロートはアクセルから雷装を模倣していない。雷装を手に入れる前のアクセルから模倣したためだ。けれども、この戦い中に模倣する可能性は大いにある。だから、さっき転移と魔素操作の魔族の固有能力はストックにないだろうと考えたけれども、途中で手に入れるってことは考えられるな。
そうなると、フロートが暴れ回ることになる。他の三人の役割を全て代用できるのだから、強いと言うしかない。フロートを抑えるのが鍵になってくるな...
それに加えて、水分操作と熱操作による範囲攻撃プラス防御がある。特に、絶対零度領域の突破は難しいだろう。使われたらもう無理だから、使われる前に止める他ないな。ニアに周囲の気温を掌握してもらうしか手はないだろう。
さらに略奪もある。それぞれ大事な武器が盗られかねない。多分フロートがストックとして持っている力は盗られないから、ステラの弓矢やみんなが持つ魔力銃、雷装などは盗られないはず。あと、魂で所有者を決めている聖剣とレストの盾も盗られないだろう。逆に言えば、それ以外は盗まれる危険があると考えた方がいいだろうな。
……あいつらにできる連携はこんなところか?アクセルが前衛の主戦力。フロートがなんでもこなす万能役かつ相手を引っ掻き回す役割。魔素操作の魔族は肉弾戦もできる魔法アタッカーで、転移の魔族は完全サポート役といった感じだな。
……あー忘れてた。魔素操作と転移は、同時に殺さないと何度でも蘇生されるんだった。そこら辺も加味して、どんな対策を立てればいいのか、誰が誰を担当して戦えばいいのかを考えないと...
「再確認するぞ。アクセルは俺が殺る。フロートはライトが殺って、残る二人は四人で殺る。いいな?」
この扉を開ければ魔族たちの待つ部屋ってところで立ち止まり、作戦の再確認をする。と、ここで装備しておかないとな。また忘れるところだった。
『
「ねぇねぇカリヤ」
魔道具を起動して装備を付けていたら、ステラに声をかけられた。
「なんだ?」
「ずっと思ってたんだけど、なんで魔族たちのことを何人って数えてるの?」
「あ、私も気になってたのよねそれ」
「……人って言ってた?俺」
無意識だったな...そういやみんなは魔族のことを何体って呼んでるな。魔物と同じカテゴリーなのだろう。
「まさか、人間と姿形が似てるからじゃないでしょうね?あいつらは魔物よ。何人って呼ぶべきじゃないわ」
人の姿をしてるってのもありそうだが...魔族は人間の魂をもとに生まれるっていう話を神様から聞いているから、それが影響しているのかもしれない。
「そうかもしれないけど、今は関係ないだろ?今やることは魔族を倒すことだ」
「……そうね。作戦は頭に入ってるわ。さっさと入りましょ」
「了解。あいつらのことだから扉開けた瞬間に攻撃とか普通にあり得る。防御の準備頼むぞ」
「わかった」
「じゃあ一気に開けるぞ。1、2の...3!」
ドンっと扉を開け、SWATのように一気に突入する。
「っ、やっぱ来た!」
巨大な火球が襲いかかってくる。レストが盾を構えて吸収を...
「無駄よ」
一瞬で火球が消え去る。ニアが魔法拡散で散らしたのだろう。レストの盾ではどう考えても受けきれなかったので、ニアには感謝だ。
「さっそく先手を打たれたわけだが...どうやら今の攻撃を凌いだことに驚いてるようだな。動きが止まってる」
すぐに追撃してこないのは嬉しい誤算だ。ゆっくり状況の把握ができる。
まず、ちゃんと四人いるな。転移と魔素操作は黒塗りシルエットだ。姿形はわかるけど、それ以外の情報がないからな...ただ、転移の方はロングヘアで、魔素操作の方はショートカットだから見分けはつくな。
「……アクセルが二人いるのだけれど」
ニアの言う通り、アクセルが二人いた。初っ端変な手を使いやがる...まぁやりそうではあるけど。
「片方はフロートだ。右のアクセルが本物だな」
「……よくわかるわね」
「本物の右は俺のこと見て笑みを浮かべてるだろ?」
「左も笑っているけど」
「あれは邪悪な笑みだ。明らかに嗜虐的だろあれ」
「違いがわからないわ...」
「いいか、ライト。左がフロートだからな?」
「うん。いくよカリヤ。サポートお願い」
聖剣展開をしながら、ライトが俺に言う。
「ガッテン承知!」
『雷装』
9934、9935ページ 全力疾走
二人で雷装と全力疾走を発動させる。これで、アクセルの速度に追いつける。そしてフロートに向かって二人で走り出す。
「お前には死んでもらう!フロートォ!!」
9931ページ 略奪
フロートに向けて略奪を発動。最大魔力の五分の二を使い、フロートの魂に刻まれた固有能力を引っ張る。アクセルの姿から別の姿、おそらく本来の姿へと少しずつ変わっていく。
略奪でフロートの力を削いだ。ストックも意味を成さず、一度殺せばそれで死ぬ。厄介なフロートを、初手で殺してしまう。これが俺の出した作戦だ。
アクセルが動けないフロートを見て、すぐに俺たちを止めにかかる。略奪で固有能力が使えなくなるっていうのを知っているがゆえの行動だな。この速度の俺たちに反応できるのは、流石音速のアクセルといったところか。
「お前の相手は俺だっ!」
そんなアクセルを、俺が止める。ダガーで攻撃して一瞬でもいいから動きを止めさせ、ライトをフロートのもとまで向かわせる。
少しでも妨害できれば、アクセルはもうライトに追いつけない。この距離、そしてたった一秒にも満たないこの攻防の中では、一瞬が命取り。フロート殺害を止められる手は、もう一つしかない。
それは転移。上にいる転移の魔族が反応して、フロートを退避させてしまえばこの作戦は無為に帰す。けれど俺の想定通りにいけば、フロートを転移される前に殺すことができる。
聖剣展開による、聖剣周囲の魔素を聖素に変換する効果。既にライトはフロートのすぐ近くにいるため、フロートの周囲は聖素で満たされた。それにより、転移の発動が間に合わない。
次の瞬間には、ライトの聖剣がフロートの首を斬り飛ばしていた。
「……これで一人」
フロート殺害完了。頭が地面に落ち、そのまま体も消えていく。
「ライトは二人の方を頼む!俺はこのままアクセルを殺る!」
「了解!」
ライトは全力疾走を解除し、空を飛んでいる。魔族二人の方へと向かっていった。どうやら、既にニアとステラで戦闘を仕掛けていたみたいだ。転移が遅れたのは、二人のおかげでもあるのかもしれない。
「ってわけで、遊ぼうぜアクセル。また言おうか。お前の相手は俺だ」
「いいね、一対一で遊ぼうか」
……驚いた。ちゃんとこいつら話せるんだな...こういうダンジョンが創り出したコピー体って、大体喋れないのが多いからちょっと驚きだ。
「じゃあ...殺ろうぜ!」
叫びながら首筋目掛けて蹴りを放つ。まあま案の定避けられるわけだが、その後アクセルから放たれた拳を俺も避ける。
アクセルの反応速度は凄まじく、普通の肉弾戦では大体受け止められるか避けられてしまう。速度探知による先読みで攻撃を避けている俺はまだしも、反射神経で避けてるアクセルはやばいと思いながら、次の攻撃を考える。
「やっぱコイツだよな!」
ダガーを一本アクセルに向かって投げると、空いた手で魔力銃を掴み取る。そして照準を合わせることなく滅多矢鱈に撃ちまくる。全力疾走発動中に、細かく銃を動かして狙って撃つなんてことできるわけがない。下手な鉄砲数撃ちゃ当たる戦法で、当たることを期待して撃つのだ。
「っ...!」
秒間五十発の魔力弾が放たれ、何発かはアクセルにも当たる。肉体強化によって防御力も高いアクセルにはあまりダメージにはならないが、それでも少しの痛みは起こる。目眩し兼あまり近付かれないための妨害。それが魔力銃の役割だ。
俺がやるのはやはり、あくまで時間稼ぎ。雷装を使っているアクセルのスタミナに速度操作で干渉して、スタミナ切れを狙う。だから前みたいに、ダガーと魔力銃を使ってつかず離れずの距離を維持する。
そして前と違うのが一つ。ダガーを投げる攻撃ができることだ。
「その剣、何個出てくるんだ?」
「何個?二個だよ二個」
ダガーを投げては回収してまた投げるのを、アクセルの意識が魔力銃に向いて注意が逸れた時に繰り返す。投げたダガーの回収は次元収納で行う。今、俺の体の中に埋まっている魔道具のおかげで、一度次元収納にしまったことのある物で、一定の範囲内にある物は遠隔で回収することができる。回収したダガーは収納から出して手元に移動させることで、この永久機関は完成だ。
「ほれほれ近づいてみろよアクセルぅっ⁉︎」
ついに来た転移攻撃。後方少し上にタイムラグ無しで移動してきたアクセルの蹴りを、なんとか左腕の盾で受け流す。
「これが厄介なんだよなぁ...っと危ねぇ!」
またしても転移攻撃が飛んできた。右から来た足払いを横っ飛びで回避して...速度操作の一時解除でストップし、本来の着地点に放たれていた魔法を避ける。
転移攻撃が、アクセルと戦う上で一番警戒しないといけない攻撃だ。転移の魔族のサポートが必要ではあるが、急に別方向から攻撃が飛んでくるから回避は困難。速度探知があり、それプラス転移のタイミングがアクセル自身も読めていないため、転移から攻撃まで一瞬間が開くおかげでなんとか避けられている。
転移をしているのはアクセルではない。それゆえ、アクセルが望んでいないタイミングで転移することがある。前に出たいタイミングで、ライフ○ィーバーにライフグリップされるみたいな、そんな感じだ。
それに加えて、転移の魔族もニアたちと戦闘中なため、転移の回数が少ないってのも救いだ。ニア達が押していれば転移の回数はもっと減るし、逆にニア達が押されていれば、魔族に余裕ができてサポートが増える。みんなには頑張ってほしい。
「ってか、転移のたびにリセットされるの面倒いな...」
アクセルが転移するたびに、アクセルの速度減速と、スタミナ減少速度加速がリセットされてしまう。転移によって一度能力範囲外に出た判定になってしまうのだろう。そのせいで、スタミナを削り切るのが少し難しくなってしまっている。
「くっ...んぐっ⁉︎」
転移してきたアクセルの蹴りが、腹に直撃する。
転移攻撃で一番ヤバいのは、攻撃モーションを取っているアクセルを転移させて即座に命中させてくる、というものだ。これはもう転移した瞬間に命中することが確定するため、避けようがない。と○るシリーズに出てくる、全能神としての力を解放したト○ルが、たとえとして一番近いだろう。
「く、そ...がぁ!」
8271ページ 黒のみ 逆行再生
4571ページ 黒のみ 触手・水
蹴られた腹を速攻で治し、すぐに背中から触手を出す。液体や固体を押し退けて転移できるのかはわからない。けれど、少なくとも転移先に魔素がある必要があるのは知っている。
自分で作り出した水の触手に魔力を流し、無理矢理魔素を押し退ける。こうすれば、すぐに攻撃を直撃させられるような場所には飛べないはず。魔力を多く使う代償を伴うが、これで転移攻撃を回避できる可能性を高められる。
「……持久戦は不利か...!」
ただ、避けられるとはいえ消耗は避けられない。こっちも雷装と全力疾走の同時発動のせいでスタミナがゴリゴリ削られている。多分、アクセルのスタミナを削り切るよりも前に俺のスタミナが切れる。雷装の痛みが来たら、避けるのはさらに辛くなる。
チラッとみんなが戦っている方を見てみたけど、なかなか苦戦しているらしい。スタミナが切れる前に、こっちに加勢しに来てくれるなんてことは起こり得ないだろう。
スタミナ切れを目指すのはもう止めだ。反転攻勢に出る。魔力銃もダガーもしまい、刀を抜く。
音速の抜刀なら、アクセルの速度に追いつける。水の触手でアクセルの移動先を制限しながら刀を構える。
『色彩剣装 原色・赤』
アクセルの肉体強化を打ち抜くために、攻撃特化の赤色の光を刀に纏わせる。
「『雷装』...『水じ
刀が抜けなかった。刀や鞘に異常があるわけじゃない。
俺の右腕が、肘の先から斬り飛ばされていたがために刀を抜くことができなかった。
加速する思考の中、すぐに状況を理解する。
俺が出している水の触手から、氷の刃のようなものが伸びていた。フロートはもういない。だから、転移か魔素操作のどっちかが水分操作を使って攻撃してきたのだ。
8271ページ 黒のみ 逆行再生
急いで魔法を発動して、腕をくっつける。ただ、今ので結構な量の魔力を消費してしまった。
おそらく、こっから先は一手ミスれば死ぬ。
心臓が激しく鼓動する。
その速度よりも速く、足を、頭を動かせ。
足も思考も止めてはいけない。
ここを越えられなければ、本物と戦った時に負けるのは必至だからだ。
「ぜってェ...勝つ!」
負けない、ではない。勝つのだ。
闘技場システムのおかげで、容赦無しに腕を飛ばしたりできていいね。
普段怪我しないカリヤを存分に負傷させられて嬉しい。
次回はカリヤVSアクセル戦の続き...ではなく、ニア視点でサーマル&キネット戦を描写しようと思います。