前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8314字。

前回の後書きに書いたとおり、ニア視点です。

先に謝りますが、キネットフロートの声を『』で囲んでいるのに、念話での会話も『』で囲んでしまいました。
わかりにくくなってしまいましたが、なんとか区別してくださいお願いします。


魔族の前で人数差に意味はあるのか

「あんたらの相手は私たちよ!」

 

空を飛んでいる二体の魔族に向かって飛ぶ。ついでに閃光も飛ばして、ライトたちのフロート殺害を妨害させないようにしておく。

 

『無駄よ』

 

男とも女とも言えない、よくわからない濁った声を出しながら障壁を貼るロングヘアーの魔族。カリヤが言うには、こっちは転移の方。声が変なのは、カリヤが魔法で変えられた声しか聞いていないからでしょうね。

 

「聞いてた通り、本当に閃光を止められるのね...」

 

本来なら閃光は障壁をすり抜けられるけれど、何故かすり抜けず障壁に当たって消滅してしまう。たしかによく見ると、障壁に込められている魔力の量がエゲツないわね。ショートカットの魔素操作の魔族が何かやったってわけか。

 

ステラちゃんも弓矢を撃っていたみたいだけど、これは普通に障壁で受け止められちゃってるわね。クミリアの空気の腕も同様だ。

 

「けど...もうあんたらのお仲間は死んだみたいよ」

 

下の方を見ると、ライトがフロートの首を切り飛ばしていた。

 

『嘘...ストックはあったはずだよね⁉︎』

 

魔素操作...呼び方長くて面倒ね。そういえばカリヤが、こっちはバカな方と呼んでいたから、それに倣ってバカの魔族と呼ぶことにしましょうか。

 

バカの魔族が、フロートが一撃で死んだことに驚いている。まさか死ぬとは思っていなかったようね。こっちの作戦勝ちだわ。

 

『略奪でフロートの固有能力が一時的に使えなくなった...ってところね』

 

こっちは妹の魔族ね。こっちはバカの方と比べると冷静だ。多分、すぐこっちに攻撃し出すはず...

 

「ステラちゃん!」

 

「うん!」

 

複合魔法、跳弾鏡射を発動させて、ステラちゃんの放った矢を反射、魔族二体に向けて全方向から攻撃をする。

 

「っ!」

 

どっちかはわからないけど、すぐに魔族が障壁を貼る。けど、閃光を受け止めるためのものじゃないから、魔力密度が小さい。これなら...二人の攻撃が通る。

 

「原色の赤!」「セイッ!」

 

地面を跳んでこの高さまでやってきたクミリアとライトが、それぞれ障壁を突破するための魔法を発動しながら攻撃を加え、障壁をぶち破る。

 

「二人ともナイスよ!」

 

二人が開けた障壁の穴に、跳弾鏡射で反射させた矢を通す。この軌道だとどちらの魔族にも当たらないけど、小さな鏡は障壁の内側にもある。その鏡で矢の軌道をさらに変え、攻撃する。

 

「……後ろっ!」

 

魔力探知で魔族が後ろの方に転移したことを察知した私は、閃光を大量に撃ち込む。閃光以外の魔法は攻撃には使えない。目眩しだとか囮だとか、そう言ったことにしか使えない。無駄に魔力を消費することはできないので、強化障壁に受け止められるとわかっていても、閃光を撃ち続ける。

 

『そんな撃ったって無駄さ!この壁は撃ち抜けないよ!』

 

「バカは黙ってなさい」

 

『バカ言うなっ!』

 

『煽りにそんな簡単に乗らないでください姉さん...』

 

バカの魔族に対してバカと言うと、すぐ怒って動きが単調になると聞いていたけど...まさかそんなすぐに怒り出すとは思ってなかったわね。

 

ただ、あの障壁を撃ち抜けないのは事実。突破方法はあるにはあるけど...奇襲に使いたいからまだ使わないでおきたい。なんとかして、あの中から魔族を引き摺り出す必要がある。カリヤなら空間接続で攻撃できるけど、速度操作がないとできないから無理。方法があるとすれば...

 

「あんたらそんなところに閉じこもって、どうやって私たちに攻撃するつもりなのかしら」

 

「ビビってんじゃなーい?」

 

煽って怒らせて引き摺り出す。相手に自らの意志で出てもらうのが、一番手っ取り早い。

 

「ほらほら出てきなよー」

 

「ホントにビビりなのかな?魔族さん?」

 

私は閃光を撃ちながら煽って、クミリアが障壁の上に乗ってゲシゲシと蹴り付けながら煽る。どちらも何の意味もないけれど、それなりにイライラはするはず。煽りに乗ってくれれば御の字ね。

 

……何やってるんだろうという目でステラちゃんから見られてるけど、これはれっきとした作戦よそんな目で見ないでちょうだい。

 

『そんなに言うなら...!』

 

おっ、この調子なら...

 

『待ってください姉さん。ここから出る必要なんてないわ』

 

……流石に冷静ね。魔法を転移させて攻撃させてきた。

 

『そっかこの方法があったか!』

 

『なんで気づかないんでしょうね...』

 

飛んでくる魔法を高速飛行で避けながら、魔族たちの会話を聞く。注意力が散漫になったところで奇襲したいけど...妹の方は魔法を使って全方位に注意を払っているわね。厄介だわ...

 

『でもそれはそれとして私は行くよ!』

 

『ちょっ、姉さん⁉︎』

 

『生意気な妹ちゃんは安全なところで戦ってな!』

 

おお...思わぬ誤算。バカの魔族が自分から障壁を破って出てきた。

 

「本当にバカなのねあなた...」

 

『またバカっt

 

ズパンっと魔族の首が飛ぶ。フロートを殺した時と同様に、ライトが辻斬りのように斬り飛ばしてしまった。味方ながら、油断も隙もないわね...末恐ろしいわ。

 

けど...

 

『勇者怖っ!何あれヤバくない?』

 

『姉さんが油断しすぎなだけですよ...もう二度と死なないでください』

 

バカの魔族の首はすぐに再生してしまった。けれどこれもカリヤの情報通り。二体同時に殺さなければ、あいつらは死なない。実際には違うのかもしれないけれど、カリヤはそう認識しているからこの場ではこれが真実。

 

『キリキリ働きなさい、姉さん』

 

『あいよっ!』

 

魔族が消えた。

 

そう思った頃には、私の側頭部に肘が叩きつけられていた。

 

「ぅっ...っ!」

 

即座に魔法で反撃をするけど、またすぐに転移されて今度は脇腹に蹴りが入り、少し吹き飛ばされる。

 

「ニアさん⁉︎」

 

「自分の心配しなさい!」

 

空中で体勢を立て直し、魔族に魔法を撃つ。

 

奇襲されたけれど、実はあまりダメージはない。魔力で作った身体と入れ替えているため、それが少し傷ついただけで元の肉体には一切ダメージはない。少し驚きはしたけど、痛覚もほぼ無いためすぐに反応ができた。

 

この身体は結構便利で、物理攻撃も魔法攻撃もそれなりの威力だったなら普通に受け止められる。至近距離で大威力の魔法を撃たれたりしたら流石に破壊されてしまうけど、それにさえ気をつければ問題なく戦える。

 

ただ、一つ弱点があり、魔力を直接流し込まれることにめっぽう弱い。私の魔力と相殺されてしまうのだ。まぁ、この身体が魔力で作られてるってことがバレていなければ問題ない。そもそも、魔力そのもので攻撃すること自体難しい。魔力銃がないから、飛ばして攻撃することはできないはず。触れられなければいい。転移があるから避けるのは難しいけど...それだけ注意だ。

 

だからステラちゃんには自分の注意をしっかりしてもらいたい...!

 

『変だなぁ...なんか手応えあんまりない?』

 

『身体の表面に障壁でも貼ってるんでしょうか...適当に転移させるから上手くやりなさい』

 

『あいあいさー!それなら...そこのちっさい子に決めた!』

 

「っ、ステラちゃん!」

 

「わわわわっ⁉︎」

 

二体の魔族が、それぞれ魔法を放ってきた。ステラちゃんは飛び回って逃げているけれど、飛んできた魔法が急にデカくなったりと変則的な攻撃が混ざっているため、いずれ被弾してしまうだろう。守りに行かないと...!

 

『また魔法が消えた⁉︎なにあれ!』

 

魔法拡散で魔法を霧散させ、そのままその魔力を利用して魔法を撃ち込み、さらに魔法を撃ち落とす。

 

「ステラちゃん大丈夫?」

 

「うん、ありがっあ゛...!!」

 

後ろにいたはずのステラちゃんが落ちていき、後ろにはバカ魔族が浮いていた。まさか蹴られたの⁉︎

 

ステラちゃんが落ちていく。蹴りのダメージは指輪の魔道具が防御してくれたから問題ないだろうけど、このままだと落下死しちゃう。魔道具の制御を取り戻せば自力で立て直せるかもだけど...ダメだ私じゃ間に合わない!

 

『おっ、ナイス連携』

 

「ありがとうレスト」

 

「頑張ってねステラ。僕もカウンター使えるように準備しておくから」

 

よかった、地上で魔法を吸収し続けていたレストが、ステラちゃんを受け止めてくれた。

 

「焦らないでニア。バカの方は適当にあしらっていいから、まずは転移の方をなんとかしよう。障壁を魔法拡散で無効化して攻撃するよ」

 

「それはトドメに使いたいわ。バカの方を同時に仕留めれるのならやってくるけど」

 

「多分できる。さっきライトと作戦立ててきたから、その時が来たら合図する」

 

「作戦...?それってなに?」

 

『お喋りはそこまでだよ!』

 

全員即座に飛び退くと、さっきまでいたところに飛び蹴りが飛んでくる。ものすごい速さだった。多分、カリヤが言ってた謎の超加速ね。加速度の概念がまるでないかのように、一瞬で最高速度に至って攻撃してくる。転移攻撃も厄介だけれど、これもそこそこに面倒...直線的な攻撃で、予測できれば避けやすいのがまだマシって感じね。

 

作戦ってのがなんなのかわからなくて不安だけれど、レストを信じるしかないわね。ひとまず、合図がいつ来てもいいようにある程度攻撃しながら待機を...

 

「いてっ...障壁が大量に浮いてる?」

 

考えるのに集中しすぎて気づかなかった。いつのまにか、至る所に障壁がばら撒かれていて魔法の射線が通らない。射線切りと、バカの魔族が急加速するための足場...いや、それだけなわけない!

 

「魔法陣!トラップがある!」

 

障壁に魔法陣を描いてトラップにするのは、私もやったことがある。あの時はカリヤが設置した障壁を利用した形だったけど、その経験があったおかげですぐに気づくことができた。

 

「みんな!」

 

魔力銃を取り出して、みんなにわかるように見せつける。これだけで、みんなには、魔法陣が仕掛けられていること、そしてそれを暴発させようとしていることが伝わる。ステラちゃんはライトが守ってくれる。残る二人は未来跳躍で避けられるはずだ。各々避けてくれるから気にせず暴発できるわね。

 

巻き込むために、バカの魔族が十分近づいてから引き金を...今!そしてすぐに未来跳躍で回避する。

 

……一秒の跳躍が終わる。バカの魔族を見るけど、あまりダメージはなさそう...いや、一回死んだのかな?わからないけど、撹乱はできたわね。トラップも解除できた。ひとまずオーケー。

 

「罠は無駄よ、一瞬で解除できるんだから!」

 

『面白いわねその武器...ちょっと貰おうかしら』

 

「っ、奪われた...!」

 

普通にこっちが持ってる物も転移できるのね...動き続けないと私たち自身も飛ばされて攻撃に利用されるかもしれない。気をつけられることじゃないけど、注意しないと...

 

「そろそろ出てきなさいよあんた。ずーっとここにいるつもり?」

 

障壁で身を守る転移の魔族に近づく。いつでも魔法拡散を使えるように準備して、レストの合図に備える。ついでに煽りも入れてみる。

 

「まっ、出てこれないわよねぇ。出た瞬間に私とクミリアに殺されるわけだし」

 

障壁に乗って、合図が来るのを待っているのは私とクミリア。作戦があることが悟られないように、無駄な攻撃をしながら待つ。

 

『私の力はサポート向き。バカな姉さんに動いてもらって、私は裏方に徹する方が効率的だからこうしているまで。死ぬ死なないは関係ない』

 

「そう?臆病なだけにしか見えないけど。あと...障壁薄いところ見っけ!」

 

クミリアが障壁の縁に手をかけ、足で障壁をぶち破る。多分、バカ魔族が外に出るために一度壊したところなのだろう。だからちょっと脆かったのね。

 

「一発殴らせ...てもくれないか」

 

せっかく中に入ったクミリアだけれど、すぐに転移で追い出されてしまった。空いた穴に、再度障壁が貼られる。そこに閃光をぶつけてみたけど、貫通しなかったから同じ方法は取れないでしょうね。

 

そして、今のクミリアの行動はいい方向に働いてくれた。魔族は障壁で硬い守りを築き上げたわけだけど、逆に言えば魔族はそれで守り通せると慢心したということ。ここまでやれば安全。そう思ってくれればくれるほど、魔法拡散の奇襲が効くようになる。

 

お膳立て完了。あとはレストの合図を待つだけ...

 

『姉さん、ガルムの英雄を先に倒しましょう。魔法を吸収して守ってるのが面倒よ』

 

『カウンターしてくるんだっけ?それをされる前に殺した方が良さそう...だね!』

 

レストが狙われてる?たしかにレストのカウンターは厄介だけれど、今狙うの?まだ攻撃にはほとんど関与していないのに?至近距離にいる私やクミリアを攻撃する方がいいんじゃ...

 

けど、私たちを攻撃する気がなさそうなのは、黒いシルエットからわずかながら読み取れる表情でわかる。バカ魔族の方も、ちゃんとレストを攻撃してはいるけど...なんか攻撃が軽い。当てようと思ってないみたいだ。カウンターを警戒してるにしては、どこか違和感がある。

 

狙いは別にある。それは多分...倒したい対象が違うとか。

 

よくよく考えれば、なぜ魔族の言ったことを馬鹿正直に信じてしまっているの?魔族が狙っているのは、レストじゃない。そして転移の魔族に張り付いている私とクミリアでもない。ライトかステラの二択だ。

 

転移は一瞬。魔族たちが動き出すのを見てから動くのでは遅すぎる。けれど、魔族もなんらかしらの合図をしてから動くはず。さっきの会話とは違って、合図は私たちにバレないようにするだろう。

 

おそらく念話。これで確実に合図を飛ばすはず。魔力探知でなんとか念話にわりこめれば、先読みができなくもない。

 

『レスト、魔族の狙いはあんたじゃなくてステラかライトのどちらかよ!あいつらの念話に割り込んでこの回線に繋げるから、なんとかして守りなさい!』

 

レストに念話で指示を出しながら、周囲の魔力の流れを探る。

 

『わかった。僕も準備しておく』

 

指示は出した。あとはこっちがなんとかするだけ...見つけた。攻撃されないおかげでなんとか割り込みに集中できた。

 

『姉さん今っ!』

 

しまったほんの少し遅かった...どっちに攻撃するのかわからない!

 

『あいあいさー!』

 

バカの魔族が返事をすると、その場で攻撃モーションに入ってそのまま転移で消える。その直前に、私の目の前にいる魔族が魔法を転移させているのも見えた。

 

完全なる二択。どっちに攻撃するかは二分の一。お願いレスト、なんとか助けてあげて...!

 

『……やっと、助けれた』

 

念話で、レストの呟きが聞こえた...やっと?

 

よくわからないけど、レストは最良の選択を取ることができていた。魔族と魔法が転移する前、魔族間の合図が聞こえてすぐ移動を始めて、迷いなくステラちゃんに向かってダッシュ。両腕の盾を合わせてカウンターを起動することで、魔族の蹴りと魔法を盾に誘導してそのまま受け止めた。

 

全てが完璧なタイミングで行われていた。カウンターが発動し、魔族二体に威力がそれぞれ跳ね返る。

 

『んグゥッッ...!!』

 

転移の魔族が吐血する...けど、そこまでのダメージじゃないわね。万が一カウンターされた時のために、ステラちゃんをギリギリ殺せるくらいまで威力を落としていたのだろう。用意周到ね...!

 

『カウンター切った!姉さん!』

 

『まったく、姉使いの悪い...!』

 

どうやら二人は、カウンターを切ったレストに攻撃するつもりのようね。レストに今の念話も送ったけど...なぜ口に手を押さえているの?顔色も悪い...まさか、さっきやっと助けれたと言ったのって、未来視を使ったから⁉︎

 

カリヤがガネルで教えてもらったらしい未来視。望む未来を作るため、何度も何度も同じ時をやり直す、未来確定魔法。動きに迷いが無く、洗練されていたのは何度もやり直していたから。そして今顔色を悪くしているのは、ステラちゃんが死ぬのを何度も何度も見てしまったから...!

 

バカの方の魔族が姿を消す。レストに転移で接近し、そのまま攻撃を...

 

『……転移が...できない?』

 

転移の魔族がボソッとつぶやく。何事かとレストの方を見てみれば、そのすぐ近くに空間の歪みがあった。転移時に、魔素が足りない時に起こる現象。シレンの穴の中は魔素で埋め尽くされているはずなのに、何故この現象が...転移が遅れているの?

 

「位置調整完璧...ナイスライト!」

 

顔色は悪いままだが、ニヤリと笑って叫ぶレスト。位置調整?と思ってすぐ下を見ると、そこにはライトが居り、聖剣を地面に突き刺していた。魔素反転聖域展開。これにより周囲の魔素を反転させ、転移に必要な魔素を無くしてしまったのだろう。

 

そして聖域は上にも効果を及ぼす。ちゃっかりと、転移の魔族含めた私たちも範囲内で影響を受けている。

 

『こいつの転移が完了して、攻撃できるようになった瞬間に仕留める。合図から一秒後に聖域を解除するから、準備して』

 

『了解よ』

 

転移を妨害して身動きを封じる。面白く、そしてこいつら対策には一番いい作戦ね。即興でこの作戦を作り上げたレストとライト凄いわね...

 

『転移を封じて姉さんを殺したところで、私を同時に殺せなければ意味はない!』

 

「ええ、そうね...本当に殺せないなら、だけど」

 

『解除するよ』

 

レストのその合図を聞いた瞬間に魔法拡散を一瞬だけ発動させ、魔族を守る障壁を全て消し飛ばす。

 

『なっ、消え...!』

 

そして、邪魔な障壁が消えたところにクミリアが蹴りを放つ。タイミングは完璧。蹴りが頭に当たると同時に下ではバカの魔族の首が飛ぶ。これで終わりだ。早くカリヤの加勢に行かないと...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

クミリアの蹴りは空振った。しかし、転移で避けられたとか、魔法で逸らされたとか、そんな回避をされたわけではない。

 

蹴られる前に、魔法で自らの頭を吹き飛ばしたのだ。

 

同時に殺せなければ、この魔族たちは死なない。自ら死ぬことで死ぬタイミングを操作し、同時に死ぬことを回避したのだ。

 

下ではライトがバカ魔族の首を斬り飛ばしたが、タイミングがずれていたためその頃にはもう転移の魔族は再生していた。まさかそんな方法で回避されるなんて...クミリアのバフを打ち消さないように、一瞬だけしか魔法拡散を使わなかったのが裏目に出たわね。

 

けど、障壁はまだない。そして障壁を分解してできた大量の魔力がここにある。速度重視の閃光を飛ばして同時に殺せればなんとかなるはず...!

 

「……えっ?」

 

瞬きの前後で、景色が変わった。いつのまにか壁際にいる。そして、腕が動かない。

 

「埋められてる...⁉︎」

 

両腕とも後ろに回されて、壁に埋め込まれている。転移された。腕が埋められているせいで少しも動けない。

 

けどこのくらいなら魔法で壁を崩せばすぐに復帰できる...

 

『動かないでもらえるかしら』

 

「魔法...拡散...!」

 

魔法が使えなくなった。早く復帰しないといけないのに...こうしている間にも、みんなが...!

 

……っ!ライトが背後から魔族に近づいてる。お願いそのまま殺して...!

 

「あーダメダメ。遅すぎる」

 

鈍い音がして、ライトが壁まで吹っ飛ばされる。直前に聞こえた声は...アクセルのものだ。

 

アクセルは胸に深々と刀が刺さったまま、ライトに向かって跳んでそのまま蹴り飛ばしたのだ。ここにアクセルがいるということは...カリヤは負けたの?

 

ダメ。このまま何もしないなんてしてられない。早く抜け出して、魔族を殺さないと...みんなが殺される!

 

魔法は使えない。でも、魔法拡散はこの場所にしか貼られていない。抜け出せさえすれば、攻撃はできる。

 

私はまだ狙われてない。動けず、魔法も使えないから後回しにされてる。その油断を利用するしかない。

 

まずは壁から抜け出す。魔力体になってるおかげで、魔法無しでも抜け出すことは可能。刺さってる腕の魔力を崩して体内に吸収。これで落下できる。

 

魔法拡散の領域から離脱完了。地面に体を打ったけど、そんなのもう気にしない。這いつくばりながら次の行動に移る。

 

もうここからは一か八か。失敗すれば死ぬのだから、出し惜しみは無し。

 

魔力体を解除して、もとの身体に戻す。魔力体に使っていた魔力を全て使って、閃光を練る。

 

兄弟子が極めた閃光を、魔力全てを持って魔族に届かせる!

 

私の全身全霊を込めた閃光を放つ。思わず叫びながら撃ちそうになったが、それでは奇襲にならない。グッと堪えて、撃った。

 

『最後の足掻き、ご苦労様ってね』

 

耳元で声が聞こえて、私は絶望した。

 

ただ、一つ、疑問に思ったことがある。

 

蹴られて頭を砕かれる前に、疑問に思った。

 

私はこいつと初めて会った。カリヤの記憶で作られた偽物の魔族なのだから当然だ。そして、本物とも会ったことはない。

 

なのに、何故だろう。

 

声は変えられてるけど、この口調、どこかで聞いたことがあるような...そんな気がした。




絶体絶命というか完全に負けですけど、闘技場システムなんで別に死にはしないですよ?
本番じゃなくてよかったですね...そして、描写無しに負けてるカリヤくん。
次回の始めに描写すると思います。

ちなみにキネットの転移について補足なんですが、転移には魔素が必要です。
なので、転移先に魔素が不足していると空間の歪みが生じて、転移に時間がかかる。
それゆえに、そもそも魔素がない聖域の中には飛べない。
けれど今回は転移し終わる直前で聖域展開したため、妨害が出来ました。
あと、転移前が聖域の中でも、転移は一応使えます。
ただ、転移開始までに少し時間がかかってしまう。
だから前回フロートの転移を防げたというわけです。

後書きに長文失礼しました。
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