前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
前半はカリヤくん視点で、後半はライト視点になります。
ライト視点、独り言少なめで地の文が多めになるんで、少し読みづらいところがあるかも...?
あと、視点が変わるごとに時間が前後することがあるので、そこはご了承ください。
「うわなんか矢降ってきた⁉︎」
ボーッと一人で待ってたら、なんか急に矢が一本空から降ってきた。魔物の攻撃かっ!と思ってすぐに避けたけど...
「この矢ってステラのじゃね?」
なんとなく、そんな気がした。いつもステラが使ってる矢に似てる。確信はないけど、多分そう。
「ここにいるよーって伝えようとしてるのかな...行ってみるか」
こっちの方から来たよな...と、矢の飛んできた方向へ向く。
「うーん...風で軌道変わった説があるから、この方向に馬鹿正直に行くんじゃダメだよな。ちゃんと軌道を追わないと」
8009ページ 黒のみ 物質逆行
飛んできた矢に魔法をかけて、時間の流れを逆行させる。こうすれば、どんなふうにこの矢が飛んできたとしても、矢を射った瞬間まで遡れるから問題ないわけだ。
「うわすっごい高いところまで飛んできてんだな...よし、追うか」
地上を走って、時間を遡って飛んでいく矢を追いかける。もう矢は見えないくらいの高さまで行ってしまったけど、物質逆行をかけているため、矢には俺の魔力が入っている。なんとなくで位置を追えるから、飛行してついていく必要はないのだ。
「矢って確か最大で二キロ弱飛ぶんだっけ...でも普通の弓だとそんなには飛ばんよな?だからすぐ着くと思ったけど...なんか遠くね?」
三十秒ほど走ったから、もう二キロは超えたはずなんだけど...まだステラの姿は見えない。しかもまだ矢は上昇を続けてるから、この調子から察するにもっと遠いってことだよな?これ数十キロレベルじゃね?
「そんな遠くまで矢飛ばせるの?エグ」
エ○ヤの射程が確か四キロとかだったよな?数十キロ飛ばせるサー○ァントもそんないなかったはず。えっ、なに?ステラってサー○ァントレベルなの?そりゃ魔法の仕組みとか色々違うから比較はできないだろうけど、まさかその域にまで達していたとは...
「アーチャークラス確定じゃん...ステラがアーチャーだとすると、ライトはセイバーだよな多分。聖剣持ってるし。ニアは当然キャスターで、レストはシールダー。クミリアは...どうなるんだ?肉弾戦するのってなんだろ。バーサー...は違うしな。何に当てはめれば...って何考えてんだ?俺」
どういう連想ゲームでこの話題になったんだっけ...と自分の思考も遡りながら、矢を追っていく。おっ、やっと矢が落ち始めた。ここで半分ってことは...あと四分ちょいかな。まぁ、ステラが地上から矢を射ったならだけど。
「……おおっと⁉︎」
考え事しながら走っていたから、速度探知の範囲内に入るまで真正面に魔物がいたのに気づかなかった。
現在の能力適用範囲は、5.5メートル。そして今、秒速65メートルで走っているため、魔物の存在に気づいてから衝突するまでにかかる時間は0.085秒。
いくら思考速度を加速させているとはいえ、これでは避けられるはずもない。そのまま衝突する。
「……キモチワル」
衝突したが、その衝撃に耐えられないのは魔物だけだ。俺は速度操作による物理保護のおかげで無傷。だが、魔物の身体を粉砕しながら直進したため、俺に魔物の臓物やら血潮やらが...
「くそ、臭いがつく前に...」
俺の身体についたソレを、魔道具を使って次元収納に一旦収納、すぐに取り出してそこら辺に適当にばら撒いておく。
「チクショウこれやりたくなかったんだけどな...」
いつかやりそうだとは思っていた。けど、そうならないように注意してはいたんだが...普通に魔物を殺すよりもグロテスクすぎるからもう二度と魔物とは衝突しないようにしよう。あと、これが人じゃなくてよかった。
「あーダメだダメだ想像すんなバカ。ってかそうだろ矢を追いかけろバカ!」
こうしている間にも矢は動いている。急いで追いかけないと...
「……おっ、あれは...そうだよな?」
矢を追いかけ始めて八分ちょい。まだ遠くて微妙だが、人が寝転んでいるのが見えた。矢はまだまだ高い位置にあるけど、多分空を飛んで高い位置から矢を放ったんだろう。思ってたより早めの到着だ。
「おーーいステラーー...ってクミリア?」
近づいてみたら、なんかクミリアがいた。既に合流していたのか...
「あっ、やっと来たお兄ちゃん」
……ん?
「やっぱ速いねカリヤお兄ちゃんは」
「??????」
ステラはまだしも、クミリアまでもが俺をお兄ちゃん呼びしたため、思考がフリーズしました。
「……あっはは!すっごい変な声出してる!」
「やっぱり面白い反応するねぇカリヤは!」
「……なんか揶揄われましたねぇこれ!せっかく迎えにきたのになんて奴らだ!」
「ごめんごめんw」
「お前ら...笑うなっ!」
めっちゃ大笑いされてるんですけど⁉︎ちょーっと俺の心の中のヤン○ミさんステイしようか。
「……よし、元気そうでよかったわじゃあ先戻ってるね」
「ああ行かないで!ごめんってカリヤー!ってうわっ⁉︎」
「これに懲りたらもう揶揄うのはやめるんだぞー」
天から落ちてきた矢を、クミリアに当たる直前で掴み取る。
「えっ、この矢なに?」
「ステラが射ったやつだ。物質逆行って魔法を使って、こいつが通ってきた軌道を逆再生して辿ってきたわけ。んで、この矢が撃ち出された瞬間まで戻ったから自動的に魔法が解除されて、そのまま落ちてきた」
「ホントだ私の矢だ」
「だからピンポイントでここまで来れたのか...あとクミさん、ステラちゃんの矢がちゃんとカリヤの元まで届いたっていうのに驚いてるよ」
「俺も飛んできた時ビックリしたよ。動かなかったら脳天直撃コースだったもん」
「えっ、ごめん」
「どんだけ正確なんだってちょっと怖くなったよ。三十キロは離れてたのにヘッドショットされそうになったわけだし」
「頭に当たりそうだったのは偶然だから許して?シレンの穴を狙ったらズレちゃっただけなの」
「よし許す。あっ、そうだ。さっきステラが言ったシレンの穴なんだが...」
「それがどうしたわけ?」
「……まぁ見たほうが早いか。ついてこい。休憩は済んでるな?」
「ああ。いつでも走れる」
「私も行けるよ」
「じゃあ走るぞ。大体八分ぐらいだから、そのつもりでな」
三人で東に向かって走り出す。
「カリヤーちょっと方向違くない?」
「ちょっと色々あってな...魔物の死体がぶち撒かれてるからそこを避けてる。タイムロスにはならないから問題ないぞ」
「別に死体くらい見慣れてるから大丈夫だけど...」
「舐めない方がいいぞマジで。ほんとにグロテスクだから」
「ここの魔物は消えないんだね」
「そういやそうだな。ステラはまだ魔物と戦ってないのか?」
「うん。クミリアを探すためにずっと空飛んでたから戦ってないよ」
「そうなのか...ん?クミリアを探してた?クミリアって俺らみたいな合図出してなくね?」
「やっぱりカリヤは見てなかったかぁ...一応空気の腕で真上にあった雲を吹き飛ばして知らせたんだよ?」
「ステラはそれを見てたってわけか...流石にその合図は見てねぇな。けど、なんとなく場所はわかってる。あそこの山だろ?」
「よくわかったね。どうしてわかったの?」
「この空間に来る前の立ち位置から予測した」
「すご。じゃあレストの居場所もわかってるの?」
「方向はわかってるけど、あっちの方に行った経験あんまりないから正確な位置まではわからないかな。後で探す必要があると思う」
いやーステラがクミリアを見つけてくれてよかったぜ。レストはクミリアとは違って、近くに誰もいないから孤立してるんだよね。レストは攻撃手段に乏しいから早めに合流したいところだけど、もう動いてるだろうから見つけるの大変だろうなぁ...
「あっ、そうだ。カリヤに聞きたかったんだけど、ここって結局何をすればいいの?」
「あっ、それクミさんも思ってた。カリヤはわかる?」
「なんで俺は知ってると思うかは謎だが...一応わかったぞ。目的地に着いたら話す。って、もうそろ到着だけどな」
こうやって話していると、やけに時間が早く進むように感じるのは気のせいなのだろうか。もう到着した。
「ここ...ホントにシレンの穴?」
「穴ないねぇ」
二人が言う通り、ここにシレンの穴はなかった。穴があった場所には、真っ黒な何かの物質が敷き詰められていた。
「中央に石碑があるだろ?」
「そうだね」
「そこに、日没までに全員でこの地に立て、って書いてあった。日没というタイムリミットまでに、全員合流してここに来る必要があるわけだ」
「なるほど...だからカリヤはここでも合図を出したわけか」
「そういうこと。ってなわけで、みんなここに集合しなきゃいけないわけなんだが、どう見ても時間が足りない。俺ならともかく、世界の端からここまで半日で行ける距離じゃないからな。手分けしてそれぞれ迎えに行きたい」
「わかった。誰がどこに行く?」
「二人は北にいるライトとニアを頼む。俺はレストを探して来るわ」
「見つけたらまた合図を飛ばした方がいい感じ?」
「そうしてくれると助かる。もしこっちが早く終わったら二人でそっちに迎えに行くから、俺が合図飛ばしたあとにも頼む」
「わかった!じゃあ行こクミさん!」
「ああちょっと待った。徒歩だと時間がかかると思って、さっき待ってる間にガルムに次元転移のゲート作ってきたからそれで移動してくれ。あと、魔力はしっかり温存するんだぞ」
9936、9937ページ 次元転移
「用意がいいね...じゃあ行ってきます!」
二人が空間の裂け目に入っていく。それを見届けた俺は、レストを探すために南へと走るのだった。
「町はまだまだか...やっぱりカリヤがいないと遅いね」
休憩は終わり。だいぶ移動してきたけど、それでもまだまだカイスには程遠い。でもこれなら、あと二回ぐらいの休憩でカイスには着くかな。
聖剣を地面から引き抜いて、走り出す。聖域展開で魔力を回復できて、魔物に襲われない安全地帯を作れるのを考えると、多分みんなよりも楽できてるんだろうな、僕。
まぁ、カリヤがいないから魔力回復できると言っても、そこまでは回復できないけどね。どうしても少しずつ消耗してしまう。カイスに着いたら魔力回復できるから、流石にないと思うけどそれまでに魔力切れを起こさないように気をつけないと...
「っ、魔物!」
前方に魔物が見えた。一度全力疾走を解除して、鞘付きのまま聖剣で魔物を斬り倒す。そしてすぐ全力疾走を発動して走る。
カリヤに教えてもらった全力疾走は、とても戦闘に使えるようなものじゃない。偽フロートを斬ったみたいな、すれ違いざまに攻撃するならまだしも、普通の戦闘に使うには速すぎて制御できない。それに加えてスタミナも削っちゃうから、戦う時は切っている。いちいちオンオフするのは面倒だけど...せっかく僕専用にカスタムしてくれたんだから、文句は言っちゃいけないよね。
「……ふぅ、そろそろ休憩しないと...」
一分走るだけでもうスタミナが切れてしまう。雷装を使えば走り続けられるけど、そんな痛い思いして急ぐ必要もないしね。さっきほんのちょっと勇者の記憶を読めたけど、日没までにシレンの穴があったところまで行けばいいだけらしいし、この感じなら休憩しても間に合うよね。
そして、ここからカイスまでは大体三十キロ強くらいなはず。うん、あと一回休憩入れれば十分だね。魔物が邪魔してこなかったらだけど。
けれど、案外魔物と鉢合わせすることは少ない。さっきまでいた山とか凹凸の激しい荒野ならともかく、ここはもう平原だから視界を遮るものはない。遠くからでも魔物を見つけられるから、先に避けられるしね。
「……一人ってなんか寂しいな」
みんなとパーティーを組むまではずっと一人だったし、なんなら僕人見知りだから一人の方が楽とまで思っていたはずなのに、個別訓練の時もそうだけど一人になると少しだけ寂しくなる。
まだみんなと出会ってから一ヶ月も経ってないと思う。それなのにここまで変われたのは...なんでなんだろう。みんなの雰囲気がいいからなのかな?まぁ、まだそんなに会話に混ざれてるわけでもないんだけど...普通に話しかけてくれるし、みんな優しいし、なんかあったかい。
「……そろそろ行こっか」
心がぽかぽかしてきた。心なしか、スタミナ回復が早かった気がする...流石に気のせいだと思うけど、リラックスできたってことなのかな?
……まぁいいや。周囲に魔物がいないことを確認してから、地面から聖剣を抜いて走り出す。もちろん、全力疾走は発動しておく。
「……あっ」
走ってる最中に、ふと思い出した。カイスの北側にある門って、普段閉まってるよね?ということは、そこからは入れないってわけだ。そうなると...休憩回数一回増えたかな。
多分、カリヤが前にやったっていう未来跳躍でスタミナ減少を抑える小技。あれを使えれば休憩回数増やさなくて済むんだろうけど、そこまでうまく使いこなせるわけじゃないからなぁ...というより、カリヤが凄いだけなんだろうけど。0.1秒の転移を繰り返すってそんなことできるわけないじゃんどういうことなの?
まぁその話は置いておくとして、なんとかして回避する方法はないのかな...上から行くとジュッてなっちゃうだろうし、壁は破れないしで、思いつく限りだとないんだよね。地上が完全再現されてるだけに、無理だっていうのがわかっちゃうのが悲しい。
と、ここで一分が経ってスタミナが切れかかったから全力疾走を切る...そうだ。魔物も周りにいないことだし、少しでもいいから歩いてカイスにできる限り近づこう。走った直後に止まるのって実は良くなくて、少し歩いた方がいいって誰かから聞いた気がするし...あっ、これ言ってたのカリヤだ。でもカリヤってよく急停止してるような...?
「っ、来ないで」
後ろから来た魔物の首を刎ねる。やっぱり聖域の中じゃないと普通に襲って来るね...と思ったけど、変だな。後ろって言ったら、さっきまで来た道のはず。走りながら見た感じでは、左右にも魔物はいなかったと思う。それなのに、魔物に背後を取られてるっておかしい。
どこから魔物は来たんだ?と思い、ひとまず空を見上げてみる。けれど、何もない。空を飛んでいる魔物は一体もいない。
次に地面を見る...前に、今さっき切った魔物を見る。けど、見たことない魔物だ。知識は当てにならないね。じゃあ地面を...影?
「っ!」
そういうことかと気づいた瞬間に後ろに飛び上がると、僕の影から手のようなものが生えてきた。危うく掴まれそうになったけど、ギリギリ回避が間に合った。
そして、この魔物が僕の影の中に入り込んでいるとすれば...光を出して僕の影を無くせばいい!けどそれでなんとかできるかわからないから着地と同時に聖域展開をしておく。
……よし、聖域展開のおかげで影から魔物が出てきた。多分、魔素しかないおかげで影に入る力が強化されていたのが、ここが聖域になったことで弱体化して入れなくなったんだろうね。なんならそのまま消滅していっちゃった。
「なんだったんだろ今の魔物...というか、いつから影に入ってたんだろ」
さっきの魔物は影の中に入れる力を持っているけど、影の中から大きく出ることは難しそうだから何かの影から僕の影に伝ってきたんだと思う。けれど、ここに来るまでの間に何かの影を踏んだような記憶がない。一つ前の休憩の時は攻撃されなかったから、そのあとだと思うんだけど...もしかしたら走ってる間に、飛んできた鳥の影でも踏んだのかもしれない。
……そんなことよりも、考えないといけないことがあるね。
それは、この魔物が影に潜むこと。そして、影が繋がっているなら伝って移動できること。最後に...タイムリミットが日没までということの意味。
「陽が沈みきったら...あの魔物がどこからでも襲いかかって来るってことね...!」
日没までにシレンの穴のあった場所まで行く。けれど、日没という期限を越してしまっても、即座に終了するわけではない。陽を失い、光を失った闇の中で、また陽が登るまであの魔物と戦うことになるのだ。どの方向からも襲いかかって来るあの魔物を相手取りながら移動するのは至難の業だろう。なんとしてでも、日没前に移動を完了する必要がある。
多分だけれど、このことはカリヤも知らないはず。早くシレンの穴のあった場所に行ってカリヤと合流して、このことを知らせないと...
……あっ、もう一つヤバいことに気がついた。西に陽が沈むということは、影は日没直前において、西から東側にかけて伸びていく。そして、僕は北東の山から出てきて、あの魔物に襲われた。
これらが示すのは、まず東側に既にある影に魔物は潜んでいること。そして日没によってこの空間全てが影で覆われた時に、その東側に溜まっていた魔物が解き放たれるということ。
そして、ここからは僕の推測になるけど...みんなの初期位置は、この場所に来る前の立ち位置で決まっているんだと思う。そうなると、レストは南東あたりにいると考えられるんだけど...どう考えてもマズイよね。
影から襲いかかって来る魔物に囲まれているのだ。いくら防御力の高いレストとはいえ、そんな状況下に置かれればひとたまりもないだろう。せめてあの魔物が魔法を使ってくれるならレストも戦えるだろうけど...使わなかったなら、魔力の補給ができないから大変なはず。
こうなると、レストはなんとか身を守りながら逃げることしかできなくなる。けれど、自分の影に潜む魔物からは逃げられない...
どうにかして、カリヤにこのことを伝えないと...そのためにも、いち早く移動して合流しないとね。そして僕が倒れちゃってもダメだから、しっかりカイスで補給しないと...
と、そんなことを考えながら歩いていた間に、かなりの距離を移動していたみたいだ。ここならもう、走っても休憩することなくカイスに着くだろう。
「一応影に注意して...」
上を飛ぶものに注意しながら走り出す。たまーに現れる雲の影が、自分の影と重ならないようにしながら走るのはなかなか面倒だけれど、仕方ないことだね。
雲のせいで少し遠回りする羽目になったけど、あともう少しでカイスだ。あそこの外壁の角を曲がって、少し走ればもう門の前だ。魔物は...いない!
「やっ...と、着いたぁ...」
移動し始めてから二時間少し。休憩を繰り返して、やっとこさたどり着いた最初の休憩ポイント。全力疾走で消費した魔力を回復させて、魔物と戦ったことでピリピリした神経をここで休ませないと...
と思い、カイスの中に入る。
「……えっ?」
カイスの門の下、その影を跨いだ瞬間、影から現れた手に僕は襲われた。
急いでカイス側に飛び込む僕。けれど、そこに聖域はなく、僕の影に乗り移って魔物は襲いかかって来る。
「絶望...だね」
なんとか反応して、影の魔物を切り倒すことはできた。けれど、隙を窺っていたらしき魔物たちが周囲の建物の影から出てきた。町の中でもお構い無しだ。
この町はカイスじゃない。カイスによく似た、ただの魔物の巣だ。
「人は...いないね」
周りを巻き込む心配はしなくていい。建物も、いくらでも壊しても問題ない。なんなら、高い建物から伸びる影を少しでも減らすため、率先的に壊すべきだろう。
『聖剣展開』
鞘の刃を展開させ、本物の刃へと切り替える。常に周辺の魔素を反転させ、人間にとって最も都合のいい空間に塗り替える。
「消えてもらうよ...魔物たち」
迫り来る魔物に、僕は聖剣を振った。
カイスの魔物を倒し切って、また移動を始めた僕。何度も休憩を挟んで、ようやくシレンの穴があった場所まで来たんだけど...
「なんでカリヤいないの...?」
肝心のカリヤがいなかった。爆発の合図をしてたから、絶対一回はここに来てるはずなんだけど...レストの救出にでも行ってるのかな?
「じゃあ僕も、少し休憩したらレストを助けに行こうかな」
休憩のために聖剣を地面に突き刺...そうとしたけど、この黒い地面には刺せないみたいだね。固すぎる。
ちょっと離れたところで聖域展開をして、レスト救出のためのスタミナと魔力を補給するのだった。
前回の前書きで前後編に分かれるって書いちゃったけど...なんか長くなって前中後編になりました。
どうせならレストとニア視点も書きたいしね、しょうがないね。