前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
なんかすごい最終回じみたサブタイトルだけど、まだまだ続きます。
なぜこのサブタイにしたし。
今日で、一週間が経つ。村を出発する日がやってきたのだ。
「よぉステラ。最後の依頼に行こうぜ」
「…うん。行こっか」
村を出るのは昼からだ。それまでの待ち時間に、ステラと最後の依頼を受けにきた。
受けた依頼はトレント狩り。またしても西の森にトレントが現れたのだ。正確にはその森をさらに西に行ったところなのだが。急にトレントが現れるなんてあり得ないと受付の人に言われたが、出たもんは仕方ないと討伐依頼が出されたのだ。
「魔王軍あたりが悪さでもしてるってのかねぇ」
「うーん、どうなんだろ」
そんなわけで俺たちは今西の森の中を歩いている。ついでに作戦会議もしている。森を迂回しないのは、ここを通れという指示があったからだ。
「まぁなんで現れたかなんて気にしなくてもいいか。何も考えずに倒すだけでいいや。んで、どうやって倒す?」
「火と電気でいいんじゃないの?」
「まっ、それが一番早いよな。ステラが矢で、俺がダガーで攻撃する。それでいいよな?」
「カリヤも弓使いなよ。せっかく鍛えたんだしさー」
「そうだな。余裕なくなるまではそうしようかな」
というかステラ、出発前は最後の依頼だからかちょっと落ち込んでいたけど、いざ出発したらいつもの調子に戻っていた。仕事モードに入ったみたいだ。
「あとちょっとで森を抜けるな。森を出てもびっくりしないでねって受付の人に言われたけど...」
なんでこんなこと言ったんだろうなぁと、役所を出て、村を出て、森に入って歩いている最中ずっと頭の片隅で考えていた。そして森を出た時、なんでそう言ったのかわかった。
「でっっっっか⁉︎なにあれデッカ!」
「デカ過ぎんだろ...」
見えてきたトレントは、前に戦ったものとは比べ物にならないくらい巨大だった。
「もしかして森を通れっていう指示の意味って、近くに行くまでこの巨大さに気付けないようにするためか?」
「普通の森に紛れさせて見えなくしたのか。こんなデカいと普通の人じゃ怖気ついちゃうもんね」
「でもこれ倒せるのか...?」
「倒すしかないでしょ。もし私たちだけじゃ無理でも、出来るだけ攻撃して傷をつけて後の人に託そうよ」
「でもトレントって再生するじゃん」
「こいつはしないっぽいよ?ほら見てみなよ。前に戦った人がつけた傷が残ってるでしょ?」
「…確かに、ところどころ傷ついてるな。枝とか根っことかところどころ切り落とされているな」
まだちょっと遠いのでちゃんとは見えないが、傷がついていることは確かだ。幹にも大きな切れ込みが入っている。傷口が焼け焦げているわけでもないので、本当に回復しないのだろう。
「巨大化のせいで回復能力を失ったのか、それとも別の進化を遂げただけなのか...考えても意味ないな。どうする?倒し切るところまでやっちゃうか?」
「やれるところまでやってみようよ」
「だな」
「でもあんなにデカいと攻撃を避けるのも一苦労だな...薙ぎ払われちゃ避けるところがない」
鞄を下ろす。
「ステラ、肩車だ。多分俺の能力がないと避けきれない」
「わかった」
ステラが俺の肩に乗る。
「よし、行くぞステラ!」
「うん!」
能力を発動し、トレントに向かって走る。
『ギャアアアアア!!』
トレントがこちらを認識したのか、叫び声を上げながらこちらに木の根を振るってくる。
「うっるさ!こんなデケェと声もデケェなおい」
耳が軽くやられながらも巨大な木の根をなんとか避けていく。
「ステラ!撃てるか?」
「無理!動きながらじゃちゃんと狙えない!」
「じゃあ射程距離ギリギリのところで降ろす!俺が囮になって引きつけるからチクチクやっといて!」
木の根を避けていき、一瞬攻撃の波が収まった時にステラを降ろす。
「っ!来た!カリヤ!」
俺が止まった隙を狙って、トレントが木の根を真横に振り抜く。
「任せろ!」
能力を発動し、木の根に向かって走る。能力の範囲内に木の根が入った瞬間その速度を減速させ、左腕の盾を斜めに滑り込ませる。
「速度を落とせば...威力も落ちる!」
普通なら受け止められない攻撃も、速度を落とせば対処はしやすい。盾を使って木の根の運動方向を真横から斜め上に逸らし、さらに下から勢いよく蹴り付けてさらに軌道を変える。
「よし、じゃあ行ってくる!援護射撃頼むぞ!」
「うん!」
能力を発動しトレントのもとに走る。
「まずは木の根を全部斬り落とす!次に枝!」
まずは攻撃手段を狙う。再生能力がないなら、攻め手を全部奪ってから斬り倒した方が楽だ。
「さぁトレント!こっちだ!」
『火装・矢』
火の矢を放ち、トレントの注意を引く。
『ギャアアアアスッッッ!!』
「うるせぇ!」
トレントの注意が完全にこちらに向いた。当然、攻撃も集中する。
「一つ...二つ!」
右から横薙ぎに一つ、少し遅れて左斜め上から二つ目の木の根が飛んでくる。
『雷装』
雷装を発動し、身体能力を強化する。一つ目の木の根を能力も使いながら上に飛んで避ける。そしてすぐに落下速度を加速させて地面に降り、左に転がって二つ目の木の根をギリギリで避ける。
「チッ、やっぱ太えな。傷はつけれても斬り飛ばせはしないか」
すれ違いざまダガーで斬っていたのだが効果は薄い。ダガー程度の刃渡りでは時間がかかりそうだ。
「延焼を狙う方がいいか。『火装・剣』」
雷装を解除して体を流れる電流を消す。そしてダガーに火をつける。雷装を使いすぎてスタミナ切れを起こすことだけは避けたい。スタミナ管理を怠れば一瞬で死だ。
「斬り飛ばす!」
飛んでくる木の根を避けながら斬りつける。ほんの少しずつではあるが、傷を増やしていく。チリも積もればなんとやら。時間をかけてダメージを与えていく。
「ステラァ!」
『水弾』
水弾を五発ほどトレントに向けて撃ち込む。そうして十分に濡れた箇所に向けて、ステラの放った電気の矢が突き刺さる。
『ンギャアアアア!!!』
「うっるっせぇ!吹き飛びやがれ!!」
『火球』
火球を刺さっている電気の矢に向けて撃ち込む。慌ててトレントは体を捩り火球を避けようとするも、俺の狙いは直撃させることじゃない。近くに舞っている水素と酸素の塊に当たるだけでいいのだ。避ける動作なんて意味がない。水素爆発が起こり、トレントの体の表面を大きく削り取りながら焼け焦がす。
「おっ、叫ばなくなった。口を削り取ってくれたみたいだな」
これは運がいい。また鼓膜が破れるのはごめんだ。
「雷装で速攻するか。『雷装』」
雷装を発動する。スタミナの都合から、一分間だけ使って解除する必要がある。その間に出来るだけ多くの木の根を斬り落としたい。
「チッ!後ろか!」
速度探知で背後から迫る木の根を認識すると、その速度を減速させて避ける。こんなところで時間を無駄にするわけにはいかない。急いで木の根を斬り裂き次の標的のもとに走る。
「一...二、三!あと二十秒...まだまだ!」
まずは三個斬り落とす。トレントも学習してきているのか、フェイントや時間差を混ぜて攻撃してきたり、一度の攻撃に使う量を必要最低限にまで減らして反撃された時のリスクを減らしてきている。
「めんどくせぇ...!」
なんとか攻撃を避けるが、そこまでだ。反撃に転じることができない。時間であと三秒...
「いや無理だ、解除!」
三秒じゃあどうやっても一本も斬り落とせない。魔力もスタミナも無駄には出来ないので、雷装を解除する。
「…やべ、誘い込まれてた⁉︎」
いつのまにかトレントに近寄りすぎていた。この距離じゃ避け切れるかわからないが、急いでトレントから離れようとする。雷装を使おうか迷ったが、スタミナは後のために取っておきたい。怪我したとしてもいいからスタミナだけは残したい。
「まずいまずいまずい!」
迫る木の根の速度を落としながら逃げるが、このままじゃ追いつかれ...
「うおっ⁉︎」
首を傾けて前から飛んできたソレを避ける。
「氷の矢...ステラか!」
後ろを見ると、迫ってきていた木の根が凍りついて動かなくなっていた。
「そっか、火のほうがいいと思ってたけど氷もありなのか...じゃあ!」
弓を取り出し、矢を五本手に持つ。
「『氷装・矢』『速射』!」
五本の矢を一秒で放つ。近くまで来ていた木の根に全て命中させて、逃げるまでの時間を稼ぐ。
「ベネ!サンキューステラ!」
ステラの機転のおかげでなんとか危険域からは脱出することができた。この距離まで離れれば能力だけで避け切れるだろう。
「さて、この後はどうやって攻めようか...」
「どうするのーカリヤー」
ステラがこちらに向かって走ってくる。
「ひとまずはスタミナ回復だ。雷装を安全に使えるくらいまで回復させたい」
「じゃあそれまで私が時間を稼ぐよ。待っててね」
「ちょっ、一人はダメだダメ!それするなら一旦離れるぞ!」
「えっ、わっ、急に担がないで!」
ステラを肩に担いで走る。ステラをトレント相手に一人で立ち向かわせたくない。軽いトラウマとでも言うべきそれが、俺をこんな行動に移させた。
「回復したらすぐに戻る!だから!」
「わかったから後ろ!後ろから来てる!」
真後ろから迫っていた木の根を能力を使ってなんとか避ける。しかし本当にギリギリ。というかほんの少し掠った。
「ダメだよカリヤ!このままじゃ逃げるのは間に合わない!殿するから先に逃げてて!」
「ヒャッ冷た⁉︎」
ちょっ、ステラこいつ氷の矢の先端を背中に当てやがった!冷たくて思わずステラを手放しちまったじゃねぇかクソッ!
今さら戻るわけにもいかない。ステラがあそこまでやったんだ。信じて逃げるしかない。
「この距離なら攻撃も届かないはず...ステラ!」
ステラの方に向き直る。ステラは氷の矢を使い、迫り来る木の根の脅威からなんとか逃れていた。
「俺も...『氷装・矢』!」
能力を使って弦を加速させ、超遠距離から木の根を狙って矢を放つ。しかし、距離が離れ過ぎていた。矢は外れてステラの近くの地面に突き刺さる。
「くそっ...いや、ステラに当たらなかっただけマシか。このまま!」
何発も氷の矢を放つ。たまに木の根に当たるも、ほとんどは地面に突き刺さる。
「…ステラ何をやって...」
ステラが矢を撃つのをやめ、こちらに向かって走り始めた。最後に一個矢を撃っていたのは見えたが、地面に向けて撃っていたように見えたのは気のせいか?遠くてよく見えなかったが...
「まさかお前!」
ステラは後ろに向かって一本の矢を飛ばした。赤く光っていた矢は、地面に着く前に大きな爆発を起こした。
「ステ...ステラァ!」
ステラの軽い体は、爆発の勢いをモロに受けて宙を舞う。慌てて駆け寄ろうとしたが、ステラは空中で姿勢を立て直して綺麗に着地した。足を引き摺る...なんてことなく普通に走ってこちらのもとに戻ってくる。
「ステラお前なんて無茶しやがる!」
「いいでしょ無事だったんだから。どう?スタミナは戻った?」
「完全回復だ」
「ならよかった。あっ、魔力の回復お願いしていい?もう底をつきかけているんだよね」
「任せろ」
能力を発動し、ステラの魔力の回復速度を加速させる。
「…やっぱ変だな...」
「どうしたの?」
「魔力の回復量が普段より少ない。聖素の量が少ないのか...?」
『マナ検知』
魔法を発動すると、視界が赤と青に染まる。
「聖素の量は確かに減ってるけど...それにしてもなんだこれ。魔素の量が狂ってやがる⁉︎」
視界はほぼ赤一色だった。明らかな異常だ。
「なんでこんなことなってんだ?戦う前はこんなことなってなかったはずなのに...」
戦っている最中に少しずつ魔力回復速度が落ちてきていたのだ。なぜだ?
「これは...!」
トレントの方を見る。魔素の量が多い理由がわかった。
「トレントから魔素が漏れ出ている...?」
トレントの傷口から赤い点が噴出していた。さながらワールド○リガーのトリオン流出みたいだ。
「なぁステラ。魔物が魔素を溜め込むことってあるのか?」
「いや、聞いたことないよ」
「じゃああの魔素が巨大化の原因として見て問題なさそうだな。よく見てみろよステラ、ちょっとだけど小さくなってるように見えないか?」
少しだがトレントが小さくなっているように見えた。このまま傷を増やしていき、魔素を出し切れば倒せるかもしれない。
「希望が見えてきたな」
「じゃあ魔力が回復し切ったらまた行こう。私たちで終わらせるよ!」
「おう!」
そう意気込んだ瞬間だった。
何かが飛んできている速度を、能力が探知した。バッとその方向を見ると、凍った木の根飛んできていた。おかしい。この距離じゃあ届くはずがない。移動してきたにしても速すぎる。それに、まだ奥にトレントの本体が見えている。移動してきたわけではない。
「これは...!」
やつは、千切ったのだ。凍った木の根の先端を別の根で千切り取り投げ飛ばしたのだ。
思考が加速する。この氷の塊を避けるための方法を思考する。
方法は一つしかない。氷の塊を減速をさせ時間を稼ぎ、ステラの手を掴んで斜め後ろに走る。それしかない。能力を発動しながら左手をステラに伸ばす。
しかしその手は空を切る。
ステラは自力で飛んでくる氷の塊に気づき、逃げるために動き出していた。そのせいで目測を誤り、腕を掴めなかった。
…ダメだ。この距離じゃいくら氷の塊の速度を落としたとしても間に合わない。雷装を使い、能力をフルに活用しても逃げられるのは俺一人。ステラを逃すことはできない。
なら、やるべきことは一つ。ステラとの間に立って盾で受け止める。腕は折れるだろうが、そんなの気にしていられない。これが最善なはずだ。
「『雷装』!」
雷装を発動させる。そして逃げるステラと氷の塊の間に立ち、左腕の盾を構える。俺に当たるまで、あと0.3秒。
「っ⁉︎」
覚悟を決めたその時、右斜め後ろからとある速度を検知した。ステラではない。けれど、それは人の形をしていた。
無意識のうちにその人を加速させていた。なぜこんなことをしたのかはわからない。けれど、そのおかげで俺は助かることとなる。
「『シールドバッシュ』」
大盾を持ったその男は、そのまま超高速で氷の塊に突進する。加速したことで、受け止めるのではなく打ち砕くことができ、脅威が去る。
「お、お前...!」
その後ろ姿には見覚えがあった。一回だけの付き合いだが、初めてのパーティーということもあってよく覚えていた。
「ギブド⁉︎どうしてここに!」
「次が来る。気をつけて」
それを聞いて俺はすぐにトレントの方を向く。トレントは凍った木の根を引き千切り、こちらに向かって投げ飛ばす寸前だった。
「『二の矢』『火装・矢』いっくよー!」
俺の頭の上スレスレを二本の燃える矢が飛んでいき、氷の塊に突き刺さる。燃え続ける矢によって、氷が溶けて木の根も焼き焦げていく。
「この声...おいチュチュ!危ねぇじゃねぇか!!」
叫びながら雷装を解除し、鞭を取り出す。焦げてボロボロになった今なら無理で叩くだけで砕けるはずだ。そこまでいかぬとも、軌道を変えることくらいなら簡単にできるだろう。
「俺に任せなァ!加速しろ!」
「任せろってなんだよ人任せじゃねぇかキース!」
またしても後方からやってきた某ハルバード使いを加速させる。そして自分もついていき、加速状態を維持させる。
「ハァッッ!」
燃える木の根の方に跳び、ハルバードで斬り刻む。それでも残った細かい残骸を俺が鞭で弾き飛ばす。
「よっ、と...サンキューカリヤ」
体勢を軽く崩しながらも着地すると、キースが感謝の言葉を告げてくる。感謝したいのはこっちだってのに。
「なんでお前らがここにいるんだよ。ゼ○伝組よぉ」
「ゼル...?」
「同じ依頼を受けたんだよー」
「カリヤがいると聞いてな。援軍に来たんだ」
「そいつは助かる」
本当にいいところに来た。俺たち二人ではきつかったところだ。
「か、カリヤ?この人たちは?」
「簡潔に言うぞ。前に一緒に依頼を受けた人たちだ。左からキースにチュチュにギブド」
「そっか。私はステラ。よろしくね」
「よろー」
「んで、これはどういう状況だ?なんだあの馬鹿でかいの。まさかあれが討伐対象だなんて言わないよな?」
「ところがどっこい、夢ではありません。残念だったな、討伐対象だ」
「マジかよ...」
「でも大丈夫だ。奴の中に魔素が溜まってるんだが、それが抜ければ縮んでいく。出来るだけ大きな傷をつけて、魔素の放出を促進させられればいずれ倒せるはずだ」
「なるほど、じゃあ行くか。ステラとチュチュは遠距離から攻撃、ギブドは二人を守ってくれ。そして俺とカリヤで近距離から攻撃。それでいいよな」
「ああ、問題ない」
作戦の指揮をキースが取る。やはり、俺がやるよりも上手い。これが経験の差か?
「カリヤ、魔法の範囲はどれくらいだ?」
「半径2メートルだ」
「成長したな」
「それほどでも...行くぞ、加速開始!」
能力を発動し、キースと共に走る。
「速度も微妙に上がってるな。速え速え」
確かに秒速22メートルに加速したけれど、そんなすぐに気づくとは思わなかった。
「そうだけど無駄口叩いてる暇ねぇぞ!右から来る!」
『氷装・矢』
右から振られる木の根に向けて氷の矢を放つ。
「オラァッ!...カリヤ!上から来る!」
キースが凍りついた木の根をハルバードで打ち砕きながら叫ぶ。
「上...あれか!」
キースの声を聞き上を見ると木の根が二本振り下ろされているところだった。
『雷装』『雷装・剣』
雷装を発動しながらロングソードを取り出す。ロングソードにも電流を流し、真上から迫る木の根を側面から打ち払う。
「上昇速度加速...落下速度加速!ぶった斬る!」
木の根の真上にまで跳躍し、落下速度を最大まで加速させて勢いよくロングソードを振り下ろす。叩くのが専門であるロングソードでも、この高さと速度があれば真っ二つにすることなど造作もない。
「くっ、っ!危ねぇ、カリヤ!早くこっち来い!俺が死ぬ!」
キースの方を見ると、身を捩ったりハルバードを盾にしたりしてなんとか攻撃を凌いでいた。いつのまにか範囲外に出ていたみたいだ。
「いやーごめんごめん。ちょっと待っとけ」
一瞬でキースのもとにたどり着き、キースを襲っていた木の根を斬り落とす。
「なんだそのビリビリ...このままの調子で斬り落とすぞ!」
「いや、それだと時間がかかる。もちろんそれもやるけど...もっと一気に傷を増やしたい」
「じゃあどうするんだ?」
「火炎放射を使う」
「火炎放射ァ?なんじゃそりゃ」
『火球』『微風』
雷装を解除したのち火球を発生させ、それを射出せずに手のひらの上に持ち続ける。そして火球に向けて微風を放つ。ライターとスプレー缶で起こす火炎放射と同じような感じだ。秒速22メートルの速さで、火の粉を纏った風がトレントに向かって殺到する。
「おぉ、こいつはスゲェや」
火炎放射によって俺たちに近づいてくる木の根は全て焼け焦げていく。そうして脆くなった木の根をキースが斬り落とす。
「あと19本!それだけ斬り落とせば奴の攻撃手段はほとんどなくなる!」
木の枝の射程距離は短いので、よほど近くまで近寄らなければ攻撃を受けることはない。そして残っている木の根はあと19本。あと少しだ。
「そんなの続けてて魔力は大丈夫なのか?」
「問題ない。戦いが終わるまで使い切らないはずだ」
火炎放射を続ける。一本、また一本と焼けていき、キースが斬り落とす。あと12本。
「あれは...なるほど」
後方から普通の矢が何本も飛んでくる。それを見てすぐにステラたちの意図を理解した俺は、その矢に向かって火炎放射をして火をつける。火が付いた矢はトレントに突き刺さり、延焼する。
その間にも木の根を斬り落としていき、残るは5本。
「キース、1本は任せた。残りの4本を落としてくる」
『雷装』『雷装・剣』
火炎放射を止め、雷装を発動して秒速35メートルで走る。電流の流れるダガーを抜き、やたらめったに振り回される木の根をすれ違いざまに斬り落とす。
「あと2本...あと1本!ラストォ!」
ラスト1本を斬り落とす寸前、ステラの放った氷の矢が刺さり凍りつくも、それを無視して斬り落とす。
「これで全部...みんな!一旦離れるぞ!」
キースも1本斬り落としたのを確認し、号令をかける。これで奴の攻撃手段はほぼ消えた。一旦離れて体勢を整えよう。
「キース行くぞ!」
「ああ!」
雷装を解除し、キースと一緒に走る。追撃が来ることはなく、無事にステラたちのもとにたどり着く。
「全部斬り落としてきた。近くだったからよくわからなかったけど、だいぶ小さくなったんじゃないか?」
トレントのサイズが10%ほど小さくなった気がする。
「でもこの傷の量でこれでしょ?相当時間かかるんじゃない?」
「でも時間が解決してくれるんだ。これ以上無理して戦う理由はない」
俺たちは十分やった。もう帰ってもいいはずだ。
「じゃああと一発だけやっとこうよ。ほら、アレでさ」
「…りょーかい」
俺とステラは弓を構える。
「なになに?手伝うよ?」
「大丈夫。これは私たちにしかできないから」
「矢を渡せばできるくない?」
「突然やれって言われても難しいでしょ?ほら行くよ!」
「へいへい...「『氷装・矢』」」
氷の矢をトレントに飛ばす。
「「次、『雷装・矢』」」
5、6本ほど氷の矢突き刺さったのち、電気の矢を飛ばす。これは1本ずつでいい。
「えっ、なにそれ私も使いたい!」
「はいはい後でな」
トレントに電気の矢が刺さってから結構経ったので、締めに入る。
「「『火装・矢』ふっとびな!」」
火の矢を飛ばす。
「爆☆殺!」
大爆発が起き、トレントの一部が大きく吹き飛ぶ。これで倒せたか...?
『まだじゃ!』
久しぶりに聞いたぞ神の声。なんだ?
『まだ倒せてない!このままじゃ押し潰されてみんな死ぬぞい!』
…マジかよ。
「な、何この...なに⁉︎」
ぜ○伝組が驚いているが、それを無視してトレントのもとに走る。
「どこ行くの!」
「まだ倒せてない!」
神様の言うとおり、トレントはまだ動いていた。
「ここまでされたんだ!トレントは絶対反撃しにくる!」
事実、トレントはこちらに向かって移動を始めていた。
「あいつはやられる前にその巨体で押し潰しにくるはずだ!」
「じゃあなんでそっちに行くの!」
「やられる前にやる!それだけだ!」
俺の能力ならやつを倒せる、そうだよな神!
『そうじゃ』
神のお墨付きももらった。絶対行けるはずだ。
『雷装』
雷装を発動して、跳躍する。狙いは一点。
「掴んだ!」
俺が飛びついたのは、先程の爆発で吹き飛んだ傷口だ。まるで木のうろかのように凹んだところに入り込む。
「さぁ...フルスロットルで行くぜ!」
雷装を解除し、代わりに能力を全開にする。加速させたのは俺の体ではない。トレントの方だ。正確には、トレントの傷口から出る魔素の速度を上げたのだ。
「ぐっ、暴れんな!」
トレントが暴れ回る。なんとか縁にしがみつき、加速を続ける。
「行ける...行ける!」
トレントの歩みが少しずつ遅くなる。サイズが小さくなっていくので、歩幅が短くなり移動速度も落ちていっているのだ。
「みんな逃げろ!」
外を向いてみんなの方に呼びかける。結構小さくなっている。このままなら...っ⁉︎
「まずっ⁉︎」
縁に乗り出していたため、トレントが暴れた衝撃で手が滑り落下する。
でも大丈夫。能力を使えば...
「あれ?」
能力が発動しない。いくらイメージしても、うんともすんとも言わない。
「魔力切れ...⁉︎」
急いでポーションを取り出して飲もうとする。しかし、鞄を置いてきてしまっていたためそれもできない。
終わった。
なすすべもなく、俺は落ちていった。
カリヤくんちょっと前に自分で言ったことを忘れて行動する癖みたいなのでもあるのかな。
まぁ自分が展開重視してその場で考えながら書いてるせいだけど。