前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
前回と今回の話は突発的に思いついた話じゃなく、この作品を書き始める前から決まっていた内容になっています。
なお、内容の出来は保証しないものとする。
第七十六階層
「どうだ?読めるか?」
勇者の記憶を必死に読もうとするライトに声をかける。
「うーーん...なんか見えそうで見えないんだよね。すっごい特殊なものらしいんだけど...多分戦闘はなさそうかな」
「そうなのか」
もう既に横穴には入っているんだが、道中は無く、もうボス部屋に行き着いていた。だからこの先にはボスがいると思うんだが...戦闘がないってどういうことだ?
「多分...入ったらもう少し読めるようになると思う」
「マジか...まぁしゃーない。ちと怖いが、入るしかないな。みんな、それでいいよな?」
「別にいいわよ。どちらにせよ、注意はするわけだし」
「了解。じゃあ開けるぞー」
意を決して扉を開け放ち、部屋の中に入る。
「これは...なんだ?あれ」
少し広めの空間、その中央に何かがあった。
「……土偶?」
それを何かに例えるとするならば土偶だった。うん、土偶に似ている。腰?のあたりがメチャ細いな。土偶ってこんなんだっけ?
「変な形ねぇ...金属の人形かしら。ゴーレム?」
「何はともあれ、戦闘しないのは本当っぽいな。一切動かないし」
「あっ、ごめん嘘ついたみたい」
「ん?どゆこと?」
「こいつを壊すことが、ここの攻略条件みたい」
「まぁ、そりゃそうか。こいつしかいないわけだし、こいつをどうにかするしかやることないしな」
「反撃してくるとかもないから、本当に倒すだけでいいんだけど...それが難しいらしいんだよね」
「どう難しいの?」
「まず、普通に硬いから攻撃が効きづらい。魔法も物理攻撃もほとんど同じくらいしか効かないんだって」
「ふむふむ...的がそれなりに小さいし、壊すなら魔法か物理どっちかに絞った方が良さそうだな」
この土偶は高さ一メートルくらいしかない。魔法なら魔法で、物理なら物理で、とどちらか一方にしておかないとフレンドリーファイア不可避だ。
「そして、再生能力もある。傷つけた側からほぼ一瞬で回復しちゃうんだって」
「即時回復か...一撃で壊すか、絶え間なく攻撃し続けないといけないわけね」
「あの像が持ってる力はそれだけ。単純だけど、このシレンの穴の中で一番ヤバいかもしれない」
「……そんなわけある?」
ただ硬くてしぶといだけだろ?そんな奴がこれまで戦ってきた魔物や、これから戦うであろう魔物よりもヤバいってことある?まぁたしかに、単純な能力が一番厄介なのはよくあることだけれども、そうとは思えない。
「だって先代の勇者たち、この階層突破できてないから」
「……え?」
「ちょっと待ちなさいカリヤ。信じられない言葉が飛び出したのだけれど理解が追いつかないからもう一度言ってもらえるかしら?」
「そんな捲し立てなくても...僕だって驚いてるんだから。一つ前の勇者は、この階層を突破できてない。つまり、あの像を破壊することに失敗している」
……マジかよ。
「……シレンの穴って、造られた時から内容は変わってないんだよな?」
「そうだね。どの階層も変わってないと思うよ」
「突破できなかったのは一つ前の代だけか?それとも、その前から突破不能だったのか?」
「……ごめん。先代の分しか読めてないんだ。それより過去の勇者の記憶にどれだけやってもアクセスできない。だから突破できたのかどうかもわからないし、あの像の弱点もわからない。ただ、これは通じなかったって情報だけがある」
「キッツいねぇ...でも、とりあえず取れる手は全部試してみようぜ。そんなことはないだろうけど、もしかしたら先代勇者たちがちょっと弱かったのかもしれないし」
「そうね。やる前から諦めてちゃ世話ないわ。なんでもいいからまずは攻撃...よ!」
ニアが大量の魔法陣を空中に描き出し、一発ずつ種類の違う魔法を土偶に撃ち込んでいく。
「……どれも効果無し...ね」
ニアが魔法を放った時間は、およそ三分。ニアに扱える魔法はあらかた撃ち込んだと思われるが、土偶には傷ひとつない。一切効いていないのか、それとも傷ついた側から再生したため無傷に見えるだけなのかはわからないけど...魔法じゃ難しそうだな。
「ここ数十年で新しく見つかった魔法も撃ってみたけど、無意味みたいね。魔法じゃ破壊は無理だと思うわ。物理組頑張りなさい」
「凄い雑なフリをするなおい」
「僕はこれ相手にカウンター使えないから何もできないかな」
「物理組って言われて真っ先に反応するのレストなのおかしくね?」
「じゃあ次私行きまーす!」
弓を構えながら前に出るステラ。
「一番脆いのは...その腰の部分とみた!」
速射で五本の矢を一秒で放つステラ。しかし...
「ああっ!矢尻が全部壊れた...」
どうやら土偶の硬さはかなりのもののようで、ステラが放った矢は全て刺さることなく壊れながら弾かれてしまった。
「うぅ...」
「よしよしステラちゃん...じゃあ次はクミさんが行こっかなー」
腕をぶんぶん振りながら、今度はクミリアが前に出る。
「ステラちゃんの仇を取ってあげる」
「別に死んだわけじゃないからな?」
「バフ全のせで...どーん!」
クミリアが土偶の腰めがけて思い切り蹴りを叩きつける。
「おっ!ちょっと砕け...たけどすぐ治っちゃった」
クミリアのバフ全部乗せキックは流石に効いたみたいだが、それでも破片が少し飛び散る程度。しかも一秒もせずに再生してしまった。
「あー足ヒリヒリする...何度も間髪入れずに叩き込めば出来そうだけど、ちょっと無理かな...」
「オーケーわかった。俺ならなんとなくいける気がしてきたから先ライトどーぞ」
「いけると思ったなら早くやればいいのに...わかった。やれるだけやってみる」
聖剣展開をして、ライトが土偶に斬りかかる。
「っ、ちょっと脆い...?」
ほんの少しではあるが、聖剣が土偶に食い込んだ。あの切れ味の聖剣が途中で止まること自体ヤバいことではあるが、少しでも食い込んだことは進歩ではある。
「もしかしたらいけるのかも...?」
そう言ってライトは聖剣を一度引き抜くと、再度土偶を斬りつける。
「……あれ?さっきよりも効いてない?」
おかしい。今度は刺さりすらしなくなった。
「一発ごとに耐性を持つとかか?どこのバーサー○ーだよ...」
いや、でもそれだと無理ゲーすぎるし、何かタネがあるんだろう。聖剣の二撃目が効かないような何か...同じ攻撃を連続で当てても無駄って感じか?スマ○ラのOP相殺みたいだな。
「よし、色々試したいことできたから変わってくれライト」
「えー早いよ...最後に一つ試させて」
そう言ってライトは色彩剣装と雷装を発動して、赤の光と電流を纏いながら土偶を斬りつける。
「……これでもダメか」
「それ俺が試そうと思ってたやつー、盗られたわ...ほれ入れ替われ入れ替われ!」
ライトが下がり、今度は俺が前に出る。
「じゃあまずは小手調べ...っと!」
ダガーを抜いて一旦斬ってみる。手応えとしてこいつの硬さを知っておきたいからだ。
「……え?」
そう思っていたのに、さっきの聖剣一撃目と同じくらい食い込んだせいで少しビックリしてしまう。
「これ、マジでOP相殺説有りか?」
あともう一つ分かったことだけど、間にものがあるときは再生しないんだな。こうやってダガーを引き抜くと...すぐに再生したな。再生封じは一応できなくはないって感じだな。
「試しにもう一回ダガーで...うん、刺さらないね」
じゃあ今度は刀だ。OP相殺説があっているならば、これも聖剣やダガーの一撃目と同様に刺さるはず...
「……ぐっ、硬ぁ...」
手がビリビリと痺れる。刀は一切刺さらず、受け止められてしまった。
「OP相殺は関係ないのか...なら、なんでさっきは切れたんだ?」
「あれじゃないの?聖剣で魔素が無くなるからバフが無くなって、攻撃が効きやすくなるってやつ」
「それが一番それっぽいけど、それだと二回目が効かなかったことに矛盾するし、俺のダガー一発目が効いたのにも矛盾する」
「……あの像が、聖素からもバフを得れるとか?」
「……あり得るわね。あの像は魔素からも聖素からもバフを得ることができる。けれど、同時にバフを受け取ることはできなくて、かつその切り替えには時間がかかる。聖剣での攻撃一回目は聖素のバフを受け取る前の攻撃だったから効いて、ダガーの攻撃一回目は魔素のバフを受け取る前だったから効いた」
「つまり、あの状態の聖剣を近づけたり離したりすれば、効率よく壊せるかも...ってことだな?」
「そうなるわね。まぁまだ可能性でしかないけど」
聖剣を近づけたり離したりって、なんかデーモンコアの実験してるみたいだな...
「まぁそれは俺の策が失敗したらやってもらおうかな」
『色彩剣装 無彩・黒』
黒の光を刀に纏わせる。
「よーしいくぞー」
「ねぇカリヤ」
「……なんだライト。今からやろうって時に」
「こんな時に言うことじゃないかもしれないけど、なんでいつも色彩剣装を使う時に刀に持ち替えてるの?ダガーでやればいいのに」
「えっ?だって色彩剣装って一定以上の刀身の長さがないと使えないだろ?」
「カスタムをすればダガーでも普通に使えるけど...あ、そういえばスキルで発動してるんだっけ。それなら仕方ないか」
あれー確かにそうやってカノウに説明されたと記憶してるんだが...まぁ試合に負けたから、完全な説明をされてなくても文句は言えないな。
……あっ、そういやワンナが色彩剣装を盗んで使ってた時、短剣に対して発動してたっけ...うわーほんとだよくよく考えれば普通に使えるじゃん。
「もし良かったらカスタムの方法教えようか?それとも、そもそも魔法陣から教えた方がいい?」
「いや、カノウの許可無しに勝手に人に教えてもらうのはちょっと...」
「なによ、いいじゃないそれくらい。強くなれるんだから」
「いやでも魔法陣は自力で解明したいから...」
「それなら、ダガーで使えるスキルとして覚えるのはどう?」
「……それが妥協点か。それで頼む」
一旦ライトにダガーを渡す。
「あっ、色は黒だけ使えれば十分だからそれでお願い」
「貰えるだけ貰っておけばいいのに...」
なんかノンデリロボっぽい言い方してくる奴いるな。
「はいこれ持って」
ライトから黒い光を纏ったダガーを受け取る。ライトの手から離れた瞬間に光は消えてしまったが、もうスキルは手に入れたからオーケーだ。
「よし、じゃあいくぜ!」
『色彩剣装 無彩・黒』
狙いは一番太さが細い腰部分。直径およそ十センチ。どれだけかかるかわからないが、やってみよう。
まず、黒の光の力で未来から斬撃を呼び寄せる。ザクザクっとほんの少し、ほんの数十マイクロメートル程度の傷がつけられる。
そして即座にダガーで斬撃を加える。今ので、土偶への攻撃と、未来からの斬撃の伏線回収を同時に済ませた。そしてダガーがあるから再生はまだしない。
再度振るため、ダガーを土偶から離す。そしてすぐに、再生が始まるよりも前に未来から斬撃を呼び寄せて攻撃し、これまたすぐにダガーで切り付ける。
これの繰り返し。最速で攻撃し続ければ、再生するよりも前に攻撃が決まりダメージを与え続けることができる。けれども、一ローテでやっと百マイクロメートルくらい。このままだと千ローテ繰り返さないといけない。千回やってやっと十センチ切ることができる。
一ローテにかかる時間、およそ0.06秒。一秒に十七回ローテできるくらいの計算であり、一分切り続ければ切断できる計算だ。
ただ、これはミスをしないという前提ありきの計算。一度ミスをすれば最初からになりかねない。一分とはいえ、コンマ数秒単位での色彩剣装の行使にはとてつもないほどの集中力がいる。思考速度を加速させても、頭がパンクしそうになる。
そして単純に腕と手の疲労がヤバい。何度も何度も硬い土偶にダガーを叩きつけているのだ。ほんと、切るというより叩いているという表現が正しい。土偶に当たった時に腕に跳ね返って来る反動が尋常じゃない。
そんな硬い土偶に何度もダガーをぶつけていたら、そりゃ欠け出す。少しずつヒビが入って、すぐにでも壊れそうになる。速度操作で得る物理保護を上回るほどの衝撃がダガーに走り、結果として傷になっていく。
傷自体は製作スキルを使ってダガーを再生成することで対処できるが、その間使えるダガーを一本だけになってしまう。さらに時間が伸びる。
やっと半分。ダガー修復とかの時間で遅れたのを考慮してもまだ一分経っていないはずだが、思考加速のデメリットである時間感覚の喪失によってめっちゃ長い時が過ぎたように感じる。
というか今俺ちゃんと呼吸できてる?ひたすら中腰で高さ五十センチくらいの位置にある土偶の腰めがけてダガーを振るのに集中しすぎて、生命活動をちゃんと行えてるかすら定かじゃなくなっている。
……そうだ。一旦休憩しよう。酸欠になりそうだ...
「……っ、ハァッ⁉︎はーっ、はーっ、ふーっ、すぅー...」
ダガーを差し込んで再生を堰き止め、呼吸に集中する。やっぱり、いつのまにか呼吸を止めてしまっていたみたいだ。
「す、凄い...」
なんか、後ろの方からみんなの声が聞こえる。
「でも苦しそう...」
「だ、大丈夫だステラ。ちょっと慣れてきたから。それに、再生速度を掴んだ」
「……掴んだって?」
「こういうこと...さ!」
ブンッとダガーを引き抜く。本来ならすぐ再生が始まるはずだが...土偶は一向に治らない。
「こいつの再生は、傷がついた時にしか発動されない。だから無傷の状態から干渉することはできなかった。けど、ダガーで傷口を塞いでる状態は違う。再生したい箇所にものがあって治すことは出来ないけど、再生の力は働いてる。再生には速度があるから、それをずっと減速し続けたおかげで...もうこの傷は治らない」
さっきまでの攻撃でつけた、五センチの傷。ここはもうずっと治らない。俺が離れたり、速度操作を解除したりしなければな。
「このまま続けてもいいけど...流石にライトの手を借りようかな。聖剣を近づけたり離したりしててくれ」
「わかった。頑張ってね」
「おう、じゃあいくぞ!」
ライトが聖剣を土偶に近づけた瞬間に未来から斬撃を飛ばす。
ザクザクザクッ!と一回で数ミリ消し飛ばす。バフが一時的に切れたため、ビックリするほど刃が入るようになった。
だがそれも一瞬。すぐに聖素からバフを受け取り始め、またいつもの硬さに戻る。
「けど遅い!お前の再生は!もう止まってんだよ!」
バフを受け取れない間、硬さもそうだが再生速度も著しく遅くなる。それこそ、ちょいと操作すればすぐにゼロ速度になるくらいには遅くなる。そのおかげで切ったそばから再生を止めることができ、どんどん切り進めていくことができている。
「終わりだっ!!!」
あと数ミリしか繋がっていないのにそのまま直立している土偶の上半身側に思い切り蹴りを叩きつけ...たら折れて飛んでいくのを想定していたけどびくともしなかったから普通にダガーで切りつける。
「切れた!」
後ろから歓声が聞こえた。その瞬間には、もう切り離された土偶の上半身側を蹴っ飛ばして下半身から離しておく。万が一切断されてからも再生されては困るからな。
「ふぃー...疲れたぜ」
「やったやった!壊せた!」
「ものすごいゴリ押しだったね」
「二人がいなきゃ無理だったわねこれ...」
もしかして、俺がいないと勇者敗北ルートになるって奴、ここを突破できなくなるからだったりするのかな...なんてことを考えながらダガーをしまう。お疲れ様だ相棒よ。
「よーし壊せたわけだし、先進もーぜー...って、どうした?ライト」
「扉がない」
「……えっ?」
「像を壊したのに出口の扉が出てきてない。ということはまだちゃんと破壊できてない?もしかして足を地面から離さないといけないとかかな...」
ダメだ。一人の世界に行っちゃってる...けど、出口が出てきていないのは事実。ライトが言うように、腰部分を切断しただけじゃ破壊判定もらえないのか?
……いや、もしかしたら...そうなのか?
俺が壊したから...か?
もし扉が現れないことが異変だったとしたら、それはシレンの穴に人として認識されていない俺のせいである可能性が高い。俺がボスにトドメを刺しても、攻略扱いにならない説が浮上してきたわけだ。
よくよく考えてみると、俺たちは七十六階層まで来たわけだが、俺がボスにトドメを刺したことは一回たりともない。第七階層あたりだったか、最後に出てきたボス虫の首を切り飛ばしたことはあったが、その直後にニアが魔法で全身を消しとばしていたから矛盾はしない。
俺が土偶を壊したから、扉が出てこないのだ。
「もう少し破壊してみるしかないわね。カリヤ、また頼めるかしら」
「え゛っ...」
本当にそうなのかはわからないけど、俺が破壊するのはダメそうだ。できれば他の人にやってもらいたいけど、みんなに破壊できるかどうか...そもそもどうやって誘導する?
「い、いやーちょっと今腕が限界で...」
「なら痛みを取ってあげるから頑張りなさい。カリヤにしか壊せないんだから」
「えっとぉ...あのぅ...」
「なによ。何か言いたいわけ?」
ああダメだ。いい感じの言い訳が思いつかない。どうしよう...
「……ごめん。ちょっと試させて」
ずっとブツブツと呟きながら考え事をしていたライトが急に前に出て来る。
「僕の予想が正しければ...」
ライトが魔法を行使する。これは...起爆魔法か。そういや、雷装は試してたけど爆発は試してなかったな。
そう思いながら見ていたら...
ボンッ!
「……えっ?」
ライトは地面にくっついて残っていた土偶の下半身側に向けて起爆魔法を使ったのだが...跡形もなく消し飛んでいた。
「エ゛ッ゛⁉︎」
「あっ、扉できた」
「ちょいちょいちょい!今のなんだってか俺の努力はなんだったんだってか爆発が効くってわかってたのか⁉︎」
「そんな剣幕で来ないで順に説明するから...」
俺から少し離れるライト。
「爆発が効くってわかったのは、ほんの少し前、ついさっき。よく考えてみたんだよ。一つ前の階層と、この階層を連続で置く意味」
「……ア゛ッ」
一つ前の階層、第七十五階層ではボスが水素爆発を使ってきた。もしあの階層が、水素爆発という現象の存在を教えるもので、この階層でそれを試してみてねってことだとしたら...
「なるほど、そういうことね」
「カリヤとニアはわかったみたいだね。ニア、悪いけど三人に説明してあげて」
まだ理解が追いついていないステラ、クミリア、レストの三人にニアが説明をする。ニアならわかりやすく教えてくれるだろう。
「でも、なんで爆発が効くんだ...?」
「多分、あの像が周囲のマナ...聖素とか魔素からバフを貰えなくなるからだと思う」
「……どういうことだ?」
「さっき爆発させた時、一緒にマナ探知を使ってみたんだ。そうしたら、爆発したところがその瞬間だけマナが一切無くなってたんだよね」
「爆発で吹っ飛ばされるってことか?それとも消し飛ばしてるとか?」
「どっちかはわからないけど、重要なのはマナがなくなるってこと。マナが無いって、本来なら自然に起こり得ない異常なこと。全く別の物理法則が働いていてもおかしくない」
「だからあの土偶を消し飛ばせた...ってことか」
そういえば、前に水素爆発が魔物に効きすぎじゃね?という疑問を抱いたことがあったが、これが理由なのかな...
「もしかしたら、どんな攻撃よりも強いかもしれない。これからは積極的に使おうか」
「だな。ニアー説明終わったかー?」
「ええ。次の階層に行きましょうか」
現れた扉の方まで歩く。
「あっ、蹴飛ばした上半身転がったままだ。消えないんだな」
ボスは倒したら消えるのに、あれは消えないんだな。
「消しとばしておく?」
「いやいいでしょ別に」
「それにしても、ちゃんと突破できてよかったわね」
「そうだね。突破できなかったらヤバかった」
「だな。シレンの穴全て攻略しないと、手に入れた力を外で使え...な...えっ?」
なんか、別ベクトルでヤバい事実に気づいてしまった。
「先代の勇者って、聖剣展開とかデバフ無効とかを使えないのに魔王を倒したのか...⁉︎」
この階層を突破できなかったってことは、そういうことだよな?
俺がやったように、なまじゴリ押しであの土偶を壊せないこともないから、ここを突破できてない=そこまでの強さだったっていうふうに思っていたが、もしかしたらめちゃ強なのでは...?
衝撃の事実に慄く俺。
そのせいだろう。
俺は、いや俺たち全員、上半身だけ残った土偶から黒い何かが這い出しているのに気づけなかった。
「魔...王さま...」
最後の出てきた奴?
誰なんでしょうねぇ...先に言いますが、終盤まで登場しないです(多分)
はい、テスト一週間前になりましたので、いつも通りしばらく投稿が止まります。
10月22日火曜日に投稿再開しますので、それまで気長にお待ちください。